北朝鮮放棄論批判に対する反論

 先日紹介した「専門家:中国がもし朝鮮半島を放棄したらあるいは戦火が再び起こるか 疑いなくアメリカに大きなプレゼントを贈ることになる」という記事に対する批判です。

http://military.china.com/important/11132797/20141201/19029714.html


中将:北朝鮮がもし崩壊したら中国が救うことはできない 中国人は北朝鮮人のために戦争する必要はない

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「朝鮮中央通信社11月25日の報道によれば、平壌市の軍民は11月25日金日成広場で大会を行い、北朝鮮国防委員会の声明を支持し、無慈悲にアメリカおよびその下僕勢力の反北朝鮮『人権』活動を粉砕すると表明した。ソース:朝鮮中央通信社」 なおキャプションは7ページ目までこれと同じです。)

原題:中国には「北朝鮮放棄」の問題は存在しない

筆者:南京軍区元副司令員 王洪光


最近、北朝鮮・韓国問題専門家である浙江大学の李敦球教授が「グローバル時報」に文章を執筆し、「一部の戦略学者は中国が北朝鮮を放棄するよう提案しており、問題は異常に深刻である」と考えた。

筆者は李教授の見方に不同意である。何故なら現在中国には北朝鮮放棄の問題は存在しないからである。

1つ目として李教授は、「中国と北朝鮮は2つの独立した国家である」としており、この点に筆者は完全に賛同する。だが「中朝両国の根本利益は一致している」と語っており、これには筆者はいいかげんに同意することはできない。中朝にはいずれも各自の国家利益があり、ある利益は近い、あるいは一致するかもしれないが、ある利益は大違いである。例えば北朝鮮は核を保有し、中国は北朝鮮に核の放棄を要求する。これはいずれも異なる国家利益に基づいて提出されまた堅持されている。重大な原則的問題の上で、中国は北朝鮮の利益のために自らの利益を損なう必要はない。北朝鮮の核保有はすでに我が国の国境地域に対し核汚染をもたらす深刻な脅威を生じさせており、中国政府はこの地域の中国の一般庶民の安全のため、北朝鮮の核保有を厳しく批判する必要があるだけでなく、北朝鮮の核施設を中国から遠く離し、中国に核の脅威をもたらしてはならないと要求する理由が完全にある。この点の上で、「中朝両国の根本的利益は一致している」だろうか? また、北朝鮮の核保有は日韓の核保有を刺激するかもしれない。もしもごく小さい東北アジア地域でロシア、中国、北朝鮮、韓国、日本が同時に核を保有し、さらにアメリカの核の暗い影が加わったら、東北アジアはそれでもまだ安寧でいられるだろうか? 中国が一連の原則的問題の上で本国の立場を堅持し、北朝鮮が我が国の利益を損なうことに反対するやり方を、北朝鮮放棄と見なしてはならない。これまで北朝鮮のために「尻拭い」したことは多すぎ、専門家は筆者に比べよりよく分かっているはずである。だが今後はこうするには及ばない。

2つ目として李教授は、「北朝鮮は社会主義体制であり、北朝鮮には中国に取って代わる地縁政治的選択は存在し難い」とした。だが実は北朝鮮はとっくにマルクスレーニン主義をもって建党の指導思想とすることを放棄しており、イデオロギーの上で中国といかなる同じところもない。しかも真のプロレタリア階級政党および社会主義国家ではない。北朝鮮は1972年の「憲法」の中ではまだ次のように規定していた。「我が国の現実の朝鮮労働党の主体思想にマルクスレーニン主義を創造的に運用し、自らの活動方針とする」 だが1980年の朝鮮労働党第6回代表大会になると、「金日成同志の革命思想である主体思想が唯一の指導方針であり」、「領袖は人民に生命を賦与した恩人であり慈父である」とした。この時北朝鮮はすでにマルクスレーニン主義を放棄したのである。2013年に北朝鮮労働党は建党の「十大原則」(その地位は党憲章および憲法より高い)の中で明確に、主体思想の導きの下に「党の唯一の指導体制事業を深化、樹立し、かつ世代を超えて継続させるべきである」とし、かつ「党と革命の血脈である白頭山の血統(すなわち金氏の血統)を永遠に継続させ、かつその絶対の純潔性を断固として保持する」と規定した。この中にちょっとでもマルクス主義の味があるだろうか? 類似の論断はまだ非常に多く、専門家が多くを語り一般庶民に聞かせ、一般庶民に自ら判断させるよう希望する! 中朝両国には国家利益の関係しかなく、それがすなわち国家関係であり、社会主義政党間の同志としての関係は存在せず、これは北朝鮮が能動的に放棄したのである。道不同、不相為謀(頑住吉注:路線が違う者は行動を共にしない、といった意味だそうです)。プロレタリア階級の建党思想はブルジョア階級の建党思想に比べずっと先進的であり、ずっと優れてもおり、さらに封建的な専制思想に比べずっと進歩しており、人類社会発展の大方向に符合する。我が国は共産党によって執政され、各民主党派が政治に参加し、協議と選挙が党と国家のそれぞれの代の指導集団と最高指導者を生み出す。一方北朝鮮の三代の指導者は世襲で生み出されている。両者に同じところがあるだろうか? 中国の共産党と中国政府はまさに2つの平等な政党、2つの平等な国家として北朝鮮とつきあい、その他の我が国と友好的な政党や友好国と同じである。これこそ正常な政党の関係であり国家の関係である。また、異なる政治体制の国が協調してつきあうというのは全世界至る所で皆そうなのであって、「北朝鮮には中国に取って代わる地縁政治的選択は存在し難い」というのは北朝鮮が採った閉鎖、鎖国政策がもたらしたのであって、中国を恨んではならず、中国はこれに対し責任を負う必要はない。

