「1つのロケットで多数の衛星」技術は多弾頭ミサイルに通じる?

 全く結論の違う2つの記事をまとめて紹介します。なお「1つのロケットで多数の衛星」は「一箭多星」といい、訳文でもそのままとします。

http://military.china.com/important/11132797/20150923/20448667.html


長征6号の20衛星発射技術を東風-5Bに用いたら アメリカのミサイル防衛システムを破るのに問題はない

9月20日7時01分、我が国の新型運搬ロケットである長征6号が太原衛星発射センターで点火、発射され、成功裏に20の微小な衛星を宇宙に送り込んだ。今回の発射任務の満足いく形での成功は、我が国の長征系列運搬ロケットファミリーにさらに新メンバーが増えただけでなく、しかも中国の宇宙への一箭多星発射の新記録を創造した。

メディアの報道によれば、今週末、長征6号は1回で20の衛星を発射して軌道入りさせ、このことは我が国の一箭多星技術にエポックメイキングな突破があったことを象徴的に示している。一方この技術は同様に我が国の東風-5Bミサイルに用いることができ、非常に大きく我が国の大陸間弾道ミサイルによるアメリカのミサイル防衛システム防御突破の成功率を向上させる。

一箭多星技術とはその名の通り1つのロケット上に多数の衛星を搭載するもので、その原理はロケットの有効搭載荷部に姿勢制御機能のある親コンテナを搭載し、親コンテナの中に小衛星を満載するというものである。親コンテナに対する姿勢制御により、親コンテナの姿勢と角度がいずれも事前に設定した値に到達した時、すぐ第1の衛星をリリースして軌道に進入、運行させ、その後第2、第3の発射を行う。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは「長征6号は全長29.3m、離陸重量103トンである。我が国が研究開発した液体酸素ケロシンエンジンも長征6号と共に初飛行試験を完成させた。このエンジンは無毒無汚染で、技術上1つの質的飛躍である。2015年9月20日朝、我が国の新世代運搬ロケット長征6号は太原で発射され、20の衛星を地球からの距離524kmの軌道に送り込み、アジア最高記録を作った。」です。)

衛星をミサイルの弾頭に変えればもう分離誘導式多弾頭になる。衛星は宇宙軌道に向けての発射、一方弾頭は大気圏に再突入し目標を打撃するだけである。つまり、我が国は1回に20の衛星を発射でき、ならば1発の大陸間弾道ミサイルに20発の分離誘導式弾頭の搭載を実現する可能性がある。

分離誘導式多弾頭は簡単な多弾頭とは異なる。簡単な多弾頭の飛行軌道は一致し、多目標攻撃の機能は持たない。これは核戦闘部を装備する対空ミサイルの面前では非常に容易に破壊される。一方分離式多弾頭は親コンテナの姿勢制御装置の姿勢調整によって異なる弾道の飛行、多目標の攻撃を実現することができ、この中には2つのカギとなる重要技術が含まれる。

1、弾頭小型化技術。これには核装置の小型化と再突入飛行体の小型化が含まれる。我が国の第2世代核弾頭は小型化技術を解決している。

2、宇宙飛行体の姿勢制御技術。これには宇宙での位置決定と弾頭を分離しての姿勢制御技術が含まれる。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションは「2015年9月3日、中国人民抗日戦争・世界反ファッショ戦争勝利70周年記念大会が北京で盛大にして厳かに挙行された。この画像集は外国メディアが撮影した閲兵式現場の解放軍主戦装備スクエアチームが検閲を受ける場面である。その中には戦略核殺器東風-5Bミサイル尾部のエンジンの超猛視角が含まれる。」です。最後の語はちゃんとした中国語ではなく意味は大体分かるのでそのままにしました。)

だが分離誘導式多弾頭ミサイルにもそれなりの弱点がある。第1に単体の弾頭の威力が小さすぎ、多弾頭時の重量が大きすぎ、しかもそれぞれの弾頭を援護して防御突破させようとすれば、より多くの資源を必要とし、このためその防御突破の策は実は数をもって打撃効果と引き替えにするというものなのである。何故なら重量が大きすぎるからで、このため一般に道路軌道発射模式も採用されない。

