ロシア製軍用サバイバルナイフ NW-1-01

 今回もちょっと古い記事ですが、「Visier」2004年10月号に掲載されていた、ロシア製軍用サバイバルナイフに関するレポート内容を紹介します。


Iwan Rambowitsch(頑住吉注:「イワン ランボー風」みたいな意味かと思うんですがよく分かりません)

中空のグリップとマルチファンクションシースを持つサバイバルナイフはアメリカ人だけのものではない。‥‥このことはロシアから来た新しい公用モデルが示している。

用コンバットナイフはプーシキンの祖国ではむしろ影の中に立っている(頑住吉注:要するにロシアでは軍用コンバットナイフは目立たない存在だ、ということです)。そう、周知のようにロシア人は特にマルチファンクションバヨネットに信頼を寄せているのである。ここに面白い点がある。カラシニコフバヨネットのファミリーは、あるナイフに基いている。それは1人の戦闘ダイバーが1955年に海軍特殊部隊用にデザインしたものである(頑住吉注:「面白い点」というのは「ウィット」のドイツ語で、ナイフが元祖であるのにそれを真似したAK用バヨネットが超メジャーになり、ナイフの陰を薄くしてしまったことを指しているようです)。その刃は(頑住吉注:辞書にない単語が出てきて意味不明です)にも、ワイヤーカッターにも使えた。50年後にも、ロシア製軍用ナイフはコストのかかるシースなしでは間に合わさなかった。それを示しているのが新しい、多目的シースを持つ

コンバットナイフ NW-1-01である。OMON部隊(囲み記事参照)はこれを発注していた。他の部隊もこれを受領してきている。国際的には「マルチパーパス アーミーナイフ」と呼ばれるこれを、輸入業者のWaffen Schumacherは「OMON-Kampfmesser」として販売している(頑住吉注:「Kampf」はヒトラーの「わが闘争」やカンプピストルでも知られる単語で、他ではコンバットと訳しています。「Messer」はドイツ語では手術用のメスだけではなく、ナイフ一般を指します。ドイツ語の記事を読み始めた頃は、「犯人はMesserで武装していた」というのを読んで、手術用のメスを投げまくるブラックジャックみたいなのを想像して「?」と思ったもんです)。価格は199ユーロである。このKrefeldの会社(頑住吉注:輸入業者Waffen Schumacher)のThomas Hoffいわく、「このナイフはロシアの特殊部隊のための開発品で(例えばOMONのような)、Izhmash工場で製造されています。これは軍、警察特殊部隊用の製品ですから、このナイフをドイツに持ち込むための書類上のがらくた仕事はほとんど克服不能なものでした。このナイフはロシアではバヨネット同様『Kriegswaffe』(頑住吉注:戦争用の兵器、くらいの意味だと思います)に格付けされています。これに応じてこれは本来は輸出禁止下に置かれています。1年間の粘り強い折衝、およびエンドレスな空欄埋め、そして書類の提出の後、我々は最初の納入品を手にすることができたのです。」

 メーカーについて。略称Izhmash(ドイツ語における記述法ではIschmasch)の背後にはIshewskのエンジン工場という意味がある。ロシア最古の兵器メーカーの一つであり、世界で最も重要なそれの一つでもある。この会社は1947年にカラシニコフアサルトライフルのゼロシリーズを製造し、その後ここではAKM、あるいはマシンガン型であるRPKのような諸バージョンが生じた。その上この工場はセミオートのSaigaやTigrのようなスポーツ、ハンティング用銃器も製造している。

フィニッシュとフォーム

 IschmashはこのナイフをNW-1-01と名付けている。これは「Nosch dlja Woischiwanija」を表わし、ドイツ語ではほぼ「生き残りのためのナイフ」となる。全てのロシア製軍用銃同様、このOMONナイフも最も高級な素材、最もタイトなフィッティング、パーフェクトなポリッシュのファンは誰一人熱狂させないだろう。ロシア人はその生産物において経済性と機能における厳密さを重んじる。以上。これがこの上さらに美しいことを望むのは無理である。これはNW-1-01にも当てはまる。8HF-スチール製の刃は黒色のクロームメッキを示しており、アルミニウム(AL9)グリップはCZ75熱帯型風に黒色のラッカーで厚くコーティングされている。しかし、このロシア製品のデザインが非常に成功したものであることを確認した後には、目は純粋にそのフォームに集まる。

 判定として、この感覚は正しいことを認める。すなわち、これは問題なくバランスが取られた、多くの任務に使用できる器具である。balligに研ぎ澄まされた刃(頑住吉注:「ballig」は銃のグリップが膨らんでいる場合などに使われる「ボール状の」という形容詞ですが、この場合はたぶん刃の中央部が厚くなっていることを指すんだと思います 最後に注釈を追加)はたっぷり15cmの長さを持ち、これは軍用ナイフの理想的寸法である。純粋にフォームからは、このナイフはモデファイされたドロップポイントフォームと「腹が膨らんだ形でアーチ状になった先端部」(頑住吉注:たぶん刃の根元の部分から先端近くに向けて厚みが増されていることを指しているんだと思います)によって、刺す、叩き割る、切るといった作業に非常に良好に適している。そして背部にあるつばのアームは、ハンマーとしての作業に使える厚くなった端部を示している。グリップには4つのバンド状チェッカリングがあり、6つの斜めの隆起部がある。これはナイフが滑らずに手の中に位置し、素早く、良好に回転できるために配慮したものである。

