「遼寧艦」は「クズネツォフ」空母とここが違う

 「遼寧艦」の前身「ワリヤーグ」はロシアの「クズネツォフ」の同型艦ですが、元々一部差異もあり、また改装過程で変更が加えられた点もあります。そうした相違点を詳しく解説したページです。

http://military.china.com/important/11052771/20121003/17460646.html


遼寧艦の4大改変:スキージャンプ甲板の角度が姉妹艦に比べ大きくされている

(頑住吉注:各ページの画像のキャプションは「遼寧艦」と「ロシア唯一の空母」だけで、どちらなのかは見てすぐ分かると思うのでいちいち触れません)

我が国初の空母遼寧号はすでに最近正式に海軍に引き渡された。これにより我が国は世界で第10番目の現役空母を持つ国になり、最後に空母を持った国連安保理常任理事国ともなった。周知のように遼寧号は旧ソ連の未完成のワリヤーグ号空母から改装されてできた。その「姉妹艦」であるロシアのクズネツォフ号空母に比べ、遼寧号はどんな改変を行ったのか? また我々は遼寧号の勇猛勇壮な画像の中から、どんな中国空母の発展に関する重要な情報を得ることができるのか?

相違点その1

マストが大きな円筒形のものに取って代わった

艦橋がすっきりしたものに変わった

遼寧号空母は旧ソ連の未完成のワリヤーグ号空母から改装されてできた。ワリヤーグ号は設計上、ロシアのクズネツォフ号空母と同じ級別に属する。このため空母のおよその外形、全長、全幅、排水量など基本指標上、両者には大きな差異はない。世界の現役空母の中で、クズネツォフ号空母の寸法と排水量はアメリカのエンタープライズ級とニミッツ級原子力空母にすぐ次ぐものである。最近あるニュースは、アメリカのエンタープライズ級原子力空母が2012年中に間もなく退役すると明らかにした。ならば、クズネツォフ号の級別の大型空母(遼寧号を含む)がすでに揺るぎなく世界第2の地位を占めたことを確定できる(頑住吉注:2015年にはアメリカ次世代空母が登場する予定ですがね)。

クズネツォフ号は通常動力を採用しているので、空母の飛行甲板上の艦橋はアメリカ、フランスの原子力を採用した空母の艦橋に比べやや大きい。これは単に空母が使用するボイラーの煙突にスペースを残してやる必要があるからだけではなく、1960〜70年代において旧ソ連の電子工業のレベルがまだ電子設備の小型化および集成化を実現できず、大きな体積をもって設計の要求を実現するしかなかったことの反映でもある。

だが遼寧号とクズネツォフ号の画像を仔細に対比すると、我々が次のことに気付くことは難しくない。遼寧号の艦橋にはクズネツォフ艦のまるでジャングルのように立てられた各種アンテナがなくなっている。艦橋上面の大きな円筒がなくなり、これに取って代わっているのはマストで、その上にあるのは国産新型レーダーである。艦橋の元々の4面スカイセントリーフェイズドアレイレーダーも、中華イージスが装備しているのと同じ国産アクティブフェイズドアレイレーダーに交換されている。艦橋全体の窓は閉じられ、中国海軍の淡い灰色の標準塗装がなされ、よりすっきりしているのが目立つ。

艦橋の変化以外にも、クズネツォフ号空母が本来甲板周囲に装備していたAK-630および「カシタン」近接防御システムが、遼寧号では国産ミサイル、速射砲近接防御システム、対潜ロケット発射装置、電子ジャミングデコイ発射機に換えられている。またクズネツォフ号空母の甲板上に元々あった「花崗岩」大型対艦ミサイル発射装置もなくなっている。

以上の数点からは、旧ソ連の空母発展におけるいくつかの回り道がすでに中国によって真面目に研究され、旧ソ連空母の「まだ派手さが足りない、対艦ミサイルをかき集めてこい」の悪い結果がすでに放棄され、中国空母の発展がすでに艦載機による攻防をメインとする正確な軌道に乗ったことを見て取ることができる。

(頑住吉注:これより2ページ目)

