レミントンM700

 「Visier」2004年10月号に、民間用だけでなく軍、警察でも多用されるなど現代ボルトアクションライフルの代表機種であり、日本でも各社によってモデルアップされて人気が高いレミントンM700に関する記事が掲載されていました。


確かなベース

レミントン700は42年の歳を重ねている。しかしこの銃は依然としてスナイパーライフル、あるいはプライベートの精密射撃競技銃用としてベストのベースシステムとしての価値がある。

ミントンはすでに1920年において、モデル30によりボルトアクションシステム(頑住吉注:ドイツ語では「Zylinderverschluss」、すなわち「シリンダー閉鎖」と表現します)を持つ狩猟用連発銃の製造を始めた。これはたまたまのことではない。同社はすでに(頑住吉注:第一次世界大戦の)戦時中、軍制式ライフル エンフィールドP1917を製造していたからである。しかし1946年の720系シリーズもまた望まれた成功をもたらさなかった。その後1962年1月になって初めて先行モデルを改良したモデル700が登場した。この銃はモーゼル方式により、ボルトヘッドの2個の大きな突起で閉鎖を行った。今日でもそうであるように、当時その安定性と安全性は最高のものだった。その理由は例えばボルトヘッドから突き出た弾薬のリム部を完全に包むバンドである。そしてストックをより強い負荷から守るためバレルと機関部の間にリコイルプレートを設置したことである。このプレートはストックの対応する切込み部に入る(頑住吉注:バレルと機関部の間に下向きの板が突き出ており、これがストックの穴にぴったりはまって両者を結合しているのでより強いリコイルに耐えられる、ということです)。700系が(.50BMGなど特殊なものを除けば最強力ライフル弾の部類に入る).458ウィンチェスターマグナムおよび.416レミントンマグナムにまで拡張されたのは不思議なことではない。

信仰上の問題
 これによりレミントンはやっと、すでに1937年以来M70によってトップセラーだったウィンチェスター社に追いつくことに成功した。その後、「ライフルマンのライフル」といったスローガンや似たような宣伝文句によって両社は互いに争った。しかし両者のうちどちらを選ぶかという問題はいまだにある種の信仰告白といったことに留まっている。自動車マニアがメルセデスとBMWのどちらを選ぶかという場合のようにである(頑住吉注:客観的な優劣はつけがたい、ということですね)。

 ただし、ここでただひとつの問題がある。この戦いの相手といつミリタリー領域においても出会うかである(頑住吉注:要するに民間領域ではライバルである両機種だが、軍用領域ではレミントンM700が多用されているのに対しウィンチェスターM70はあまり使われていない、ということです)。そしてこのリードはしばしば過小評価すべきでないシグナル効果を民間マーケット向けに持っているのである。

全て始まりは大事
 第一次世界大戦において、アメリカ軍はスプリングフィールドM1903とともに出兵した。この銃は8倍のUnertlスコープ(頑住吉注:何のことか分からず検索したら現存するスコープメーカーでした。 http://www.unertloptics.com/ )つきのA1バリエーションとして第二次大戦、そして朝鮮戦争時でさえまだスナイパーライフルとして使われた。同時にM1ガーランドをベースにしたスペシャルスナイパーバージョンが開発された。すなわち1944年から登場した2.5倍Lyman M82オプティカルサイトを持つM1Cである。後継モデルである選別されたマッチバレルと2.2倍のLibby−Owens−Ford製M84スコープを持つガーランドM1Dは朝鮮戦争でこれに続いて使用された。

 これ以後スナイパーライフルの開発に関して陸軍と海兵隊は別の道を歩んだ。海兵隊は1953年以後、軍競技会用に8倍Unertlスコープを持つマッチ型のウィンチェスターM70を使用していた。スナイパーライフルの不足によりそのような銃器も1965年以後ベトナムに登場した。だがUSMC(頑住吉注:USマリンコープ=海兵隊)の銃器調達部門は母国で狩猟用連発銃といろいろなスコープのテストを行った。その際レミントンM700が他を引き離してベストになり、そして1966年4月7日、3.9倍Redfield Accu−RangeつきでM40として制式採用された。だが木製ストックがトロピカルな気候で膨張し、金属部品は錆に苦しめられた。一方陸軍は1957年以来制式の座にあるガス圧ローダーM14を発展させることを決めた。選抜されたマッチ能力のある兵器庫の銃に即座にスコープが装備され、1969年に新スナイパーライフルM21として選ばれた。

