JS 12.7mmスナイパーライフル

 まずこのページを見てください。

http://www.gun-world.net/china/sr/js127/js127.htm

 中国製のアンチマテリアルライフルであるJS 12.7mmスナイパーライフルに関するD-Boy氏のページです。この内容をお伝えしようと思ったんですが、別のページに転載されている、中国の銃器雑誌に掲載された開発者インタビュー記事とほぼ内容がかぶっており、そちらの方が内容が豊富なのでそちらをお伝えすることにします。ただし例によってD-Boy氏のページには多数の貴重な画像があるので、画像はそちらを参照してください。

http://military.china.com/zh_cn/critical3/27/20060221/13110021.html


国産新型JS 12.7mmスナイパーライフルを総設計者が語る

大口径スナイパーライフルは主に重要な物資、機材を破壊するのに用いられる。このため大口径スナイパーライフルのことをアンチマテリアルライフルとも呼ぶ(頑住吉注:中国語では「反器材歩槍」)。国外で大口径スナイパーライフルの研究開発が始まったのは比較的早く、これまでに研究開発されたモデルはすでに数十種に及んでおり、その中でもアメリカが多数を占めている。1990〜1991年の湾岸戦争を経てプルーフされたアメリカのバレットM82A1 12.7mmスナイパーライフルはその大威力、高精度により多くの人々に歓迎された。この銃は今に至るまで世界で最も広く使用されている大口径スナイパーライフルの1つであり、12.7mm/.50インチスナイパーライフル市場の支配的地位を占めている。すでに30余の国家の軍隊あるいは警察がこの銃を装備した。

国際的な軍需製品貿易市場を見渡すと、大口径スナイパーライフルの需要量は日に日に増加している。このため、建設集団軍品研究所は、国際市場において1つの地位を占め得ることを期待して、大口径スナイパーライフルの独自開発に着手した。当時鄒義洪高級工程師が総設計者を担当して、12.7mmセミオートスナイパーライフルの研究開発が開始された。プロジェクトに必要な経費の問題のために、このプロジェクトは全体方案設計完成以後すぐにペンディングとなった。

2003年、我が国の軍部が大口径スナイパーライフルの要求を提出したため、12.7mmスナイパーライフルプロジェクトは再び始動した。単に国際市場における大口径スナイパーライフルの発展趨勢を根拠にして、発射方式は当初のセミオート方式から非自動方式に改められた。鄒義洪高級工程師は当時7.62mmスナイパーライフルを研究開発中だったので(頑住吉注: http://www.gun-world.net/china/sr/js762/js762.htm )、このプロジェクトは王太平同志が総設計者を担当して研究開発が進められた。このプロジェクトは調査研究から全体方案設計完成まで約半年の時間しか要しなかった。12.7mmスナイパーライフルプロジェクトは建設集団軍品研究所独自の開発プロジェクトに属したため、経費には限りがあり、投入された設計人員も多くなかった。短時間内で大口径スナイパーライフルの設計を完成させる、その中の大変な苦労は想像がつく。JS 12.7mmスナイパーライフルは2004年末に各項目の試験が終了し、各項目の戦術技術指標は全て国際的な先進レベルに到達した。この銃は2005年5月の中国(北京)国際警察用装備および対テロ技術装備展でデビューし、すぐに国内外の軍、警察、また軍事マニアの関心を集めた。先日、本誌記者はJS 12.7mmスナイパーライフルの総設計者である王太平に取材を行った。

記者:王太平総設計者、こんにちは! この12.7mmスナイパーライフルを研究開発した動機をお話しください。

王太平:現在使用されているスナイパーライフルには79式と85式の7.62mmスナイパーライフル、さらに88式5.8mmスナイパーライフルがあります。大口径スナイパーライフルと小口径スナイパーライフルの戦術的任務は異なり、小口径スナイパーライフルの主要な任務は敵の生体目標を殺傷することですが、大口径スナイパーライフルの主要な任務は対スナイパー攻撃と、飛行機、軽装甲車両、弾薬庫等、敵の重要装備や物資器材の破壊であり、当然防弾衣を着た生体目標の殺傷もできます。7.62mmと5.8mm弾薬の威力には限度があり、アンチマテリアル弾薬としての使用は不可能です。といって14.5mmおよびさらに大口径のスナイパーライフルの研究開発には、全体重量、全体の寸法、反動や発射音などの方面全てにおいて比較的大きな難題があります。現在、世界の12.7mmスナイパーライフルの大部分は12kg前後、全長1.4mm前後であり、この重量や全長はすでに兵個人の戦闘携行に非常に大きな負担をもたらしています。弾薬の口径が大きくなるにつれて、銃のアンチマテリアル威力も増大しますが、反動もさらに大きくなり、緩衝装置を加えなければならなくなり、これにより銃の寸法や重量が増加し、行動の機動性にさらに大きな影響をもたらします。この他、口径の増大がもたらす発射音の過大さも軽視できない問題です。特にマズルに高性能銃口制退器を装着すると、制退器が後方に噴射する火薬ガスが生む強大な衝撃波と騒音は容易に射手を傷つけます。研究、討論を経て、我々は12.7mm弾薬はアンチマテリアル用途上、威力がすでに十分であり、反動の大きさも人体が受け入れ可能な範囲内であり、銃全体の重量、寸法も個人兵士の操作に比較的適していると考えたのです。

