SIGザウエル モスキート

 「DWJ」2004年7月号にSIGザウエルの新しいオートピストルであるモスキートに関する記事が掲載されていました。


SIGザウエル モスキートはプリンキングピストルとしても、同様にトレーニング用の銃としても役立つ。

公用ピストルの小口径バージョンというのはしばしばある。それはトレーニングモデル、またはレジャー領域のためのリアルに近い銃である。モスキートにより、今ザウエルはP226の小口径バリエーションを提供することとなった。

 それはほとんど大口径のSIGザウエルP226のように見える。少なくとも最初の一瞥では。もう一度見てその人は怪訝に思う。ピカティニーレールがバレル前下部に、マニュアルセーフティがスライドにあるからだ(頑住吉注:P226のレールモデルは実在しますが、まだあまり一般的ではないようです)。そしてさらに、そのピストルはなんとなく小さいような印象を与える。事実新しいピストルであるモスキートはその姉であるP226の約90%の寸法しか持たない。口径もはるかに小さい。.22LRであるため、口径は62%、弾丸のエネルギーに至っては50〜60%である。にもかかわらずこの小さな蚊は充分な価値のあるピストルであり、いくつかの点においてP226に大きく勝りうるものですらある。例えば安全機構の数において。
 安全機構に関し、モスキートは本当に多数を持っている。内部の落下安全装置(頑住吉注:オートマチックファイアリングピンブロック)、ザウエル製品の特徴として有名すぎるほどのデコッキングレバー(このコンビネーションで本来充分であるはず)とならんで、この小口径ピストルにはさらにスライドに組み込まれた両側から操作可能なマニュアルのファイアリングピンセーフティ、および内蔵のマガジンセーフティがある。マガジンセーフティはマガジンを抜いた状態での発射を阻む。この措置は銃に無知な人、すなわち銃のマガジンを抜いてもなおバレル内部の弾薬のために発射可能であるということを知らない人のために有意義である。しかしドイツの「専門知識テストの卒業生」はそれを知っているはずである(頑住吉注:よく分かりませんが「ドイツではハンドガンを所持する際に許可証が必要で、それを得るためには銃に関する知識の筆記試験を受ける必要がある、したがってドイツにおいてハンドガンの所持者がこんな初歩的なことを知らないことはありえない」、ということではないかと思います)。
 これらの安全機構に加えてさらに施錠設備が存在する。これにより銃全体を完全にブロックすることができる。こうした遮断、安全機構の数の多さは、この銃が主にアメリカマーケットで大量に売りさばくことを想定していることに原因が求められる。アメリカにおける製造物責任に関する裁判の実際は、「オーバーセーフティ」な銃器構造を助長している。その上メーカーはアメリカにおけるこの製品のターゲット層を、次のように考えなくてはならない。すなわち、「アメリカではこの種の銃は『プリンキング』、つまりコーラ缶やそれに類するものを単に楽しみのために撃つことに使われる」と。また、そこでは冗談ではなくしばしば家族全員が銃を持ち、そして青少年の身の回りにも銃がある。だから安全機構を1つ追加することはそれだけですでに意味を持つのである。結局のところ、アメリカでは子供(頑住吉注:「Kinder」つまり英語の「キッズ」)が早くからシューティングスポーツに連れて行かれ、パパがP226を撃っているちょうどそのとき息子や娘がそれに適した小口径銃で射撃を始める。マガジンセーフティはこのような観点から許容しうるものであると思われる。こういう配慮をすれば子供による銃の事故の可能性はいくらか低下する。ただし、特に銃器所有者の場合、このような安全機構は親としての監督義務の代わりになるものではない。

技術
 ザウエル&ゾーンのモスキートは.22LR仕様であり、ロック機構のないストレートブローバック(頑住吉注:ドイツ語では「スプリング-質量-閉鎖」というような表現です)である。これに対応してバレルは固定式で、理論上命中精度が高くなる。全長183mm、全高134mm、全幅37mmで、原型の大口径P226よりわずかに小さい。しかし重量は依然として大きく、このピストルはコンパクトはもちろんサブコンパクトとすら言うことができない。多くのフルサイズ大口径銃の場合このフレームでは軽量化、あるいは小型化すら勧められる。
 トリガーシステムはオーソドックスなデコック機能が付属したSA/DAで、デコックは左面のマガジンキャッチ上方の、右利き射手のみ良好に指が届くレバーで行われる。DAのトリガープルは重めの5.5kg、SAは許容可能な2.0kgである。P226のようにハンマーは手動でコックできる。トリガーは事前の遊びがほとんどなく、比較的乾いたフィーリングだが、マッチクオリティーには達していない。しかしこれはトレーニング銃やレジャー銃に期待されるものではない。
 102mm(4インチ)バレルには6条のライフリングがあり、ライフリングが切られた部分の長さは80mmである。リアサイトの単純な長方形型ミゾから、ホワイトドットの入った角材型フロントサイトまでの照準長は140mmである。
 モスキートのフレームはピカティニーレールが一体で組み込まれたプラスチック製で、たぶんピカティニーレールはザウエルが新しいトレードマークに選んだようである(頑住吉注:すでにお伝えしたようにGSRにも、P250DCcにも組み込まれていました)。今年のニューモデルは全てこのウェーバーレールに基くマウントを特徴として示している。しかしドイツでは許されたアクセサリーはなく、むしろ外観を悪くしているように見える(頑住吉注:ピカティニーレールとウェーバーレールの関係については「マッチガンとしてのM16」、ドイツでマウントレールが何故無駄かについては「GSR」の項目ですでにお伝えしました)。グリップ形状はP226で知られたものだが、この銃の場合寸法が小さいおかげで小さな手にも適するし、手の大きい人も損をすることはない。これは真のプラスである。グリップ角度は良好だが、ボアはザウエル製品に特徴的なこととして手から高い位置にある(頑住吉注:ハイグリップではないということです)。モスキートの重量はマガジンなしで650g、ここに空マガジン50gが加わる。
 マガジンキャパシティーもアメリカマーケットに同調している。すなわち10発がシングルローの金属製マガジンに保持される。アメリカではこれ以上は民間用として許されない。