(頑住吉注:これより2ページ目)

3つ目として、西側諸国は北朝鮮を妖魔化し、「人権」の旗印を掲げて北朝鮮の内政に干渉しているが、中国は絶対に関わっていない。北朝鮮は国際社会から遠く離れ、内部の防衛、統制は非常に厳しく、対外的に非常に警戒し、これは争いのない事実である。だがどの国にもいわゆる「人権」問題はあるのであって、アメリカ自身も含まれる。最近アメリカの小都市ファーガソンの警察官がある12歳の模造銃を持った黒人少年を射殺し、全国大範囲の騒乱を引き起こした。これはまた1つの明らかな証拠である。率直に言って、中国は北朝鮮の人権状況に対し全く理解しておらず、何人かの「脱北者」の口述を聞いてすぐ北朝鮮に対し断定的なことを言ってはならず、また国連総会はまだ北朝鮮指導者審判の議案を通過させていない。人権状況が不明な状況下で、北朝鮮の人権が良いあるいは悪いと言うのはいずれにも根拠がなく、中国が反対票を投ずるのは理の当然である。中朝双方は1961年に「中朝互助友好条約」を締結し、すでに2回延長されている。この条約は、「ひとたび締結した一方がいかなる一国あるいはいくつかの国家連合の武力進攻を受け、これにより戦争状態に置かれた時、締結した別の一方は直ちにその全力を尽くして軍事およびその他の援助を与えるべし」と規定している。この条約は2021年まで有効である。これは実際上すでに北朝鮮に政治上および軍事上の保護を与えている。条約はさらに次のように規定している。「締結した双方は継続して、両国の共通の利益に関係する一切の重大な国際問題に関し協議を行う」 試しに問うが、北朝鮮は核保有するのに中国と協議しただろうか? 条約はさらに次のように規定している。「締結した双方は継続してアジアと世界の平和の維持保護、および各国人民の安全のために一切の努力を尽くす」 北朝鮮がもしこれを適切に遵守したならば、我が民間航空機が間もなく北朝鮮上空を飛ぼうという時に、それにもかかわらず航路上にロケット弾を発射し、機に乗っている100〜200人の乗員乗客を非常に大きな危険の中に置くことはないだろう。北朝鮮に近い公海で我が国の漁民を捕まえ、我が漁民の生命財産の安全に重大な脅威をもたらすこともないだろう。北朝鮮はさらに何度となく板門店の「停戦協定」を廃止し、北朝鮮と韓国(アメリカ)を準戦争状態に進入させると宣言している。「中朝互助友好条約」がまだ有効な状況下で北朝鮮と韓国(アメリカ)双方がひとたび戦争を起こしたら、北朝鮮は中国をどんな地位に置くことになるのだろうか? これは中国が「北朝鮮を放棄」したのか、それとも北朝鮮が独断専行したのか? これは中国の言うことを聞く聞かないの問題ではなく、「中朝互助友好条約」がどこに置かれているかであり、北朝鮮のやり方はすでに中国の根本利益を傷つけている。教授が「中朝両国の根本利益は一致している」との結論をどのように出したのか分からない。

