「中国の無人機は遅れている」に対する反論

 2つの記事を紹介します。まず「中国の無人機は遅れている」とする外国の記事、次にそれに対する中国の立場からの反論です。

http://military.china.com/important/11132797/20130709/17935212.html


外国の刊行物:中国の利剣無人機の設計は荒削りで欧米に匹敵し得ない

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「『利剣』の基本的空力外形はアメリカ海軍のX-47B、アメリカ空軍のX-45C、フランスの『ニューロン』無人機を参考にしたようだ。」)

【グローバルネット総合報道】 カナダの月刊「漢和安全保障業務評論」7月号の報道によれば、少し前に中国は洪都飛行機製造工場で「利剣」と呼ばれる攻撃無人機の地上展示を行った。「利剣」の基本的空力外形はアメリカ海軍のX-47B、アメリカ空軍のX-45C、フランスの「ニューロン」無人機を参考にしたようだ。「利剣」は現在若干の地上滑走試験を行っているだけのようであり、いつ試験飛行を行うのかはっきりしていない。

報道は、「利剣」は明らかに欧米の攻撃無人機のステルス性と張り合うことを希望しており、このためブレンデッドウィングボディを非常に強調し、X-47Bおよび「ニューロン」と同じく、やはり尾翼は設計されていない、とする。将来の海空軍の遠距離作戦攻撃任務は主にステルス無人機を運用して行われることになる。洪都飛行機社は主に練習機を生産している。このことからその未来の発展方向を見ることができ、同社がステルス無人機の発展を合わせ配慮する、この点は航空工業界の発展の一般的規律に符合する。ロシアの新世代ステルス無人攻撃機はミコヤン設計局によって研究開発が担当され、かつて実物大模型が展示されたが、試験飛行は全く行われておらず、地上滑走すらまだ行われていない。

報道は、「利剣」が使用するのはAL-31Fロシア式エンジンであると考える。AL-31Fエンジンはすでにスホーイー27SKおよび一連の殲ー11から殲ー16戦闘機までに使用されている。無人機に使用されるにあたり、尾部噴射管は何とこんなにも外部に露出して使用され、いかなる遮蔽式処理も行われていない。一方X-47B、「ニューロン」のエンジンの尾部噴射管には内蔵式のバイパスを湾曲、縮小させる新たな設計が行われ、かつ噴射口の温度を下げている。

報道は次のように考える。中国の設計者はまだ決してステルス無人攻撃機用のエンジンの遮蔽式設計手法を掌握しておらず、だからこそこのような荒削りが目立つのである。これは欧米の無人攻撃機に匹敵し得るステルス無人機ではない。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは本文の一部を切り取ったものなので省略します。)

報道は、AL-31Fが「利剣」に装備されており、さらに「利剣」の基本的寸法はX-47Bに近いはずだ、ということが分かる、と指摘する。外形上はアメリカ空軍が開発するX-45Cにより似ている。X-47Bが装備するのはプラット&ホイットニー社が生産するF-100-220U型ターボファンエンジンで、周知のようにF-100系列のエンジンは同様にF-16およびF-15戦闘機に動力を提供している。このエンジンはX-47Bの速度をマッハ0.9にまで到達させることができる。航続距離は3,889km、作戦半径は1,900kmに達する。同時にX-47Bは空中給油ができる。このことからX-47Bの作戦半径は基本的にかつてのF-117Aステルス戦闘機を超えている、ということが見て取れる。

また、エンジンの選択使用から「利剣」は大型化された攻撃無人機の設計概念を採用している、ということが見て取れる。ミコヤン設計局が設計したSkat攻撃無人機はRD-33エンジンを採用しており、すなわちミグー29が採用するエンジンである。現代の欧米の攻撃無人機の航続距離に比べれば短いと思われる。

報道は、相当に荒い画像に依拠すれば、「利剣」に空中給油管は見いだせない、とする。中国はステルス無人機のために相当多くのGPS制御誘導爆弾を設計しており、将来はさらに「北斗」システムを使用した制御誘導爆弾も採用することができる。現在まだ「利剣」がどのくらいの比率で複合材料を使用したのかはっきりしないが、この方面の技術で中国は欧米にはるかに遅れており、このためステルス能力は同列に論じられない。