USMC M40A1〜A3
 USMCはベトナムにおける経験から1970年代半ば、金属部品を燐酸塩処理に変え、ファイバーグラスストックを装備したM40A1を導入した。だがその際Marksmanship Training Unit(MTU)の銃器技術者は、レミントン700の閉鎖システムをトリガーグループごと使用した。ただしスタンダードバレルの代わりに12インチで半回転のピッチを持ち銃口部の直径24.5mmの610mmAtkinsonバレルを取り付けた。このシステム自体はマクミラン製ファイバーグラスストックM40A1(HTG)の「スチール-樹脂-ベッド」の中にセットされた(頑住吉注:この「ベッド」というのはこの後も何回か出てきますが、樹脂などのストックに機関部を直接固定するのではなく、ストック内に金属製のベッドすなわち土台を固定してそこに機関部を固定するということで、この方が命中精度上有利のようです)。M40A1は300ヤードからの10発のグルーピングがコンスタントに72mm以下を維持しなくてはならなかった。そして1000ヤードでは全ての着弾が25cmの円内に収まることとされた。このため続く年々、このプルーフされた構造には小さな変更しか加えられなかった。M40A2はマクミランA1ストックと、ミルドットレティクルを持つレオポルドM1PR3.5-10x40スコープを獲得した。1996年にはマクミランA4タクティカルを持つM40A3が続いた。だがその際スコープはA1バージョンの10倍Unertlに回帰した。

それは長い道のり…
 陸軍の場合は(頑住吉注:レミントンM700系を使用するに至る)プロセスはずっと長く続いた。しかし彼らも1988年、M24SWS(niper eapon ystem)により再び手動連発銃を採用した。この銃はM40A1を真似て作った、10倍レオポルドオプティカルサイトを持つレミントンベースのライフルだった(頑住吉注:辞書にない単語が出てきてこの後の1文が意味不明ですが、どうもCamp Perryで行われた軍の比較テストでよくない結果が出たということのようです)。M24SWSの装備はUSMC銃のそれに似ていたが本質的な差があった。それはすなわちM24にはスペシャルオペレーションフォースの要求に対応するために(この銃も.308なのに)ロングシステムが使われていたことだ。このためこの銃は簡単に.300ウィンチエスターマグナム仕様に変更できた。しかし明らかに追加加工の必要があった。というのはA2バリエーションが計画にあったのは無意味ではないからである(頑住吉注:レミントンM700には短い弾薬専用のショートシステムと長い弾薬が使えるロングシステムがあり、海兵隊は.308のみならこれで充分のショートシステムを使い、陸軍は.300ウィンチェスターマグナム用に変更できるようロングシステムを使った、ということだと思うんですが、ロングシステムには弊害もあったようで、それが具体的にどういうことか不明です)。

自家製ブランド
 アメリカでは民間領域でもショートおよびロングレシーバーを持つレミントンシステムがロングレンジシューティングシーンで支配的である。H−SプレシジョンやRoberのような会社は700系をベースに高級なスナイパーライフルや競技銃を作っている。しかし「自分は人間である」のモットーに忠実に、ノーマルのレミントン700をいくらかのファンタジーとともに個別的なスナイパーライフルに改造することもできる。というのは、他にこれほど多くのパーツが付属品マーケットに流通しているシステムはほとんどないからである。すなわち、マッチバレルに始まり、フラッシュハイダーや着脱マガジンへの改造キットを経てトリガーグループやスペシャルストックに至るまでのパーツである。
 ロングレンジ射撃スポーツ(我々の場合300mまで 頑住吉注:意味不明ですがドイツでは300mを越えるロングレンジシューティング競技が存在しないか法律で禁止されているのではないかと思います)を始める人にとって、レミントンがすでにスタンダード型の700ポリスあるいはポリスLTRにおいて高い命中精度と堅実な技術を限度内の価格で提供していることが選択肢に含まれる。わずかな出費によって(チークピース、ハリスバイポッド、トリガーチューニング)究極的に競技向けのライフルが生まれるのである。51cmバレルを持つショートバージョンでさえほとんど命中精度損失をもたらさない(表参照)。

