DAYSTATE MK3

 「Visier」2004年5月号に、「DAYSTATE MK3」という実銃エアガンのレポートが掲載されていました。「初のエレクトロニクスシステム搭載エアライフル」ということです。私は実銃エアガン、そして電気関係に関する知識が乏しいので難しいですが、努力して読んでみました。


クレバー&スマート(頑住吉注:この通りの英語のタイトルです)

DAYSTATE MK3はエレクトロニクスシステムを搭載した初めてのエアライフルだ。そしてイギリス、アメリカ、オランダによる国際的共同事業の一例でもある。

 
 StaffordshireのCotesに所在するイギリスの会社Daystateは、30年近く前から品質の良さで定評ある、強力なエアライフルを作っている。イギリス人はこの社の銃を害鳥獣、ハト、アナウサギのハンティング用に、そしてフィールドターゲット(FT)射撃に使用している。最新作MK3は最高の銃であるが、メーカーのこの銃の長所に関する自慢は必要最小限に留まっている。控えめな態度は立派だが、Visierはより正確にこの銃を知りたい。そんなわけでこのテスト銃はIWA会場から直接テスト射撃場に持ち込まれた。

 ところが、編集者にとって遺憾なことに、この銃は最初アンタッチャブルな状態だった。というのは、エレクトロニクスによるCDT制御システムは、まず第一に内蔵された12ボルトのAkkus電池に最低18時間の充電を要求する。次に、キーがなく、後から大急ぎでオランダから送ってもらうことになった。このキーというのは実用テストのために必要な、組み込みの「Kindersicherung」(頑住吉注:子供用安全装置)用のものだ。この小さなキーをトリガーガード前方のロックに差し込まないと、MK3はコックすることも、発射することも、そして充電することさえできないのだ。Daystateが2人の専門家David SnookとSteve Harperに委託したエレクトロニクスシステムは、このデラックスなエアライフルの心臓部である。そしてこの銃のパテントを取得した「Capacity Discharge Technoiogy」(CDT)の特徴を詳細に見るならば、他のエアライフル設計者も興味を持つだろう。

 Harperは珍奇な「WindSchiessstocke」(頑住吉注:順に風、英語のシュート、英語のストック、という3つの単語が合成された単語ですが、どういうものか不明です)および「Air−Cartridges」(頑住吉注:これも正体不明ですが、名前からしてアサヒのM40A1みたいなものでしょうか)の開発者として知られ、1980年以来常により進歩した技術を製品に盛り込み、そして1996年にはすでにある種の特殊な弁を彼の手によるエアピストル「Classic Wolf」に組み込んでいる。一方Snookは電子部品の専門家だ。1998年に起こった新しいトランジスターとマイクロチップの技術的進歩がCDT制御システムを可能にした。ある種の電子的コンペンセイターに蓄積された、正確に計測された電圧による放電が電磁石によって作動するアンカーを動かす。この原理はすでにCesare Moriniと他のスポーツ銃設計者がより早く使っている。しかし、MK3は回り道なしに直接発射弁となるピンを開いている。機械的な「打撃部品」と比べ、モダンな部品によるアンカーの動きは「ウルトラ」高速になり、肉眼ではほとんど知覚できない。アンカーは弁を厳密に正確に開閉し、Daystateの主張によれば弁が開くまでの作動時間は5/1000秒となる。垂直に組み込まれたレギュレーターはこの分野のプロの調節技師であるアメリカ人Joe Korickが設計した。