4つ目として、北朝鮮を我が国の「戦略的障壁」とするか、あるいはこの「戦略的障壁」をなくすか、である。グローバル化、情報化の時代において、地縁関係の政治、軍事から言って、その重要な地位が非常に大きく低下しているというのはやはり争いのない事実である。歴史上朝鮮半島が中原(頑住吉注:ここでは漢民族に近い意味のようです)政権の主要な戦略の方向だったことは全くないが、この方向に有事があれば、主要な戦略の方向に影響を及ぼし、往々にして中原政権の足手まといになり、その地位と作用は相当に重要だった。だが21世紀に入って以来、政治的に見て、北朝鮮を含む周辺国の我が方に対する友好は当然に重要であり、どの国が周辺が悪い隣人でなく良き隣人であることを希望しないだろうか? 中国は隣国を大事にし、フィリピンのような弱国に対してさえ武力を使わず、甚だしきに至っては国際社会や国内の一部の民衆から軟弱の表れと見なされている。だが全体的に見ると、周辺が悪い隣人に囲まれていも、中国近代化の歩みを押しとどめることはできず、中国は勃興しつつある。軍事的に見て、朝鮮半島北部は38度線から我が国国境まで縦深が5、600kmでもあり、せいぜい1つの現代戦役の縦深でしかない。抗米援朝戦争の時、我々は3つの戦役行動だけを用いて、2ヶ月余りでもう我が国境に近づいた「国連軍」を38度線以南に追い返した。現代の情報化戦争は空間を拡大しまた時間を短縮した。1つの戦役の縦深しかないいわゆる「戦略的障壁」にまだどれだけ大きな意義があるのだろうか?

李教授は「北朝鮮を放棄」したら3種の結果が出現するだろうと考える。すなわち、1つ目は北朝鮮が第三国の抱擁に身を投じる、2つ目は北朝鮮が崩壊する、3つ目は北朝鮮が決死の戦いをし、半島に戦火が再燃する。この3種の結果は大げさすぎてやや人騒がせである。まず、北朝鮮が中国の抱擁に身を投じたことは全くなく、どうしてさらに第三国の抱擁に身を投じるだろうか? 金日成政権の朝鮮戦争開始は中国の意見を充分に聞き取っていなかった。1960、70年代、中国に対し甚だしきに至っては一般の国に比べてもさらに冷淡にした。我が国のアメリカとの国交樹立、また特に改革開放以後、さらに我が国に対し四の五の言い、ソ連と東欧の巨大な変化が起きた時になって、状況はやっとある程度改善した。私は、北朝鮮・韓国問題専門家として教授は筆者に比べよく分かっているはずだと思う。次に、ある国の崩壊は、主に外力によって決まるのではなく、もしある政権が人民の擁護を得られなかったら、「崩壊」は時間の問題でしかない。「仲間への引き入れ」でも「放棄」でもいいが、重要な作用は果さないのであって、中国の北朝鮮に対する関係を歴史上かつてあった朝貢関係と見なしてはならない。中国は救世主ではなく、北朝鮮が真に崩壊せんとしたら、中国にもそれを救うことはできないのである。中国は相応の準備を整えており、大げさに言っても我が東北地域が一定の影響を受ける、ということであって、我が国の近代化のプロセスが断ち切られることはあり得ない。さらに、はっきり見ておく必要があるが、中国に北朝鮮半島情勢を左右することはできない。北朝鮮核問題六者協議一つ続けていけさえしないのに、中国は朝鮮半島の「戦火」に責任を負えるだろうか? もし北朝鮮が「決死の一戦を行い、戦火が再燃」しても、双方の目標は中国ではなく、中国が火だるまになる必要はない。戦火を挑発して引き起こした者が責任を負うのである。今ではとっくに「社会主義陣営」はなく、中国の子弟が他国のために戦争する必要はない。この道理は誰にでも分かるね?

要するに、中朝の両国両党の関係は、正常な国家のつきあいと党のつきあいを基礎に建立される必要がある。我が国家利益から出発し、かつ北朝鮮(対応するいかなる国も含む)の利益に配慮し、支持すべきものは支持し、反対すべきものは反対し、責任ある大国のイメージを樹立するのであって、北朝鮮を「味方に引き込む」のでもなければ北朝鮮を「放棄」するのでもない。これが我が国の基本的態度であるべきなのだ。

(頑住吉注:8ページ目)北朝鮮最高指導者金正恩の最近の視察活動


 「北朝鮮放棄の問題は存在しない」というのはいわばレトリックで、内容的には放棄してかまわない、に近いわけです。これに対する反響もあるので後で紹介する予定です。

















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