報道によれば、アメリカ空軍が現在開発中のステルス無人攻撃機はX-45B/Cであり、同様に空中給油が行え、使用するのはF-124-GA-00ターボファンエンジンで、速度はマッハ0.75に到達可能である。作戦半径は1,200kmである。

現在すでに試験飛行状態にある第2種目の無人攻撃機はフランスのダッソー社がメインとなって研究開発される「ニューロン」無人機で、M-88ターボファンエンジンを使用する。このエンジンは同様に「ラファール」戦闘機に装備される。このことから、ステルス無人攻撃機が使用する動力系統はいずれも既存の戦闘機のターボファンエンジンである、ということが見て取れる。(編集翻訳:艾国 原稿チェック:劉昆)

(頑住吉注:以下のページのキャプションは本文の一部を切り取った物なので基本的に省略します。8ページ目。「利剣ステルス作戦機、正式公開、デビュー。関連の画像から見て、この機はすでに滑走試験を終えており、初飛行目前である」)


http://military.china.com/important/11132797/20130712/17942789.html


専門家、利剣無人機立ち後れ論に反駁:これは原形機であってまだ定型に至っていない

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「外国メディアは、中国の設計者はまだ決してステルス無人攻撃機用エンジンの遮蔽式設計手法を掌握しておらず、だからこそこのように荒削りが目立つのだ、と考えている。」)

事実として今年5月頃ネット上に一組の「利剣」無人攻撃機が地上で滑走する画像が出現し、当時すぐにネット仲間と軍事マニアの広範な関心を引き起こした。「漢和」のこの文章もいくつかのネットの視点を総合し、「利剣」無人機の設計上の重大な欠陥の1つは、その尾部噴射管に遮蔽設計が行われておらず、直接外部に暴露していることだ、と考えている。「漢和」はさらにこれをアメリカのX-47Bおよびヨーロッパの「ニューロン」無人機のエンジン尾部噴射管と比較を行い、西側のこれらの無人攻撃機はいずれも内蔵式尾部噴射管を採用し、バイパスを湾曲させて設置し、反射面積を縮小させ、同時に噴射口の温度を低下させている、と指摘している。このような設計は一方においてレーダー反射面積を減少させ、他方においては赤外線反射特性を低下させた。これを根拠に、この文章は「利剣」はこのステルス設計の上でまだ欧米の無人攻撃機に匹敵する程度にははるかに及ばないと考えている。文章は同時に、現在まだ「利剣」がどのくらいの比率で複合材料を使用しているのかはっきりしないが、こうした方面において中国は欧米にはるかに立ち後れており、このためステルス能力は同列には論じられない、と強調している。

だが事実は果たしてこうなのか?

中国の「利剣」は決してまだ定型に至っておらず、なお原理サンプル機の段階にある

ネット上に見られる画像からは、いわゆる「利剣」無人機はまだ原理サンプル機の段階にあり、甚だしきに至っては工程サンプル機の程度にすら達していない可能性がある、ということに気付くことができる。原理サンプル機である以上(あるいは初期工程サンプル機であると言うか)、この機が試験したがっているのは1つの全体的技術、あるいは技術的ルートの実行可能性に違いない。このため、技術設計のいくつかのディテールの上には往々にしてあまり多くの考慮はなされない。1つの信頼性あるプラットフォームさえあれば、試験する必要のある核心的データを体現することができ、すでにそれで充分なのである。

似た例が以前アメリカのいくつかの原理性試験機にも見られた。例えば当時アメリカは前鏈翼(頑住吉注:検索しても無数に転載されたこの文章しかヒットしません。「前進翼」かなと思ったんですが、少なくとも以前紹介したここでは「前掠翼」になってます)戦闘機をテストしたことがある。原理サンプル機の構成の中にはいくつかの現有の戦闘機の既製の部品が大量に使用された。例えば機体前部は当時のF-20戦闘機のそれをそのまま流用したものだった。このようにする原因は、テストの主要対象は前鏈翼であり、その他の方面はどうでもいいからである。この角度から理解すると、「利剣」はなお原理サンプル機あるいは初期工程サンプル機の段階にあると言える無人機として、いくつかの部分にいわゆる設計の粗雑さが出現するのは正常なことである。このことでこの実戦機の最終的な技術水準を推し量ることは決してできない。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは本文の一部を切り取った物なので省略します。)

