54式拳銃の歴史


 先日オリジナルのトカレフTTに関するページの内容を紹介しましたが、今回は中国版である54式拳銃に関するページを取り上げます。実はオリジナルのページがすでに削除されてしまったようで示せません。

http://www.zhige.net/html/2009/0703/1591.html

 このページに同じ内容があるんですが、途中までで終わってしまっています。どうしても原文が見たいという人がいたら保存してあるページをお送りします。なお珍しい画像は特にありません。

http://hexun.com/sidalin/default.html

元々あったのはこの人のサイトです。


巨龍の爪 54式軍用警察用拳銃

最近ショッキングなニュースが発表された。中国軍と警察が50年もの長きに渡って使用してきた54式拳銃が、間もなく92式軍用拳銃と92式警察用リボルバーに取って代わられるというのである(頑住吉注:ちなみに原文の日付は2006年9月1日になっています)。

このニュースは実はブログ主がすでに期待して久しかったものである。54式軍用拳銃は世界軍事史上の古典的な作品であるが、結局のところソ連が1930、40年代に研究開発した骨董品である。時代は発展しており、半世紀の時間はいかなる古典も淘汰するに充分である。

歴史

中国の軍用拳銃の歴史も長く、抗日戦時期と国共内戦では十数万挺のモーゼル軍用拳銃(盒子砲)以外に、一部のアメリカやソ連から援助された拳銃もあり、当然少量の鹵獲された日本のゴミ南部拳銃(俗称王八盒子)もあった。抗日戦の時、初期および中期の中国軍の火力は弱すぎたので、モーゼル拳銃でも良好な作用をなし、一定程度上近距離連射武器の不足を補った(頑住吉注:ちなみに中国におけるモーゼル拳銃に関する非常に興味深いページも見つけたので後日紹介する予定です)。

内戦終結後、中国の当時の装備は万国製と言えた。その中で小銃の口径は11種にも達し、弾薬と銃の種類はさらに数十種にも達した。新たに建設された大国として、軍隊の武器の制式化と国産化の実現が、当然真っ先に行うべき事だった。

その後の朝鮮戦争中、勇敢な志願軍兵士は種々雑多な武器を手にし、また深刻な弾薬不足の中で完全武装の米韓連合軍と数年間血戦を行った。一撃を受けたアメリカ軍は狼狽して敗北したものの、火力の差と空軍がほとんど全くなかったため、志願軍は相当大きな死傷者を出した。その中でまさに弾薬の問題では、日本式、ソ連式、アメリカ式、中国式等45カ国の各種弾薬があり、後方勤務方面に深刻な困難を発生させた。朝鮮戦争全体で、志願軍には40%の弾薬の不足があり、戦闘で鹵獲して獲得するしかなく、多くの生命をいたずらに犠牲にした。こうしたことも中国の武器国産化発展をさらに推進した。

1950〜1955年、基盤が弱いために中国は輸入とコピー生産という2種の方式を同時に採用した。5年以内にソ連から輸入、供与合わせて銃器90万挺と、大量の弾薬を入手した。

これと同時に中国大陸サイドでは徐々にソ連の軍用武器のコピー生産が開始された。その中にはまさにソ連の第二次大戦期間の制式拳銃が含まれていた。

1951年、前年の中ソ条約調印により、中国軍需工業はソ連の専門家の扶助の下、ソ連製トカレフ軍用拳銃のコピー生産を開始した。ソ連サイドが提供したのは主に、全ての図面と流れ作業ライン全ての機械設備で、同時に少数の技術上の中心人物も養成した。この銃は基本的にトカレフ拳銃の単純なコピー生産品に他ならず、いかなる中国独自の新基軸もなく、このため中国が独自生産した武器と呼ぶことはできず、中国で組み立てられたと言えるに過ぎない。中国サイドは51式拳銃と名付けた。

ソ連のトカレフ式拳銃は特色ある武器であり、この銃は7.62mmトカレフ拳銃弾を発射し、全長196mm、空虚重量0.85kg、銃身長116mm、初速420m/s、8連マガジンを使用して給弾し、有効射程は50mである。その威力は大きく、貫通力が強く、しかも生産コストは低く、実用的な武器である。

この銃はソ連の銃器設計者トカレフが1930年に設計したもので、ソ連軍が装備した初の自動装填式拳銃である。トカレフ拳銃は残酷なソ独戦に参戦し、部隊のその威力と信頼性に対する全体的評価はやはり素晴らしいものだった。

