ウクライナの軍事工業を評する

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http://military.china.com/important/11132797/20140305/18375440.html


ウクライナ軍事工業の実力の秘密を明らかに:かつて世界最強の大陸間弾道ミサイルを製造

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ウクライナが研究開発、生産するSS-18大型大陸間弾道ミサイル。これは世界で威力最大のミサイルである」)

非常に多くの外国人の眼中において、ウクライナで最も有名なのは風情万種の美少女である。しかし事実においてウクライナは軍事工業技術大国であり、世界軍事工業輸出領域でも軽視できない役割である。

金のスプーンを含む

誕生したウクライナ


独立当初のウクライナは金のスプーンを含んで生まれた、と言うことができる。面積から言って、ウクライナはヨーロッパでロシアのすぐ次の、ヨーロッパで面積が第2番目に大きい国であり、同時に4,500万を超える非常に多い人口を持つ。ウクライナは自然資源が豊富である。ウクライナは全世界の「黒土帯」総面積の40%を占める大きく肥沃な土地を持つだけでなく、さらに70種余りの鉱産資源が埋蔵されている。

とりわけ恵まれた天然資源の他、ウクライナにはさらに先進国と比肩し得る工業の実力がある。ウクライナはソ連の主要な工業基地の1つで、ウクライナ工業の中で最も輝かしいのは軍事工業である。ウクライナの独立初期にソ連から継承した軍事工業は、すでに強大との形容は用いられず、「極めて強大」であった。軍事工業企業は3,594社にも達し、職工は300万人、そのうち直接武器生産に従事する企業は700社あり、職工は140万人余り、生産の部門はロケット、大型輸送機、軍用艦艇、装甲車両など陸海空各種装備をカバーし、しかもその大部分の製品の性能は世界の前列、甚だしきに至っては最先端レベルにある。

「サタン」の製造者

南方機械製造工場に代表されるウクライナ航空宇宙工業は、1950年代からもう極めて重要な作用を発揮し、ソ連初の制御誘導ミサイル、初の運搬ロケット、初の宇宙船の研究開発作業に参加、リードし、かつその後ソ連のために半数以上の大陸間弾道ミサイルおよび数種の運搬ロケットを設計、製造した。ソ連解体後、ウクライナは1/3の航空宇宙工業を継承し、就業人数は一度は20万人にも達した。ドニプロペトロウシク市に位置する南方機械製造工場はウクライナ航空宇宙工業最大の生産企業である。この企業が研究開発、生産したSS-18大型大陸間弾道ミサイルは世界で威力最大のミサイルであり、10個の55万トン相当の分離誘導式核弾頭および40個余りのデコイを搭載でき、世界でもナンバーワンと言え、道理で冷戦の時期にひとたび登場するや、NATOから「サタン」と呼ばれたわけである。現在に至るもウクライナは依然、その高性能の「天頂」、「ドニエプル」、「旋風」という3系列の運搬ロケットをもって航空宇宙大国の行列に身を置いている。

ソ連解体後、本来の不断に供給される資金、安定した製品発注、集中し統一した供給、管理が失われた、および市場経済条件下での業務の知識と経験が欠乏していたなどの原因ゆえに、ウクライナの航空宇宙工業は一度困難な状況に陥り、生産数は非常に大きく低下した。ウクライナの航空宇宙工業再興のため、国家航空宇宙局は一連の措置を取り、あらゆる航空宇宙工業企業を連合し、市場経済の要求通りに企業に対する改革と再編を実行し、一定程度上ウクライナ航空宇宙工業の急速な没落の趨勢を抑止した。しかし国際航空発射市場の競争が極めて激烈なため、市場は依然楽観できない。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは「アントノフー124輸送機はアメリカのC-17に比べより大きいが、価格はその1/3〜1/2でしかない」です。)

空中のビッグマック

ウクライナの航空工業は世界に先んじたレベルを持っている。ウクライナは飛行機の機体、エンジン、機載設備、修理など40余りの企業を持ち、このうち少なからぬ企業、例えばアントノフ航空科研生産連合体、ハリコフ航空社、キエフ航空工場などは、いずれも生産技術と設備が先進的な、就業人員の専業技術レベルが高い世界的に有名な企業である。