無人実戦機の最大の優勢は「損失してしまえる」こと

戦闘機の発展過程から見て、突出した1つの矛盾は、いかに有効に、信頼性をもって相手方の防空火力を突破できるかである。この過程の中で科学者や設計者たちは非常に多くの方法を考えた。当初における高空高速から、後になっての低空防御突破と電子妨害の組み合わせに至り、さらに第4世代機のステルスに至る。そして現在の無人機は明らかに別の方法を切り開いた存在である。何故ならそれが採用するのは適度な防御突破能力であり、同時に「損失してしまえる」ものでもあるからである。この「損失してしまえる」は2つのレベルの意味を含む。1つは人が死ぬことはなく、このためマンパワー上損失してしまえる、というレベルの意味である。もう1つは価格で、有人の実戦機よりずっと安いので経済上損失してしまえる、というレベルである。

もし無人機の設計が精細無比で、あらゆる技術指標が最も理想的な状態に設計されていたら、必ずこの機の製造コストが高すぎ、逆に無人機のこの「損失してしまえる」の優勢に影響するという結果がもたらされる。

このため、この種の「損失してしまえる」無人機に関して言えば、技術レベルが高いほど良いというものでは決してなく、技術レベルと製造コストの適度にバランスがとれた状態が必要とされるのである。この角度から言うと、いわゆる「利剣」がディテールの設計上粗雑に過ぎるというこの言い方も、おそらく推敲と反駁を経たものではない。

(頑住吉注:これより ページ目。画像のキャプションは「アメリカのX-47無人機初期型が試験飛行を行っている」です。)

現在の無人実戦機は決して真の無人戦闘機ではない (頑住吉注:これ以後は「利剣立ち後れ論」への反駁からは離れています)

「漢和」のこの文章にはそれでも見るべきところがある。まず、この文章が無人実戦機の現在の発展レベルに境界線を引いていることである。無人実戦機に関しては、これまで皆基本的に無人戦闘機と無人攻撃機という2つの名を混用してきた。だが現在発展している技術レベルから見て、「漢和」の表現は比較的正確なものに違いない。何故なら文章が一貫して採用しているのは「無人攻撃機」という言葉だからだ。つまり、無人実戦機の現在の発展レベルは、まだ無人攻撃機の程度にしか達し得ておらず、空戦の機能を実現し、真の無人戦闘機になりたければ、おそらくまだ相当長い通らねばならない道がある。

文章はさらに現在の世界無人実戦機の研究開発の大体の枠組みを描き出してている。文章の中で挙げられた無人機にはアメリカのX-47B、アメリカ空軍のX-45Cが含まれ、さらに中国の「利剣」、ヨーロッパの「ニューロン」、ロシアのミコヤン飛行機設計局が設計したSkat無人攻撃機が含まれる。基本的に現在世界のこの種の無人機研究開発の現有の計画と機種は全て包括されている。同時にこれらの機の1つの基本的特性を抽出しており、皆が普通に見る外形、ステルス等々といった特徴の他、この文章はさらに現在こうした無人機が使用しているのは全て現役戦闘機のエンジンである、ということに言及している。この現象は、こうした実戦機の実際のサイズ、重量、大小は、我々がこれまで見てきた多くの偵察用無人機、特に中、近距離偵察無人機に比べずっと大きいことの表れである。何故ならこのようであってこそ真に武器を搭載し、専業の攻撃任務を執行できるからである。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションは「アメリカのX-47B無人機」です。)

