殲-15開発者インタビュー

 「中国航空工業沈陽飛行機設計研究所総設計師、副所長」という肩書を持つ人物の、殲-15艦載機に関するインタビュー記事です。


http://military.china.com/news/02/11078237/20121126/17548717.html


中航の設計師:殲-15艦載機はほとんど完全新規設計である

(頑住吉注:原ページのここに画像とキャプションがありますが、キャプションの内容は本文の一部を切り取ったもので、いきなりそれだけ出されても分かりにくいので飛ばします)

グローバル安全保障業務(頑住吉注:雑誌名):艦載機は空母戦闘群の核心たる戦闘力であり、艦載機の優劣は空母戦闘群の作戦機能を直接決定します。あなたは艦載機および空母の現代の戦争における作用をどのように見ますか?

孫聡:空母戦闘群は飛行機、艦艇、潜水艦を一体化した、完備された攻防作戦システムです。それは飛行機の高度な機動能力と艦艇の持久活動能力を有機的に総合しています。戦略的威嚇、海洋領土の防衛、海洋権益の維持保護、海上交通の重要ルートの保護などの方面において、比類のない作戦威力を備え、大国の総合的実力が体現されたものです。

飛行機の海戦への出現は、世界各国の海軍の大砲利艦(頑住吉注:多少ニュアンスが違うかもしれませんがここでは「大艦巨砲主義」と思っていいでしょう)の発展思想を変え、制海権の取得にはまず制空権の取得が必要になりました。空母の100年の発展の歴史を回顧すると、まず「機」があり、次に「艦」があり、「機」が魂で、「艦」は入れ物」です。艦載機は空母艦隊が艦隊の防空、直射による威嚇、縦深打撃、戦場のコントロール任務を実施する核心的装備です。もし空母艦隊を1人の武人に例えるなら、艦載戦闘機はまさに武人の手中の鋭利な剣なのです。

グローバル安全保障業務:普通の陸上基地用の飛行機に比べ、艦載機は機の設計により多くの要求を提出します。艦載機と普通の飛行機の主要な差異がどんな方面に表れるのか、簡単に説明していただけますか?

孫聡:艦載機と普通の陸上基地用飛行機の差異は主に発着区域、発着方式、作戦使用、艦上での保障です。一般的な空母の甲板の長さは陸上基地の飛行場の1/10しかありません。狭小な艦上で駐機、機の調達と移送、日常の維持メンテナンス、任務支援などを完成させることは、いずれも艦載機と普通の飛行機の差異を生じさせます。艦載機の発着速度はより低く、より良好な低速での揚力・抵抗特性と操縦安定の品質、素早く上昇できること、より正確に下降ルートをコントロールすることを要求します。艦上での発着を実現するため、機の前部降着装置にはカタパルトシステムに対応する設計が総合され、機体後部には制動フックが配置され、制動による着艦を実現します。カタパルト発進/制動による着艦が生む過負荷と衝撃を受け入れるため、高い負荷を受け入れる機体構造と降着装置を設計する必要があります。機載設備もこうした要求を満足させる必要があり、このことは艦載機の空虚重量が対応する陸上基地用飛行機に比べ、一般に10%前後重量が増加する結果をもたらします。

この他、艦載機のエンジンは一定の高温の蒸気の吸入に耐えられる必要があり、このために異常な振動を起こしたりエンジン停止してはなりません。加速性と推力特性が良好である必要があり、そのフルスロットル時のレスポンスは機が緊急に着艦を中止して再び上昇する要求を満足させる必要があり、スロットルを絞った時は下降ルートコントロールの要求を満足させる必要があります。過酷な艦上の電磁環境と海上環境は陸上基地の飛行機にはないもので、これは構造とシステム設計上適当な措置を取ることを要求します。例えば、マグネシウムやベリリウムを構造材料として使用することはできず、システムの維持メンテナンス検査口のカバーはできる限り機体の前部、下部に設置し、もって艦上での使用、維持メンテナンスなどに便利とします。

グローバル安全保障業務:多くの国の艦載機は空軍戦闘機の派生型であり、例えばフランスの「ラファール」、ロシアのミグ-29、さらにアメリカが研究開発中のF-35Cもあります。既存の機種から艦載機を発展させることにはどんなメリット、デメリットがあるのですか? ある機はどんな指標を具備して、やっと艦載機発展のベースに適するのですか?