航空領域では、アントノフー124とアントノフー225の生産を通じ、ウクライナはアメリカを除く第2の、超大型航空機製造を独立して掌握する国家である。アントノフ社のアントノフー124およびアントノフー225というこの2種の超大型輸送機の出現は、ウクライナが超大型飛行機の設計、大型航空部品加工、先進航空材料製造などの方面で世界に抜きん出た能力を持つことを示している。例えばアントノフー225機は離陸重量が600トン近い超大型軍用輸送機であり、これまで世界最大の飛行機でもある。その全幅はエアバスA-380機を超えており、もし旅客機に改造したら1,500〜2,000名の乗客を搭載できる。2001年、アントノフー225機はある飛行中に124項目の世界記録を創造した。映画「2012」劇中のアントノフー500大型輸送機はアントノフー225を元にした虚構である。しかもウクライナの大型輸送機は価格が低廉で、例えばアントノフー124はアメリカのC-17に比べて大きいが、価格はその1/3〜1/2でしかない。

現在ウクライナは超大型機の優勢に頼って、特殊大型物品空輸上、取って代わり難い優勢を持っている。例えば2001年、アメリカが海南陵水飛行場から、強制着陸させられたEP-3偵察機を輸送したが(頑住吉注:例の空中衝突事件を起こした機です)、使用されたのはまさにアントノフー225輸送機だった。ある専門家はかつて、超大型輸送機には将来200機の需要があるが、現在20機余りしかなく、このため未来の市場は比較的楽観される、と予測した。またウクライナはさらに、アントノフー124など大型輸送機を利用して宇宙発射市場に割り込むことを計画し、つまり大型輸送機を用いてロケットを空中で発射するのである。

「動力のシャー」

ウクライナの超大型機の発展はその強大なエンジン製造工業と切り離せない。アントノフー124とアントノフー225に使用される推力が23トンに達するD-18Tターボファンエンジンは、ウクライナのトップのエンジン生産機関であるMotorSich持ち株有限会社が研究開発したものである。また、MotorSich社はさらに各種ヘリが使用するターボシャフトエンジンを生産し、ミルー17、Ka-27など多種の主力軍用ヘリに用いられている。ミルー26TヘリはMotorSich社のD-136エンジンを使用し、これは世界最大のターボシャフトエンジンである。MotorSich社の固定翼機用エンジンとヘリ用エンジンはすでに100ヶ国余りの飛行機とヘリに応用されている。MotorSichは大推力ターボファンエンジンとターボシャフトエンジンの上での非常に大きな影響力ゆえに、ウクライナから来た「動力のシャー」と讃えられる。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションは「アントノフー225機は離陸重量が600トン近い超大型軍用輸送機であり、これまで世界最大の飛行機でもある」です。)

かつての空母の建造者

ウクライナの艦艇製造工業はかつてソ連軍事工業の中の重要な組成部分で、30%の造船工場がウクライナの15の都市に集中し、ソ連の25%の軍艦生産任務を引き受け、ほとんどあらゆる大型水上艦艇がウクライナの造船工場で完成され、ピーク期には15万にも達する技術工員が造船工場で働いた。このうち黒海のニコラエフ港に位置する黒海造船工場はソ連唯一の空母を建造できる造船工場で、クズネツォフ号、ワリヤーグ号、およびウリヤノフスク号空母はいずれもここで建造された。この造船工場は最盛期6万トンの通常空母を進水させたばかりで、8万トンの原子力空母がすでにもう建造開始され、これはアメリカ以外いかなる国家にもあえて望めないことである!