 グリップフォームは、このナイフの発明者が西側のお手本たちからインスピレーションを受けた可能性を示している。中空のグリップを持つナイフは、すでに19世紀にSheffield(頑住吉注:イギリス)のナイフ製造業者が作っていた。これが確立したのは、アメリカのGeorge W. Ingraham大尉と、アメリカのナイフメーカーWalter「Bo」Randallのおかげをもって初めてである。彼らは1963年に、水密にねじ込み固定できるグリップパイプを持つナイフを考え出した。すなわちこれが「No.18 サバイバル アタック」である。これは全てのモダンなサバイバルナイフにインスピレーションを与えた。後に映画「ランボー」の初期2作の中でシルベスター スタローンがこうしたナイフを世界的に有名にしたようにである。

 つまり、このランボーナイフのロシアンバージョンも、回転つまみによって閉鎖可能な、「水がせき止められた場所」としてのグリップを使っている。NW-1-01内には差し込まれたキャップによって閉鎖されたプラスチック製パイプが見出される。これは横プレートによって2つのスペースに分けられている。上のスペースには、油紙に包まれた2つの小パックが差し込まれている。その1つには3つの小さなステンレススチール製釣り針、および釣り糸の重り用の3つの鉛球、そして巻いた釣り糸が入っている。他には3本のマッチ棒が擦り板とともに、キリ、安全ピン(頑住吉注:「Sicherheitsnadel」そのまんまです)、革用縫い針、大型の釣り針が入っている。下端には小さな発泡スチロール製糸巻きがある。これには2、3mが巻かれた釣り針つき釣り糸と鉛球、およびいくらかオリーブ色のかがり糸がついている。

多くのケースのためのシース
 これは全てが全く好ましいが、実際のところいささかも新しいところはない。このシースはポリアミド製である。これが「(ge)wichtige」な役割を演じていることは、はかりが示している(頑住吉注:カギ括弧内は、「重要な」という意味と「重量的に重い」という意味をかけています。重要な役割を果しているが、同時に大きな重量増加にもつながっている、といったニュアンスでしょう)。このナイフは242gだが、それに対しシースはたっぷり400gをもたらしている。これが4cmを超えるパーツによってそのサイズを大きくし、通常の枠組みの構造を越えていることは不思議ではない。このシースはただの深絞り加工、あるいは射出注型製法で作られた、そしてキャリングベルトを装備したシース本体からなっているわけではない。そうではなくて、このチャコールグレイ色のシースは多くのエレメントから構成されている。本来のナイフシース(コンパスおよび砥石込み)、2つの追加刃用のさらなるシース、プレート(全目的ナイロン組紐用ホルダーとして機能する)である。これらエレメントは先端部で互いにネジ結合されている。

 パタンと開くためには、使用者はシースの口部にあるボタンを押さねばならない。すると、ネジ上の2つの部分が回転できる。しかし、約30度までである。これは使用者が例えばワイヤーを切断するために必要な程度である。というのは、Izhmashは先端部にワイヤーカッターを組み込んでいる。シースを開くと、その下の両追加刃の一つが使用できる。このシースはその際各刃ごとに意外なほど良好なノコあるいはナイフのグリップとしての役割を演じる。ともかくこれが通常の作業におけるラフなナイフの使用に持ちこたえたことは全く賞賛に値する。テスト者が工場渡しでよりシャープなノコ刃を望んだにしてもである。このNW-1-01は密閉性テストにも耐えた。すなわち、水はつまみのネジを通って内部に侵入しなかった。

 全ての実用適性においては‥‥このIzhmashナイフは議論を呼び起こす。パイプ状グリップは有意義に見えるかもしれないが、ナイフの剛性をかなり弱める。空洞の空間は、一貫した中子(「Erlとしても知られる」)の断念によってのみ代償を払って購われうるのである。‥‥つまり、他の場合にはグリップマテリアルに担われているブレードの一部である。空洞グリップ内にはたいていパイプ内部にあてがわれるフラット面によって固定される短い中子しか差し込まれていない。

 ロシア人は後者(頑住吉注:中空のグリップ)を役立つものとしてきたのである。グリップの足部にはスリットつきの隆起部がある。これに中子端部が15mmの長さで四方から包まれて固定されている。同封のドイツ語による使用説明書によれば、これはサイドからの引き負荷35kgに耐えるという。テスト終了後、ぐらつくことはなかった。だが、編集者たちの意見は一致しなかった。すなわち、1人は比較的安定した構造方式を指摘し、しかし他は組み立て、ナイフの固定に対する疑念を留めた。‥‥これはRandallの元祖サバイバルナイフと同じぐらい古い争点である。(頑住吉注:要するに、