相違点その2

スキージャンプ角度が大きくされた

作戦機能が高められた

クズネツォフ号と当初のワリヤーグ号は同一クラスの艦で、いずれもスキージャンプ式甲板による発艦方式を使用しているが、両者の前甲板の登り坂の角度にやや違いがある。

旧ソ連がクズネツォフ号を設計した時、保守的に甲板のスキージャンプ角度は12度に確定されていた。だがクズネツォフ号空母の建造後数年のテストの中で、試験に参与した飛行員の意見と試験結果の分析を根拠に、もしスキージャンプ角度を大きくすればさらに一歩艦載機の発艦の安全性と重量搭載能力を高めることができ、全体的作戦性能の向上に有利だということになり、そこでワリヤーグ号のスキージャンプ甲板のジャンプ角度は14度まで増やされた。このようにすると、同様にスホーイ-33艦載機を使用する条件下で遼寧号の甲板は10%の発艦重量を増加させることができる。

(頑住吉注:これより3ページ目)

相違点その3

船室の構造に変化あり

満載排水量の増加

外形以外にも、遼寧号の内部はさらに分析研究に値する。ロシアのクズネツォフ号空母の関連の状況に基づき、我々はこのように大型の空母の内部の複雑さをもうかがうことができる。

クズネツォフ号空母には全部で7層の甲板、3,800の船室があり、1900名の艦員、17機の固定翼戦闘機、17機のヘリを収容できる。ワリヤーグ号(すなわち現在の遼寧号)はクズネツォフ号と比べて艦体のレイアウトなどの方面に大きな差異はないが、内部の船室構造と艦内の燃料搭載量の変化ゆえに、満載排水量が6,000トン余り増加している。同時に、ワリヤーグ号は全く新しい総段モジュール化建造方法を採用しており、全艦が全部で1,059の建造分段および装備ユニットからなり、クズネツォフ号に比べ35%減少している(頑住吉注:艦を構成する個々のユニットが、でしょうか)。各種の大型機械は全て一体のユニットの方式で艦内に入れて装備されており、設備の完全度、装備および艦内システム集成能力がいずれも非常に大きく向上した。

艦体の防護方面では、ワリヤーグ号にはクズネツォフ号との細かい差異がある。ある資料は、クズネツォフ号から新型水面下防護構造が採用されて全艦の坑打撃能力と生存性が向上したことをはっきり示している。外から中へとそれぞれ、空室(拡張室)、吸収室(内部にオイル室を貯蔵)、濾過室(各種パイプラインを装備)となり、しかも厚さ120mmの高強度複合防弾装甲が設置されている。ワリヤーグ号はクズネツォフ号の防護構造を継承すると同時に高強度複合防弾装甲は継続して採用していない。ワリヤーグ号のために200トン近い構造重量が節約されたが、防護能力は下降していない。

遼寧号の就役の数日前、インドがロシアから購入した中古空母「ヴィックラマディヤ」号が、試験航海中に突然ボイラーの故障を発生させ、就役時期の再度の遅延がもたらされた。空母には強大ではあるが信頼性のない動力は絶対不可だということが分かる。世界の現役空母から見ると、アメリカとフランスの空母はいずれも原子力動力を採用しているが、2万トン前後の小型空母は一般にガスタービンエンジンを採用している。だが大型空母がもし原子力動力を採用しないなら、蒸気動力は非常に適した選択であり、技術的にも相対的により成熟し把握されている。当然技術の成熟というのは原子力動力との比較で言っているのでもあり、もし蒸気動力ならば、空母はトン数が大きく速度が速いので、ボイラーに対する要求も非常に高くなる。もし技術的難関を突破していないと、直ちにインドのような笑い話が起きることになる。

将来の発展から見れば、空母の原子力動力化は趨勢である。甚だしきに至っては何年か前ロシアからもクズネツォフ号空母が原子力動力に改造されるとの情報が伝わった。だが実際にはこれは完成不可能な任務で、その難度は改めて新たな空母を建造するのを下回らない。遼寧号に関して言えば、蒸気動力はすでに完全に使用に適し、この方面における冒険は必要ない。

(頑住吉注:これより4ページ目)

