型の分割

 実銃では一体であり、トイガンとしても1点として機能するパーツは一体で成形されることが望ましいですよね。で、低価格のトイガンやプラモデル、ガレージキットなどはモナカ構造であることが多く、フレーム、スライドが一体成形であるというのはそれだけでセールスポイントになったりもします。ガレージキットを作るシリコン型は柔軟なので、金型より無理がききますが、それでも型の持ちなどを考慮して成形されるキットはけっこう細かいパーツ構成になっていることが多いわけです。ただ、私の場合、自己流でかなり無理な型を作って複雑なパーツを一体成形してしまう傾向にあります。これは全て自分がやる作業ということで、担当の業者に文句を言われることがないということもありますし、自分自身がガンマニアとして多少無理をしてもリアルな構造にしたいという気持ちもあります。また、半分程度の製品を自分で完成させて販売する関係上なるべく完成させやすい形にしたいという理由もあります。精度の低いプラキャストの場合、分割するほど接合部に外観や作動上の問題が起きやすいですから。

アッパーレシーバー型1アッパーレシーバー型2

 9mm機関けん銃のアッパーレシーバーはこんな5ピースの型になっています。左右分割の型から取り出した後、下、上、前方向に抜く形です。

フラッシュハイダー型1フラッシュハイダー型2

 フラッシュハイダーはこんな4ピースの型です。これも2分割の型から取り出した後、中身を前方に引きぬき、まわりをおおってガスポートを造形する部分をペロリとむくような感じです。

 アッパーレシーバーはともかく、フラッシュハイダーは金型だと外側は放射状に細分しなければ抜けないわけで、こんなところはシリコン型の便利なところですね。ただ、無理をする関係上型にストレスが多くかかって傷みが早くなる、気泡が抜けにくい部分ができやすいといった問題もあります。

2002年1月12日追加

九四式の型は過去最大の10ピースという無茶なものになりました。どういうものか説明します。



まず型を左右に開いたところです。



グリップフレーム下部の内部を下に抜きます。



フレームのアーチ部分内部を後方に抜きます。



マガジンセーフティが入る部分内部をトリガーガード内に抜きます。



その上、トリガースプリングの受け部を前に抜きます。この部分は上下一体では抜けませんでした。



スライドとかみ合うレール内部を前に抜きます。



ロッキングブロックが入る部分の内部を前上方に抜きます。



フレーム内部の大部分を前上方に抜きます。



ロッキングブロックが入る部分の下部分を上に抜きます。上下が一体だと、抜く方向が違うので別にせざるを得ませんでした。



上下はこんな風に両者の弾性、摩擦で保持され、抜くときは上だけ抜けて下は取り残されます。

2002年12月28日追加
 スライドのレールというものは型で作りにくい部分です。メーカー品ではフレームのレールとかみ合う凹を後から機械加工で削っているものが多いようです。コストがかけられない低価格商品ではスライドがモナカになっていることもあります。アカデミーのPPK/Sの場合は、低価格でありながら一体成形のスライドを持ち、後加工なしで作っています。この製品は実銃と違い、スライド内部に凸があり、フレームとかみあっています。これでも型で作りにくいことには違いありません。アカデミーがどういう方法をとっているのかは不明ですが、これをベースとしたマカロフを作るときどうやって抜いたかを説明します。

 スライドを上下逆にした断面図です。基本的にスライドの断面はコの字型ですから、ここでいうと上に抜くしか方法はありません。しかし、上に抜くにも凸が邪魔で単純な型では抜けないわけです。そこで、このような型としました。型を左右に開いてこれらをまず取り出します。次に青い部分を抜きます。そして、黄色い部分を内側にたわませて抜くというわけです。これは柔軟性のあるゴム型だからできることで、アカデミーはこれよりずっと複雑な型で抜いているはずです。
 これを書いているのはHK4の製作中ですが、HK4もこれと似た形なので、このような型で抜くことになるでしょう。

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