中国の原子力空母建造の条件はフランスよりはるかに勝る

 そんなわきゃないだろう、フランスは世界有数の原子力利用大国なのに、と思ったんですが、論旨はタイトルとかなり違ってました。まあフランスより優れている条件も示されてはいるんですが。

http://military.china.com/important/11132797/20130821/18007071.html


中国の原子力空母建造の条件はフランスよりはるかに勝る

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ネット仲間がイラスト化した未来の中国国産空母の想像図」)

中国が空母開発を決定して以来、多くのメディアが中国は原子力空母を開発すると予測している。甚だしきに至っては「ワリヤーグ」号改装の時、もう原子力動力に改装されようとしているとの「流言飛語」があった。原子力動力には間違いなく独特の優勢がある。だが中国は是非とも原子力空母を開発しなければダメなのだろうか?


世界の原子力空母の動き

アメリカはすでに3つのクラスを建造 フォード級が新たな中核となる

アメリカは世界で原子力空母を建造すること最多の国である。現在までにアメリカはすでに3つのクラスの原子力空母を建造済みであり、これには退役したエンタープライズ級、就役中のニミッツ級、そして間もなく就役するフォード級が含まれる。

「エンタープライズ」号原子力空母は「ビッグE」とあだ名され、世界初の原子力空母である。「エンタープライズ」号は1960年に進水し、1961年に就役し、8基のA2W加圧水型反応炉を採用し、最多で90機の各タイプの実戦機と5,800名の船員が搭載できる。「エンタープライズ」号は就役後ほどなくキューバ危機の中でキューバ海域封鎖任務に参加し、しかもかつて燃料を補給しない状況下で世界一周航行を行った。51年の長きにわたる就役の中で、「エンタープライズ」号は相次いで7回派遣されてベトナム戦争に参加し、何度も冷戦時代の多くの地縁政治事件に参与した。「エンタープライズ」号は2012年12月に退役し、全艦解体された。

ニミッツ級原子力空母はアメリカ海軍の使用する第2世代多用途空母で、現在世界最大の軍艦であり、全部で10隻の同型艦がある。ニミッツ級第1号艦である「ニミッツ」号は1968年に建造され、1975年に就役し、一方最後の1隻であるジョージ H.W.ブッシュ号空母は2003年に建造され、2009年に就役し、建造期間全体は35年を超えた。「エンタープライズ」退役後、ニミッツ級はアメリカ海軍現役唯一のクラスの空母となり、また現役世界トン数最大、総合作戦能力最強の軍艦である。ニミッツ級空母は最多で90機の各タイプの実戦機と5,600名の船員を搭載できる。登場以来、アメリカ海軍の遠洋戦闘群の核心戦力として、しばしば「急先鋒」として世界の各海域に派遣されている。

ジェラルド フォード級空母はアメリカ海軍最新鋭の第3世代原子力空母である。フォード級は最も早くて2015年に就役を開始すると見られ、2058年までに10隻の同クラス艦が建造され、アメリカ海軍艦隊の新たな中核となる計画である。フォード級空母は2基のA1B加圧水型反応炉を採用し、少なくとも75機の各タイプの実戦機と4,500名の船員を搭載できる(頑住吉注:艦員が大幅に減っているのは自動化のおかげですかね)。フォード級空母はニミッツ級に比べリフトが4基から3基に減少し、艦橋設計はステルス能力を持ち、かつよりコンパクトで、より大きな飛行甲板面積がある。新型のA1B加圧水型核反応炉の発電量はニミッツ級の3倍である。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは「アメリカの『リンカーン』号空母とフランスの『ドゴール』号空母が海上を航行。双方の搭載機数の差が見て取れる。」です。画像が小さすぎてよく分かりませんが。)

フランス、原子力動力の落とし穴にはまる 「出航時は鳴り物入り、帰港時はこっそり」

アメリカの現役10隻のニミッツ級空母総排水量はほとんど100万トンに達し、すでに強大な海軍の代名詞になっている。アメリカを除くと、フランスが第2番目に勇気をもって原子力空母に手を出した者であるが、惜しいことにフランスの原子力空母のパフォーマンスは何とか満足できるといったものである。

「ドゴール」号の建造計画はフランス政府の改選によって再三遅延し、1987年になってやっと「ドゴール」号の1枚目の鋼板の切断が開始された。その後斜め向きの飛行甲板の長さが不足でアメリカ製のE-2Cホークアイ式空中早期警戒機が安全に発着できないため、2000年にまた甲板延長改造工程が行われ、最終的にプロジェクト全体で800億フランが費やされ、原計画の投資額に比べ6倍近く高くなり、予算超過の状況はまさに人をして瞠目させ、フランス財政の巨大なブラックホールとなった。