孫聡:あなたの挙げた3種の艦載機にはそれぞれ差異があります。アメリカのF-35C、フランスの「ラファール」は設計の最初からもう海軍の使用の必要性を考慮していました。1つの機種に2つのタイプの研究開発にすれば、艦載機と陸上基地タイプの機の共通性は60〜80%に達し得ます。どんな艦載機型も全て約10%の重量という代価を支払う必要があるわけですが。

国外の経験によれば、第2世代機の艦載機への改造は基本的に全て失敗でした。技術の発展につれ第3世代以降艦載機に改造されたのです。その改良作業はほとんど全く新しい機種の設計でもあり、個別のシステム方面、あるいはレイアウト上、いくつかの成熟した技術が参考にできたに過ぎません(頑住吉注:太字部分が冒頭の画像のキャプションです。ね、いきなりこれ出されても困るでしょ)。

ある機種を艦載機発展のベースにしたければ、少なくともその空力レイアウトの低速での揚力・抵抗特性と操縦安定品質が発着の要求を満足させる必要があります。例えばカタパルト発進で甲板を離れる時の縦向きの剰余加速度は0.065gより大きいべきです(頑住吉注:加速度の単位なんでグラムではなく「ガル」ではないかと思います)。エンジンのスロットル開閉特性は機が着艦を中止して飛行に戻ること、下降ルートを正確にコントロールする要求を満足させるものであるべきです。機の前方と側方の視界は下降、着艦と艦上での滑走の使用を満足させるべきです。空虚重量はできるだけ軽く、ベースの機の航続能力が高いべきである、などです。

グローバル安全保障業務:艦載機の発進距離は短く、降着の難度は高く、機の機械および航空電子システムに対してはいずれも非常に高い要求が提出されます。あなたは艦載機の研究開発の過程で、設計人員はどんな直接の困難に直面する必要があるとお考えですか?

孫聡:艦載機は陸上基地の戦闘機と同じ作戦半径、有効積載重量、機動性などの任務上の要求を満たす必要がある他、その操縦方法も陸上基地の機とはやや差異があります。こうした特殊な機の発着特性、機の軌跡の正確なコントロール、使用プロセスと操作方法は、いずれも機の設計に直接影響します。

グローバル安全保障業務:国外の経験から見て、例えば翼面積、搭載重量、発進距離などの指標の間の矛盾に、いかにしてバランスを取っているのでしょうか?

孫聡:艦載戦闘機の作戦方式の多様性ゆえに、搭載武器の種類と数に関する要求はどんどん高くなり、しかも機の使用コストを考慮すると、要求される機が持ち帰る武器の重量もどんどん重くなり、機の着艦重量の増加をもたらします。この他、艦上で発着する特殊環境の、機の機体強度に対する高い要求も、機体構造重量の増加をもたらします。

(頑住吉注:これより2ページ目)

機の武器搭載能力を高めるため、機の総重量をコントロールするのと同時に、一般に構造の最適化設計が採用され、機体構造部品の数が減らされ、最適化設計が機載システムにも総合され、機載システムの重量が減らされます。機の重量増加は必ず飛行性能の低下をもたらし、この問題の解決のため、もし単純に主翼面積を拡大し、機の翼面荷重を低下させれば、発着性能と亜音速機動性能は満足させられますが、機の速度性能に非常に大きな犠牲を払う必要があります。一般的な方法は、主翼面積を適度に拡大し、翼面荷重をコントロールし、より大きな推力:重量比のエンジンに換装して空中性能の要求を満足させるというものです。同時により高機能の揚力増加装置を配置して発着性能の要求を満足させます(頑住吉注:「揚力増加装置」ってこんなのです。 http://a0.att.hudong.com/22/12/01000000000000119081263595822.jpg )。

