中国の専門家、2013年に有り得る海上の争いを語る

 「全国政治協商会議委員、中国軍事科学学会副秘書長」という肩書を持つ専門家のこのテーマに関するインタビュー記事です。

http://news.china.com/domestic/945/20121229/17607742.html


羅援少将:2013年、中国周辺には意図せず戦闘が勃発する危険が深刻に存在する

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「資料画像:中国海軍艦隊、釣魚島付近の海域を巡航」)

中日釣魚島をめぐる争い、中国・フィリピンの黄岩島をめぐる争い、中韓、中ロの漁業をめぐる紛糾から見て、近年一度やや緩和したことのある東海、南海の海上の争いは、2012年にはまた急にエスカレートし、激化する趨勢にあった。2013年、中国周辺の海上の争いが激化する態勢は継続することになるのか否か? 中国の海洋政策すでに調整された、あるいは調整中であるのか否か? 中国海軍は国家の海に関する権利を維持、保護する上でどんな役割を演じることになるのか? 記者は関連の問題を全国政治協商会議委員で中国軍事科学学会副秘書長の羅援少将にインタビューした。

中国周辺の海上の争いは多発期に入った

記者:2012年以来、中国周辺の海上の争いは、すでに矛盾、衝突の多発期に入ったのでしょうか?

羅援:イエスと言うべきでしょう。2012年より前、中国はずっと海上の争いの中で長期的な抑制と最大限の忍耐を保持してきました。我々はずっと「争いの棚上げ、共同開発」の方針を堅持してきました。ですが、近年関係諸国は争いを棚上げにしないばかりか、逆に争いを顕在化させています。共同開発も彼らの一方的なもの、中国を排除する性質の開発に変わり、しかも一連の挑発性の行動も伴い、頑固に双方の矛盾を再三激化させています。現在、黄岩島問題、釣魚島問題はいずれもさらに一歩悪化する趨勢にあります。このため、2012年は中国周辺の海上の摩擦の危険度が高い時期で、各方面の力量が激烈な腕比べを展開した、と言うことができます。

記者:現在の中国周辺の海上の摩擦、衝突が頻発する態勢は2013年、依然持続することになるのでしょうか?

羅援:2012年に海上の争いを誘発させた危機の要素は全体的に言って三方面ありました。1つ目は海上の争いの関係各方面がいずれも自身の主権の訴求を強調したこと。2つ目は関係各方面が相競っていくつかの関連の法律を出してきたこと。3つ目は各方面がさらにこのためにいくつかの実質的行動を取ったこと。現在見てみると、これらの危機を誘発した要素は弱くなっていないばかりでなく、逆に強まる趨勢にあります。このため、2013年中、各方面にいくつかの戦闘が意図せず発生する危険が深刻に存在します(頑住吉注:タイトルとこの部分に使われている「擦槍走火」という言葉も検索すると無数にヒットするのに意味を説明したページは見つからないんですが、言葉の成り立ちからして「銃をクリーニングしていたら暴発する」といった意味ではないかと思われ、「意図せず戦闘が発生する」と訳しましたが、多少意味が違っているかもしれません)。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは「資料画像:アメリカとフィリピンは内海付近で合同軍事演習を行っている」です。)

記者:中国の、中国・フィリピンの黄岩島をめぐる対峙の中での権利維持模式を「黄岩島」模式と概括している学者がいます。あなたはこの種の模式は、我が国の未来の海上の争いに対し参考にする意義があるとお考えですか? 具体的にはどんな点があるでしょうか?

羅援:私は参考にし得ると思います。「黄岩島」模式(原注:中国が自分の海洋権益を保護するために採る、現場の法執行を主、外交手段を従とし、軍事的手段を後ろ盾とする行動模式を指す)は、我々を海上の争いの中で受動から能動に変え、攻守逆転を生じさせました。以前は相手方が手を出し、我々が受けて立っていました。現在では我々が能動的に出撃し、相手方が受動的に対応しています。しかも我々は関係各方面に向け自分の最低ラインをも表明し、これらの最低ラインに触れることは許されず、ひとたび触れれば我々は直ちに「戦機」を掴み、危機を機会と化す、と告知しています。我々は「黄岩島」模式は政治、経済、軍事、法律という多くのレベルを包括し、総合的プレッシャーがけ、多管斉下(頑住吉注:これも検索すると無数にヒットするのに意味を説明したページは見つかりませんが、「多面的に行う」といった意味ではないかと思います)と呼ぶことができ、いくつかの成果を取得したことにも注意を向けています。この模式は最終的な問題解決には決してなりませんが、我々は徐々に闘争の主導権を掌握しています。このため、この模式がその他の争いのための参考となることは妨げられません。少なくとも相手方に対し我々には原則があり、最低ラインがあると表明し、しかもあるところではひとたび我が方の最低ラインが挑発に遭えば、我が方は強烈な対抗措置を採ることになるとしてもよい、ということです。

「軍事的準備には代わりになるものはない」

記者:将来、中国は海上の争いに対応する時、いかに行動するべきでしょうか?

