MG151用ライフルグレネード

 「Waffen Revue」113号にこんなタイトルの記事がありました。MG151と言えばナチ・ドイツが使用した航空用20mm機関砲のはずで、それ用のライフルグレネードというのはどんなものか興味を持って読んでみました。


MG151用ライフルグレネード

 ひょっとすると一部の読者は最初、この記事のタイトルは印刷ミスであると思うかもしれない。しかし日常的に第3帝国に関心を持っているたいていの読者は、当時最もナンセンスな提案さえプロジェクト化され、試用されたことを知っている。つまり当時、ついには世界最大最重の列車砲、最重の戦車、最初のジェット爆撃機などが誕生した。そして「不可能」という言葉が単純にこの人のためには存在しないという多数の設計者がいた。ひょっとすると他方では、あまりにも大胆な諸プロジェクトに取り組まず、このための貴重な時間を有益に使った方が良かったのかもしれないが。

 以下に説明されるプロジェクトはきっと興味深いものである。これは最小のディテールまで綿密に計算され、1941年11月6日、Braunschweig所在のヘルマン ゲーリング航空研究所によって最終的に文書化もされた。

 残念ながらこのレポートは1941年に公式に廃止され、たいていの読者にはもはや馴染みがないであろうジュッターリン書体で作成されている。このためファックスされたいくつかのページしか論証のため掲載しない。しかしこの記事の枠組内でより詳しく注釈を加える。

 上に挙げたタイトルの下、この報告書は次のような言葉で始まっている。

1門の別の機関砲を使って命中するかどうかの距離を測った後に初弾として機関砲から発射されるMG151用のライフルグレネードが作れるかどうかが研究された。」(頑住吉注:要するに1発しか発射できないライフルグレネードの命中確実性を高めるため、グレネードの弾道をノーマルな機関砲弾と同一にしておき、ノーマルな機関砲の曳光弾が命中し始めたのを確認したらすかさずグレネードを発射する、ということが可能か、ということです)

 この後にいろいろな計算が続いている。我々はこのうちいくつかのページをオリジナル状態で掲載する。それらからはこの構造がどのようにイメージされていたかが読み取れる。

 開発者はMG151用ノーマル弾薬のデータから出発し、次のような結論に到達した。すなわち「このライフルグレネードは機関砲弾と同じ発射角度を持つ。機関砲は固定して組み込まれているからである。機関砲弾と同じ着弾点を持つことを意図するならば、グレネードにはより速い速度が与えられねばならない。この追加速度はロケット駆動によって達成されるべきである。

 2cm弾薬のマズルエネルギーは2965mkg.である。グレネードの重量は7kgである。

 このエネルギーはグレネードに90m/sの速度を与える。

 グレネードの直径は8cm、重量は7kgである。

 さらなる計算は次のようになっている。

射程400m、発射角度16.6度のための初速は680m/sである。グレネードは弾薬の発射薬から初速90m/sを得る。つまりロケット駆動によって追加速度680―90=約600m/sを達成する必要がある。

 火薬を伴うロケットの充填剤は噴射速度2150m/sである。


 さらなる種々の計算は掲載した書類から読み取ることができる。

 敵航空機との戦闘において大きな成果を期待させるこのライフルグレネードの使用や機能がどのようにイメージされていたのかは当然興味深い。

 つまりこのライフルグレネードは柄を使ってMG151の砲身に前から挿入する必要があった。しかしそれは航空機と一体化せざるを得なかった。ライフルグレネードの挿入は飛行中には行えないからである。つまり航空機の発信前にこれを行う必要があった。次に敵航空機から400mの距離に近づき、この距離を第2の機関砲を発射することで確認した時、パイロットはこの機関砲を発射することができた。最初の機関砲弾はライフルグレネードの柄に当たり、ロケット駆動装置に点火した。その後パイロットは機関砲のノーマルな弾薬を使って継続射撃できた。前述のようにライフルグレネードの再装填は不可能だったからである。

 掲載した図から見て取れるように、2つの異なる可能性が研究された。第3のバリエーションはこの報告書の4ページ目に見られる。これの場合重量が記載されている。

信管、ロケット駆動装置、柄などを伴うグレネード本体  4.836kg
炸薬                                0.860kg
推進薬                              0.900kg
――――――――――――――――――――――――――――――
                            全体重量:6.596kg