しかし独立後のウクライナは、発注の激減ゆえに深刻な危機に陥った。建造中だったワリヤーグ号、ウリヤノフスク号空母は継続し難く、売却して換金、解体して事を済ますしかなかった。より深刻だったのはウクライナの国防経費の不足で、困難な時期は1隻の快速艇を買う金すら出せず、造船工場に作れる船がなく、人員が大量に失われ、新製品と設計が全部ダメになるという結果がもたらされた。十年余りにもわたる調整を経てウクライナ造船業は谷底を抜け出し、大型造船工場はいずれも私有化された。だがすでに民間船メーカーに身を落とし、軍用品生産はすでに虫の息で、多くの造船工場は依然赤字状態にある。

ヨーロッパバイソンホバークラフトを生産するウクライナの著名な「海洋」造船工場は私有化後、一度は発注が欠乏し、運営が非常に苦しかったが、中国の発注を手にした後ついに困難な状況を抜け出した。

堅固で強い「堡塁」

ウクライナはかつてソ連の主要な戦車、装甲車両研究開発・生産基地の1つだった。1991年になると、その戦車・装甲車両の生産能力はソ連全体の30%を占め、ウクライナの装甲戦闘車両工業はすでにソ連の機器製造業の最も重要な領域の1つとなっていた。1960年代、ウクライナのモロゾフ設計局はソ連上層部に向け、より先進的なT-64戦車をデモンストレーションした。先進的な複合装甲、自動装填装置、大口径スムーズボア砲および2ストローク大出力ディーゼルエンジンなどは、いずれもメインバトルタンクの先例を作り出した。西側は1980年代まで遅れてやっと「レオパルド」2のようなT-64に対抗できるメインバトルタンクを持ったが、この時T-64はすでに1万両余り生産されていた。

だが多くの東欧諸国の武器の需要が西側に転じるにつれ、ウクライナの装甲戦闘車両工業の現状に満足してそれ以上の努力をしない日々も継続し難くなった。21世紀に入って以来、ウクライナの各大手装甲戦闘車両生産・設計機関はいずれも新概念を用いて新たな装備を開発することに極力努め、競争がどんどん激烈になる国際武器市場に参与した。その代表作こそT-84「堡塁」メインバトルタンクである。この戦車は多項目の改良措置を取り入れ、多種のウクライナ国内の軍事工業技術を使用している。これにはウクライナ国家技術センター局のアクティブ防御システム、ウクライナ国営火砲設計局のKBA-3型125mmスムーズボア砲、「射線」特殊設計局の砲から発射するミサイルなどの新装備が含まれ、戦車の全体的生存力および火力性能が高められ、かつパキスタンへ320両、バングラディシュへ200両の販売業績を実現した。

(頑住吉注:これより4ページ目。画像のキャプションは「D-18Tターボファンエンジンはウクライナから来た『動力のシャー』と讃えられる」です。)

国際溶接専業の王者

軍事工業が強大であるか否かには設計が非常に重要だが、強大な製造能力と完備された工程を持つか否かはさらに重要である。ウクライナが真に強大なのはバートン溶接研究所に代表される先進製造技術と工程である。

各国の溶接専業の人々にとって、バートン溶接研究所は疑いなくあこがれの存在である。この成立して80年近い研究所はすでに世界最大の溶接専業研究機構となっており、しかもバートン溶接研究所は非常に大きな程度上直接航空宇宙のために奉仕してきた。例えばこの研究所の厚板電子ビーム溶接技術はエアバスによってA-380の翼板を溶接するのに採用され、溶接の厚さは15cmに達し得る。さらに例えばその先進的なアルミ合金同士の溶接技術は、直接ミサイルあるいはロケットの殻体の溶接に応用され、局部真空電子ビーム溶接はロケット燃料タンクの溶接に応用される。また1964年には早くも、バートン溶接研究所は宇宙溶接および吹き付け技術の探索を開始した。1984年、ソ連の宇宙飛行士がサリュート号宇宙船の外で、バートン研究所の設備を用いて宇宙電子ビーム溶接を実現した。アメリカさえもバートン研究所の宇宙溶接設備を輸入して国際宇宙ステーションに応用する必要があるのである。