財政上のブラックホールであるというのは1つの方面に過ぎず、「ドゴール」号の最も疑問が投げかけられるのは、4万トンの原子力空母は中途半端で、性能に関し嫌と言うほど論争があることだ。フランス造船業はとっくに下り坂のため、当初フランスではより大きな寸法とトン数の原子力空母を建造する大型ドックが捜し当てられず、無理に小さく作るしかなく、このため4万トンの原子力空母の登載機数は限られ、アメリカの原子力空母との性能の隔たりは比較的大きく、ワリヤーグのような建造コストがより安い60,000トンの空母に比べいかなる優勢もない。フランスは同国のル・トリオンファン級弾道ミサイル原潜と同じK-15核反応炉2基を流用し、このようにすれば経費が節約できると考えたが、「ドゴール」号の性能上の重大な欠陥がもたらされた。動力不足である。全体出力が76,200軸馬力でしかなく、航海試験中「ドゴール」号が出した最大航行速度はたった25ノットで、第二次大戦以後に新造された伝統的発着空母の最低速記録を作った(頑住吉注:飛行甲板の長さ不足とか出力不足とか事前に分かりそうなもんですがね)。

就役以来「ドゴール」号は相次いで米軍のタリバン政権打撃行動やNATOによる対リビア軍事打撃行動に参加した。だが、対リビア軍事行動執行から4ヶ月後、「ドゴール」号は突然戦費支出が高すぎることを理由に前倒しで戦闘から撤退し、外界はその経費の制約を理由に任務を前倒しで終わらせるとの説明に等しく懐疑を示し、より多くは「ドゴール」号が「頑固な病」を再発させ、再度故障が発生して戦闘からの退出を迫られたと考える方向に向かった。まさにフランスメディアが評価するように、「ドゴール」号の毎回の出航はいつも鳴り物入りだが帰航時はいつも黙りこくって港に帰ってくる、のである。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションは「専門家の説明によれば、生産施設に関して言えば、中国の江南長興基地(画像)などはすぐ空母建造に投入できる。」です。)

中国の原子力空母に関する基礎的条件はフランスより強い

国力から言って、現在の中国はフランスをはるかに超えている。造船施設から見ても、中国はフランスとは全く比べものにならない。2007年、新三大造船基地、すなわち上海長興造船基地、青島海西湾造船修繕基地、広州竜穴造船修繕基地の、30万トン級以上のドックの数は8つあり、全国では2015年前後になると30万トン級ドライドックは40近くになる可能性がある。

ドックの数から見て、基本的にすぐ空母建造に投入できる。これには大連造船工場香炉礁の新たなドック、および江南長興基地2号線4号ドックが含まれる。4号ドックは長さ365m、幅82m、深さ14.1mで、800トン級の門型クレーン1台が配されている。このドックの寸法は国外の空母を建造するドックあるいは船台に比べ全く遜色ない。

アメリカのニューポートニューズ造船工場の空母用ドックの寸法は長さ488m、幅76.2m、フランスが「ドゴール」号を建造したブレスト造船工場のドックの長さはたった270mである。

高性能反応炉技術が欠乏

原子力空母は世界で建造技術が最も複雑な艦艇で、これは出力が大きく、運転時間が長く、信頼性の高い核反応炉の製造に集中的に体現される。何万トンもの原子力空母を駆動するには、単に原潜に使用される反応炉に頼るのは非現実的であり、専用の大出力反応炉の研究開発が必須である。アメリカのニミッツ級はアメリカのウェスティングハウス社が製造するA4W加圧水型反応炉2基を採用している(後の何隻かはゼネラルエレクトリックのA1G加圧水型反応炉を採用)。1台あたりの軸出力は130,000馬力で、総出力は260,000馬力である。この方面で中国は国外とまだ一定の隔たりがある。

核反応の原理から見て、艦載原子力動力の出力向上の余地は非常に大きいようだが、実際には決してそうではない。まず艦艇が原子力動力を装備すれば、出力は核燃料の使用量の制限を受ける。ある程度上、原子力動力はちょうどウラン原子を燃焼させる動力のようなものであり、石油、石炭の燃焼に似ている。出力が大きくなるほどウランの使用量も大きくなっていく。アメリカの原子力空母、原潜は20年〜30年補給なしの核燃料が使用でき、甚だしきに至っては艦艇の退役までずっと使用する。だが非常に多くの人が理解していないのは、アメリカの艦艇が使用する核燃料である棒状ウラン-235の富集度(頑住吉注:検索したんですけどよく分かりません。純度でいいんですかね)は93%〜97%にも達する、ということだ。中国は高富集度燃料棒生産技術の上で国外とまだ一定の隔たりがある。

