中国航空エンジンの現状、問題点、展望

 何度も取り上げているテーマですが、よくまとまっていて、これまで出ていなかった内容もいくつか含まれています。

http://military.china.com/important/64/20120824/17391751.html


外国メディア:2〜3年以内に殲-20のエンジンは人を不思議がらせる飛躍に成功する

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「アメリカメディアによる中国の2種の主要な戦闘機エンジンの発展過程」)

【グローバルネット報道 記者 張加軍】アメリカの「China Sign Post」ウェブサイトは去年6月、「中国のジェットエンジンの発展:国産高性能ターボファンエンジンは、戦闘機製造の完全自主独立実現の最後の1ピース」と題する文章を掲載した。1年が経過し、この文章が提示した多くの視点は依然大きな参考としての価値を持っている。文章は中国の航空エンジン産業の現状および将来の発展に対し比較的全面的な分析と展望を行っている。この文章が取り上げているエンジンは主に軍用航空ターボファンエンジンを指している。以下は文章の重点たる内容である(小見出しは訳者が加えたもの)。

真に軍用機エンジンの核心的技術を掌握する国は指を折って数えられる数

軍用機への装備に用いる方面の国産高性能航空エンジンの研究開発において、中国の戦略、関心ははっきりしている。この戦略的選択は、重大な航空工程技術のチャレンジを含んでおり、世界中でも指を折って数えられるいくつかの会社だけが真にこの項目の技術を掌握している。これは不思議なことではない。エンジンは航空機の心臓であるが、人体システムとは異なり、エンジンは独立して設計、研究開発できる。だが温度、圧力、過負荷など多種の困難に直面し、最も先進的な材料、最も適した機械加工があって初めてうまく処理することができる。近年、中国は材料と製造方面においていくつかの進歩を成し遂げたが、部品、システム設計の集成(これはいずれもエンジンが最大の機能を発揮するカギとなる重要要素である)および信頼性特性に基づいて制定される後方勤務、使用管理方案などの方面においては、進歩は依然限られたものである。

第5世代機の最先端エンジンの掌握には、中国はまだ5〜10年を必要とする。

文章は、中国は2〜3年かけてやっと現在航空エンジン方面に集中させている投資にふさわしい総合的技術能力を獲得でき、5〜10年後、中国はやっと第5世代戦闘機に必要な先端ターボファンエンジンを持続的に量産できるようになると予測する。ひとたびこの段階に至れば、中国は先端エンジン製造国クラブに身を置くことになり、戦略的意義は重大かつ深遠である。同時に数多くないロシア技術への依存というボトルネックも1つ消し去ることができる。

高性能軍用機エンジンを製造することができる中国航空工業の探求は、以下の4項目の戦略的な切迫した需要によって駆動されている。(1)部品の対外依存 (2)ロシアの提供する気のなさ (3)航空機の対外販売の自主性の欠如 (4)ロシアのまずいアフターサービス。中国の指導者は、国家の最も近代化された戦闘機が、核心的部品、特に動力方面において国外からの輸入に依存することを望んでいない。ロシア軍が今後10年で購入する軍用エンジンの数は、ソ連解体後20年の総量を超えることになる。ソ連解体当時、軍備用の購入が下降したからこそロシアは中国に対し航空エンジンを販売することを迫られたのである。現在、ロシアは空軍を強化し、航空機を更新し、既存の航空機プラットフォームのためにエンジンを換装し、スホーイ-34、スホーイ-35、T-50などの先進戦闘機を購入している。このことはロシア航空エンジン製造業の輸出に向けた意思を弱め、甚だしきに至っては輸出数の制限という結果をもたらすことになる。ロシアは完成品の戦闘機をより優先して販売したがる可能性がある。ロシアとインドが共同で研究開発している第5世代機プロジェクトも先進的エンジンの需要を伸ばすことになり、もし中国が少数の先進的ロシア製エンジンを獲得できても、戦闘機生産の需要を満足させることはできない。

