チェコ製ZK383サブマシンガン

 今回は非常にユニークな、発射速度を調節できるチェコスロバキア製サブマシンガン、ZK383に関するページの紹介です。発射速度の調節というと普通スコーピオンなどのようないわゆる「レートリディユーサー」を思い浮かべると思いますが、この銃のシステムは全く違います。

捷克ZK383 9mm双射速沖鋒槍


第1世代サブマシンガンの中の優秀作 チェコ製ZK383 9mmダブル発射速度サブマシンガン

1933年、旧チェコスロバキアのJosefおよびFrantisek Kouckyは共同でZK383 9mmサブマシンガンを設計し、これに関するパテントも取得した。この銃の最大の特徴は、素早く交換できるバレルと、一般的なものとは異なるボルトの装備である。ボルトには着脱できる、重量170gの調節ブロックがあった。この調節ブロックをボルトに装着している時、ZK383の発射速度は毎分500発であり、調節ブロックを装着していない時、その発射速度はそれだけで毎分700発に上昇した。

第1世代サブマシンガンの中の常緑樹

第1世代サブマシンガン(第一次大戦終結から1930年代までに生産されたサブマシンガン)は一般に全て時間やコストのかかる機械加工で製造されていた。ZK383サブマシンガンも例外ではなく、これは一方では生産数が少ないため価格が高騰すること、他方では工作のグレードが高いため長い時間が経っても色あせないという結果をもたらした。

1930年代後期から1945年まで、ZK383サブマシンガンは第二次大戦におけるヨーロッパの戦場で広く使用された。戦後、この銃は旧チェコスロバキア国営のブルーノ兵器工場の製品目録に再び出現した。このため、ZK383サブマシンガンの生産、使用の期間は、圧倒的多数の第1世代サブマシンガンよりも長かった。ZK383サブマシンガンはかつて南米のベネズエラ、ボリビア、ブラジルに輸出された。またこの銃はかつて1930年代中期、ドイツのSSに採用され、「MP383」と改名された。この他、ベルギー軍もかつてこのサブマシンガンを使用し、1960年代中期になってもベルギー国防軍がなお使用していたし、ベルギー警察はさらにそれよりやや遅い時期まで使用していた。世界中で、イタリアのベレッタM38系列、スペインのアストラ900系列(頑住吉注:モーゼルミリタリーの小規模アレンジ品です。確かにフルオートのバリエーションもありましたが基本的にはピストルであり、第1世代サブマシンガンに含めるのはちょっとどうかと思います)、アメリカのトンプソン系列のみこれに比肩し得る。

3種の異なる時期のZK383

ZK383サブマシンガンには生産、使用中に3種類のはっきり異なる形式のものが出現した。ただしこの3種類の形式は、いずれも以下の共通の部品を持つ。すなわち機械加工のレシーバー、木製ストック、着脱可能な調節ブロックを伴うダブル発射速度のボルト、ストック内部に装備されたリコイルスプリング、そしてセレクターである。

第1形式のバレルには放熱リブがあり、銃にはバレルと垂直なフォアグリップが装備されている。この形式のサブマシンガンの生産量は少ない(頑住吉注:画像も見つかりませんでした)。

第2形式のバレルにはジャケットが設けられ、放熱リブとバーチカルフォアグリップはなくなっている。この形式のサブマシンガンは大多数がバイポッドを装備しており、平時は折りたたんでハンドガード下方に密着させ、使用時は開くことができる。この形式のうちきわめて少数のものはバヨネットも装備している。バイポッドのないものは「警察用バージョン」で、ZK383Pと命名された。警察用バージョンでは軍用バージョンに特有の100〜800mのアジャスタブルリアサイトがなくなり、これの代わりは簡易なL字型起倒式リアサイトである。

第3形式は第二次大戦終結後に出現し始めたものである。前の2形式と比べると、これには非常にはっきりした特徴がある。前の2形式のマガジンはいずれもレシーバー左側に水平に装備されていたが、第3形式のマガジンはレシーバー下方に垂直に装備されており、かつマガジンを前方に折りたたむことができ、携帯がさらに便利である。緊急時には、弾薬を装填したマガジンを直ちに下の定位置まで回し、射撃準備を完了できる。折りたたんだマガジンがバレル下方の位置を占めているため、この形式のサブマシンガンではバイポッドはなくなっている。この銃も同様にL字型起倒式リアサイトを使用する。前の2形式はいずれも素早く交換できるバレルを有していたが、第3形式はこの種のコストを高騰させる設計構造を放棄している。