だが客観的に言えばソ連軍は大量のサブマシンガン(500万挺を超える)を装備し、拳銃が実戦で使用される状況は少なく、主に少数の戦車乗員、飛行兵、将校が極端な状況下で自衛に使用した。このためトカレフの実戦における成績は当然ごく普通なものだった。

トカレフはショートリコイル式作動原理を採用し、ブローニング拳銃に類似した構造である。この銃のバレル下方にはリンクがあり、スライドストップ軸がリンク内に挿入されている。射撃後、バレルとスライドはまず一定の自由行程を共に後座し、その後バレル下のリンクがスライドストップ軸をめぐって後方に回転し、バレルの下降を強制し、バレル上の閉鎖突起をスライドの窪みから離脱させる。この時バレルとスライドは分離し、開鎖が完成する。スライド復帰時、バレル下のリンクは再びスライドストップ軸をめぐって前に回転し、バレルを上昇させ、閉鎖突起はスライドのミゾに入り、閉鎖が実現する。

この銃の構造はコンパクトで、この銃はブローニング拳銃の長所を吸収することを基礎に、モジュール化に似た内部設計を新たに作り出している。ハンマー、シア、ハンマースプリング、シアスプリングなどがそれに含まれ、銃の全体構造をよりコンパクトにしている。トカレフの威力は当時としては世界一流だった。その7.62mm拳銃弾薬は世界の同じ口径の弾薬の中で威力が最大の弾薬であり(頑住吉注:言うまでもなく拳銃弾薬の中では、ということです。なお、普及した拳銃弾薬の中では.357マグナム登場まで最速だったとされてますね)、発射された弾丸の威力が大なことがこの銃が多くの国家にコピーされた主要な原因の一つだった。

51式拳銃は急速に部隊に装備され、朝鮮戦争にも参加した。だが中国サイドのこの銃に対する反応は比較的おとなしいもので、一部の兵士や将校はこの銃の作戦性能はまだモーゼル軍用に及ばないと考えていた。だが自衛武器としては充分でもあり、しかもこの銃には体積が小さい、重量が軽い、威力が大きいという長所もあった。


左は54式、右はトカレフ(頑住吉注:文章ばかりでも何なんで、ちょっと珍しいこの画像だけ転載しました)

1953年7月に朝鮮戦争が終結し、戦争の停止は中国サイドに自分たちの計画を改めて完全に実現させることを可能にした。朝鮮戦争に中国が参戦したしたため、ソ連はすでに中国を自分の盟友と確定し、直ちに中国との全面的軍事協力を開始した。

1953年、ソ連の専門家は中ソ両国の協議に基づき大挙して中国入りし、その中には多くの軍事専門家も含まれていた。

中国とソ連の専門家は朝鮮戦争中に51式拳銃が暴露した欠点を詳細に研究して改良を進め、同時に中国兵士自身の特徴も考慮した。例えばグリップのサイズに改良を加え、中国兵士の比較的小さい手の型に適合させた。

1954年、拳銃は正式に定型に至り、かつ大量生産されて部隊に装備され、54式拳銃と名付けられた。この銃は中国建国以後正式に部隊に装備された初の制式武器である(頑住吉注:51式や、モシン・ナガンのコピーである1953年式歩騎銃は準正式といった扱いなんでしょうか)。

54式拳銃の部隊装備以後、この銃は中印国境戦争や中越国境戦争に参加した。全体的に言って、54式拳銃はやはりこうした劣悪な環境下での作戦上の必要を満足させることができた。その射程は素晴らしく、貫通力は強く、威力は大きかった(54式拳銃の発射する51式7.62mmスチールコア弾頭は最大飛行距離1630m、初速420m/sにも達した。距離25mで3mm厚の鋼板、10cmの木の板、6cmのレンガ壁、35cmの土の層を貫通できた)。距離50m以内において戦闘中の自衛武器の必要に適合することができ、大威力軍用拳銃に属し、敵の兵士に54式で1、2発命中弾を与えれば直ちに絶命するに充分だった。軍事実戦需要を満足させられることは、54式の軍による使用が50年の長きにわたり得た最大の原因であり、当然価格が低廉であることと構造が簡単で製造が容易であることも重要な原因だった。1987年、54式出荷時のシリアルナンバーはすでに35,000,000にも達し、ここに中国での多用ぶりが見て取れる。

54式拳銃の構造は簡単、頑丈で、各種の劣悪な環境に適応でき、1、2回ぶつけても容易には損壊しなかった!