通常のナイフは上のように刃と一体の「中子」がグリップの中を通っているので剛性が高いが、中空のグリップを持つサバイバルナイフは下のような形でどうしても構造的に弱くならざるを得ないということです。このナイフの場合、「中子」は15mmの長さで差し込まれているだけだとされているわけです。)

 第2のハンディキャップ。このナイフの640gという重量は、例えばおよそ.223レミントン弾薬40発分に相当する。これは軽量とは言えない。だが、疑いなくロシアの発注者はこのテーマに頭を痛めてこなかった。「プーチンの帝国」の有名な軍人たちは、西側にいる仲間たちとは異なり、こと装備に関し彼らの兵士たちに能率を目的としてマテリアルをおびただしく与える傾向がある(頑住吉注:ロシア軍は、「こんなに重い装備を持たせたら兵士にとって負担だろう」といった配慮に欠ける傾向がある、ということです)。一方ではまたこのナイフがギミックの多いサバイバルナイフのファンのために充分な装備ディテールを提供しないということもある。すなわち、ロシア人はもうすでに、彼らの顧客の大部分は軍服を身につけておらず、むしろ民間人の衣服の方が多いということに驚いているかもしれない(頑住吉注:軍服に装着するデザインなので、例えばキャンプに使おうとする場合に通常の衣服、というかベルト等に装着しにくいということだと思います)。

キーワードはOMON(囲み記事)
 1980年におけるオリンピック夏季大会の前に、ソ連の内部事件のための省(MWD)は、特別にテロリストと戦うための新しい部隊を設立した。‥‥これは1972年のミュンヘンのような事件を阻止することを意図していた。この新しい部隊は「Otrjad Milizii Osobogo Nasnaschtenija」(OMON)という名称を得た。‥‥つまりドイツ語では、「特別な使用のための警察部隊」である。彼らはバルト諸国、チェチェンで勤務している。1990年代以来、OMONは麻薬との戦いの中でも活動している。この部隊は非常に成功しているので、タジキスタンのようなかつてのソ連構成国は独自のOMON部隊を配置してきている。(頑住吉注:OMONについてはここが分かりやすそうです http://www5f.biglobe.ne.jp/~sbu/DATABASE-Russian-N.htm )


 私はナイフに関しては(「も」?)無知なんで、新しく知る話が多かったです。文章による説明だけでは分かりにくいと思うので、公式サイトにおける紹介ページを見てください。

http://www.izhmash.ru/eng/product/hun-kni.shtml

 下の方の小さい画像をクリックすると拡大表示されますんで、それを使って説明します。

 「背部にあるつばのアームは、ハンマーとしての作業に使える厚くなった端部を示している」というのは、この写真では上になっているつばの背部が代用ハンマーとして使えるようになっていることを指しています。「グリップには4つのバンド状チェッカリングがあり、6つの斜めの隆起部がある」というのはグリップを見てもらえば分かると思います。グリップ内は中空になっていろいろなものが収められていますが、直接ではなく、左下に見えるプラスチックパイプに収められているわけです。

 シースに関してですが、先端部でヒンジ結合され、ボタンを押すとロックが解けてこのように開きます。一番下が本来のナイフシースで、大きなボタンのようなものをねじって取ると方位磁石になっており、またその後方のプレート状部分は砥石になっています。ここで水平になっているのが2つの「追加刃」のケースです。ナイフとシースの間に見える2枚の刃がそれで、上はノコギリです。この画像では分かりにくいですが、下が粗い刃、上が細かい刃になっています。下のは小型のナイフ刃で、細いロープを切断する際に使うフック状の刃が先端近くの背部に設けてあります。この刃のいずれかを本来のナイフシースと「追加刃」ケースの間にはさむようにしてパチンと閉じるとしっかり固定され、一体化したシースがグリップになるわけです。上にあるのはナイロンロープを巻いてあるだけのものです。また、AK用バヨネットに似て、本来のナイフシースと「追加刃」ケースの先端がワイヤーカッターとして使えるようになっています。

 いかがでしょう。私これかなり欲しいです。199ユーロを換算すると27,000円くらいになりますからちょっと高いようですが、本物のAKのメーカーが作り、ロシアの特殊部隊も使っているサバイバルナイフってかなり魅力的ではないでしょうか。

2005年7月21日追加
 ここをご覧の方からご指摘をいただきました。「balligに(研ぎ澄まされた刃)」というのは、刃の厚みではなく刃の前後幅を指す表現だったようです。刃が根元からまず後方へカーブ(刃の幅が狭まる)した後に前方へ逆にカーブ(刃の幅が増す)するS字状のブレードの形状であり、バランスやカット能力を増すための「リカーブドエッジ」と呼ばれるものだそうです。また、このナイフに関しては、

http://www.rusmilitary.com/html/c-cold_steel.htm

 ここにより詳しく説明されたサイトがあることも教えていただきました。








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