中国は日増しに先進的戦闘機の輸出国となっているところであり、例えばパキスタン向けに殲-10とFC-1「梟竜」戦闘機を輸出している。中国は、外国のエンジン供給商が軍需品販売問題上拒否権を持つことを希望しない。FC-1とミグ-29は同じRD-33エンジンを使用するが、FC-1の販売価格は低廉で、発展途上国の軍需品購入市場においてロシア機の強力なライバルとなっている。ロシアサイドは最終的に中国がこの戦闘機を輸出することを認めたが、この経緯は中国の航空機メーカーに、自分の航空エンジンを装備してこそ中国の戦闘機はより容易に輸出できるようになるのだ、ということを認識させるに至った。殲-10と殲-11B戦闘機も類似の問題に直面している。ひとたび中国がこの2機種の機を輸出することを決定すれば、同様にエンジン問題上妨害に遭う可能性がある。この他、中国はロシアサイドのエンジンおよびその他の部品のアフターサービス方面で悲惨な経験をしたことがある。

(頑住吉注:これより2ページ目。)

中航工業は5年で100億を投じ、先進航空エンジンを誓って研究開発する

2011年4月のある談話の中で、中国航空工業社(中航工業)の舵取りをする林左鳴は表明した。中国航空工業は急速な発展を遂げたが、先進ジェットエンジン製造領域においては依然目立って弱い分野がある。隔たりを縮めるため、中航工業は航空エンジンの研究開発を優先的地位に置き、これからの5年以内で100億人民元(15.3億アメリカドル)を投資して先進航空エンジン研究開発に用いる、と。

中国の渦扇-10(WS-10)「太行」ターボファンエンジン(頑住吉注:「渦扇」はターボファンの意で、「WS」はそれぞれの漢字の発音を示すピンインの最初の文字)およびその改良型の性能指標はアメリカのプラット&ホイットニーF100やゼネラルエレクトリックのF110系列エンジンに相当する。それらは現在アメリカ軍のF-15およびF-16の動力である。「太行」ファミリーはやはり殲-11Bの動力であるとされ、最終的にロシア製のAL-31に取って代って殲-10および殲-15の主要な動力となる可能性がある。2010年11月、メディアは推力27,500ポンド(約125,000ニュートン)の渦扇-10「太行」エンジンがすでに大量生産に入り、殲-11Bへの装備に用いられることになると報道した。そうであっても、依然ある証拠は中航工業には渦扇-10量産拡大過程において安定性維持および品質管理に問題が存在し、エンジンの信頼性不足をもたらし、中国戦闘機を依然深刻にロシア製エンジンに依存させていることを示している。

ロシア国防工業は、中国は性能に信頼がおける高性能軍用ターボファンエンジンが量産できない現状は持続していくと考えている。例えば、ロシアの主要なジェットエンジンメーカーである土星科研生産連合体(NPO Saturn)は、2019年まで自分たちが依然中国の殲-10およびFC-1戦闘機エンジンの主要な供給商であると予言している。ある情報は、2011年、中国とロシアは190台のD-30KP-2ターボファンエンジン購入の件に関して折衝し、これらのエンジンは中国のロシア製イリューシン-76輸送機に用いられる可能性があるとしている。サターン社の楽観的見積もりは一部この件に基づいている可能性がある。

もし高性能国産エンジンが欠乏すれば、殲-20の量産は難題となる

充分な数の国産高性能ターボファンエンジンの供給が欠乏しているため、将来殲-10、殲-11、殲-15、そして殲-20戦闘機の量産はいずれもこの影響を受けることになる。殲-20プロジェクトは特に国産エンジンの研究開発、生産が飛躍を達成することを必要とする。何故ならロシアは明らかに中国向けに117S系列エンジンを販売したがらない。このエンジンは充分な推力を持ち、殲-20に超音速巡航を実現させることができる。したがって性能上アメリカの第5世代機F-22やロシアの第5世代機T-50/PAK FAに匹敵することになる。

(頑住吉注:これより3ページ目)