記者:私たちにJS 12.7mmスナイパーライフルの全体構造を紹介してください。

王太平:JS 12.7mmスナイパーライフルの操作方式は非自動方式、すなわちボルトアクションです。この銃は撃針平移式(頑住吉注:ストライカー式)撃発方式を採用しており、ファイアリングピンスプリングのテンションは調節できます。充分な撃発力を提供でき、撃発の信頼性を保証しています。エジェクト機構には独特の活動放殻挺(頑住吉注:可動式のエジェクトレバー、といったような意味のはずです)を採用し、ボルトの前進過程中ボルトに道を譲り、ボルトに深く長いミゾを設ける必要がなくなりました(頑住吉注:通常ボルトやスライドにはミゾがあって固定されたエジェクターがはまっていますが、この場合エジェクトの瞬間のみ飛び出すレバーになっている、ということではないかと思われます。ただ、プランジャー式エジェクターにすればいいだけのような気もしますが)。スコープマウントベースには国際標準のピカティニーレールを採用し、便利に、素早く照準器材が装着できます。JS 12.7mmスナイパーライフルに使用されるのは国産の4〜12倍連続変倍スコープです。銃全体の重量が大きいので、ストックの尾部には高さ調節できる駐鋤(頑住吉注:この語は日本語では砲にしか使わないと思いますが、この場合要するに単脚です)を設け、射手が長時間銃を構えている状態で疲労を引き起こすことを防ぎました。レシーバー上のコッキングハンドルは着脱可能で、銃を分解する際はコッキングハンドルを銃から取り外す必要があり、そうすればすぐにボルトは後方に取り出せます。この銃にはバイポッドが装備され、携行時には後方に折りたたむことができます。バットプレートにはゴム材料を採用し、美観のため表面は皮革で包みました。

銃全体の構造形式上の特色が主に表れているのは、高性能銃口制退器と液圧緩衝装置が同時に1つの銃に使用されている点です。発射後、ボルトとバレルはフルロックされた状態で一緒に後座します。マガジンはレシーバーの左側に装備され、銃全体の長さを減少しています(頑住吉注:マガジンを上下左右どこに置こうと全長には影響しないと思いますが)。

記者:なぜJS 12.7mmスナイパーライフルには非自動方式を採用する必要があり、バレットM82A1のような半自動方式を採用しなかったのでしょうか?

王太平:半自動方式は弾薬の発射後、自動的に1発の弾薬を装填でき、改めてトリガーを引くと発射できる方式を指します。非自動方式は毎回の発射ごとに必ず手動で弾薬を装填する必要があり、その後にトリガーを引くと発射する方式を指します。半自動方式の作動部品は非自動方式のそれと比べて多く、射撃安定性に影響する要素がより多いのです。これはすなわち容易に射撃精度に影響するということでもあります。スナイパーライフルの戦術思想が強調するのは初弾命中です。部品の運動の射撃精度に対する影響をなるべく減らすため、我々はJS 12.7mmスナイパーライフルの設計において弾道銃(頑住吉注:弾薬の弾道テスト用の銃、というか器材のことのようです)の原理と技術を採用しました。弾道銃の長所は閉鎖が堅固、構造が簡単、運動する部品が小さい(ファイアリングピンのみが運動する部品)、トリガープルが軽いということであり、部品の運動の射撃精度に対する影響は最小に減らされています。アメリカのバレット社が初期に研究開発したM82A1とM82A2スナイパーライフルは半自動方式でしたが、後に研究開発したM90、M95、M99は全て非自動方式に改められています。

記者:JS 12.7mmスナイパーライフルの射撃精度はどうですか?