損壊は容易にしないが、実戦中54式にはそれでも相当多数のジャム現象が存在し、これもこの銃の修正が難しい問題であり続けた。

説明を必要とするのは、現代の戦争において拳銃を使用する機会はごく少ないことだ。最も下層の中国の将校は一般に拳銃を使用せず、普遍的にAK47(頑住吉注:昔の中国の分類ではサブマシンガン)を背負っている。実戦中、サブマシンガンは比較的重いものの、下級将校の身体素質は一般に普通の兵士に劣らず、負担に耐えられる。しかもサブマシンガンの作戦能力は拳銃に比べ十倍強いと言っても足りないくらいで、危険な戦場でむしろ下級将校は自分にやや高い安全の保証を望むのである。拳銃となると、下級将校は一般にあまり重要視していない。彼らはどうせ戦争中はまた兵士の消耗があるのだから、その時になったらそのサブマシンガンを手にすればいいのだと考えている。「高山下の花輪」(頑住吉注:中越戦争を題材にした有名な小説で、映画化もされています)の中で、中隊長の梁三喜と指導員は1人は軽機関銃を持ち、1人はサブマシンガンを持っていた。

梁三喜は眉をひそめた。ちょっと停止し、彼は突撃隊員たちの大声を制した。「注目! 全員俺がする通りにしろ!」

そう言うと彼は軽機関銃を抱え、敵の射撃の間隙を突いて塹壕から飛び出し、勢いよく山の下に向け転がって行った。

敵は再び阻止するための射撃を開始した。私はサブマシンガンをしっかりと抱え、隊列に向け叫んだ「おまえたちはしっかり守れ、俺が行く!」

私は大またぎで塹壕から出て、急な坂に身を横たえ、必死で山の下へと転がっていった‥‥ (頑住吉注:この引用、意図がいまいち分かりにくいですが、たぶん指揮官も拳銃を使わなかったということが言いたいんでしょう)

だが一般に大隊長以上の将校はやはり拳銃を使った。ただしこれらの人は発砲できる機会が少なかった。

だが客観的に言うと、54式のコピー元であるソ連のトカレフ拳銃は数十年前とっくにソ連軍から淘汰されている。この銃のレベルはおよそ第二次大戦中の一流レベルのままである(それとも一流でないかである。中印戦争後の解放軍の54式拳銃に対する反応は、信頼性、貫通力がやや良好なことを除き、その他の性能はいずれもブローニング拳銃に及ばないというものだった)。1つの武器を50年使い、数回の軍事科学技術の重大変革を経れば、その淘汰は必然である。

軍用54式の代替となる92式軍用拳銃

中国が現在54式(7.62mm口径)との世代交代を予定している92式軍用拳銃(9mm口径)の各方面の性能はすでに全て旧式な54式をはるかに超えている。

この銃の有効射程は54式と大差なく、いずれも50mであるが、これは自衛に使用される軍用拳銃としてはすでに素晴らしいものである。何故なら拳銃自体の特徴ゆえに50mを超える目標はすぐ照準が難しくなり、増してや遠距離射撃は何の意味もないからである。

威力に関して言えば、92式の威力は非常に大きく、中国軍用拳銃界の威力チャンピオンと言える。この銃は先進的なDAP92式9mm拳銃弾薬を使用する(拳銃に類する近代戦武器では、一般に弾頭重量が大きくなるほど運動エネルギーも大きくなり、殺傷力も大きくなる)(頑住吉注:これはアメリカ的な考え方で、ドイツ人の専門家は反論するでしょう)。この銃は距離50mで厚さ1.3mmの鋼板を貫通した後、さらに厚さ50mmの松板を貫通でき、貫通能力は54式をはるかに超える(頑住吉注:7.62mmx25に、DAP92式9mm拳銃弾薬と同じ構造の弾頭を使用すれば、もっと貫通力が大きくなるのでは)。貫通力が強い以外に、92式が使用する9mm弾は人体進入後、転倒して大きな空洞を生み、敵の肉体に深刻な傷害を作り出す。1発で直ちに敵を死に至らしめなければ重傷を負わせ、戦闘継続を全くできなくする。これは1発で2つ穴ができ、しかも傷口がきれいな54式拳銃と比べずっと強い。

