9mm/.40S&W変換システムつきジェリコ941F

 「Visier」2005年3月号の「スイス銃器マガジン」ページに、スイスで安価に販売されているという口径変換システムつきジェリコに関する記事が掲載されていました。


ジェリコ再び

もしもビギナーの銃、セルフディフェンスピストル、スポーツ器具としてならば、2つの弾薬仕様のジェリコ941は1つの良い選択肢である。特にセット価格が895スイスフランならば。(頑住吉注:この記事の執筆者)Ulrich A.Bieriはこのピストルを両方の弾薬で射撃した。

誌2003年7月号で我々はジェリコピストルシリーズをディテールまで紹介した。しかし1つの究極的に特別な提供品に直面した結果、もう一度ジェリコに目を向ける価値があると判断した。
 La Chaux−de−Fonds所在のLagardere社とLaufen所在のJoray Marius社は9mmルガーおよび.40S&W仕様のコンバーチブルモデル941Fを驚いたことにセット価格895スイスフランで提供している。この提供品は1つのフレーム、2つのスライド、適合するリコイルスプリングの付属した2本のバレル、1種類の弾薬につき1つのマガジン、ハンディな小型ケース、クリーニング道具を含んでいる。我々の2つのスライドを持つバージョンのテスト銃はブルーイング仕様であり、同じピストルの変換システムなしのバージョンはクロームメッキ型、ツートン、アーミーグリーンでも入手可能である。実務家のために言及すれば、ツートンバージョンはフレームがクロームメッキ、スライドがブルーイングされている。さらに10スイスフラン安価な9mmルガーと9mmx21仕様のセットバージョンもある。その上当然スライド単体も供給されており、これにはマガジン4個が付属している。
 9mmルガーおよび.40S&W仕様のジェリコによる我々のこれまでの経験が示すところによれば、これは極度に丈夫で、ハンディで、正確に加工され、そして命中精度も高い銃である。装弾数さえ公用ピストルとしては卓越しており、IPSC銃としても依然十分である。
 9mmルガー仕様の全てのシリーズ941FモデルはProduction Division(DAピストル、口径9mmまたはそれ以上、最大銃身長5インチ)に適格である(頑住吉注:「Production Division」というのが意味不明です。文脈上ドイツにおける公用ピストルの基準、「技術的指針」のスイス版のようなものかとも思うんですが)。だが、デコッキングレバーが欠けているのでIPSCトレーニングのスタートにあたって全く問題ないわけではない。すなわち、IPSCのルールは初弾をDAで発射することを定めている。これは銃の装填後のハンマーダウンを要求する。だが、大きく操作しやすいセーフティレバーにより、特に.40S&W仕様のジェリコをスタンダード競技(頑住吉注:よく分かりませんがIPSC以外の、初弾をSAで発射する競技でしょう)に使うことを想像できる。しかしこの場合マガジンキャパシティ12発はせいぜい平均的であり、DAトリガーは絶対に要求されるものではない。ただ、この点はVerein(頑住吉注:協会、団体)内での射撃用には特別に妨げにはならない(頑住吉注:スイスの射撃競技事情が分からないのでいまいち意味不明です。まあSAで行われる競技にDAは必要ないがあってもかまわんということでしょう)。
 IPSC競技投入との関連では、この価格帯内での究極の信頼性と命中精度が注目される。やや否定的に作用する点は、せいぜいグリップパネルも含めてフレーム全体が平滑すぎるという事情くらいである。だが、ハンダゴテでグリップパネルをけば立てれば、1時間もかけずにこの問題点を修正することができる。
 射撃の際、すぐにパーフェクトなサイトに気付く。ノッチは素早いターゲット把握用に幅が充分であり、フロントサイト後面はほとんど垂直であるため日光が当たってもほとんど反射がない。しかも3つの明るい発光ポイントが存在する。その上フロントサイトもリアサイト内面も究極的に角がシャープである。全てをひっくるめて、視覚的印象としては完全に高価なスペシャルサイトのそれと比較し得るものである(頑住吉注:個人的にはリアサイトの背が高すぎて、しかも後面が切り立ち、ノバックサイト等と比較して実用向けにはひっかかりやすすぎのように見えますが)。
 シングルアクショントリガーは極度に均一でドライである。この新しい銃でさえひっかかりも不規則なトリガー抵抗も感じられない。我々の計測では、SAモードの場合トリガープルは2kg弱となり、DAでは4.8kgだった。

