中国が北朝鮮に劉雲山を派遣した意味とは

 日本のマスコミではこの人物に関し「序列5位」くらいの説明で済ませているものが多いようですが。

http://military.china.com/critical3/27/20151010/20535517.html


劉雲山の北朝鮮訪問は何を持って帰れるのか?

劉雲山が北朝鮮に行こうとしている時、外界はすでに久しぶりとなっている中朝の「高層による訪問」の幕がついに開くと推測している。劉雲山は北朝鮮に行って何をするのか、何を持って行きまた何を持ち帰るのか? これが人々の関心の焦点となる。

今日の東北アジアに目をやって見てみると、劉雲山は何を持って行くことができるのか、と推測してかまわない。

劉雲山が持っていけるもの、それは中国の朝鮮半島に対する関心さらには礼節に違いない。結局のところ朴槿恵は天安門に登ったが、中朝間は古い盟友であり、北朝鮮の大きな祝い事の際、中国が人さえ派遣しないというわけにはいかない。劉雲山の訪問は北朝鮮が崔竜海を訪中させ抗日戦勝利記念活動に出席させたお返しであり、中韓友好に対する一種のバランスでもある。

劉雲山の北朝鮮訪問には2つ注意を必要とする点がある。1つは劉雲山の身分、2つ目は訪問の時期である。

劉雲山は党内でイデオロギーを分担管轄する幹部であり、彼が北朝鮮に行くのは彼が比較的北朝鮮を理解しているからという他に、中朝関係の中の中国のある重要な考慮、すなわちイデオロギーの要素を突出させるためでもある。結局のところ中朝はいずれも社会主義国家で、政治的安全保障の角度から北朝鮮問題を考慮することは、中国が北朝鮮問題を処理する上での重要な角度である。また、北朝鮮の大きな祝い事は建党記念日であり、中国がイデオロギー担当の幹部を派遣して行かせることは、今回の訪問が党間交流に過ぎず、国際交流ではないことをも突出して顕示することができる。中朝間の紛争を避けることは、国際社会の妨害を低下させることもできる。

訪問の時期に関してはより明白で、朝鮮労働党建党記念日であり、同時に習近平総書記が訪米から帰ってきた日でもある。このため、劉雲山の訪問はいくつかのものを持って行くことになるだろう。

1、として中米の半島問題に対する共通認識である。劉雲山はきっと半島問題に言及し、中米首脳は北朝鮮に関し意見交換しただろうし、劉雲山は必然的に結果を伝達することになるだろう。

2、中国の妥協。中国が今回進んで北朝鮮に対しオリーブの枝(頑住吉注:平和の象徴)を差し伸べたのは、度量の大きさというよりも、妥協と言った方がいい。中国は北朝鮮核問題に対する反対を放棄することはないだろう。だが批判のトーンを緩める可能性はある。交換に北朝鮮の中国に対する友好、および中朝双方の相互信頼を手に入れる。

3、中国の北朝鮮に対する新たなる援助。当然この時は中朝間で共通認識と暗黙の了解を建立する基礎の上でのことであるが。

ということで劉雲山が持って行けるものはおよそ以上の数種しかないが、ならば金正恩は何を欲しがっているのか?

金正恩が欲しがっているものは非常に簡単である。

まず中国による安全保障である。北朝鮮は中国の援助に対しては実は決してそんなに欠乏してはおらず、何故なら北朝鮮の経済は非常に強い自主性を持っており、水準は比較的低いが、体系は完備し、北朝鮮は孤立した環境下で非常に長い時間生存しており、このため北朝鮮がより欲しいのは中国の安全保障なのである。一方中国は非常に長い時間、中朝間の軍事同盟関係を弱体化させ、北朝鮮の不安を引き起こしている。このため中朝の相互信頼も非常に大きな損傷をこうむっている。

次にアメリカとの接触である。中国にはまだ自らの世界体系を建立する能力がない。このため北朝鮮は改革開放を行いたがり、これにはアメリカとの業務を行うことが必須である。北朝鮮は中国を動かしてアメリカとの接触の機会を作り出すことを望んでいる。

最後に、北朝鮮は中国が自らの国際政治経済体系を建立し得ること、かつ中国に便乗できることを希望している。北朝鮮は中国経済はすでに世界第2位だが、それにもかかわらずソ連のような「覇気」がないと考えている。このため北朝鮮は中国が中国を核心とする世界政治経済体系を建立し、かつ中国と一種アメリカとイスラエルに似た関係を建立し得ることを希望している。

最後に、劉雲山は北朝鮮から何を持って帰れるのか?

中国は北朝鮮に安全保障を与えることはできない。何故なら中国は経済からも道義の上でも、自らに属する周辺秩序を作り出す能力がないからである。アジアインフラ投資銀行や一帯一路戦略はまだ模索の中でしかない。政治や政府間協力の色彩が濃厚なアジアインフラ投資銀行に比べ、TPPは疑いなくより人類社会発展という未来の趨勢に符合する。しかも視野と構造がより壮大である。このことは中国が国際秩序を作り出すという方面に依然弱点が存在することを表しており、突き詰めて言えば中国は依然として立ち後れた国家であり、中国はまだ世界が未来を開拓展開するのを率いることはできない。アジアインフラ投資銀行でも自由貿易区の試験でも、中国は依然「世界先進」を追いかけている。

このため、「中国の秩序」を作り出すことは短期間内にはまだ完成できない。北朝鮮に安全保障を与えることや中朝軍事同盟を重ねて言明することは、おそらく中国はまだあえてやらないだろう。だが中国は経済協力領域で北朝鮮により大きな便宜を与える可能性はあり、例えば北朝鮮のいくつかのプロジェクトを引き受け、北朝鮮の港や鉄道の開発を助け、北朝鮮と中国の企業間で経済協力を拡大させるのを許す等々である。

また中国は北朝鮮の核保有国の地位を認可できないが、北朝鮮に自制を保持するよう説得するする可能性があり、このため北朝鮮はきっと核兵器を放棄しないだろうが、中国へのお返しとして一定の核に関する自制を行うだろう。

劉雲山が北朝鮮に持って行けるものは非常に限られ、持って帰れるものもあまり多くはないだろう。「中朝友好」を持って帰れる他、最大の可能性は援助と説得を用いて北朝鮮の核武装に関する自制を引き替えに得ることである。またさらにいくつかの中朝間の経済協力プロジェクトを獲得するかもしれない。劉雲山の北朝鮮訪問は中韓接近に対する一種のバランスであり、今回の訪問は中国の半島バランス戦略に符合し、疑いなく中朝関係緩和に対し良好な作用を果たすだろう。だが中朝間の実質的な性質の食い違いは依然存在し、中朝関係の歴史的進展が突然到来することは非常に難しい。


 「中国が中国を核心とする世界政治経済体系を建立し、かつ(北朝鮮が)中国と一種アメリカとイスラエルに似た関係を建立」する未来図は日本が全く望まないものですが、このまま行けば比較的遠い将来そうなる可能性はあるでしょうね。











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