王太平:世界で常用されているスナイパーライフルの射撃精度は、3発の銃弾の着弾点の最小円直径が大きいか小さいかが評価基準となります。JS12.7mmスナイパーライフルは100mの距離における3発の着弾点がほとんど穴同士が接触する程度であり、最小円直径は一般に24〜26mm前後です。アメリカのバレットM99 12.7mmスナイパーライフルはこれよりやや優れており、その距離100mにおける3発の弾の着弾点は穴が接するばかりでなく交差あるいは重なり合い、最小円直径は一般に20mm前後です。

記者:アメリカのバレットスナイパーライフルの精度と比較して、JS 12.7mmスナイパーライフルはやや劣っています。これはどんな原因からのことでしょうか? 

王太平:まず私は説明したいのですが、我々の設計レベルは国外の同じ領域のそれに劣らないはずです。銃の精度に影響する要素は非常にたくさんあります。特にバレルの製造技術の射撃精度に対する影響は極めて大きいですが、この方面において我々の製造技術水準は国外に比べ一定程度劣っています。しかも、我が国には今のところまだ12.7mmスナイパーライフル専用の高精度弾薬がありません。喜ばしいことに、国内ではすでにいくつかのメーカーがこの種の弾薬の研究開発を開始しています。遠くない将来、この種の弾薬の研究開発が成功した後、再び我々のJS 12.7mmスナイパーライフルを、国外の同類スナイパーライフルと優劣を比較することを希望します。

記者:JS 12.7mmスナイパーライフルの設計において、どんな技術的課題を解決する必要があったのでしょうか?  

王太平:現在の各種大口径スナイパーライフルに共通の欠点は反動が比較的大きいこと、銃口装置が後方に噴射する火薬ガスが射手に与える衝撃が非常に大きいことです。射手は射撃時に一般的に皆恐れる心理を持ち、射手が力を発揮することに影響します。当然これは射撃精度に対しても影響があります。有名なアメリカのバレットスナイパーライフルに関して言えば、射手が射撃時に感じるのは、非常に大きい勇気を要してやっと敢えて発射できる、射撃時には強烈な爆風の衝突により動悸が尋常でなく強烈となる、ということです。このため、我々は設計時に射撃精度に影響する要素を考慮する必要があった他に、反動の大きさと銃口部から後方に噴出する火薬ガスが射手に衝突する問題の解決を重点とする必要がありました。同時に銃全体の外観と人間工学も我々は重点的に考慮しました。この他さらに我々は、この銃にサボ付き徹甲弾の発射能力を持たせるという問題も解決しました。JS 12.7mmスナイパーライフルは世界で唯一サボ付き徹甲弾の発射能力を持つ大口径スナイパーライフルです。これも我々のこの銃の大きな重要ポイントです。

記者:銃口から後方に噴射される火薬ガスが射手に衝突する問題はどのように解決したのですか?

王太平:試作品の設計、製造過程で、我々は非常にたくさんの種類の形状を持つ銃口制退器の最適化選択を進めました。その中に制退効果の表れが突出したものが2つありました。1つはバレット12.7mmスナイパーライフルにならった直方体の銃口制退器であり、他の1つは円筒形の銃口制退器でした。その後我々は後者を選択し、これに改良を加え、制退効果は非常に出色のものとなりました。エネルギー効率は70〜80%に達し、我々はこれを「円筒形高性能銃口制退器」と命名しました。しかしこれがサボ付き徹甲弾を発射できなかったので(バレット12.7mmスナイパーライフルの銃口制退器もサボ付き徹甲弾を発射できない)、再度改修を加え、銃口制退器の出口の直径を本来の13mmから22mmまで増大してサボ付き徹甲弾発射の問題を解決しました。ただし「魚と熊の掌を両方は得られない」(頑住吉注:魚を捕るには水辺へ、伝説的な高級食材である熊の掌を取るには山へ行かなければならず、同時に両方得るのは不可能だ、ということわざだそうです。「あぶはちとらず」とはちょっと意味がずれますし、ずばり対応する日本語のことわざは思いつきません)で、これにより制退効果がある程度下降し、エネルギー効率は本来の70〜80%から40〜50%になりました。

記者:銃口制退器のエネルギー効率が40〜50%になったと。後座エネルギーの過大は射手に受け入れがたいですが、余分な後座エネルギーはどのように処理されたのでしょうか?