MK3のメリット
 このようなコンビネーションは多くの長所をもたらす。
 CDTシステムはハイキャパシティを生む。例えばテスト銃は200気圧、16ジュールで、160発以上有用な射撃が行えた。これと比べ2002年6月号で本誌がそれぞれ200気圧でテストした際、ワルサーのドミネーターは150発、アンシュッツ2020は90発、ステアーLG100FTは100発だった。
 マズルエネルギーはより正確に決定された空気量、「弁余震」が起こらない、という2つの理由により、通常の機械的弁より一様である。
 動くパーツが少なく、結果として磨耗が少ない。
 トリガーはエレクトロニクスシステムを作動させる単なるスイッチなので、機械的摩擦や「ひっかき」を感じずにすむ。
 ボルトを後方に引くとき、「打撃部品」をコックする必要はなく、抵抗が小さくなる。
 このライフルは正確に測られた空気量によって射撃を行うのでいくらか音が小さく、振動が少ない。
 このシステムは安全性の面でも役割を演じる。セーフティレバーの切り替えによって、赤の発光ダイオードがトリガーからの残りの電流を吸い取り、発射システム方面には流れない。
 テストではエレクトロニクスを混乱させたりプログラミングを破壊することも行ったが、銃は回路の基板を交換することによって正常に戻った。
 最後に述べる点はドイツの顧客にとって重要である。顧客はDaystateからMK3をそれぞれの望むマズルエネルギーで購入できる。ドイツで自由に購入できる7.5ジュールにはじまり、ここに示しているテスト銃の16.3ジュールを経て、40または67ジュールのハイパワーバージョンまでである。各MK3はそれぞれのフルパワーが出せるようにセットしてある。だが、特殊なプログラムモードにより、それ以下のパワーに調整することができる。そのためには、セーフティをかけた銃のトリガーを引き、次にセーフティレバーを「ファイア」に回す。3秒間隔で「ピヨピヨ」音が鳴り、それぞれの可能性を示す。トリガーを放すことによって望む領域が得られる。「Power Setting」のためのため、例えば6回の「ピヨピヨ」音の後ですぐ指を放すといった具合である。トリガーを長く引いているほど弁の開放時間、そしてその結果空気量は減少する。「ピヨピヨ」音1回目で放すとDaystateのDiabolo弾(頑住吉注:日本でも実銃エアガンに使われている鉛製ツヅミ弾みたいな奴です)が235m/sに加速され、16ジュールとなる。2回目だと218m/sに減り、3回目だと200m/s、4回目だと170m/s(7.5ジュール弱)、5回目だと144m/s、6回目だと96m/sまで低下する。工場渡しの7.5ジュールバージョンMK3はリミットを厳密に守っており、要求されるFシグナルを得ている(頑住吉注:よくわかりませんが、ドイツでは7.5ジュールまでのエアガンが無許可で買え、その製品には確かに7.5ジュール以下であるということを示す「Fシグナル」というものがつけられているのではないかと思います。)WBK義務バージョンでは、たとえば冬に10mのトレーニングが行える4番目のランクに到達する(これはもうドイツのエアガン事情が分かっていないとわけが分かりませんが、要するに簡単にパワーを落とせるので室内の近距離射撃練習に使えて便利、ということのようです。)。
 このプログラミングテクニックはマニュアルを読んですぐマスターできる。その上設定はスイッチをオフにしても記憶されているし、圧力が低下しても維持される。MK3は実用的な、急速充填可能な注入弁を持つが、圧力計は組み込まれていない。本来のメーカー品は10連マガジン(テストしていない)つきだが、自分で標準装備のローディングトレイを使う単発に改造することができる。この場合Diabolo弾は1個づつボルトによってLothar−Waltherバレルに差し込まれる。

 MK3のエレクトロニクスやメカニック面に注目しがちだが、豪華なウォールナット製ホールタイプストックも忘れてはいけない。ストックはエレガントだがたった1本の「Inbus」ネジ(頑住吉注:辞書に載っていませんが6角レンチで回すネジのようです)でシステムと結合されている。オイル仕上げされており、肩付けの位置はトリガーよりやや高い。これはFT射撃姿勢に理想的である。さらに調節可能なチークピースやセッティングを変えられるゴム製バットプレートもよりFT射撃向きにしている。

射撃テスト
 このMK3にはスコープが付属していなかったので、メーカーオリジナルのHawkeスコープ(10〜50x56)を射撃テストのためにとりつけた。グルーピングは26〜28mmとなった。ご注意ありたい。これは弱い「春の疾風」の中、50mから20発の結果だ。Schulz製のDaystateオリジナルDiabolo弾は径が4.51mmで、MK3にベストの適合である。そしてFT用でより重いH&N Baracudaでも35mmという小さなグルーピングになった。