グローバル安全保障業務:完備された作戦能力を備えた空母には艦載戦闘機だけがあっても不充分であり、アメリカの「ニミッツ」級空母がF/A-18「ホーネット」を搭載する他、さらにE-2C「ホークアイ」早期警戒機、EA-6B「 プラウラー」電子戦機、対潜機、ヘリなどを持つように、あなたはこうした艦載機をいかに組み合わせ、使用すれば、やっと空母の戦闘力を最大限に発揮できると考えますか?

孫聡:空母が搭載する艦載機の種類は、空母が担う任務および直面する脅威環境によって確定されます。一般に2大種類、すなわち作戦機と保障機に分けられ、作戦に用いられる機は主に空母の航路援護機で、その作戦パトロール半径は、敵サイドの対艦ミサイルをその攻撃半径の外に追いやるに足るべきであり、次に充分な戦闘パトロール時間を持つ必要があります。対艦および対地攻撃機は水上艦艇および岸に近い地上目標の打撃任務を担う必要があります。

その他の機は基本的に保障機に属します。早期警戒機は空母の千里眼であり、空母戦闘群のために遠距離捜索と偵察任務を行い、空中指揮の役割を担うのに用いられます。ヘリは一般に勤務/救援任務を担い、対潜機も不可欠で、水中の脅威に対する偵察を担当します。

現代の戦争において、電子偵察および電子攻撃は制電磁権を手にする利器であり、戦闘の勝利を得る必需品です。技術の発展につれ、2種の機は共通の機体という趨勢にあり、これはアメリカの航空連隊の機種削減という大きな思想と符合しています。これらの機の総合的で秩序ある共同行動があって初めて、やっと作戦任務のスムーズな完成が保障され得るのです。1つも欠けてはならず、戦闘機は核心、保障機は基礎なのです。

グローバル安全保障業務:世界的に見て、ロッキード・マーティン社のF-35Cの研究開発過程は思い通りにいかず、インドの「光輝」艦載型も遅々として艦に搭載することはできていません。艦載機研究開発過程の困難と挫折をどう見ますか?

孫聡:アメリカの軍用機研究開発を行う会社は多数ありますが、各メーカーにそれぞれ長所があります。例えばノースロップはYF-17艦載化の初期にもう困難に遭遇し、降着装置の問題ゆえに成功が得られていません。そこで艦載機研究開発の経験を持つマグダネル社に元請け業者の領分を渡すしかなく、その艦載機方面の経験を利用して、最終的にF/A-18の成功を獲得しました(頑住吉注:訳が間違ってるんじゃないかと思いましたが、調べてみたら本当にF/A-18のルーツはノースロップにありました。まあ航空マニアからすればルガーのルーツがボーチャードにあるレベルの知識なんでしょうが)。F-35Cの研究開発の困難と挫折は管理の上にもあり、技術の上にもあり、この種の多国連合の模式が航空機の研究開発に適するか否か、アメリカ軍サイドも考え直しているところです。その中で、技術上の困難はまず機の重量超過です。このためロッキード・マーティン社は懸賞をかけて重量軽減措置を提出する従業員を奨励し、最終的に1トンの重量を軽減しました。その次にはさらに制動フックを含む研究開発が滞り、F-35Cは陸上での8回のケーブルに引っ掛ける試験で成功がなく、設計人員は制動フックのダンパーの分析と改良を行っているところです。その跳ね上がりが高すぎるのを避け、もってその先天的なメインタイヤとフック先端の距離が短いという弱点を克服しようとしているのです(頑住吉注:この件は「中国によるF-35戦闘機批判」に詳しく書いてありました。ちなみに最近比較的高率で成功したというニュースありましたよね)。

グローバル安全保障業務:あなたはロッキード・マーティンのF-35Cプロジェクトをどう見ますか? 果たしてこの機は欧米の次世代艦載機の「標準装備」として戦うことになるでしょうか?