しかも大陸間打撃の距離を達成するためには、固体燃料を利用したら、その推進効率はやはり液体燃料に及ばず、このため東風-31にはこの技術を採用することはできない。一方固定発射サイロから発射する東風-5Bはまさにぴったりである。第2にミサイルは中間段階で容易に迎撃され、特に親コンテナがまだ個々の弾頭を放出していない状態下では、1発の迎撃ミサイルが親コンテナに命中したらもう全部の弾頭が破壊されるだろう。一般に採用される措置はデコイによる偽装で、例えば親コンテナ上に搭載される気球にガスを充填し、かつ金属箔を貼り、巨大なレーダー反射信号を形成させ、相手方のイージスシステムのレーダーが正確に目標を識別できないようにさせるのである。

アメリカの宇宙基地赤外線衛星がデコイと弾頭の温度の差異を根拠に識別できるのを防止するため、さらに気球内に電源を搭載し加熱する方法で欺瞞することができる。親コンテナが外宇宙にある時、空気がないため速度は気球と一致する(頑住吉注:空気がないと鉄球と羽は同時に落ちるってやつですね)。このためレーダーはドップラー効果でふるい出すことができない。だがもし大気圏の果てに接近した時には、顕著な差異が出現する。この時採る策は気球を防御突破するミサイルの弾頭上に縛り付け、それらと速度を一致させることである。まだある偽装の策は、甚だしきに至ってはミサイルの親コンテナを気球内部に装備し、肉眼でさえ遅れず識別できなくさせることができるというものである。

この一連の措置により、弾道ミサイルのアメリカ弾道ミサイル防御システムに直面した時の防御突破効率は非常に大きく向上する。アメリカ自らもかつてそのNMDを利用して対ミサイル試験を行ったことがあり、大多数の時、迎撃ミサイルは気球に命中した。(作者の署名:雲上の空母)

(頑住吉注:4ページ目のキャプションは「2015年9月3日、中国人民抗日戦争・世界反ファッショ戦争勝利70周年記念大会が北京で盛大にして厳かに挙行された。解放軍の第二砲兵部隊は閲兵式で多種の近中遠距離核・通常ミサイルを展示した。この画像集は当日閲兵式で多くの角度で撮影された大国の利器東風-5B遠距離戦略核ミサイルスクエアチームである。」です。)

http://military.china.com/important/11132797/20150922/20441104_all.html


一箭20星は宇宙運動エネルギー武器を研究するもの? 専門家:全く比較可能性なし

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「長征6号運搬ロケット輸送車の外形は威風堂々」)

中国が一箭20星を発射したことの潜在的軍事用途に関するある情報が21日ブログ上で広範に転載された。この情報はさらに、「この種の技術は実際上アメリカ人が構想したがまだ全く実施されていないRods from God宇宙基地運動エネルギー武器システムに他ならない」とした。だが「グローバル時報」記者は21日多くの領域の専門家をインタビューしたが、彼らは皆この視点は信用できず、いささか解読が過度だ、と考えていた。

このブログの情報は、中国のこの一箭20星という技術は実際上アメリカ人が構想したがまだ全く実施されていない「Rods from God」宇宙基地運動エネルギー武器システムに他ならない、としている。これは米軍が2012年に研究開発を開始し、2025年までに配備を完成させる計画の宇宙兵器である。