王太平:我々は、通常は火砲等の重火器に使用される液圧緩衝装置をJS 12.7mmスナイパーライフルの構造設計に導入しました。発射時、バレルとボルトは共におよそ35mmの距離後座します。液圧ピストンは圧力を給油室の中の航空液圧油に伝達し、液圧油は流量調節穴を通ってゆっくりと別の油室に圧入されます。この過程が緩衝時間を延長し、射手が肩に受ける力を減少させ、しかも後座の力積の平穏性を高め(頑住吉注:運動量伝達の値が急速に上昇しない、ということのようです)、射手が射撃する際の平穏と快適性を高めるのです。後座後のバレルは緩衝装置の持つ作用で復帰します。

記者:サボ付き徹甲弾の発射能力のために「円筒形高性能銃口制退器」方案を放棄したというのは何故ですか?

王太平:まずこの弾種の性能と作動原理を理解してください。サボ付き徹甲弾薬はサボ付き徹甲弾頭を装備した弾薬です。多くは大口径機銃に用いられ、普通の鉄鋼弾と同じ作用を持ちます。サボ付き徹甲弾頭は徹甲弾芯とサボからなっています。発射時にサボはボア内にはまりこんで気密を行い、またライフリングによる回転を弾芯に伝達します。弾芯は装甲貫徹に用いられ、その円柱部の直径はバレルの口径より小さいです。口径が小さくてもライフリング回転によって安定する大口径特殊弾薬ということです。徹甲弾芯は比重が比較的大きい材料(タングステン合金)で作られるのが常で、このため銃口部における運動エネルギーや弾薬の特性等が同じという条件下で、サボ付き徹甲弾は普通の徹甲弾と比較して初速が高く(弾頭質量小)、より大きな弾頭断面積あたりのエネルギー(弾頭が飛行状態で持つ瞬間的運動エネルギーと、その最大の横断面積の比が示す値)を持ちます。このためその装甲貫徹力はより強くなります。目標に命中した時、装甲貫徹作用が高速で衝突することによって行われるため、硬質材料は高温を発し、装甲貫徹後、生み出された高温は弾芯の破片にさらに目標に引火させる作用を持たせます。徹甲弾芯のサボには全体を包むものや尾部のみを包むもの等の形式があります。全体を包むものは一般に弾頭の外形を持ち、非金属材料で花びらのような形にあらかじめ作られ、弾芯を包みます。弾頭が銃口を離れた後、遠心力と空気抵抗の作用下で、サボは自ら花が開いたようになり、分離、脱落します。サボが離脱、分離するため、弾頭の射撃精度への影響は比較的大きくなります。サボ付き徹甲弾は火砲に多く用いられます。装甲貫徹力が顕著なため、1970年代には大口径機銃にも使われ始めました。

JS 12.7mmスナイパーライフルは我が国の84式12.7mmタングステン弾芯サボ付き徹甲弾を発射することができます。この弾薬の弾頭重量は28g、タングステン合金の弾芯は直径8mm、重量は22.5g、初速は1150m/s、圧力は324MPa、100mの距離で15mm厚、傾斜45度の合金鋼板を貫通できます(頑住吉注:ここによれば、米軍の同種の弾薬は弾頭重量約23g、初速は1200m/sに及ぶとされています)。JS 12.7mmスナイパーライフルを使って装甲車両に対する射撃を行う際は、良好な装甲貫徹性能を保証し、より良好な破壊効果を達成するため、使用弾種の選択上、サボ付き徹甲弾がまず推奨されます。

記者:JS 12.7mmスナイパーライフルに使用されるのは国産の4〜12倍連続変倍スコープで、機械式サイトは配備されていません。こういうサイトの選択をしたお考えをお話しください。

王太平:12.7mmスナイパーライフルは遠距離打撃武器に属します。機械式サイトは天気および環境要素の影響をより大きく受け、視野が狭く、射撃精度に対する影響も大きいのです。スナイパーライフルとしては、遠距離における隠蔽された射撃、初弾で目標に命中することが強調され、機械式サイトではこの要求を達成するのは困難であり、現代戦では対スナイパーの戦例も多いのです。機械式サイトを使って狙撃を行う危険は非常に大きく、このため存在意義も大きくなく、スコープが破損した情況下で応急的に使用されるだけです。連続変倍スコープは射手の異なる距離での目標視認能力を高めることができ、視野の大小が調節でき、移動目標に対する照準能力が固定倍率のスコープより優れています。ただし倍率の調整過程でスコープの零位偏位(頑住吉注:英語ではzero shift、日本語では零点移動というそうです)が射撃精度に対し一定の影響を与えもします。

記者:王太平総設計者が我々の取材を受けてくださったことに感謝します。また建設集団軍品研究所が今回の取材に大いに力添えをしてくださったことに感謝します!