無人機の真の核心技術はスマート化にある

無人機に関して言えば、最も核心的な技術はステルス、エンジン、電子設備、機載武器にあるのでは決してなく、そのスマート化のレベルにある。スマート化レベルが充分な程度に到達すれば、ステルス実戦機は無人戦闘機の機能を実現できる。だがスマート化レベルがまだ現在の段階にある時には、無人実戦機は単に無人攻撃機として使用できるに過ぎない。アメリカの「大衆科学」誌はかつて未来の無人機の特徴を示す時に、アメリカのX-47Bは実際には自動であってスマートではない、とした。これは、未来の無人実戦機の核心はスマート化だということを意味している。スマート化レベルが非常に高いものなら、どんな任務も執行できる。現段階で言えば、スマート化レベルがまだ充分に高くなく、依然初級段階にあるので、大量の情報の処理はやはり人間の脳に頼る必要があり、つまり操作人員に頼って処理されるのである。

この種の状況下で、また1つの新たなカギとなる重要な技術的ポイントが出現した。それは遠距離通信の信頼性と秘密保持性である。ある無人実戦機の最も核心的な指標はもはやすでにステルス、エンジン、飛行速度、弾薬搭載能力、作戦半径等々ではなく、スマート化と通信の信頼性、秘密保持性なのである。

この立ち位置からは、「漢和」が提出したこうした先端無人実戦機研究開発上の競争相手の他に、実際にはさらにもう1つの潜在的ライバルがいることが連想される。それは日本である。日本は去年第6世代機の概念を提出し、明確に第6世代実戦機は若干の無人実戦機をコントロールして攻撃あるいは戦闘の任務を執行できるべきだ、とした。この理念は比較的新しいものでもあり、あるいは比較的高いレベルにもある。そして日本は人工知能でも通信技術でも一定の蓄積がある。現在の日本のいわゆる自衛隊を自衛軍に変える強い意気込みという背景と結合すれば、筆者は日本が未来の無人実戦機の、1つの有利な競争者として同様に見くびることはできないと考える。

実は実戦機の有人から無人へという変化は根本的なものであり、この種の根本的変化はこれまでの伝統的実戦機の中で競争の核心だったいくつかの技術を相対的に意義の小さいものにするかもしれない。例えばエンジン技術、ステルス技術、伝統的機載電子設備の技術、機載武器の技術等々である。その一方でいくつかの新たな競争の核心たるポイントが突出している。すなわち、人工知能、および遠距離通信である。このような変化は実際にはいかなる航空大国にとっても一種のチャレンジであり、同時に後発の航空大国にチャンスを提供し、彼らにこれまでの伝統的実戦機の発展段階を飛び越させ、新たな領域で競争を展開させることにもなる。

(頑住吉注:5ページ目)ヨーロッパの「ニューロン」無人機の初の試験飛行。

(頑住吉注:6ページ目)空母上のX-47B無人機。

(頑住吉注:7ページ目)X-47B無人機は成功裏に「ブッシュ」号空母からカタパルト発進した。

(頑住吉注:8ページ目)中国のステルス無人機にはまだ非常に多くの最適化を必要とする部分がある。


 反論は、「まだ初期段階だからこれでいいんだ」と「無人機というものは消耗品であるところにメリットがあり、余りに高度なものにしたらそのメリットが薄れる」の2つに分けられますが、そもそもこの2つは同時に主張すべきものではない気がします。また、「まだ初期段階だからこれでいいんだ」は、中国のこの種の無人機が現時点において欧米にはるかに立ち後れている、ということに対する反論には全くなっていません。「無人機というものは消耗品であるところにメリットがあり余りに高度なものにしたらそのメリットが薄れる」は一応もっともなんですが、噴射ノズルのステルス処理によりコストアップするデメリットと、生存性が向上するメリットを両天秤にかけた場合、放棄した方が得策だという結論になるのかは大いに疑問です。

日本がライバルになる云々は、もし日本が本気で取り組めばあり得なくはないでしょうが現在その動きはほとんど見られません。「これまでの伝統的実戦機の中で競争の核心だったいくつかの技術(エンジン技術、ステルス技術、伝統的機載電子設備の技術、機載武器の技術等々)を相対的に意義の小さいものにするかもしれない」は、そうした技術に取り組んでも向上が思うようにいかないことから現実逃避しようとする心理にすら見えてしまいます。












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