ワルサーモデル4


モデル4

 ワルサーは何らかの方法で、ドイツの帝国国防省が、兵員の間で使用されていたモーゼルC96およびピストーレ08の対立物としての信頼性の高い、ハンディなピストルを探し、将校に支給しようとしていることをかぎつけていた。将校および軍の官吏は自分のピストルを自分で購入しなければならなかったが、その購入は国防省の兵器および弾薬調達局を通じて行われ、同局が価格も決定していた。

 当時モデル3はいくらかより強力な7.65mmブローニング弾薬用に作られていたが、この銃を軍でも実戦使用するため充分に頑丈とは全く言えなかった。他方においてこのモデルは民間人によってベストポケットに突っ込まれることを可能にするためには充分にハンディでもなかった。だからこの銃は大きな成功なしに甘んじた。このため少数しか生産されず、このことはこの銃が今日かなりレアであるという事態をもたらした。

 一方発火機構メカニズムが新造されてはいないが全体的にずっと頑丈で比較的コンパクトに造形され、弾薬は同じであるモデル4はこれとは違うようである。

 ワルサーはこのモデル4を同様に1910年に7.65mmブローニング弾薬仕様で登場させた。この銃は最初から急速に人気を博したので、1929年まで多数が生産された(頑住吉注:この年はPPが登場した年です)。このことはこの銃が将校用ピストルとして使われたせいだけではなく、ハンターたちによって好んで携帯されたためでもある。だからこの銃はいろいろな通販会社によってカタログに受け入れられた。

 このモデルが製造された長い期間は、このピストルに多くのバリエーションがあることの理由でもあるだろう。いろいろな刻印やさまざまな方式のスライドの滑り止めミゾを度外視しても、この銃にはライフリングが4本のものと6本のものがある。その上2つの基本的に異なる型がある。つまり1つは外装式の、そしてもう1つは隠されたトリガーバーを持つものである。このいろいろな型はここに掲載された写真から分かる。これに関してはさらなるバリエーションが存在することも全く有り得ることである(頑住吉注:多数のバリエーション写真は省略しますが、独立したリアサイトがあるものとブローニングM1910のようなミゾだけのもの、スライドの滑り止めが細かいものと荒いもの、スライドエクステンションがバヨネット結合方式のものとモデル3のような独立したロック金具を持つもの、トリガーバーが露出しているものと内蔵のもの、リコイルスプリング後部を受けるパイプ状部品がないもの、さまざまな刻印バリエーションなどがあります。パイプ状部品の欠損は単に所有者が紛失しただけではないかとも思われますが、九四式と違ってこの銃の場合なくても一応機能に支障はないはずなので例えば第一次大戦時に生産単純化のために省略されたといった可能性もあるかも知れません)。

 このモデルでも薬莢投げ出しのための開口がスライドの左サイドに配置されていた(これは実用において射手を妨害したとは言わないまでも非常にいらつかせた)にもかかわらず好まれたのは本来的には驚くべきことである。

 全ての部品の強化とグリップフレームの延長(今や8発用マガジンが収められている)以外に、構造上1つの変更にだけは言及すべきである。つまりこれはバレル筒(閉鎖機構筒)がモデル2の場合のように再びバヨネット結合方式になっている点である。これがピストルのより大きい寸法に合わせていくらか長くする必要があったにしてもである。型(i)も見かけられる。この型では復帰スプリング(閉鎖スプリング)における後方の短い筒が(意図してか意図してでないか)存在せず、スプリングはバレル収納部にあてがわれている。

 この銃の場合もセーフティによってハンマー、トリガーバー、トリガーが同時に安全状態にされる。このピストルはコックされた状態でのみセーフティをかけることができる。

分解

はこの銃の場合も全く簡単である。

1)マガジンを除去し、バレル内に弾薬がないことを確認した後、バレル筒(閉鎖機構筒)をいくらか押し込み、左に回して外す。その後復帰スプリングは筒ごといくらかひねって取り外せる。

2)スライドをできる限り後方に引き、いくらか持ち上げ、前方に滑らせて抜く。

 組み立ては全く逆の順序で行われる。



注釈

 工場ナンバーはこのモデルの場合もいろいろな入れ方がなされている。

a)グリップフレーム右面、トリガー後方

b)スライド左面、グリップパネル上方

c)ナンバーなしのピストルも見つかる

さらに、

 1917年の軍の官報の中の、1917年8月8日における国防省、兵器および弾薬調達局の指令、ナンバー1871/7.17.D.I.2により、将校、官吏、および動員予算に関係する全ての軍関係者のための「ピストルおよびリボルバーの価格」が新たに決定された。

 この中で「ワルサーピストル7.65mm」の価格は32マルクとされている。

 同局の1918年における官報は、1918年3月18日のナンバー2431/2.18.B3、「衣服等の価格の変更」に触れている。これによれば「ワルサーピストル7.65mm」のホルスターの価格は6.50マルクとされている。

テクニカルデータ

名称:セルフローディングピストル ワルサーモデル4
メーカー:Zella St. Blasii(後のZella-Mehlis)のカール ワルサー
製造年:1910年から販売
口径:7.65mmブローニング
空虚重量:527g
全長:(約)150mm
全高:(約)110mm
全幅:(約)26mm
銃身長:(約)88mm
ライフリングの数:4または6
ライフリングのピッチ:注釈を見よ
ライフリングの角度:注釈を見よ
ライフリングの方向:右回り
ライフリング山部幅:注釈を見よ
サイト:フロントおよびリアサイト
セーフティ:回転レバー
マガジン:通常8発用
ロック機構:なし
閉鎖機構:スプリング・重量閉鎖機構。ファイアリングピン発火機構を伴うインナーハンマー
刻印:写真を見よ

注釈

 すでに述べたように、このピストルは4本および6本のライフリング付きで見つかる。それだけでなくいろいろなライフリングのピッチおよび山部、谷部の寸法で見つかる。ここでいくつかの例を挙げる。

工場ナンバー ライフリングの数 ライフリングの角度 ライフリング山部幅
21221 4 5.48度 1.65〜1.70mm
81756 4 1.65mm
103361 4 1.85mm
208321 4 5.60度 1.50〜1.57mm
220306 4 5.53度 1.31〜1.37mm
253782 4 1.95mm
267431 6 1.80mm

 いろいろなライフリングの角度により(残念ながら挙げた全ての銃では計測されていない)、ライフリングのピッチもいろいろである。ただしナンバー208321を持つ型では245mmで一回転となっている。


 この銃はブローニングM1910と同時期の銃であり、クラス的にも同一です。排莢方向が何故か左だという1点を除けばM1910に匹敵する実力はあり、分解がより簡単、トリガープルが軽くスムーズであるなどより優れた面もあったはずです。中田商店が以前文鎮モデルを販売していたように、戦前には国内にも輸入され、将校用として使用されていたようです。

この銃に関してはこんなページがあります。

http://www.whog.org/originals/Model_4.htm

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/Walther_Modell_4_ex.jpg

http://www.littlegun.be/arme%20allemande/walther/a%20walther%20mod%204%20gb.htm








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