記者の感想

(頑住吉注:この後、展示会においてこの銃が搭載された状態で展示されたという、建設集団の子会社製オフロード車の評価等の記述があるんですが、全く関係ないので省略します)

この他、記者はJS 12.7mmスナイパーライフルの設計にはまだいくつか、議論の余地のある点があると考える。

(1)レシーバー中部に取り付けられたピカティニーレールが短すぎる。ストックが固定なので、比較的短いスコープを取り付けた際に、射手の目とスコープの距離が遠くなり過ぎ、射撃姿勢が快適でない。

レールを後方に延長することを提案する。

(2)銃にチークピースがない。射手は射撃時、顔を直接冷たい鋼製のレシーバーに接触させることになり、特に低温の条件下では快適でない。もしチークピースがあれば、射手は自分の習慣に従ってチークピースの位置を調節でき、最も快適な射撃姿勢が取れ、射手による射撃精度への影響が最小にまで減ることとなる。喜ばしいことに、記者の考えと図らずも一致して、設計者たちもこの銃のために可動式チークピースを追加する設計を準備中である。

(3)レシーバー上のコッキングハンドルが位置する開口、エジエクションポート、コッキングハンドルの後退をガイドする開口が一体となっており、レシーバー内の多くの部品が外部に露出している。もし砂嵐、土埃等の環境下であったとすると、銃の射撃信頼性に大きな影響を受けるし、見た目もよくない。レシーバーにダストカバーを追加するなどの措置を提案する。


 中国製銃器のデザインは昔と違ってかなり洗練されてきていますが、例えば92式拳銃にしても微妙に野暮ったさを残している気がします。しかし個人的にQLZ87式グレネードランチャーやこのJS 12.7mmスナイパーライフルのデザインはかなりカッコいいと感じます。JS 12.7mmスナイパーライフルは、昔作ったことのあるデクチャレフ対戦車ライフル(PTRD1941)の現代版っぽい印象でもあります。

 設計者も謙虚で好感の持てる人柄のようですが、「何故高性能マズルブレーキを使用するとサボ付き徹甲弾が発射できないのですか?」という質問に対し、サボ付き徹甲弾の説明を丁寧にしているうちに忘れてしまったのか(笑)、質問自体に答えていません。これは、離脱しかけたサボがマズルブレーキの出口にぶつかってしまうから、という理由でしょう。これでバレルが破裂することはないでしょうが、不規則な力が弾頭に伝達され、精度が極端に低下してしまう、ということではないかと思われます。

 個人的にこの銃のコンセプトにはやや疑問があります。総設計者は「何故手動にしたのか?」という質問に対し、「スナイパーライフルの戦術思想が強調するのは初弾命中です」と語り、命中精度を優先させたからだとしています。しかし彼が、これが使用できることが大きなセールスポイントだとしているサボ付き徹甲弾は通常弾より命中精度が劣ります。これの発射能力を持たせるためにマズルブレーキの性能を犠牲にし、さらにその結果としてバレルが大きく後退する緩衝システムを導入しましたが、スコープの乗っているレシーバー内でバレルを移動させるにはどうしてもいくらかのクリアランスが必要になりますから、このシステムも命中精度にとってはマイナスです。スナイパーライフルとして命中精度を最優先にするのならサボ付き徹甲弾の使用をあきらめて高性能マズルブレーキを使用し、バレルは固定とすべきだったでしょうし、サボ付き徹甲弾によるアンチマテリアル兵器としての使用を優先するのならばより攻撃力が大きく、多少の命中精度低下を連射で補えるオートにすべきだったのではないでしょうか。要するにどっちつかずのコンセプトという気がするのです。

 ちなみに今回の内容とは直接関係ないんですが、小火器に使用されることは珍しい液圧緩衝装置を使用する銃に以前触れたことがあります。それはH&K P7K3です。この銃は.22LR、.32ACP、.380ACPという3種の弾薬を使用できるスクイーズコッキング式ピストルですが、9mmパラ等を使用する他のバリエーションとは違って低威力の弾薬を使用するため、ストレートブローバックになっているのでガスロック機構が不要になります。そこでH&Kの技術者はここに油圧バッファーを設置しました。以前触れた時はいくら検索しても画像が見つからなかったんですが、今回ずいぶん時間がたって再度検索したところ、画像が見つかりました。いつまでも見られるとは限らないので失礼して無断拝借いたします。



 内部のスプリングが見えているようですが、シリンダーは透明な樹脂なんでしょうか。いくらなんでも耐久性に問題が出ると思うんですが。


















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