中国航空工業はカギとなるエンジン制御ソフトウェアのソースコードを掌握することが必須

制御ソフトは航空エンジン技術のカギとなる重要な1ピースで、中国がこれを掌握し、したがって自分の高性能エンジンを生産し得ることが必須である。多くの航空エンジンの性能パラメータはソフトによって調整することができ、簡単のように見えるソフトのグレードアップがエンジンの性能を顕著に向上させることができる。このためエンジンのメーカーは往々にしてユーザーから高額の費用を受け取る。軍用エンジンソフトのソースコードの作成には膨大な費用がかかり、いかなるエンジン輸出者もソフトの問題を重大な問題と見なしている。イスラエルなどの国は何度もアメリカに制御ソフトのソースコードを移転するよう要求しているものの、アメリカは終始それを漏らすことを拒絶している。

高性能ジェットエンジンの生産難易度は極めて高く、今年に入ってからの発展を見ると、いかなる中国航空工業に対する低評価も賢いとは言えないが、西側はまだ中国の航空エンジン設計能力を確定できていない。航空エンジン研究開発、製造の頂点に上りつめるため、中国航空工業は全体的体系に対し規格化、グレードアップ、最適化を行うことが必須であり、このことは高水準全寿命周期管理工具、ソフトウェアの使用、最初から最後までの技術支持体系の建立が必須であることを要求する。

航空エンジンの性能を表すのに用いる最重要の指標は、平均故障時間(MTBF)と平均大修理間隔(MTBO)である。それらはエンジン維持保護管理およびエンジンの性能を事前に見積もることに対し非常に重要である。優良な航空エンジンシステムは、設計、管理コントロール、全寿命管理などのピースが同様に優良であってこそのものだが、中国に関して言うとこの方面は特に薄弱である。何故ならこれまで中国はずっと国外設計の製品のコピー、模倣生産に深刻に依存してきたからで、この種のやり方ではエンジン研究開発能力や管理能力を獲得することはできないのである。

中国航空エンジン製造技術、工程の優れたところと劣ったところ

近年、中国の航空エンジン製造技術と工程は顕著な向上を果たし、中国の専門家は、本国の航空工業水準はすでに多くのカギとなる重要領域で航空エンジンの製造能力を向上させ、これは主に以下のいくつかの方面に体現されているとする。

・精密切削、溶接、機械加工(例えばタービンブレードの生産に必要な5軸フライス切削)

・特殊材料ブレードの製造。タービンブレードの品質合格率はすでに95%を超えているとされる

・中空ファンブレードの製造(中空チタン合金ファンブレードは同類のブレードに比べ15〜20%重量が軽減され、エンジンの燃料節約性能が向上できる。同時に中空ブレードはエンジンの回転慣性質量も小さくでき、飛行機の機動時のエンジン加速性が向上する)

・生産過程の自動化水準。標準化レベルと効率の向上。

・コンピュータ補助プロセスのモデル化

・高品質標準化部品の生産能力の向上

中国は殲-20第5世代戦闘機に使用する高推力エンジンの開発を希望している。だが基礎が劣るため、この雄大な志は困難に直面している。現在生産中の超耐熱合金材料の加工は依然難題である。中国は現在超耐熱合金をまだ完全に自給できない。中国のエンジン工業は対策を講じ、研究、製造部門をマッチングさせるべきである。中国は努力して全面的品質管理能力を実現し、品質管理の有効性を確保する必要がある。中国は現在まだ西側の企業が使用する全寿命設計工具を採用していない。中国の航空エンジンはすでに設計においてコンピュータ補助設計、製造工具を広範に応用しているが、就役使用方面の応用はまだ不足である。当然、中国航空エンジンにはその後発というメリットがあり、先進国が航空エンジン研究開発中に獲得した経験を教訓に、研究開発機関を顕著に短縮することができる。

(頑住吉注:これより4ページ目)

中国航空エンジン工業の人員規模はまだ明らかに不足

アメリカ、イギリスなどの国の軍用航空エンジン工業に比べ、中国の航空エンジン工業は人員規模において依然明らかに不足であるが、ロシアやフランスのレベルはすでに超えている。黎明社と西安航空エンジンの2社は中航工業最大の軍用エンジン企業であるが、人員は20,000人に満たない。これに比べ、プラット&ホイットニー、ロールスロイス、ゼネラルエレクトリック航空部門はそれぞれの企業の人員がいずれも35,000人を超えている。軍用航空エンジン自給化追求のため、中国の航空エンジン工業は未来において規模を拡大するかもしれない。ロシアのUMPOは現在人員規模が15,000人で、計画では2010年に109台のAL-31およびAL-41エンジンを生産することになっていた。ゼネラルエレクトリック航空部門は毎年およそ200台の高性能ターボファンエンジンと、総数800台の軍用エンジンおよびヘリ用ターボシャフトエンジンを引き渡すことができる。

