型取り

 シリコンゴムによる型取りについて説明しましょう。皆さんも場合によっては自作パーツをイベントなどで売って小遣い稼ぎができるかもしれません。そうでなくとも、苦労して作ったパーツをゲームで使いつぶすのがもったいないときや、さほど強度、精度の必要ないパーツを金属からキャストに替えて軽量化するなど応用はいろいろできるはずです。私も最初はホビージャパン社の「スーパーモデリングマニュアル2」を見て勉強しましたので、基本的なことはそちらも参照してください。ここでは主に銃関係に応用できるテクニックや自己流による手抜き方法についてお見せします。

 立体的なパーツは後述の粘土埋めによって型取りするのが基本です。でもこの作業はかなり面倒です。フィギュアやスケールモデルに比べれば、銃関係のパーツは形状が単純で直線部分が多いので、こんな方法が多用できます。


イラスト1
 5mm厚のスチレンボードに両面テープを貼り、そこに複製したいパーツ(青い部分)を貼りつけます。また、周囲にずれ止めになるもの(黄色い部分)を貼ります。私はタミヤのスチロール角棒を使っています。周囲もスチレンボードで覆います。下になる板が例えば100mm角だったら、100mm2枚、110mm2枚のスチレンボードで覆えばぴったりになるわけです。スチレンボードはガムテープで貼り合わせます。 

イラスト2
 シリコンゴムを流します。 

イラスト3
 硬化したらスチレンボードをはがします。このときパーツがスチレンボードにくっついてシリコンゴムからはがれてしまわないよう注意します。最初から両面テープに離型剤を軽く吹いて接着力を弱めておくといいです。スチロール角棒は取り去り、シリコンゴムの表面にバリアーコートを塗ります。これをしないと最初に流し込んだシリコンゴムと次に流し込んだシリコンゴムが一体になってはがせなくなります。バリアーコートは専用のものでもいいですが、私は「スーパーモデリングマニュアル2」にしたがって床用ワックスを使っています。周囲を最初に使用したのと同じスチレンボードで巻くように覆います。輪ゴム等でしめつけるなどしてシリコンゴムが下にもれないようにして、2回目の流し込みを行います。

イラスト4
 硬化したら両シリコン型をはがし、パーツも取り去ります。図が複雑になるので省略しましたが、ずれ止めのスチロール角棒と同じ形でキャストの流入経路も貼っておくといいです。こちらは2回目のシリコンゴム流し込みのときも外さずにおけばきれいで内部に気泡が生じにくく、スムーズに流入する経路ができます。流入経路、空気抜き経路を彫刻刀などで完成させます。型の両側からスチレンボードではさみ(うち1枚は最初にパーツ等を貼ったものが使えます)、輪ゴムなどでしめつけてキャストを流し込みます(赤い部分)。スチレンボードはガムテープでカバーして、こぼれたキャストが後で簡単にはがせるようにしておくといいです。なお、スチレンボードではさむ方法で大丈夫なのは100mm角くらいまでで、それ以上大きくなると中央部が水圧(というかキャスト圧)でふくらんでしまいますからもっと硬い板を使うなどバックアップしてやる必要が生じます。

イラスト5
 流入経路はこのように下に流れ込んでから徐々に上がっていく形が気泡が入りにくい基本形です。この場合、型を時計方向に少し傾けて流し込みます。気泡ができやすい複雑な造形をなるべく下にして気泡が抜けやすくしてやるわけです。8割くらい流し込んだところでいったん中断し、型を傾けてトントン叩き、気泡を追い出してやるのも有効です。 

イラスト6
 リボルバーのグリップなどの場合はネジ穴を裏からテープでふさいだり(黄色い部分)、一部を粘土で埋めたり(茶色い部分)する必要が生じる場合があります。1回目のシリコンゴム流し込みの後でテープや粘土を取り去って2回目の流し込みを行うわけです。このほか平面から突出している部分のスチレンボードを切り抜くなどの工夫が必要になる場合もあります。やや面倒ですが、全て粘土埋めによって行うよりはるかに楽です。

写真1
 9mm機関けん銃の小パーツです。一部粘土埋めしているのが分かるでしょうか。また、2パーツはよせ型(後述)になっています。流入経路にはスポンジの角材を使っています(黒い部分)。経験上、銃のパーツは半数以上がこうして粘土埋めを省略して型取りすることができます。この方がずっと簡単ですし、パーティングラインがエッジにくるので後の処理も楽でいいことずくめです。

イラスト7
 平面部分の少ないパーツの場合など、どうしても粘土埋めが必要になる場合もあります。こんな風にパーツを油粘土に半分埋没させてシリコンゴムを流し込むわけです。パーティングラインを自分で設定するわけで、パーツと粘土の接点をなるべくまっすぐ、きれいに仕上げる必要があります。また、1回目のシリコンゴム流し込みの後、粘土をきれいに除去しなければなりません。非常に面倒です。そこで…。

写真2
 こんなものがあります。(有)白光化学研究所が製造している「コピック」という型取り材です。粉末を水で解いてしばらくするとプリン状に固まって型になるものですが、気泡が入りやすく、銃関係の型取りには向きません。

写真3
 このようにコピックをパーツの周囲に流し込み、粘土埋めの代用にすることができます。こうすれば自然にパーティングラインは直線になります。粘土埋めよりはるかに楽で、はがすのも楽です。パーティングラインはカッターなどではみ出したシリコンゴムを切り取って調整します。ずれ止めは1回目のシリコンゴム流し込みの後、流入経路は2回目の後に彫刻刀で彫ってやります。上のイラストのような場合なら、少し反時計方向に傾けてやればいいわけです。ただし、これは明らかに手抜き手法であり、ていねいに粘土埋めする方がパーティングラインはきれいに仕上がります。ならやるな? うーん。

イラスト8
 上のパーツ(マガジン延長部)は3ピースの型(よせ型)になっています。2分割の型で抜けないパーツは、まず黄色い部分のようにテープを貼り(巻き)、そこにシリコンゴムを流し込みます。硬化したらテープをはがしてずれ止めを彫り、ワックスを塗ります。これを上と同じ方法で型取りするわけです。


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