 この多種多様な理論的計算のために多くの労力がつぎ込まれたこと、そしてライフルグレネードの弾道が算出されたこともまた明らかである。しかしいつ、そしてどんな距離で、第2の機関砲を使って試射が行われるはずだったのか、他の距離でも発射可能だったのかどうか、可能だったとすればどのようにしてか、前方に飛ぶライフルグレネードの強いガス後流がパイロットにどのように影響したか、どのように砲身からの脱落やずれが防がれたのか、そしてこの件に関し読者の頭にしつこく浮かんでくる多くのさらなる疑問については、残念ながら回答されていない。

 この多方面に渡る報告書には、この計算の理由として報告書の冒頭に挙げられている、この研究の結論も欠けている(頑住吉注:こういうグレネードを作ることができるかが研究された、と冒頭に書かれているのにその可否に触れられていない、ということのようです)。

 ただこの時点、つまり1941年11月6日において、すでに多くの効果的な兵器が計画されていたばかりでなくすでにテストされていたことを見逃すべきではない。この奇抜なアイデアのさらなる追求はその後行われなかった。


 私は最初機関砲の砲身に挿入して発射するライフルグレネードというアイデアはナンセンスだと思いました。ライフルグレネードは初速、命中精度が著しく低く、弓なりの弾道を描くので、高速で移動する航空機から航空機への使用ではまず命中するはずがない、と思ったわけです。しかし読んでみるとロケット駆動によって加速し、少なくとも距離400mでは機関砲弾と同じ着弾点を持ち、他の機関砲をスポッティングライフル的に使って高い命中確率を得る、というかなり合理的で高度なものであることが分かりました。よく考えてみると、翼の下にランチャーを搭載する形式とは違い、発射後は余計な空気抵抗も重量上の負担もなしで済み、例えば急上昇して敵重爆に一撃をかけてから身軽になった機体で第2撃をかけたり、あるいはハンデなく敵護衛戦闘機と空戦を行うこともできるわけで、計画された当時よりむしろ戦争末期に合ったアイデアだったように思えて来ました。1発のみというのはあまりに少ないですが、照準方法に改良を加えれば2発、あるいは戦争末期に多用されたような、翼内だけでなく翼の下のゴンドラに機関砲を装備した機なら4発装備することも可能だったでしょう。

 また私は次に低速で発射された後に徐々にロケットで加速するのかと思いましたが、最初低速で発射されて比較的大きく沈下してからどんなに加速しても機関砲弾と同じ着弾点になることはないはずですし、またMG151にはセミオート機能はないはずですから最初低速で飛んでいたら後ろから来た次の機関砲弾に追突されて破壊されてしまう可能性が高いと思われます。となれば最初から思い切りロケットを吹かして機関砲弾並みの初速を得ようということだったんでしょう。しかしそんなことが可能なんでしょうか。上の図のように中央の柄の周りに細長いロケットエンジンが(この図では見えませんが6本)あり、推進薬の量はかなりあるにしろ、高い初速を得るためにはこれを高速で燃焼しつくさなければならず、高圧に耐えるものにする必要があると考えられます。仮にできたにしろ、機関砲並みの初速を実現したらロケットでなく重量数kg以上もある通常火砲の砲弾(75mm級に相当するようです)を発射したのに近い反動が生じ、1部とはいえこれが柄を通じて伝達されたら機体が破壊されてしまわないでしょうか。また、柄にあたってロケットに点火する機関砲の初弾は炸薬のない演習弾頭にしておいたにせよ、ロケットエンジン点火、急加速までの一瞬のタイムラグ間に砲身が破裂してしまわないでしょうか。

 まあ実現していないアイデアであり、「検討してみたが不可能と判明した」ということかも知れず、あまり真剣に考える意味はないでしょう。しかし非常にユニークで面白いアイデアであるのは確かです。

 なお、「Waffen Revue」には報告書の一部が計4ページ掲載されていますが、手書きの筆記体、しかも独特の書体ということで私には全然読めません。

































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