キングコブラ より詳しい説明

比較
レミントンダブルデリンジャー、プレッシンとキングコブラ

 今回製作に当たって、ドイツの軍事雑誌「WAFFEN REVUE」84号を主に使用した。この本ではキングコブラをアメリカ陸軍のサバイバル兵器としているが、内容等から見てこれは疑わしいと思う。しかし、それなら何故一般に入手困難と思われる.22USサバイバルライフル弾仕様のものが存在するのか(ベースとなった市販の.22ホーネットもたぶん使用できるが、弾頭が長いので銃のさらに先に突き出してしまう)といった疑問もある。アメリカのメーカーが米軍用に作った制式兵器ではあるまいと思うが、アメリカの何らかの意思によって東南アジア方面で作られた、非公式に米軍が特殊目的に使用した、アメリカが対立陣営内の反体制勢力に供給したといった可能性はあると思う。
 発火はストライカー式で行われ、連発ピストルとしては考えうる限り最も単純な構造で、パーツ点数も少ない。バレルロックを解除するとまるでライターのような形に開き、サイズも大きめのライターとさほど変わらない。後方が開放されたチャンバーに.22マグナムなどの使用弾薬を挿入する。製品では.22LRのダミーカートを付属している。オートは無理だが、単発、マルチバレル、リボルバーなどの場合は.22マグナム用の銃には.22LRも使用できる。ただし、.22マグナムの方がわずかに径が大きいため、.22LRの薬莢は発射時に裂けることがあり、パワーや命中精度は低くなる。そもそも何故入手しやすい.22LRでなく、入手が比較的困難な.22マグナム仕様になっているのかも疑問だ。.22マグナムは拳銃弾としては非常に初速が速くて貫通力が高いが、これはその能力が生かされた場合の話で、この銃の場合バレルとして機能する長さがほんのわずかしかなく、マズルフラッシュが大きくなるばかりで威力は.22LRとそう変わらないのではないか。増して.22USサバイバルライフル弾の場合はバレルが実質ゼロだから、本来ならM16用5.56mm弾の7割くらいの威力があるはずだが、この銃に使用したのでは威力は期待できないだろう。あるいは横転弾によってショッキングパワーを得るとか、命中による効果より物凄いフラッシュと発射音で敵をひるませるつもりだったのだろうか。この銃はどう考えても至近距離用だから、多少大型化しても比較的大口径でストッピングパワーが大きい.32ACPあたりを使った方が得策だったのではないかとも思う。バレルはスムーズボアで、「WAFFEN REVUE」は保持しにくい銃から撃つためにリコイルを弱める狙いからだとしている。
 コッキングノブはねじ込みで、写真によってこの方向がばらばらなことから、単にねじこむだけで定位置(すべり止めが前方にくる)で止める機能はないらしい。これを後方に引くとストライカーはコックされる。このとき発射レバーの先端は上昇する。先端を押すとストライカーは前進し、発射する。発射は個々にも、同時にも行うことができる。
 セーフティはない。先端が上昇した状態の発射レバーは簡単に押されてしまうから、装填、コックした状態での持ち運びは自殺行為と思われる。装填しないで持ち運ぶのが安全だが、発射にかなり時間がかかってしまう。装填し、コックせずに持ち運ぶのは常識的には危険すぎるが、リムファイアはセンターファイアより強い打撃がないと発火しないので、場合によっては許されるかもしれない。疑問なのは、発射レバーの先端の下に「つっかえ棒」を入れ、ストレート前進、または回転によって解除するセーフティを設けることはごく容易で、パーツも1点の他ネジ1本、スプリング1本、プランジャー1個という少数で済み、安全性は飛躍的に向上するはずなのに、何故そうしていないのかという点だ。あるいはこれは携帯用の通常の銃ではなく、トラップなのではとも考えたが、事実は不明だ。
 エジェクターのようなものはないので、発射後は細い棒のようなもので空薬莢を突き出す。時間がかかるが、元々リロードして射撃を続行するような銃ではないので問題ないのだろう。
 過去に筆者が作った銃の中では、プレッシンがいちばんよく似ている。キングコブラに比べるとプレッシンは無意味に複雑で製造困難のように思える。おそらく重量もかなり大きいはずだ。プレッシンは2段階のトリガー(の役目をするレバー)によって連発が可能だが、緊急時にトリガーコントロールができるかは疑問で、実質的には2発バースト1回しかできないのではないかと思うが、キングコブラなら連射も斉射も容易なはずだ。また、トリガーを握りこむことで軸線がずれやすいプレッシンに比べ、キングコブラの方がいくぶん命中させやすいと思われる。使用弾薬をプレッシンと同じ.32ACPとし、ごく簡単なセーフティを追加すれば、キングコブラは簡単にプレッシンより優れた、しかも生産性のいい銃になりうると思う。


上から側面

上、横から見たところ。形状は単純そのもの。


前方より

前方から見たところ。実銃もスムーズボアなのでライフリングの表現はない。バレル内にはウェイト兼安全対策として6mmスチールボールを押し込んで接着してあるので、ドリルで穴を開けることはできない。刻印は実銃通りになっている。