軍事工業産業

発展能力は不足


ウクライナの軍事工業は非常に先進的で、少なくともかつては非常に先進的だった。ウクライナは無線電信、レーダー、電子などの領域でも極めて実力がある。しかしウクライナの先進的な軍事工業は、決して独立後の新たな国家にメリットをもたらさず、逆に非常に重大な危機に陥っている。何故ならウクライナの軍事工業は、ああしたソ連元加盟共和国の産業のチェーン状のつながりと緊密に関連し、人為的にこの種のつながりを切断した後、設計、生産がいずれも重大な問題となった。例えばウクライナ軍事工業企業が設計した大量の武器装備には国際的に需要がある。だがいくつかの材料、カギとなる重要部品はロシアに制せられている。この種の分業セットの形態はウクライナの軍事工業の生産能力を制約している。

またその他の大国の圧力も、極めて大きくウクライナ軍事工業企業発展の空間を制限している。まずロシアとウクライナ両国は航空、宇宙、装甲車両などの領域での同質の競争が極めて深刻である。次にウクライナは生産のスタンダード、体系などの原因により、西側先進国市場に進入することは非常に難しい。第3は中国、韓国、トルコなどの国の軍事工業企業が、途上国の軍事工業市場においてウクライナに対し巨大な衝撃を形成している。

こうした軍事工業企業が企業改革や軍から民に転じる試みは歩み始めることがさらに非常に難しい。軍から民に転じるにはまず体制メカニズムの上から市場の変化に適応する必要がある。だが軍事工業企業といった種類の重工業の体制改革、再編の調整周期は長く、コストが高く、損失が大きく、堅固で強力な政府のリードが必要である。しかし腐敗し動揺が持続するウクライナ政府は明らかにこの使命を完成させ難い。大量のウクライナ軍事工業の専門家や人材は止むを得ず国外に行って活路を求め、このことはさらにウクライナ本国工業技術人材の流出を激化させている。

軍事工業は絶対的なハイエンド製造業である。しかしそれが必要とするのは大変な量のエネルギー源、原材料、資金の流入、および安定し良好な経済社会秩序である。ウクライナの現在のこの混乱した状況がこのまま続いていけば、そのかつては全世界を見下した軍事工業科学技術も、1回1回の社会的混乱の中で不断に価値を下げるしかない。ウクライナの非常に大きな軍事工業が「救済」を獲得したければ、世界にその巨大な体と釣り合うパートナーを探し出すことが必須である。世界を縦覧すると、このような巨人は指を折って数えるほどである。アメリカはウクライナを必要としない。親ロシアのウクライナ東南部はまさにその航空、宇宙、艦艇など軍事工業が集中している地域である。もしウクライナ東南部がロシアに併合されたら、ロシアにとっては鬼に金棒と言える。だがウクライナ情勢は微妙なところにあり、ウクライナがEUに傾倒する、および完全に分裂する極端な結果もあり得るが、外部勢力が勢力伯仲なのでそれが発生する確率は高くない。EUは確かにウクライナを引きつけるが、ウクライナサイドの資金とエネルギー源に対する需要を解決することはできない。また西側もロシアの実力が大きくなるのを見たくない。このため将来ウクライナは、相互が制約するバランスゆえに、継続してロシア・ヨーロッパの間の板挟み状態を保持する可能性が高い。ならばこのことから見ると、ウクライナと中国の軍事技術協力は独特の意義をはっきり示す。相対的に独立し自由なウクライナは、中国・ウクライナ軍事技術協力の遠大な発展のためにも有利である。

(頑住吉注:5ページ目)ロシア海軍の現在唯一の空母「クズネツォフ」号はウクライナで生産された。

(頑住吉注:6ページ目)旧ソ連の未完成に終わった原子力空母「ウリヤノフスク」号

(頑住吉注:7ページ目)ウクライナはかつてソ連のために、西側を夜も眠れなくさせる装甲の洪水を作り出した

(頑住吉注:8ページ目)ウクライナのT-84「堡塁」メインバトルタンクはその軍事工業輸出の目玉商品となる


 ロシアがここまで強硬なのは、位置関係的に重要、ロシア系住民が多いというだけでなく、兵器産業が失われたり敵対勢力側に渡ることを嫌っている一面もあるわけでしょう。しかしこの記事でも今後の中国との関係についてはあまり詳しく触れられず、妙に楽観的ですね。























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