孫聡:F-35Cプロジェクトは次世代艦載機の「標準装備」とはならないに違いありません。何故ならインド艦載機の入札の中で、それぞれ「ラファール」艦載機、「タイフーン」艦載機、ミグ-29Kなど多種類のバージョンがプッシュされ、それぞれの国はいずれも自国の国情や必要性に基づいて艦載機を配置し、統一された基準、あるいは「標準装備」というものはないからです。

グローバル安全保障業務:ロシアは世界に数少ない完備された空母作戦体系を研究開発できる国です。ロシアの空母および艦載機発展の道にはどんな経験や教訓がありますか? スホーイ-33やミグ-29艦載型の作戦機能はどうで、世界的にどんなレベルにあるのですか?

孫聡:各国は自国の国情に依拠して空母および艦載機の研究開発において異なる発展模式を採っています。ロシアは自分たちの技術レベルと経済的支持能力に依拠して、空母の発展において最初は易しく後で難しくなる、順を追って次第に進む路線を行きました。まず有無の問題を解決し、さらに発展を図り、その空母の理想図にはよりトン数の大きいカタパルト型空母が含まれました。空母のここ40年の発展の歴史から見て、カタパルト型空母は未来の戦争に適応する主流の模式であり、イギリスの次世代空母はまさにその良い証拠です。この艦はカタパルト発進を採用し、しかもより先進的な電磁カタパルトによる発進です。

スホーイ-33はミグ-29艦載型に比べより高い性能を持っています。その航続距離と航続時間はミグ-29艦載機よりはるかに上で、同時にスホーイ-33に搭載できるミサイルの数、レーダーや光電子照準システムの作用する距離はいずれもミグ-29艦載型より大きく、ロシアサイドはスホーイ-33が艦隊防空任務を果たす時の機能はミグ-29艦載型の1.5倍だと考えています。

空母戦闘群の異なる作戦任務に対しては、異なる作戦機を使用すべきです。対艦/対地打撃任務に関し強調されるのは連続波状攻撃能力であり、艦上に充分な数量の機を配備することが必須です。ミグ-29の艦に搭載する数量の優勢は、対艦/対地攻撃の必要性を満足させることができます。

スホーイ-33の作戦機能はアメリカの現役艦載機よりやや低いに違いなく、隔たりは主に超視距離作戦方面にあります。何故なら航空電子、武器に関してはアメリカで主流のF-18E/Fなどの機と比較的大きな隔たりがあるからです。一方相対的に遅れている航空電子に比べると、ずば抜けた機動性能と比較的長い航続時間は、スホーイ-33機に近距離格闘方面における非常に大きな優勢を持たせます。このため、航空電子および武器システムをグレードアップすればスホーイ-33はいかなる相手も恐れる機になります。


 期待して読んだんですけどほとんど一般論で具体的に殲-15に触れてないですね。それにタイトルには「殲-15艦載機はほとんど完全新規設計である」とあり、これは「技術の発展につれ第3世代以降艦載機に改造されたのです。その改良作業はほとんど全く新しい機種の設計でもあり、個別のシステム方面、あるいはレイアウト上、いくつかの成熟した技術が参考にできたに過ぎません」と対応すると思われますが、読んでいただければお判りの通りこれも一般論であって別に「殲-15艦載機はほとんど完全新規設計である」なんて言ってません。そもそも殲-15はスホーイの陸上戦闘機ではなくウクライナから入手した艦載機の試作機をベースにしているわけで、事情が全然違います。
















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