54式拳銃は後座力が強いために射撃精度が並みという結果をもたらしており、厳しい訓練を受けていない射手は25m以上で目標の急所に目中させることが難しい。92式軍用拳銃は相当に良好な精度を備えており、この銃は距離25mでの20発の散布円の半径が6cmを超えず、実戦の需要を満足させるに足り、これは54式では絶対に追いつけないことでもある。

以上の長所以外に、92式軍用拳銃の故障率は0.2%以下であり、つまり600発撃つごとに最多でもたった1回の故障しか許されないということで、故障率が低い(頑住吉注:500発に1発までは許される、ということですわな)。

しかもこの銃はマガジンにダブルカアラムを採用し、装弾数は15発にも達する(54式の装弾数は8発)。さらにレーザーサイト等の先進的外装設備を装着でき、性能は現在の各国主力拳銃に相当するに足る。

1999年12月20日、92式軍用拳銃は解放軍駐マカオ部隊に正式に装備された。

警察用54式に代わる92式リボルバー

2006年から、「警用三大件」が徐々に歴史の舞台から退出していくことになる。1つ目の代替者は9mm警察用リボルバー、すなわち中国初の警察用銃器である。なお、「警用三大件」とは54式、64式77式拳銃を指す。

独占的にこのニュースを発表した「人民公安報」は、これは公安部が初めて自己の組織力量をつぎこんで設計した初の警察用銃で、2006年に公安隊伍での試用と装備が行われると報道した。これまで中国警察が使用していたのは全て軍用銃器である。

警察用拳銃としての54式拳銃に対し、ブログ主はずっと比較的反対だったと言える。

警察拳銃に対し事情を知る者の立場から私は言おう。

警察拳銃と軍用拳銃は異なる。軍用拳銃の特徴は、できるだけ大きい威力、できるだけ長い射程、できるだけ多い装弾数を持ち、さらに低廉な価格と生産の容易さが要求されることである。

これは軍事作戦の需要が要求するのである。戦場におけるあらゆる武器は最短の時間で敵に最も深刻な損傷を与え、できる限り1発で殺すことが要求される。

同時に、戦場では目標が比較的多いので、銃は一定の射撃持続性を持つ必要もある。つまり比較的大きな弾薬容量が必要である。

この他軍用武器の大量装備は銃器の製造コストが低廉であることを必要とする。結局のところ、ややもすれば十数万挺になる軍用銃の全体価格は恐るべきものにもなるのだ。

一方警察用武器は全く異なる。現在では54式拳銃は警察の使用に適さないと考えられる。最近部隊に装備されている92式警察用リボルバーは中国警察がより成熟した1つの印である(頑住吉注:なお最初に紹介したURLのページはここまでで終わってます)。

以下簡単に説明しよう

1.警察用拳銃は比較的強い停滞能力(頑住吉注:ストッピングパワーのことでしょう)を要求する。

つまり、大多数の中国の警察官が直面するのは容疑者であって戦場の敵ではない。

警察が必要とするのは1、2発ですぐ犯罪容疑者の抵抗を不能にする能力であるが、できるだけその場で射殺することを避ける必要もある。何故なら事件に対する尋問ということで言えば、死亡した犯人には価値がないからである。簡単に言えば、生きて口を開く状態に留めなければならないということである!

中国の現在の制度はこうであるが、徐々に各個人の人権にも重きを置き始めている。犯罪容疑者が有罪であろうとなかろうと、本当に有罪だと思われても、こうした人々も基本的人権を享有すべきなのである。すなわち生存権である。

さらに多くの犯人の罪それ自体は死に値しない。例えば飛車小賊(頑住吉注:日本でも多い、バイクを使ってのひったくりなどを指すようです)、窃盗犯や酒に酔ってトラブルを起こす者等である。こうした人は相対的に社会に対する脅威度が低く、監禁の処罰で一般にもう充分である。だが一部の状況下で警察は発砲で制止する他ないこともある。これは大きな矛盾を発生させる。92式リボルバーの停滞能力は強いが殺傷力は比較的小さい。しかも特殊な非致命弾薬(例えばゴム弾)を使用でき、完全にその任に耐え得る。

54式拳銃は威力が大きすぎ、当時の有名な二王事件では2人の凶悪犯が54式拳銃を持って相次いで20人に命中弾を与え、その中の圧倒的多数の被害者はその場で死亡した。彼らは医学的治療の機会さえ全くなく、一方幸いに生存したのはごく稀だった。54式拳銃の威力の大きさを見て取るに足りる。ややもすれば1発ですぐ致命傷になる武器は普通の人民警察官の装備する銃としては適さないのである。