片方のストライカーをコック

コッキングノブを後方に引くとコックされ、対応する発射レバーは前方が上昇する。


バレル開き

バレルラッチを押すと本体前部(バレル)が開き、.22LRのダミーカートが挿入できる。


キングコブラ使用状態

おそらく保持、発射はこのように行ったのだろう。なんだかテレビのリモコンのようだ。リコイルはきわめて受けにくいと思われる。。


組み立て説明

@     パーツを確認してください。本体前部(バレル)、本体後部(フレーム)、バレルラッチ、ストライカー2個、発射レバー2個、コッキングノブ2個、ブリーチ前面、ダミーカート2個(以上プラキャスト)、2mmスチロール丸棒、1mmピアノ線、6mmスプリング、3mmスプリング、2.5mmスプリング、2mmネジ。

A     プラキャストパーツの注入口、バリ、パーティングライン、気泡などを処理してください。貫通すべき穴が貫通していない場合は適宜開けてください。

B     mmスプリングを半分に切断し、切断面を奥にして本体後部内の穴それぞれに入れてください。その上からストライカーをネジ穴が上のスリットから見えるように入れ、ここにコッキングノブをねじ込んでください。

C     発射レバーの穴に長さ7mm程度に切断した2.5mmスプリングを入れ、本体後部にセットして1mmピアノ線を左右に貫通させることで固定してください。ブリーチ前面をセットして2mmネジで固定してください。ストライカーのコック、レットオフの機能を確認してください。なお、発射レバーの先端の高さが揃わない場合は、発射レバー後下部のストライカーと接する部分にプラ板を貼る、または削るなどして揃えてください。

D     本体前部のスリットに3mmスプリングを入れ、その上にバレルラッチを入れて2mmスチロール丸棒で固定してください。

E     本体前部、後部を2mmスチロール丸棒で結合してください。

F     全体の機能を確認し、塗装して完成です。


製作記

7月26日

キングコブラ製作途中

 今回は製作途中の報告は1回だけですね。パーツはこれだけです。ただ、ストライカー、トリガーの役割をする発射レバー、コッキングノブの3パーツはあらかじめ型で複製して2個を原型として使います。キングコブラは3連発のものがいちばんよく知られていると思いますが、今回の資料は2連発のものなのでそうなっています。この方がパーツが少なくて作りやすいですし、肉厚もとれて安心です。ちなみに今回は実物の刻印が不ぞろいで汚いということもあって、刻印を久しぶりに手で打ってみました。リアルに汚いです(笑)。
 ブラックホールまでに試作品は完成するはずですが、さすがに販売までは無理そうです。,22マグナムのダミーカートというものはないはずなので、.22LRを使おうと思ったんですが、実は.22LRも普通には流通していないのだそうです。私が持っているのは以前ブラックホールで買ったものです。原則として、ここから型取りしたプラキャストのカートを付属しますが、ブラックホール初日までに注文をいただいた方のみ現場で買った実物ダミーを付属することにします。ただ、現場でいつもどおり売っていればの話で、売っていなかったり、数が足りなければプラキャストのものになるかもしれません。価格は完成品10,000円、キット5,000円くらいを予定しています。

7月28日


試作第一号が完成しました。というわけで

 ウェイトを入れる場所が少ないので軽くなりすぎるかとも思ったんですが、まあまあの重量感が出ました。ヒンジ部分もへなへなする感じはほとんどなく、バレル部のロック、コック、レットオフもパチンと切れがよく、自分としてはなかなかいいものができたと思います。


2003年8月23日追加
 写真週刊誌「FLASH」1998年7月7日号に、当時世界各地の空港で発見されて問題となった、ブルガリア製キーホルダー型ピストルに関する記事があり、キングコブラについても触れられていました。5年以上前のもので、おそらく国会図書館くらいでしか読めないと思われるので、キングコブラの写真キャプションのみ引用します。

「箱型ピストル 正式名称「キングコブラ」(通称ベトコン銃)。ベトナム戦争中にベトナムやフィリピンで製造された銃。今回話題になった“キーホルダー型”とよく似たボックスタイプのピストルで、サイズはショートホープくらいの大きさであるが、22マグナム3連発と強力で、殺傷力は高い。実際にベトナム戦争でも使用された。先週、日本の暴力団関係者から同型のものが押収された」

ということです。この記事は「写真・床井雅美」となっており、たぶんキャプションの内容も床井氏のチェックを受けていると思います。ここではベトナムでも作られ、ベトナム戦争で使用されたことが断定してありますね。また、「通称ベトコン銃」というのを見ると、どちらかというと北側が作ったような感じです。北側がゲリラ戦で使用するものに「US ARMY」といった、混乱を生むようなでたらめな刻印を打ったというのも考えられる話だと思います。また、M4、M6といったサバイバルライフルを装備した米軍機が不時着し、.22USサバイバル弾薬が北の手に渡ることは考えられます。これらは比較的少数でしょうから本格的な戦闘には使用しにくくても、少数の弾薬しか消費しない特殊偽装ピストルの弾薬としては有効利用できるはずです。こう考えると「北が作った」説も捨てがたい気がしてきます。真相はどうなんでしょうか。


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