羅援:私はやはり「孫氏の兵法」の中のあの言葉、「上兵伐謀,其次伐交,其次伐兵,其下攻城」(頑住吉注:さっぱりわからないので検索したところ http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html こんなページが見つかりました。「軍事力の最高の運用法は、敵の策謀を未然に打ち破ることである。 その次は敵国と友好国との同盟関係を断ち切ることである。 その次は敵の野戦軍を撃破することである。 最も劣るのは敵の城を攻撃することである。」という意味だそうです)がいいと考えます。攻城伐兵は我々の万止むを得ない場合の手段ですが、不可欠な手段でもあります。その一歩手前まで来たら、我々は政治の知恵と謀略を運用し、外交の斡旋、経済的手段、法律的に有利な立場を占めるなどの手段によって関係の衝突を解決するべきです。当然、このあらゆる手段は国家の実力という後ろ盾を必要とし、このため軍事の準備には代わりになるものがなく、備えあってこそ憂いなしなのです。

記者:日本の防衛研究所は2012年の「中国安全保障レポート」の中で、中国海軍が将来海上の争いに介入する可能性があると推測していますが、これに対しあなたはどう見ますか?

羅援:中国海軍が自分たちの領海の主権と沿海の領土を防衛するのは至極当然のことですし、さらに職責の在処です。さもなくば何のために海軍を設立する必要があるのでしょうか? 当然のこととして海上の争いを解決する時、我々がどんな手段を取るかは我が国の大局と全体的利益の総合的考慮によって決まりますが、どんな手段を取ろうとも我が海軍は常に我が国の国家主権維持の強固な後ろ盾であり、我々の海上のゲームの意欲を強固にするものでもあります。

記者:今年、中国海軍の活動および空母技術が取得したいくつかの突破は、中国周辺国および地域の高い関心を引き起こし、一部の国はこの機を借りて、言い古された「中国脅威論」を再び訴えてさえいます。中国はこれら一切をどう見て、どんな回答をなすべきでしょうか?

羅援:以前西側諸国はいつも中国に軍事の透明、国際的慣例に従うことを要求していました。そこで現在我々の海軍は国際的ないくつかの行動規範に従い、いくつかの国に対し正常な友好的訪問を行い、正常な合同演習を行い、いくつかの関連海域に行って正常な訓練を行っています。これに何の非があるでしょうか? これ自体がまさに国際的慣例に従うことであり、軍事の透明化を行うことです。他国に四の五の言う権利はありません。この問題において、一部の国は典型的な「葉公好竜」です(頑住吉注:「葉公という人は竜が好きだと公言し、屋敷を竜の装飾だらけにしていたが、本物の竜が出たらあわてて逃げ出した」という故事だそうです。まあ私もゴジラ好きですけどゴジラ出たらそりゃ逃げますよ。)。一方において中国軍が国際慣例に従うことを要求し、しかしひとたび我が軍が真に国際慣例に従えば、彼らはまた我々に対し四の五の言うのです。また、一部の国はこの問題においてダブルスタンダードを適用してもいます。何故他国の軍艦が中国周辺海域でいくつかの挑発性の色彩を帯びた軍事行動を行い、甚だしきに至っては我が国に対し接近しての偵察を行ってもよいのに、我が方の軍艦が単にいくつかの平和的な軍事的交際を行うともう受け入れられないのでしょうか? 中国の国力の増強、および利益の開拓展開と共に、中国海軍が世界へと向かう勢いは止められません。一部の国がどう騒ぎ立てようとも、どう妨害しようとも、全て無駄なことです。関係国は心の持ちようを変えて、中国が勃興しつつある大勢を受け入れ、中国の国防力が適度で、合理的合法的に増長している事実に適応するしかないのです。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションは2ページ目と同じです。)

「関係国はそろばんをはじき間違えるな」

記者:アメリカが「アジア太平洋回帰」、特に軍事的な回帰の戦略を高い調子で推進していることは、関係国に間違ったシグナルを伝え、その国と中国との海上の争いが激化するリスクを増加させないでしょうか?