2.非常に高い信頼性

信頼すべき当局の研究データによれば、80%以上の警察官の発砲は20m以内においてであり、双方の射撃数は4発を超えず、しかも大部分は5〜6秒以内に終わっている。

このような近距離、このような高い発射速度は、警察の拳銃に絶対の信頼性を必須とすることをも要求する。こうした過酷な射撃中にもし警察用拳銃に故障が発生したら、完全に命を相手にくれてやったも同然である。こんな場合警察官は逃げることが難しい。

相手が冷兵器(頑住吉注:直訳すれば白兵戦兵器になるでしょうが仰々しすぎます。要するに刃物などの凶器ですね)を持った凶悪犯でも同様に重要である。もし警官が1発も相手に命中させられなかったら、あるいは拳銃がジャムを起こしたら、結果は全く想像に耐えない。

ある世界軍事競技大会で、中国の特別警察の拳銃にジャムが発生し、人質役の死亡をもたらした。警察の厳選された拳銃でも問題が起き得る。一般の下層の警官の拳銃ならどうやって保証するのか?

1995年7月11日、遼寧営口市公安局駅前分局建設派出所の警長蘇鋼は麻薬犯罪者逮捕過程で54式拳銃が突然ジャムし、最初の射撃の機会を失った。その後麻薬犯罪者が発砲、これが命中し、20余日連続の緊急治療を経てやっと危機を脱した。

この点でリボルバーには先天的優位性がある。もし弾薬に問題が発生しても、射手はもう一度トリガーを引くだけでシリンダーが回転して次の1発が発射されるはずである。絶対にジャムの危険はなく、信頼性が極めて高い。

54式拳銃の信頼性が劣ることは長期にわたって存在した現象だった。これには多くの原因があり、そのうちの1つは旧式自動拳銃の給弾の根本的欠陥に他ならない。

3.貫通力小、跳弾確率小

警察が活動する都市環境では、至る所に普通の市民がいる。警察は第1に自身の安全を保証する必要があるが、第2にできるだけ罪のない市民を誤って傷つけないようにすることの保証が必須である。

一方凶悪犯の活動の大部分は都市の人口密集区域においてであり、これは直ちに警察用拳銃の貫通力は必ず低くなくてはならないことを要求する。簡単に言えば1発が凶悪犯に命中した後、弾丸が貫通して飛び出し、周囲のその他の人を誤って傷つけるべきではないということに他ならない。

この他多くの凶悪犯は密閉された狭い室内で活動し、これもまさに警察用拳銃に跳弾現象の発生が許されないことを要求する。

リボルバーには直径9mmの大粒の弾丸で貫通力が小さいという特徴があり、たやすく任務に適合できる。

だが54式拳銃にはこれはできない。54式の威力は軽々と人体、鉄製ゴミ箱、自動車の金属製外殻(例えば現在比較的普及しているサンタナ)(頑住吉注:日本語版Wikipediaには、中国で国民車的存在になっているとの記述がありました)、薄いスチール製のドアや窓枠等を貫通する。もし距離が10〜15m以内だと、54式は1発で接近した前後の2人を射殺することに基本的に何の問題もない。

さらに54式拳銃が採用する51式スチールコア弾は密閉された室内で射撃した時、頻繁に複数回の跳弾現象が起きる。かつて1人に命中した後、弾丸が壁と床で跳ね返り、跳弾により二次的負傷1人(肩を貫通)、死亡1人(頭蓋骨を撃ち砕かれる)というケースが起きたことがある。これらの問題はいずれも警察に54式拳銃使用時に比較的躊躇させ、素早い反応に非常に不利である。

4.高い精度と素早い反応

前述のように、大半の射撃回数は4発を超えないので(実際上は一般に3発を超えない)、これは1発で目標に命中することが要求されるということに他ならない。

警察官の孫敏は言う。銃はカギとなる重要な時まで発砲してはならない。ただしひとたび発砲したら、初弾命中が必須である。リボルバーは反応最速の拳銃とされる。この1点で警察用銃器の特徴により適応可能なのである。

私の中国警察に対する理解によれば、多くの警察官は警察学校時代は除くがそれ以後はただちに銃を抜くことが少なくなり、増してや実弾射撃はごく少なくなる。射撃技術がまずいことは銃の精度がより良いことを要求する。