ある宇宙発射を熟知する中国の専門家は21日「グローバル時報」記者に対し次のように言った。一箭多星という技術が商用衛星発射領域で応用されるのは、最大限衛星発射コストを下げるために他ならない。現在の宇宙領域における1つの技術的考え方は大型で、機能が完備された衛星の発射である。この種の衛星は軌道に非常に長い時間いることができるが、その発射準備時間は比較的長く、コストは比較的高く、しかも運搬ロケットの発射能力に対し比較的高い要求がある。一方今最も新しく出現している趨勢は、一群の小衛星を発射するというものである。小衛星の優勢はコストが低く、準備時間が短く、宇宙に素早く進入することができることである。このようにすれば宇宙でネットワークを組み、時間解像度を向上させ、同一目標に対する連続的な観測を行うことが実現できる。この専門家は、小衛星のこういった優勢は四川大地震のような特大の自然災害への対応に対し非常に大きな助けになり、数日以内に素早く発射し、素早くネットワークを組み、被災地域に対する連続的な観測が実現できる、とする。この専門家はさらに、今回の発射任務の中に大型衛星が小型衛星を搭載するというものがあったからといって、すぐ強引に米軍の宇宙運動エネルギー武器といっしょくたにしてはならない、と強調する。この考え方に照らし、アメリカ、ヨーロッパの非常に多くの宇宙飛行体は子飛行体を搭載しており、さらに日本の宇宙飛行士はかつて国際宇宙ステーションから小衛星を放出した。ならばこうした小衛星も宇宙武器となるポテンシャルを持っていることになる。この専門家は、今回の一箭多星発射の少なからぬ衛星は中国の高等教育機関の教官や学生が研究開発したもので、このためこれは小衛星発射技術の民間用の試みであり、より多くの若者の宇宙事業への参加の熱情を刺激して引き起こすことを希望するものに他ならない、とする。

もう1人の姓名を明かされたがらない中国の軍事専門家は、中国の一箭多星で発射された小衛星は、アメリカが構想する「Rods from God」とは全く比較可能性がない、とした。「Rods from God」の目標打撃の重要なカギは充分な打撃精度の保障があることで、この精度は少なくとも30m以内に制御されてやっと意味を持ち、最も良いのは10m以内に到達することである。一方衛星の発射はkm級の精度に到達する必要があるがそれでもうOKである。長征6号の一箭多星は実際には集束発射方式で、それぞれの衛星の正確誘導を保証することはできず、1つの衛星群はおおよそ同じ軌道面に放出されることしかできない。また「Rods from God」の地上目標に対する破壊は完全に運動エネルギーに頼り、その運動エネルギーは自身の重量と関係がある。一方掩体に対する貫通極限深度は弾体の長さと関係がある。構想の中の「Rods from God」の重量は数トン、長さ6mで、1つのタングステン棒だけでももう長征6号の全体の搭載荷を超えるだろう。長征6号が搭載する多くの小衛星がもし地上目標の攻撃に用いられたら、あらゆる衛星は大気圏再突入時に焼けて損壊するだろう。

実際、「Rods from God」の威力も誇大化されている疑いがある。ある人はその威力は小型核兵器との比較に堪え、地下100m以上の掩体を破壊できると言う。だが実際には、やや物理学的常識がある人なら、単にその運動エネルギーに頼ったのではたとえ最小の戦術核兵器とであろうとも同列に論じられないと分かる。また、その地下目標に対する貫通深度は自身の弾体の長さと関係がある。大陸間ミサイル、遠距離ミサイルの大気圏再突入する弾頭速度はいずれも小さくない。だが今まで、1つの弾道ミサイルの弾頭も純粋な金属棒ではない。いくつかの専用の地面貫通弾道ミサイルも、非常に長い地面貫通弾頭の内部に充分な量の炸薬が充填されており、最終的には炸薬の化学エネルギーに頼って目標を破壊するのである。

今回の一箭20星に対し、さらにある分析は、これは中国の分離誘導式多弾頭技術の新たな成果を意味する、と考える。だがある関連領域の技術を熟知する専門家は、平和な年代、鋳剣為犂(頑住吉注:兵器を民間に平和利用する、といった意味らしいです)の多弾頭弾道ミサイルは運搬ロケットに改造して一箭多星発射任務を実施することができるが、多弾頭技術と一箭多星技術との間は決してイコールで結ぶことはできない、とする。分離誘導式多弾頭は、小型の姿勢制御エンジン、宇宙で何度も繰り返して始動する推進システム、高精度の慣性ナビゲーションシステム、高精度の大気圏再突入システムなど全てに対し非常に高い要求が提出される。一方もし弾頭に核装薬を採用するならば、さらに核弾頭の小型化技術を考慮する必要がある。


 私も似たような想像してましたけど、これを読むと上の記事の黄色で表示した部分はずいぶん能天気に感じられますね。













戻るボタン