この3形式のZK383は皆機械加工で生産され、あらゆる金属部品は経験豊富な工員によって念入りに製造されたものである。

1939年、ドイツはチェコスロバキアを占領し、ZK383サブマシンガンを生産する兵器工場を接収、管理した。この兵器工場の名前も「国営ブルーノ兵器工場」(zbrojovka bruno)からwaffen werke Brunn A.G. (頑住吉注:「Brunn」はドイツ式発音なんでしょう)に改められた。ドイツの監督下で生産されたZK383は一般に「H SS PF」の刻印を持っている(頑住吉注:検索したところ「高位のSSおよび警察指導者」の略らしいです)。一部の製品は「VZ9」と刻印されている。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。上から「第2形式のZK383サブマシンガンの左右側面図。折りたたみ式バイポッドに注意」 「第3形式のZK383サブマシンガン。下の図はマガジンを上に折りたたんだ状態」)

(頑住吉注:これより2ページ目)

設計理念を理解し尽くす

ZK383サブマシンガンはストレートブローバック式自動原理、オープンボルトファイア射撃方式を採用している。この種の射撃方式はヒューゴ シュマイザーによって発明され、世界初の真正な意味でのサブマシンガン、MP18 I サブマシンガンに使用された。

ZK383サブマシンガンのリコイルスプリングとリコイルスプリングガイドはストック内部に装備されており、ボルト連結バーがボルト後端にヒンジ結合されている。ボルトが後退するとボルト連結バーを通じてリコイルスプリングガイドおよびリコイルスプリングに作用し、リコイルスプリングが圧縮される。1924年、フランスのSaint-Etienne社(MAS)が生産したMAS M1924のボルトは、「リコイルスプリングをストック内に置く」ことを含めた、多くの内的な、斬新な設計方法を採用し、充分成功した作品と一般に考えられている。1926年、旧チェコスロバキアも「リコイルスプリングをストック内に置く」設計を採用したCZ26機関銃を生産した(頑住吉注:一般にはZB26と呼ぶことが多いです)。これはMAS M1924と良く似ており、この銃の設計理念の影響を明らかに受けている。これらの武器がKoucky兄弟の設計したZK383サブマシンガンにインスピレーションを与えたことは疑いの余地がない。後にユージン ストーナーも彼のAR15/M16系列銃器に、この種の「リコイルスプリングをストック内に置く」設計方式を採用した。

ZK383サブマシンガンのマガジン容量は30発で、ダブルカアラムダブルフィードマガジンを採用している。この種のマガジンはルイス シュマイザー(ヒューゴ シュマイザーの父)設計によるM1897ベルグマン拳銃の際に発明されたもので、このマガジンはマガジンローダーを使用しない状況下で簡単に装弾できる。しかもこの種の設計はチャンバーに装填される時の、弾薬とマガジン内壁との摩擦を減少させるし、汚れがマガジン内に進入した時、ダブルカアラムダブルフィードマガジンは一般的に作動不良を起こさない。

ZK383サブマシンガンの操作は快適で、人間工学的に優れている。この銃の全長は876mmしかなく、全体重量も3.96kgしかない。この銃のストックは直銃床に近く、肩当ての位置はバレル軸線に接近している。フルオート時、銃の後座の回転モメントが比較的小さく、マズルジャンプが比較的容易にコントロールできる。

ZK383サブマシンガンのコッキングハンドルはレシーバー左側に装備されている。セレクターもレシーバー左側、トリガー上方に位置し、操作に便利である。右手が銃をしっかり握っている時、左手は火力モードを便利に選択できる。「30」はフルオートモードを表し、「1」はセミオートモードを表す。

前述のように、この銃の最も顕著な特徴は、ボルトにある調節ブロックに他ならない。調節ブロック装着後、経験豊富な射手はフルオートモード状態で、バースト射撃が行える。毎分500発の発射速度では、もしフルオート状態であっても、射手はトリガーを引くことで単発射撃ができる。この種の設計は非常に実用的である。弾薬節約の必要がある、あるいは1発の弾丸の発射だけで充分な時、このモード下で単発射撃が行えるのである。

この銃はクロスボルト式マニュアルセーフティを採用している。右に押せばセーフティ状態となるが、トリガーを固定するだけでボルトの移動を制限することはできず、一定の安全上の潜在的危険が存在する。マニュアルセーフティ状態で、もし落としたり意図せぬ振動が加わると、ボルトが慣性により後退し、もしボルトが後退しきらずに前進した時、弾薬を押してチャンバーに入れ、撃発する可能性があり、したがって暴発事故となる。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。上から「ZK383のセレクターを「30」まで回すとフルオートモードになり、「1」まで回すとセミオートモードになる。トリガー上方のプッシュボタンはマニュアルセーフティ。内側に押し込むとトリガーをロックするだけで、ボルトを制限することはできない」 「バレルを取り外す前に、まずバレル連結ピンを引いて解除する必要がある」 「セレクターを外す前に、まずセレクターレバーを垂直線で示す「1」と「30」の中間位置に回す必要がある」)

(頑住吉注:これより3ページ目)