この点からすると、リボルバーは近距離ではほとんど照準を必要としない。指さすように撃つことができ、これはまさに一般に言うところの指向性である。

一方54式はこの性質を持たず、精度の問題はすでに語った通りである。

ネット上のある人は、銃の指向性は重要ではないと語る(頑住吉注:どんなふうに語るのかという形容があるんですが意味不明です)。実際には大多数の緊張した近距離での撃ち合いの中では、双方とも正確な照準はしていないし、また不可能でもある。皆が相手に向かって大体の方向におおざっぱな狙いをつけて射撃する。リボルバーはこの方面でも一段勝っている。

反応速度となると、54式のグリップは長く、銃を抜くのに有利ではあるが、リボルバーはもっとすごい。アメリカの警察は現場の警官に0.5秒で銃を抜いて射撃を終えることを要求しており、しかもテストの絶対的指標としてである。これ以上くどくど述べる必要はないだろう?

5.高い安全性

警察官が銃を使用するに至る機会は多くなく、多くの警察官は一生に1発も撃たない。

上海の老警官王冬泉は言う。警察官として30年、私は1回銃を発砲したことがあるだけで、それも空に向かってだ。

警察官の孫敏も回想する。彼が巡査だった2年の時間の中で、発砲はおろか銃を携帯してパトロールした回数すら数えるほどで、1度だけ同僚が銃を使うのを見たが、これは駅で1人の銃を携帯した殺人容疑者を逮捕した時のことだった。当時この同僚もまた銃を容疑者の頭に突き付けただけで、直ちに局面をコントロールしたのである。

このことは、「不使用の使用」(頑住吉注:発砲せず容疑者を制圧する場合を指しているんでしょう)では絶対に暴発により誤って傷つける現象を発生させてはならないことを要求する。

54式拳銃は結局のところ1950年代の骨董品であり、その安全性は今日の視点で見れば比較的劣っている。かつてある公安局長が携帯して帰宅した54式拳銃が暴発して息子を誤って傷つけるという事案が発生したことがある。安全性がどうなのかの一端を見ることができる。

リボルバーは何重もの安全装置が装備され、安全係数は非常に高い。

リボルバーに対する疑念

これは主にこれらの方面に集中している

1.装弾数が少なく、改めての装弾が困難

装弾数は間違いなくリボルバーの固有の問題であり、有効に解決することはできない。だが皆さん注意してほしい。前述のように実戦中双方の射撃する弾薬は4発を超えない。片方の最多の発射する弾数は3発とも言える。リボルバーはこの点で完全に満足できる。

この他警察官仲間なら熟知しているかもしれないが、一般的に言ってマガジンのスムーズな給弾を保持するため、そして平時におけるマガジンスプリングの保護という理由で、54式も一般に2、3発の装弾なのであって(頑住吉注:まじですか)、8発フル装填という状況は起き得ない。こうなればいずれも大差ないことになる。

装弾が困難という問題になると、これまでにもう解答されている。実は現代の警察、特に中国のように厳格に銃器が禁止されている国では、警察が実戦中に6発の弾薬を撃ち尽くす状況はほとんど起き得ないかもしれない。もし起きてもこれはまさに火力が比較的強大な武装犯罪分子や集団犯罪分子に遭遇したということであって、こういった相手に対抗するのは、普通の人民警察官にとってデザートイーグル(頑住吉注:原文では「沙漠之鷹」ってそのまんまです)を装備していても無理なことである。

現代において要求されるのは普通の人民警察、巡邏警察、交通警察に社会日常の秩序を維持保護させること、民事の紛糾を調節し少数の突発事件を処理させることである。もし武装犯罪者に遭遇するといった状況があれば、必ず火力が強大で、しかも厳格な訓練を受けた特別警察が処理すべきである。

何人かのいわゆる専門家は、警察は前述の92式軍用拳銃を装備して火力の不足を補わねばならないと言う。試しに問いたい。威力がかくのごとく大きな拳銃を警察はどう使用するのか? 上海の淮海路(頑住吉注:上海の代表的繁華街の1つだそうです)でもし92式軍用拳銃を1発撃てば、3、4人が撃たれて死ぬこともあり得るのだ。まさか中国の社会治安はすでにソマリアやアフガニスタンのレベルまで悪化したのか?

ブログ主はロシアで多くのロシアのミリタリーポリスがショートAKを背負っているのを見たことがある(頑住吉注:この人の「教育経歴」には「モスクワ大学 コンピュータ科学」とあります)。少数の警備係だけが拳銃を持っていた。これはロシアに軍用武器が氾濫しているのが原因に過ぎない。犯罪分子の抗争ではいつもAKやその他の小型サブマシンガンが使用される。警察がもし火力でかなわなかったらどうするというのか?