原子力動力の出力を大きくする必要があるのと同時に、システムの安全性も良くする必要がある。原子力動力は高温高圧高輻射の存在であり、正常な運転時、反応炉の圧力容器と回路管道の作動する温度は摂氏300度、150気圧に達し得、同時に反応炉は強大な輻射源でもあり、強力な輻射は材料の強度に非常に大きな損傷を生じさせる。このためもし一方的に出力を追求し設計上の安全性を軽視したら、艦艇自体の安全が保証できなくなる。もし原子力空母に核事故が発生したら、世界的なことになり、深刻な結果を引き起こし、環境に対する重大な破壊だというだけでなく、空母上の何千名の船員が深刻な生命の脅威にさらされることになる。

中国の原子力動力艦艇の建造数はまだ少な目で、しかも原子力動力関連先進材料の生産の上でずっと世界先進レベルに立ち後れており、これも中国の原子力空母研究開発能力を制限している。このため中国はあらゆる技術的準備を整えてやっと事を成すことが必須であり、盲目的に飛躍的発展をすることはできない。

(頑住吉注:これより4ページ目。画像のキャプションは「中国は遼寧艦の修復を通じてすでに空母建造の多くの経験を積み、掌握している。」です。)

劣勢はあるのか? 米軍原子力空母は1/3の時間ずっと修理中

原子力動力の航続距離の優勢に対する原子力艦艇の劣勢はすぐにはっきり現れる。まず動力システムが極めて複雑である。原子力動力は巨大空母にしか適しておらず、水上艦艇のトン数が小さくなるほど原子力動力の採用はすべきでなくなる。次に原子力艦艇は性能:価格比で優勢を占めない。元々艦艇が原子力動力を採用するのは航続力の向上、燃料節約のためであるが、実際の操作から見るとこの点は達成されていない。一方において原子力空母は一般に同じトン数の通常動力空母に比べ建造コストが18%以上高くなり、燃料節約の費用分を打ち消す。他方において原子力艦艇の燃料交換に費やされる費用は驚くべきもので、同時に稼働率も低下する。米軍原子力空母の維持メンテナンスの頻度は非常に高く、ほとんど就役期間の1/3の時間が維持修理中であり、外界の見積もりを普遍的に超えている。

また原子力艦艇の最大の欠点は核の安全問題が深刻なことである。この方面において、原潜にはすでに極めて深刻な教訓がある。すでに報道されている55回の原潜事故の中で、25回は反応炉システムと直接関係があった。ロシアの「キーロフ」号原子力巡洋艦は1990年に反応炉の事故を発生させ、就役してたった10年の艦艇がもう廃船となった。2004年に同じ級の「ピョートル大帝」号は甚だしきに至っては反応炉がいつでも爆発する状態だとの噂が明らかにされている。核反応炉および使用済み核燃料、廃水の処理は面倒なため、非常に多くの国が原子力動力艦艇の来訪を歓迎しないだけでなく、最終的な退役にも非常に金がかかる。アメリカが「エンタープライズ」号原子力空母を解体する費用は7.45億アメリカドルにも達し、さらにある人は20億アメリカドルを超えると考えている。ロシアの原子力巡洋艦はそもそもあえて解体せず、水中に漬けておき、あるいは予備部品の「倉庫」とする他ない。アメリカ海軍艦隊の規模の萎縮と共に、どんどん多くの原子力艦艇がすでに退役し、あるいは間もなく退役する。アメリカがこれを海外に持って行って処理することができない以上、また無駄な金を出してこうした面倒な品を処理することになる。アメリカ海軍は現在こうした退役艦艇を停泊させておくだけで、より良い解決方法を待っているが、問題はどんどん大きくなりつつあり、あるいは急速に膨張する時限爆弾になるかもしれない。

事件は起きたのか? ミサイルが爆発し15機の艦載機が廃棄される

公開されている材料から見て、原潜の反応炉は比較的容易に事故を起こす。一方原子力巡洋艦はややましで、アメリカとフランスの原子力空母の反応炉は全く事故を起こしたことがない。これは一方においてはアメリカ・フランス両国の反応炉技術が比較的先進的だからで、同時に原子力空母はスペースが大きく、より高い安全係数が賦与できるからでもある。だが原子力空母の飛行に関わる安全上の事故および火災はやはり避けられない。