素早い分解

第2形式のZK383は、素早く交換できるジャケットの付属したバレルが放熱リブのあるバレルに取って代わっており、バレルを素早く交換あるいは取り外してクリーニングが行える。まずマガジンを取り外し、チャンバーを点検し、弾薬がないことを確認する。その後、バレルのフロントサイト後方にあるバレル連結ピンを後方に引き、フロントサイトとバレルを時計方向に90度回してバレルを前に引き出せば、レシーバーから取り外せる(頑住吉注:前のページの画像を参照してください。バレルと平行の連結ピンの先端がフロントサイト後方の穴に入って回転止めの役割を果たしており、ピンを後方に引くとロックが解除され、回せるようになる、ということのようです。明記されてませんがピンには前進するテンションがかけてあるんでしょう)。

以下の分解手順は、3つの形式のサブマシンガン構造を通じて同じである。

セレクターを「30」と「1」の間の位置に回し、その後反対側からセレクターを押し、ごくわずかに推し進め、セレクターの軸をつまんで止まるまで外側に引く。片手でストックをつかみ、他の手でレシーバーをつかみ、レシーバーを約6mm前に引くと、この銃は中折れ式散弾銃のように開き、ボルト連結バーの後端が見える。ボルト連結バーをつかみ、ボルトをレシーバーから後方に引き出す。

リコイルスプリングとリコイルスプリングガイドも独立した部品としてストック後部から取り外せる。まず、バットプレート連結ピンのプッシュボタン(ストック後部の上端にある)を押し下げ、バットプレートを上に回転させる。この時、短い連結バーが露出する。反時計方向に金属バーを回せば、リコイルスプリングとリコイルスプリングガイドが取り外せる。

組み立ては反対の手順で行えばOKである。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「バレルを取り外したZK383サブマシンガン。ボルト上方にある重量170gのボルト調節ブロックに注意」 部品名称は上から「バレル」、「ボルト調節ブロック」、「ボルト」です)

まとめ

旧チェコスロバキアのZK383サブマシンガンは、2度の世界大戦の期間のヨーロッパ銃器の設計の風格をよく体現している。そのボルト調節ブロックを使って発射速度のコントロールを実現した設計は、サブマシンガンの中ではきわめて珍しい。

ZK383サブマシンガンは、発射速度が速い、精度が高いという特徴を持ち、素早く移動する兵士にとって非常に有効と言える。敵と予期せず遭遇した時、そのカービン銃式のストックは兵士に素早く、敵に先んじて正確に火蓋を切ることを可能にする。もしボルト調節ブロックを取り付ければ、比較的遅い発射速度は弾薬節約の助けにもなる。

ZK383サブマシンガンは長い年月にわたって生産されたが、性能がさらに優秀なサブマシンガンが登場するにつれ、ZK383とその他の第1世代サブマシンガンはやはり一緒に歴史の舞台から退場していったのである。

ZK383サブマシンガン性能諸元

使用弾薬 9mmx19パラべラム弾薬
自動方式 ストレートブローバック
発射準備方式 オープンボルト
全長 876mm
銃身長 318mm
全体重量 3.96kg
発射速度 毎分500発あるいは700発
初速 378m/s

 発射速度調節に関しては「なあんだ」という感じでしょう。アメリカンM180、イングラムM11、大部分のフルオート改造オートピストルなどのように軽いボルト(スライド)を使うと一般に発射速度は速くなり、グリースガンのように重いボルトを使うと一般に発射速度は遅くなります。普通ボルトの重さが大きく変わるとリコイルスプリングのテンションも変える必要が生じますが、この銃ではその必要はなく、軽いボルトを使っても開放が早すぎて後方に高圧ガスが噴出することはないし、重いボルトを使っても後退量不足でジャムすることはないというバランスを取ってあるようです。

 素早いバレル交換、バイポッドの装備は明らかにこの銃を軽機関銃として使おうとしていることのあらわれで、コンセプト的にビラー・ペロサに近いとも言えるでしょう。「第3形式」はほぼノーマルなサブマシンガンになっていますが、機械加工を多用した第1世代には違いなく、第二次大戦後にはもはそれでも時代遅れの存在となっていました。なお、多くの部品が共通な同一系列のサブマシンガンで、マガジンの装着が水平から垂直に変わるというのも珍しいケースと考えられます。

http://www.youtube.com/watch?v=z_a8hRAxLR4

 この銃に関する動画です。分解方法、「調節ブロック」の取り出し方がよく分かります。「調節ブロック」ありなしで撃っているんですが、セミオートのみなので効果が分からないのが残念です。

http://www.youtube.com/watch?v=3GVx8Y7HBtQ&feature=related

 こちらは空砲ということですがフルオートで撃っています。発射速度が速い感じなので「調節ブロック」なしでしょうか。



















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