 MK3はIWA後締め切りまでの時間では充分ではなかったため、さらに厳しく正確にテスト中である。その上、Daystateのさらなる7.5ジュールバリエーションのHarrierもすでにテスト中である。これからのFTシーズンもエキサイティングになるだろう。

モデル:Daystate MK3(16.3ジュールバージョン)
価格:1450ユーロ(スコープなし)
口径:4.5mm(希望により5.5mmもあり)
システム:200気圧圧縮空気 10連マガジン使用可能
全長:950mm
銃身長:380mm(Lothar−Waltherバレル)
重量:3600g


 スイッチを入れると電動でシアが動き、ハンマーやストライカーといった「打撃部品」が動いて発射する、いわゆるエレクトリックトリガーとは違い、このMK3のCDTシステムというのは、スイッチを入れると直接電磁石の働きでバルブが動いて発射する、というものです。この方法だと「打撃部品」がレットオフされてからバルブにあたるまでの走行時間がなくてすむのでトリガーを引いてから発射までの時間であるロックタイムが極端に短くなるということです。普通どのくらいなのか知らないもんで5/1000秒つまり1/200秒というのがどれだけすごいのか分かりませんけど、やっぱすごいんでしょうね(笑)。それに加え、機械的に叩かれるバルブより放出される空気の量が一定になり、ひいては初速が一定になるということです。ちなみに「弁余震」というのは機械的に叩かれた通常の弁がいったん閉じた後振動して少し空気を漏らす現象のことではないかと思いますが、これがないことも空気量の均一化に役立っているということです。。内部で動くパーツが少なく、移動距離が少なく、打撃による衝撃がないということで発射の瞬間の動揺も少なくなるはずです。そしてトリガーはスイッチを入れるだけなので極端に軽くすることもできるし摩擦などのないスムーズなものにできます。これらの結果非常に命中精度が高くなるということです。これも普通どのくらいなのか知らないもんで50mから26mmというのがどれだけすごいのか分かりません。ただ訳文ではあまりに突拍子もないのでソフトな表現にしていますが、筆者はここで「wohlgemerkt」という単語を使っています。この訳語は辞書には1つだけ「(間投詞的に)いいかよく聞けよ」しか載っていません。なんかこりゃすごいという興奮が伝わってきます。それにこれは装薬銃でも優秀とされるくらいの数字のはずですからやっぱすごいんでしょう。てな具合に知識不足でどのくらいすごいのかはよく分からんわけですが、この銃のシステムは非常に面白いと思いました。
 この方式の最大のメリットは命中精度が高いということですが、その他にもいくつかメリットが挙げられています。まず発射数が多いという点です。これはたぶんバルブが超高速で開閉することによって、通常の機械式のような開きかけ、閉じかけのとき漏れるエア(発射に大きな働きをしない)によるロスが少なくてすむということではないでしょうか。また、前述の「弁余震」がないということも関係しているのではないかと思います。ただワルサーのドミネーターという銃とはさして変わらず、画期的というほどの違いではないようです。またこれは200気圧で何ccのタンクに充填しての結果かが書かれていないんで正確な燃費の比較にはなりませんね。
 「打撃部品」をコックする必要がないのでボルトの引きが軽いと書かれていますが、これに加えたぶん移動距離も短いのではないかと思います。基本的にツヅミ弾が入れられるまで後退し、強くパッキングされるまで前進すればそれでいいわけですから。
 そして、電気的なメカでバルブを開閉しているので開く時間が調節でき、もちろんセーブしてある上限以上にはできませんが、その下でなら簡単にパワー調節ができるということです。

 メーカー公式サイトはここです。
http://www.daystate.com
 ここもこの銃の紹介ページに直接行けません。まず真ん中あたりの「ENTER」をクリックし、次に表示されるページの上の方に並んでいるメニューのうち「Airguns」をポイントすると、各機種名が上下に並んで表示されるんで、そのうち「Mk3」をクリックするとこの銃の紹介ページが表示されます。
 「Visier」は空気量が正確だから音が小さいとよく分からないことを書いていますが、ここを見るとサイレンサーが内蔵されています。エアライフルのサイレンサーはたいていの国で合法なんでしょうか。ちなみに「Visier」がレポートしているのは一番下のFTモデルです。ここにはこの銃がかつて存在した中で最も安全なエアガンであると書いてあります。これは「打撃部品」がコックされているということがなく、電流をカットすれば決して発射が起こらないということでしょう。ただ、違法電波などで電気製品が誤作動するなんてケースもあり、絶対にこういうことがこの銃に起こらないかは不明です。