1969年1月14日、「エンタープライズ」号空母艦載機の搭載するミサイルが爆発し、27人の死亡、120人の負傷がもたらされた。右舷に直径4.5mの穴が開き、しかも15機の実戦機が廃棄された。

2003年9月、「ワシントン」号空母がバージニア州沿海で定例の訓練を行っている時、1機のF/A-18戦闘機が降着時に海中に墜落する安全上の事故が発生したことがある。

2008年、アメリカの「ワシントン」号空母にいくつかのタバコの吸い殻を原因とする火災が発生し、何層かの甲板の80余りの船室が深刻な損傷を受け、直接的経済損失は7,000万アメリカドルだった。

2013年6月、アメリカの「ニミッツ」号空母(CVN 68)がインド洋の第7艦隊作業区を航行している時、空母の電気設備に火災が発生した。空母艦載機の爆発と艦艇の火災は核反応炉の事故ではないが、コントロールが不適当ならすぐ反応炉に波及して深刻な核事故がもたらされていた。

(頑住吉注:これより5ページ目。画像のキャプションは「直接原潜の原子力動力システムを空母上に移植するのは決して楽なことではない。フランスが建造した『ドゴール』号原子力空母はまさに反面教師である。」です。)

非原子力動力では不可なのか? 通常空母は完全に需要を満足させられる

原子力空母を産んだ歴史的背景は冷戦のピークの期間である。米ソ両国が全世界の覇権を争っていたため、艦艇などの装備に対し非常に過酷な要求が提出された。だが中国の現在の海軍戦略は近海防御であり、アメリカのようなグローバル化した海軍の必要性はない。中国海軍は大型補給艦の支援下で活動し、通常空母は完全に需要を満足させられる。

アメリカの「キティホーク」号の1965年における建造価格は2.75億アメリカドルで、現在の21億アメリカドルに相当する。一方現在のアメリカ最新のニミッツ級空母「ブッシュ」号の建造価格は62億アメリカドル、建造中のフォード級空母は110億アメリカドルを要する。つまり、現在1隻の原子力空母を建造することは3隻から5隻の通常空母を建造することに相当する。大型通常動力空母は性能上基本的に原子力空母と優劣はない。アメリカの「キティホーク」号を例にすると、各タイプの飛行機90機が搭載でき、搭載機の数の上で完全にニミッツ級原子力空母に対抗できる。もし中国に3隻のキティホーク級空母があれば、近海作戦能力は絶対にアメリカの2隻の原子力空母戦闘群を超えるだろう。

現在見たところでは、技術、経済能力でも海軍戦略および周辺環境でも、中国の原子力空母開発に不利である。だが原子力空母を開発しないことは、中国が大型攻撃型空母を開発しないことを絶対に意味しない。1950〜60年代、アメリカは早くもキティホークおよびフォレスタル級大型蒸気動力空母を開発した。ならば現在中国が類似の大型蒸気動力空母を開発する技術的実行可能性は原子力空母に比べずっと高いし、増してや性能:価格比は原子力空母をはるかに超える。しかも蒸気動力技術は未来の原子力空母上にも応用し得る。何故ならどんな種類の原子力動力を採用しても、蒸気タービンに頼ってエネルギーの伝導を実現する必要があるからである。時代の発展と共に、中国はより信頼性の高い空母用核反応炉技術を累積できるだけでなく、完全ガスタービン動力、完全電動推進などの新技術によって中国空母動力の最適化の選択を実現することもできるようになる。(鄭文浩)

(頑住吉注:6ページ目)中国は現在世界で最も先進的なアメリカのウェスティングハウス社のAP1000原子力発電技術を全面的に導入している。だがAP1000はまさしく米軍の原潜技術にルーツを持つ。これらは技術レベルで中国が最終的に自らの船舶用原子力動力システムを開発する助けになる。

(頑住吉注:7ページ目)画像はAP1000第3世代原子力発電器のタービンが秦皇島から運び出されているところ。先進的な原子力発電設備の製造、こうした原子力工業領域の全体的進歩は、中国が原子力空母を研究開発するのに有利となる。

(頑住吉注:8ページ目)1969年、アメリカ海軍の「エンタープライズ」号空母大爆発の現場写真。


 基本的に「現状では無理をせず着実にやっていこう」という論なんですが、アメリカの原発技術の輸出が結果的に原子力空母実現の助けになるというのは非常に気になる指摘です。もちろん現在世界最大である中国の二酸化炭素排出量を減らすためという大義名分はあり、やめろと言うわけにもいかないんでしょうが。













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