個性には金がかかる
 しかしその後2、3千発射撃してから成績にもはや満足しない人、あるいはトリガーやストックが全ての災いの原因であると思うようになった人は、依然として全ての切り札を手の中に持っている。というのは、バレル製造において高いランクと名声を保持する全てのメーカーが700系の代替パーツを提供しているからである。Lothar WaltherからSchneiderやBorderを経てShilenに至るまでのメーカーである。その際バレルの輪郭、フルートの有無、ライフリングピッチは自由に選択できる。マズルブレーキ、あるいは着脱マガジンへの改造は同様に可能なチューニング作業の自己選択に加わる。それはスタンダードトリガーにも同様にあてはまり、ある経験豊富な銃工は約800gまで下げている。だがトリガーはSchilen製(スタンダード:700〜1360g、コンペティション:113〜170g)、Timneyウルトラライト(700〜1800g)、あるいはJewell(45〜2100g)に交換することもできる。同じことはストックにもあてはまる。ファイバーグラス、あるいはケブラーで強化されたH-Sプレシジョン製カーボンファイバーストックや、マクミランやChoateのアルミベッドつきストックは命中精度にベストの条件を提供し、またその際射手に個人的な調節を可能にする(ストックの長さ、バットプレート、チークピース、グラウンドスパイクそしてピストルグリップ)。

レミントン700AICS−Kit
 アキュラシーインターナショナルはレミントン700用にAICSキットを提供している。アルミフレームがシステムの軸受けの役割を果し、左右からストックがネジで取り付けられる(頑住吉注:まず機関部がストックの骸骨のようなアルミフレームにセットされ、プラスチックと思われるモナカ状の左右ストックがこれをはさんでネジで固定されるということです。いかにも安定しそうですがネジがたくさんあるので着脱が面倒そうです)。価格は728ユーロから。このストックはショートシステム、ロングシステム用ともある。追加料金を払えばオプションのグラウンドスパイク、アジャスタブルチークピース、アジャスタブルバットプレートが入手可能。(頑住吉注:こんなのです http://www.ketmer.com/ai/aics/index.htm)

弾薬(メーカー・重量・弾丸) 100mグルーピング
Lapua 155grs Scenar HP-BT 14
Remington 168grs HP-BT Match 17
S&B 168grs HP-BT 9

注釈:S&B=Sellier&Bellot。HP−BT=ホローポイントボートテイル。距離100m。ベンチレストより依託射撃。5発のグルーピング。グルーピングは着弾の中心から中心で計測。

レミントン700ウルティメイトスナイパーストック
 John Plaster少佐がデザインした安価な代替品。このモデルはアルミベッドつきで295ユーロ(ウィンチェスター、サベージ用もあり)。Gun Powerは150ユーロの追加料金で迷彩塗装モデルも提供している(頑住吉注:こんなのです http://www.ultimatesniper.com/catalog_page_detail.cfm?queries_index=index2&title_bar=The%20Choate%2DPlaster%20Ultimate%20Target%20%26%20Sniper%20Stock%3CBR%3E%3CBR%3E&Manufacturer=&recordno=1&Product_CatalogID=28&ProductNumber=28&ProductCode=4&NewProduct=0 )。

弾薬(メーカー・重量・弾丸) 100mグルーピング
Lapua 155grs Scenar HP-BT 13
Remington 168grs HP-BT Match 17
S&B 168grs HP-BT 19

注釈:S&B=Sellier&Bellot。HP−BT=ホローポイントボートテイル。距離100m。ベンチレストより依託射撃。5発のグルーピング。グルーピングは着弾の中心から中心で計測。

レミントン700ポリスLTR
 1399ユーロでショートバージョンポリスLTRというレミントンによるスナイパークラス入門機種がある。パッド入りのチークピース(例えばイーグルやブラックホークの)、ハリス製バイポッド、トリガーチューンによって銃は完全なものになる。だが51cmバレルはリコイル、発射音、発射炎をはっきり上昇させる(頑住吉注:こんなのです http://www.remingtonle.com/rifles/700pltr.htm 本当にプレーンな入門機種で、本格的に使用するには挙げられているようなオプションが必要であり、またショートバレルの弊害もある、ということです)。