だが中国は銃の禁止が非常に厳格な国家だということを忘れてはならない(ブログ主の友達の家の空気銃すら警察に没収された)。圧倒的多数の犯罪分子は依然冷兵器や少数の粗製乱造された地元製銃器あるいは猟銃を手にしている。こうした人に対抗するのに、大威力の武器は全く必要ない。

この他、中国の特別警察制度は不健全ではあるが、未来においては完全なものになるはずである。軍用銃器を持った武装犯罪分子に関して言えば、基本訓練(まだ不完全なもの)しか受けたことがない普通の人民警察官ではもしサブマシンガンを使用したとしても対抗することは難しく、よく訓練された特殊警察官に頼って任務を完成させるしかない。1挺の拳銃の良し悪しと近代化された警察制度とを比べれば、前者はやはり二の次である。

2.威嚇力が弱い

多くの場合警察官は発砲する必要はなく、威嚇を用いるだけですぐに犯罪分子の悪事を止めることができる。

多くの警察官は54式の銃本体は長く、外形が勇猛で非常に人を怖がらせ、一般の犯罪分子が見ると勇気を振り絞ってこれに対抗するのは困難だとしている。

以下はある老警察官の回想である。

1983年秋、王冬泉と仲間の2名の保安人員は河南で2名の容疑者逮捕に成功し、その後容疑者を護送して1台の普通ナンバーの自動車で淮北に帰った。途中河南の寧陵段の道路上で、突然十名余の男が道を塞ぎ強盗するのに遭遇した。彼らの車が悪者たちに止められた後、リーダー格の男が車のドアを開け、ここでやっと車の中に2人の制服を着た警察官がいるのを見て、直ちに大声で叫んだ。 「早く逃げろ、警察だ!」

2名の警察官は直ちに下車してこの男を捕えた。仲間が捕われるのを見て十名余の男は引き返してこの男を奪い返そうとした。こうした状況下で王冬泉は54式拳銃を抜き、空に向け1発撃った。銃声の後、手に木の棒を持った悪者たちはまず呆然とし、その後すぐさま再び逃げ散った。

54式の黒々とした銃口は非常に人を怖がらせる。あの日もしこの銃がなかったら、車に乗っていた2名の容疑者すら逃れ難い危険な状況に陥ったと思われる。

だが、リボルバーも同様に良好な威嚇作用を起こすことができる。事実少し前、アメリカの多くの危険な街の区域のパトロール警官は皆体格が大きくリボルバーを配備されていた。こうした人と銃が組成する勇猛な外形は知らず知らずのうちに多くの犯罪を制止したのである。

中国最新の警察用リボルバーを見たことのある記者は次のように語る。 「9mm口径、黒い銃本体、セーフティ追加装備、ゴム弾発射可能、ホルスター内に入れ、グリップが露出し、これは極めて大きな威嚇力を持つ。」

3.アメリカではすでに淘汰

アメリカがリボルバーを淘汰した原因は簡単である。すなわちアメリカが銃を禁止していない国家だということに他ならない。

普通の一般市民が合法的手段でそれぞれの都市全てにある銃器店で大量のいわゆる自衛武器を購入でき、これには各種の自動拳銃、単発だが大威力の散弾銃、ウージーの類の小型サブマシンガンが含まれる(頑住吉注:フルオートモデルは簡単には手に入らないでしょう)。

また一部の危険な犯罪分子、例えば武装して麻薬を販売する分子、マフィア構成員、生きるために連続して犯罪を犯す累犯、彼らはAK47、M16自動小銃からAUG狙撃銃(頑住吉注:←素人か)や軽機関銃を含むいかなる軍用銃も使うことができる。

つまり、アメリカの警察は機会さえあれば銃を使用するに至り、往々にしてまさに相手は自分より火力が強大なのである。伝統的リボルバーでは明らかに有効に対抗できず、一般のアメリカの警察のパトロールカー内には大口径の連発銃などさらなる装備もある。

これはアメリカの特殊な国情が決定したことである。中国が厳格に銃を禁止していさえすれば、こんな立場には全く陥らない。

黒54

54式拳銃は価格が低廉、構造が簡単、威力が大などの特徴のため、かつて香港、大陸、台湾の犯罪組織がすこぶる好む武器だった。早い時期のこうした犯罪組織構成員の武器は、主に欧米やベトナム、東南アジア等の武器が密輸されたもので、一般に価格が非常に高く、しかも容易に輸送過程で発見された。