 このアイデアは当然装薬銃にそのまま応用することはできませんが、トリガーを引くと高圧電流が流れて発射薬に点火するというシステムならこれと同じ、あるいはこれ以上のメリット(まったくパーツの移動がない)があるはずです。しかし何故かこういう銃は特殊用途にすら普及していません。ちなみにこのシステムは世界初ということですが、アサヒのWA2000で初めて使われ、現在も一部のショップカスタムで使われているらしい「電磁バルブ」というのはこれに近いものではないんでしょうか(←実はよく実態を知らない)。


「Visier」2004年6月号に同じDaystateの新製品に関する速報があったので追加します。


Daystate/イギリス
スナイパー用スーパーエアライフル
 
 イギリスのメーカーDaystateは7月から、安価に狙撃訓練ができる特殊な遠距離射撃-圧縮空気エアライフルを供給する。IWAで初めて提示されたHarrier X-Air Rangerは、口径.22(5.5mm)、5または10連発のリピーターとして作られ、セッティングによって100、122、135ジュールのマズルエネルギーに達する。135ジュールバージョンはDiabolo弾(頑住吉注:金属製ツヅミ弾)の重量(40グレイン、2.6g)でも初速(1060ft/s、320m/s)でも通常の小口径弾薬(頑住吉注:.22LRのことらしいです)と一致している。X-Air Rangerは距離150mまでの使用が想定されている。口径.25(6.3mm)の単発バージョンは50グレイン(3.24g)のDiabolo弾を使って初速が305m/sを超え、マズルエネルギーは170ジュール弱に達する。イギリス警察は今後口径.30(7.62mm)の型を施設や所有地に侵入する野犬よけに使用する予定だ。Daystateはこうした目的(そして世界中の動物学者のための)の銃を数年来生産しているが、特殊な矢を使用する麻酔銃もすでに生産している。


 タイトルと内容を辞書を引かずにざっと見たときは、MP5のように比較的近距離の警察用「軽狙撃銃」として使え、しかも音が静かなエアライフルが開発されたのかと思いましたが、さすがにそこまでの威力はないようです。それによく考えれば装薬銃なみの威力のあるエアライフルなら音も装薬銃なみになるはずですよね。それでも.22LRなみの威力があり、150mまで使えるエアライフルというのはすごいと思います。「知識の断片」の.17HMRの項目の内容によれば.22LRのスタンダードな弾薬の弾頭重量は2.6g、マズルエネルギーは137ジュールということなんで、確かに135ジュールバージョンとほぼ同じですね。命中精度については触れられていませんが、これほどのパワーがあってちゃんと作ってあれば.22LRと同程度になるはずで、例えば50mで人質を避けて犯人の特定部位を狙撃するといった訓練には充分使えそうです。しかも圧縮空気を供給する設備さえ整えればほとんどタダみたいなコストでいくらでも撃てるわけです。.22LRなみのパワーのエアライフルと実際の警察用狙撃銃では使用実感が大きく異なるでしょうが、なにもこれ「だけ」で訓練するわけではなく、これ「も」便利に利用するということなら充分存在意義はあると思われます。ちなみに公式サイトには「ハリアーX2」というバージョンがあり、これと近いものだと思いますが、「ハリアーXエアレンジャー」というこのハイパワーバージョンの広告はありません。公用オンリーということなのかも知れません。ちなみに「ハリアーX2」はMK3のような特殊な電磁バルブ式ではないコンベンショナルな機種なので、この「ハリアーXエアレンジャー」もたぶんコンベンショナルなものでしょう。ちなみに最後に登場している麻酔銃は公式サイトのメニューの「Airguns」をポイントして現われた「Tranquiliser Gun」をクリックすると見ることができます。話の本筋とは関係ないですが、イギリス警察にとって野犬の侵入って特別な対策を講じなければならないほど深刻な問題なんですかね。ちょっと想像できないですが。

 









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