弾薬(メーカー・重量・弾丸) 100mグルーピング
Federal GM 168grs Sierra Matchking HP-BT 17
IMI 175grs Match 32
Lapua 123grs Trainer 15
Remington 168grs HP-BT Match 17

注釈:S&B=Sellier&Bellot。HP−BT=ホローポイントボートテイル。距離100m。ベンチレストより依託射撃。5発のグルーピング。グルーピングは着弾の中心から中心で計測。



レミントン700カスタム
 この銃のシステムはスタンダードなものに過ぎない。ディテールにはGun Powerトリガー(225〜700g、281ユーロ)、フルーテッドのGun Power/Heymバレル(335ユーロから)、フラッシュハイダー(190ユーロ)、H−Sプレシジョン製ストックのタクティカルライフル2(800ユーロ)、EAW−SMをマウントした2.5〜10倍Kapsが含まれる(頑住吉注:カスタム品なのでそのものずばりの画像はありません。)。

弾薬(メーカー・重量・弾丸) 100mグルーピング
Federal GM 168grs Sierra Matchking HP-BT 21
IMI 175grs Match 33(15)
Hornady 168grs HP-BT 28(18)
Lapua 155grs Scenar HP-BT 49
PMC 168grs HP-BT 18
S&B 168grs HP-BT 27(12)

注釈:S&B=Sellier&Bellot。HP−BT=ホローポイントボートテイル。距離100m。ベンチレストより依託射撃。5発のグルーピング。括弧内は3発のグルーピング。グルーピングは着弾の中心から中心で計測。


H-Sプレシジョンタクティカルテイクダウン(TTD)
 特殊鋼製システムに着脱マガジンとプロシリーズ10X特殊鋼製マッチバレルが加わっている。全てのマテリアルは黒色のテフロンフィニッシュがなされている。アジャスタブルH−Sストックはアルミ製ベッドも持っている。非常に多くのデラックスな装備を持つこの銃の価格は4200ユーロである(頑住吉注:こんなのです。 http://www.hsprecision.com/new_take_down.htm )。

弾薬(メーカー・重量・弾丸) 100mグルーピング
RWS 165grs DK 23
Sako 168grs HP-BT 32
S&B 168grs HP-BT (17)

注釈:S&B=Sellier&Bellot。DK=ダブルコア。HP−BT=ホローポイントボートテイル。距離100m。ベンチレストより依託射撃。5発のグルーピング。括弧内は3発のグルーピング。グルーピングは着弾の中心から中心で計測。


 レミントンM700を初めて再現した国産トイガンはコクサイのスーパーウェポンだったと記憶しています。その後発禁になってしまった機種も含めて多くのエアソフトガンが発売されて現在も人気があります。一方これもメジャーな機種なんですがウィンチェスターM70は一度もトイガン化されたことがありません。これもまあ「シグナル効果」のうちでしょうか。
 具体的にどういう理由でウィンチェスターM70が軍用に使われていないのかに関しては記述がありませんが、海兵隊は軍の競技会用として持っていたウィンチェスターM70をベトナムで一部使用した、すなわちその時点ではウィンチェスターM70に有利な前提があったが、本国での比較テストで(明記されていませんけど当然ウィンチェスターM70も入っていたでしょう)レミントンM700がダントツの結果を出して採用された、というのは間違いないようです。
 個人的には最後に登場したタクティカルテイクダウンというモデルに強い興味を持ちました。テイクダウンライフルと言えば日本のガンマニアには過去にモデルアップされたことがある2式テラがよく知られていますが、これはまあその現代版みたいなものです。2つに分解してアタッシュケースに入れている公式サイトの画像なんかはとてもカッコよく感じ、ぜひどこかのメーカーに作って欲しいです。昔の2式テラのモデルガンは改造防止のため分割部がリアルに作れませんでしたが、現在のエアソフトガンなら問題ないはずですし。ちなみにテイクダウンは命中精度上不利になりそうに思えますが表を見る限りそうでもないようです。これは特殊鋼を使っているせいかもしれず、その分価格は非常に高くなっています。







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