相違点その4

海上での交代勤務が独特

スーパーパートナーが身近にあり

遼寧号の就役現場で、空母自体以外に我々はその身辺に1隻の白色の艦ナンバー88の大型艦もいることに注意を向けた。艦ナンバーから見て、この艦は訓練艦に類する補助船に属すに違いない。何故なら海軍の序列の中にはさらに81鄭和号航海訓練艦、82世昌号国防動員艦があるからである(頑住吉注: http://baike.baidu.com/albums/6038889/6113566/0/0.html#0$bd704260ccaad1b78db10dc8 どう見ても軍艦には見えません)。

ネットに流れ伝わる88艦の画像から見て、その非常に大きい艦体周囲には密に窓と手すりが配置され、視線の及ぶ範囲内にはいかなる武器装備もなく、甲板上方はがらんとして平らで、赤と緑が交互に並んだプラスチックの陸上競技用トラックが敷かれ、さらにはバスケットボールのゴールさえある。これは鄭和号、世昌号と大きく異なっている。あるネット仲間は、外形から内部の施設までを見て、88艦はむしろ海軍版の巨大定期客船のようだと考えている。

定期客船に乗っての旅行は近年すでに国内の人の休暇の、1つの流行の形式となっている。巨大定期客船を海軍空母艦員の遠海学習と休養施設にし、さらには空母の戦闘力の生成を素早く実現するというのは、世界の海軍発展の中でも唯一のものである。当初の旧ソ連海軍空母には遠洋においてこのような待遇はなかったし、現在のクズネツォフ空母でさえこのようなスーパーパートナーは持っていない。

現代空母の発展は、空母自体の技術的土台に制限されるだけでなく、海外基地の数量や配備状況にも直接の関係がある。アメリカが世界最強の空母戦力を持つことができるのは、アメリカ軍の世界にあまねく及ぶ海外基地と密接な関係がある。アメリカ軍空母は遠海訓練、あるいは作戦行動いずれにおいても基地で補給が得られ、艦員も陸地で休養できる。ひるがえって見ると、旧ソ連の空母の発展は、海外基地の支えがなかったために、毎回の空母の遠海訓練、艦員の長期にわたる海上生活は無味乾燥で、やがて苦しくて耐えられないものになった。現在のロシアのクズネツォフ号空母は基本的に地中海、黒海、バレンツ海付近に限定され、遠洋出撃はほとんど実現不能である。

だがそれぞれの国家が全てアメリカのように全世界の基地ネットワークを持てるわけでは決してない。88艦の出現は、新しい道を切り開いて探し出した空母の発展と基地の支えの間の矛盾の解決方法だと言うことができる。当然、88艦は海外基地の存在に完全に取って代わることはできないが、空母の陸上基地に対する要求を減少させることができる。定期客船による海上での勤務交代と陸上基地による勤務交代を組み合わせる方式を通じ、全体的な空母作戦群の戦闘力と対費用効果を高めることができる。結局のところ海外基地の費用は非常に高くなるのである。もしアメリカが近年海外基地の数を縮減していても非常に高いことに変わりはない。筆者は大胆に推測する。88艦の随伴保障モデルは中国海軍が創始しただけでなく、将来他国の海軍が学習する古典的案例になると。


 想像以上に興味深い内容でした。スキージャンプ角度が2度大きいなんて画像からはまず読み取れないでしょう。

 艦体のユニット化や防護システムについてはおぼろにしか分かりません。「拡張室」、「吸収室」、「濾過室」というのは対艦ミサイルの爆発の威力を削ぐための構造だと思うんですが。120mmの防弾装甲がなくなっているのに防護能力が下降していない理由に触れられていないのは不満ですが、まあ現在の対艦ミサイルの威力からしてメインバトルタンクの前面よりずっと薄い装甲などあってもなくても大差ないのかもしれません。

 「遼寧艦」の動力には諸説あり、ここでは蒸気タービンとされていますが、元々中身が空っぽの状態で牽引してきた廃船ですから、蒸気タービンだとしてもオリジナルではないはずで、どこから入手したのかが問題になります。

 本題と直接の関係がないような気もしますが「88艦」の話も非常に興味深いです。しかし多くの国から寄港を拒否されても大丈夫なように豪華客船もどきの軍艦を随伴させるより、日頃の行いを正す方が賢いやり方だと思いますが。






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