既存のエンジン性能の改善と寿命延長方面では、中国はすでに明らかな進歩を成し遂げている。ある情報は、中国はすでにロシア製AL-31Fエンジンの使用寿命を900時間から1500時間まで延長することに成功したとしている。中国の渦扇-10およびその他の新型航空エンジンも類似の寿命延長技術を採用している。

体制上、中国の国防には装備のソースが単一だという問題がある。エンジン領域には巨視的な競争が不足し、微視的な競争が多すぎ、局部的利益交換と利益保護(頑住吉注:よく分かりませんけど既得権益的な?)、資源配置の不合理が研究開発と生産の周期の延長をもたらしている。中国は最適化された航空エンジン業種の組織構造と運行方式を必要とする。

渦扇-15推進の一大契機

CFMインターナショナルは世界最大の商用ジェットエンジンメーカーであり、中国のC919大型機はこの会社のLEAP-X1Cエンジンを動力として選定した。このエンジンの核心機はタービンブレードとベースの一体式設計を応用し、タービンブレードとターンテーブル状のベースが1ブロックの金属から加工され、信頼性を非常に大きく向上させると同時に、最多で30%重量軽減できる。ゼネラルエレクトリックF414(F/A-18E/F「スーパーホーネット」戦闘機に用いる)、プラット&ホイットニーF119(F-22「ラプター」戦闘機に用いる)およびF-135、ゼネラルエレクトリックのF136(F-35「ライトニング」II戦闘機に用いる)はいずれもこの技術を応用している。これにかんがみて、中国は力を尽くして渦扇-15やその他の先進的ターボファンエンジンを研究開発しており、もし商用エンジン協力プロジェクトを通じてこの技術を掌握すれば、中国航空エンジン工業にとって大きな利益になる。

今後2〜3年で、中国軍用航空エンジンは人を不思議がらせる飛躍に成功する

中国の国防工業システムの実力を過小評価するのは賢いことではない。中国はすでにより加速した航空機研究開発時代に入っており、まさに一連の航空機を研究開発あるいは準備しているところである。これには殲-15、殲-16、殲-20などが含まれる。これからの2〜3年で、中国は高性能ジェットエンジンの独立した生産能力方面で、人を不思議がらせる飛躍に成功することになる。だが信頼性の高い最先端エンジンを真に製造するには、まだ5〜10年を必要とする。

文章は最後に、もし中国の航空エンジンメーカーの技術能力がアメリカの20年前の水準に到達すれば、中国は国産エンジンで本国の第4世代および第5世代戦闘機を駆動する実力を備えることになる、としている。中国が人を恐れさせるローカル空中戦力となることを促すのに、この発展は非常に重要である。これは(アメリカの)政策制定者が密接に関心を注ぐに値する。 (頑住吉注:6ページ目のキャプションは「『太行』エンジン」、7ページ目は「太行エンジンを装備する中国の新型戦闘機」、8ページ目は「中国が研究開発中の2種のエンジン」です。)


 例によって「アメリカがこう言っている」というのはたぶん嘘で、中国の視点と見た方がいいでしょう。ロシアが中国にエンジンを売りたがらなくなった理由がこれまでより詳しく記述されていました。「少数買ってすぐパクるから」以外に、経済的成長から国内の需要が高まり、ソ連解体後の苦しい時期のように中国に販売する必要がなくなったこと、ロシアのエンジンを搭載した中国製戦闘機が輸出市場におけるライバルになっていることもあり、他の情報を見てもやや型落ちの航空機やエンジンは売るが、最先端品は売りたがらない傾向が強まっているようです。

 CFMインターナショナルはアメリカとフランスの合弁企業だそうですが、大型民間機のエンジンで中国に協力することによりその技術が軍用に応用され、民主主義諸国を強い脅威にさらすことはどう考えているんでしょうか。









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