羅援:実はアメリカが発しているのは決して間違ったシグナルではなく、故意に関係国に向けて明確なシグナルを発しているのです。すなわち、アメリカはその国に肩入れして元気づけ、彼らが中国に対抗するようそそのかしているのです。我々は関係国にそろばんをはじき間違えるなとご忠告します。アメリカはプラグマティズムに従う国であり、どんな弟分のために無理に戦場に行ったことも全くありません。アメリカが真に望むのはいつも弟分のために助太刀することではなく、ボスになってアジア太平洋の仕事を取り仕切りたいのです。もし1つの合理的解釈があるとすれば、それはこれら中国周辺国をアメリカの戦車にくくりつけ、彼らを「アジア太平洋回帰」の捨て石に使うことに他なりません。

記者:フィリピンの黄岩島における、また日本の釣魚島における挑発に直面し、中国は多種の対抗措置を取っています。これは中国の海洋安全政策が、過去の能あるものは爪を隠すという状態から、積極主動の権利維持へとまさに変化しつつあることを事前に示しているのでしょうか?

羅援:昔から中国が終始堅持してきたのは「能あるものは爪を隠す、一部は行う」の政策です。これは全体的考慮であり、その意味は「能あるものは爪を隠す」時はそうする、「一部は行う」時はそうする、この両者は相互補完であり、有機的な全体であり、いかなる一方の偏重も不可です。もし現在の形勢の発展が我々に「一部は行う」を必要とさせれば、我々は当然そうすべきです。

記者:海をめぐる権利の紛争は中国の国家的安全の重大な脅威になるでしょうか?

羅援:中国が現在直面しているのは、陸、海、空、宇宙、電子から来る多元化された脅威です。鄭和はかつて言いました。「中国の財産と富は海洋から来る。中国の脅威も海洋から来る。」 今年の状況から見て、海洋の安全は我々が現在非常に関心を持つ重点的問題です。

記者:自身の海洋の権益を保障する前提の下で、中国はいかに海上の主権の維持保護と関係海域の資源開発の関係のバランスを取るべきでしょうか?

羅援:中国の海洋権益に対し、我々は総合的管理を採るべきです。我々の視線はしばしば関連の島嶼の「主権問題」上に焦点を結びますが、「主権問題」は空虚なスローガンであってはならず、具体的行動として実行されることが必須です。これは6つの存在が突出する必要があるということで、すなわち行政の存在、法律の存在、軍事の存在、法執行の存在、経済の存在、世論の存在です。経済の存在方面では、我々は関連海域の天然ガス資源を開発する必要もありますし、その旅行、文化資源を開発する必要もあり、「開発」に総合的考慮を含める必要があります。法律の存在方面では、我々はすでに釣魚島と西沙の領海基線を公布していますが、南沙の領海基線は今に至るもまだ公布されていません。できる限り早くこの法律上の有利なポイントを占めるべきです。法執行の存在方面では、私はずっとできるだけ早く自分たちの沿岸警備隊を建設し、我が国の海上法執行力量を整合し1つの統一された戦力を形成すべきだと主張しています。さもないと、我々は非武装の平和的法執行をもって相手方の武装法執行に対応することになり、遅かれ早かれ不利にならざるを得ません。泥棒を捕らえて縄をなったのでは遅いのです!


 別に中国海軍が他国の海軍と友好的な交流を行うことを非難してる奴はいないだろ、とかいろいろ突っ込みどころはあると思いますが、ここでは中国ではこのように考えられている、また言論の自由のない国民にこう思わせたがっている、という内容をそのまま紹介するにとどめます。

 ちょっと注目したいのは最後の部分で、「アメリカ、中国の法執行船は戦時ミサイル、魚雷などの大型武器を配備可能、とする」の中に「中国では、5つの異なる部門が同時に海上法執行任務を履行しており、中国海監はまさにその1つである。その他の4つはそれぞれ、中国公安国境防衛海上警察、海事局、漁政局、税関密輸対策局である。中国公安国境防衛海上警察は白色に塗装された船舶を持ち、不断に海岸をパトロールする部隊力量である。海事局は沿海海域の捜索救難業務を担当する。漁政部は漁業保護の任務を執行する。税関密輸対策局は密輸犯罪を打撃する。」という記述があり、こうした縦割り状態は不合理なので沿岸警備隊に統一すべきであると提案されています。まあ「私はずっと〜主張しています」ということは昔から主張しているのに実現していないということであり、権力機構間の勢力争いやら利権やらがからんで今後も簡単には実現しないかもしれませんが、変化に注目すべきかもしれません。












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