中国の改革解放以後になって、少数の制式の54式、64式黒銃が香港、台湾等の地に流入し始めた。54式の銃本体上には五角星があるため、犯罪組織構成員から「大黒星」拳銃と呼ばれた。張子強が富豪の子供を力ずくで拉致した時、その手下が使用したのがまさにこうした54式拳銃と79式サブマシンガンだった。

客観的に言うと、1990年代以前、中国の黒銃が密輸されることは比較的少なく、主に一部の非合法のルートを通って入手された制式装備だった。大多数は盗まれたり民間に私的に隠匿された軍の物資だった。だが1990年代になって、中国にいくつかの大規模な黒銃生産基地が出現し始めた。多くの黒銃は香港、台湾等の地に密輸され、それらの地の犯罪組織構成員の手に落ちた。

こうした黒銃基地は青海化隆、貴州松桃、広西北海の3つの都市に分かれていた。

このうち青海化隆が最大の黒54拳銃製造基地であり、黒銃金三角の呼び名があった。

化隆の銃器製造には歴史があり、20万人余の人口しかない貧困の町だが、化隆は解放前には早くも青海馬歩芳(頑住吉注:中華民国時代にこの地方を支配した軍閥)の専業兵器工場であり、多くの人が銃器製造の技巧に精通し、しかも家伝の技術として伝えられてきたのである。

1990年代になって、この町は自然条件が極めて劣悪なため(土地がやせてかつ狭く、人々は四分地(頑住吉注:意味不明です。細分された土地あるいは狭い土地でしょうか)しか持たず、しかも交通が極めて不便)、1人あたりの平均収入は1000元にもならず、多くの現地の人が急ぎ、危険を冒して黒銃を作り始めたのである。

54式拳銃1挺の製造コストは200元にもならず、売れば1000元以上手に入れられ、利潤は1年の労働分の所得に相当するとされる。

こうしたコピー製造された54式拳銃の射程と精度は基本的に54式と同じであり、殺傷力は非常に強かった(頑住吉注:耐久性や信頼性はどうだったんでしょうね)。

目下化隆はすでに西北の癌になっており、山西、四川、新疆、チベット、陜西、河北、湖南、湖北等の地のほとんどあらゆる銃器販売事件は化隆と関係がある。

化隆はある時期、威力が強大な自動小銃と半自動小銃を製造したことがあるという。もしこうした武器が犯罪分子の手に落ちれば、彼らはたちまち警察サイドの火力を超えることになる。だが化隆は最近中央の重点的打撃を受け、黒銃製造は大いに削減された。

貴州松桃も2番目に大きい54コピー基地である。1992年から1996年までの6年間、警察はこの地から各種の非合法銃器8,772挺を押収し、その中のコピー54式は481挺、コピー64式は492挺だった。

54式の暗黒社会での流行は、別の1つの角度からのこの銃に対する肯定でもある。これはアメリカの犯罪組織におけるトンプソンサブマシンガンにも似ている。

全体的に、54式の淘汰は大勢の赴くところであり、54時代の終結は別の一時代の開始を意味している。


 リボルバー擁護論は、「リボルバーに対する激烈な批判」を意識したもののように感じられ、この方がはるかに納得のいく意見です。ただ、アメリカは銃器を規制すべきだという意見が日本でも強いですが、アメリカは君主制のイギリスとの独立革命に勝利して成立した国であり、もし時の支配者が自由と民主主義を否定するような政治を行ったらいつでも国民には銃をとってこれを倒す抵抗権・革命権があるという思想があり、この保障として国民の武装が憲法で保障されているわけです。私は日本の銃器規制を緩めるべきではないとは思うものの、権力が武器を独占し、どんな悪い政治(自民党や民主党レベルでなく、クーデターによって軍政を敷き旧憲法を復活させるとかそのレベルの話ですよ)を行っても事実上実力で抵抗できない状況は理論的に民主主義の傷と言えるのではないかという疑問も一方で感じています。そして中国が厳重に銃器を規制している理由を考えると、その疑問は一層強まります。

 「黒銃」の話は特に興味深かったです。日本に流入したトカレフの中には、こうした密造銃も混じっており、実際以上に「中国製銃器は粗悪」という評価が生まれた可能性もあるように思います。













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