困難な状況下での射撃
 我々がテストを実施したときは氷点下5度であり、冬で寒いというだけでなく、他の面でも良好な射撃結果のためにほとんど適していなかった。雪と、絶え間なく変わる曇りの状況が不明確な光の状態を作り、これはグルーピングの計測に全く不都合だった。弾薬の成績ファクターを突き止める関係で、少なくとも初速測定器具はその役割を果し、正確なデータを提供した。
 グルーピングは上記の理由で慎重に受け取られるべきである。コントロールされた射撃のためになおいくらか努力できるが、それでもIPSCに全く充分なピストルであると言える。ただ、ここで示されたグルーピングが通常より悪いことも事実である。

 潜在的購入者が必要とする銃器購入許可証が興味深い問題としてまだ残っている。口径コンバージョンのせいで合計1と1/2挺、もしくは5つの主要部品になるこの銃は、その結果銃器許可証を1つ、それとも2つ必要とするのだろうか。Lagardere社の回答によれば、これは州、もしくは許可証を発行する役所によって変わってくる。あるケースでは1つの許可証が要求される。これはそこでは許可証に1行しか要求されないということを意味し、他のケースでは2行が要求される(つまり2挺の銃のように)。これは全て、我々が1999年以来持つ統一的な銃器に関する権利という原則に基づいている。つまり購入者は店で不快な驚きに出会わないように、あらかじめ当該の役所に問い合わせるべきである(頑住吉注:銃器に興味を持つスイス人にはこれで充分分かるんでしょうが、許可証云々の部分は私にはよく分かりません。まあでも口径コンバージョンを持つこの銃はスイスでは州によって銃2挺並みの規制を受け購入困難になることもある、という程度が分かればいいでしょう)。

結論:このジェリコ942Fは優秀な公用およびディフェンス銃であるということができ、条件つきながらIPSC銃としてさえ勧められる。コンビネーション提供品の価格は確実に2度とはないものである。

テクニカルデータ
モデル:ジェリコ941F
銃器タイプ:モデファイされたブローニング閉鎖機構、変換システムを持つDA/SAセルフローディングピストル
メーカー:イスラエルのIsrael Military Industries Ltd.(IMI)。
口径:9mmルガー、.40S&W
銃身長:111mm(ポリゴン)
サイト:3点マーキングつき固定コンバットサイト
マガジンキャパシティ:16または12発
セーフティ:オートマチックファイアリングピンセーフティ、マニュアルサムセーフティ
全長:207mm
全高:140mm
全幅:34mm
重量(未装填):1080g
材質:スチール
価格:895スイスフラン

変換システムつきジェリコ941Fから発射した場合の弾薬の成績

弾薬 弾丸重量(g/grs) 弾丸タイプ 初速(m/s) 初活力(J) IPSCファクター グルーピング(mm)
9mmThuner 123/7.9 FMC 347 480 140 148/108
9mmPMC 124/8.0 FMJ 330 438 134 135/98
9mmS&B 124/8.0 FMJ 336 454 137 190/150
.40CCI Blazer 180/11.7 TMJ 310 560 187 109/71
.40Winchester 155/10.0 TC 349 612 177 205/145

グルーピングの数値のうち前は5発づつ3回の平均。後は最も外れた1発を除外した4発の平均。


http://www.magnumresearch.com/Browse.asp?Category=Baby+Eagle:Pistols 

 少なくともアメリカのマグナムリサーチ社がベビーイーグルという名称で販売している銃の場合、9mmパラと.40S&Wのコンバージョンセット販売はされていないようです。スイスではこのセットが驚くほどの低価格で販売されているということですが、マグナムリサーチの公式サイトで表示されている価格も499ドルと、オールスチールにしては非常に安く設定されています。人件費等の条件で安いのかとも思いますが、すでに2度紹介しているSP-21と同価格なのでそうではないでしょう。以前触れたようにSP-21はフレームを生産性のよいプラスチックで作り、しかもスライドは単なるパイプ状のスチールから削りだし、滑り止め部はプラスチックの成型品をかぶせるという、このクラスでは最もコストダウンに配慮している製品です。最もコストのかかるオールスチールのジェリコ(ベビーイーグル)と同価格というのは不自然としか思えません。アメリカでこれほどの低価格に設定しているのも、スイスで驚くような低価格で販売されているのも、要するに売れないから安くせざるを得ないのではと思うんですが。ジェリコはCz75亜流ですが本家シリーズも最近は低調のようで、要するに「Visier」で「最も多くコピーされたもののひとつ〜現代の古典」とも言われたCz75の時代がもはや終わっているということではないかと思います。




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