DWJの結論
 「1000発撃っても腕がこわばることがなく、小さな財布にも穴が開かない」、広告の中でザウエルはこう約束している。モスキートはこの要求を満たすことができる。このような真の大型ピストルで.22LRを撃つ場合リコイルはほとんど感じられない程度だし、.22LRは例えば9mmパラベラムよりずっと割安である。銃自体の価格(299ユーロ)もこの小さなザウエルの購入決定を容易にする。ハンター(罠猟用のピストルとして)、マッチに参加する野心は持たないスポーツシューター、公用ピストルに似た銃が持ちたい人、安い弾薬でその練習がしたい人に向いている。アメリカマーケット向けに存在する「過剰安全機構」は我慢できる。


続いて「DWJ」、「Visier」などに掲載されていたSIGザウエルによる広告の内容です。


Sting of Fire
SIG SAURE
MOSQUITO

 1000発撃っても腕がこわばることがなく、小さな財布にも穴が開かない。SAUER&SOHN社の小口径ピストルSIG SAUER MOSQUITOは完璧な商品である。

MOSQUITO
 MOSQUITOはより大きい原型のSIG SAUER P226の100%の機能、命中精度、そして90%の寸法を提供する。デコッキングレバー、自動落下安全装置といった百万回プルーフされたSIG SAUERピストルファミリーの安全機構に加え、MOSQUITOはさらに3つの安全特徴を備えている。
 マニュアルセーフティ、マガジンセーフティ、そして銃を完全にブロックする錠である。これはこのピストルクラスでは類を見ない。

テクニカルデータ
口径:.22LR
全長:183mm
全高:134mm
全幅:37mm
照準長:140mm
銃身長:101mm
ライフリング:6条
マガジンなし重量:650g
空マガジン重量:50g
トリガープル:DA約2.0kg、SA約5.5kg
マガジン装弾数:10発


SIGザウエル公式サイトの紹介ページはここです。

http://www.sauer-waffen.de/index.php?id=41&backPID=10&lang=de&tt_news=3

 文章の内容は上の広告とほとんど同じで、「MOSQUITOは、磨耗しにくいプラスチックフレーム、一体で組み込まれたピカティニーレール、アジャスタブルサイトを装備した大量生産品である。頑丈な『スプリング-質量-閉鎖』と固定バレルはトッププレシジョンをもたらす。」といった内容が加わっている程度の違いです。
 ちなみにアメリカにおけるSIGArmsの公式サイトにはまだ紹介がないようですが、「DWJ」の記事にもある通りこの銃は明らかにアメリカマーケットを意識したもので、いずれアメリカでも販売されるはずです。

 プリンキングや訓練用に.22LRも使用できる公用ピストル、あるいはそれに近いものが欲しいという要求は多いようです。.22LRは安価でリコイルが小さく、国によってはトイガン感覚で気軽に撃てるからです。この要求に応じる方法は基本的に2つあります。まず公用ピストルに小口径のバレル、ロックのない軽量なスライド、弱いリコイルスプリングなどを組み込むコンバージョンキットを開発する方法、そして新規に.22LR仕様で公用ピストルに似たものを開発する方法です。
 前者のうち最も有名なものはガバメントの.22コンバージョンでしょうし、ここでも以前「差し込みバレル」や「アダプターカート」を使った珍しいマカロフのコンバージョンキットを紹介しました。後者としてはやはりガバメントに似たコルト「エース」.22LRピストルが有名ですし、最近では以前ここでも紹介したワルサーP22が成功しているようです。
 ただしリコイルが小さい.22LRでは有効な訓練にはならないという意見もあり、S&W、H&K、グロック、スタームルガー、ステアーなどコンバージョンキットも公用ピストルと似た.22LRピストルも供給していない大メーカーも多いようです。
 SIGザウエルも従来こういうものを提供していませんでしたが、新製品としてP226を多少縮小したようなモスキートを新たに発売したというわけです。縮小したと言ってもP22のように歴然と小さいわけではなく、90%程度の寸法になっています。外観はP226によく似ていますが、フレームはプラスチックで、(高価なP226と比較すると特に)非常に安価です。こうした銃は初心者が使うことが多く、主にアメリカで事故があった場合の訴訟問題を考えて過剰な安全対策が取られています。ドイツの銃器雑誌を読んでいると、DAOピストルに本来必要ないはずのマニュアルセーフティがあったり、トリガーが異常に重かったりといったアメリカ向け訴訟対策の弊害を不快に思っているような記述が多く見られます。
 .22LRで快調に作動させるためスライドは軽いはずですし、フレームはプラスチックなのに何故マガジン(もちろん弾薬も)なしで650gもあるのかちょっと不思議です。
 従来SIGザウエルピストルと言えばデコッキングレバーが大きな特徴でしたが、最近SIGプロのDAOモデル、GSR、P250DCcなどデコッキングレバーのない製品が増えてきました。SIGザウエルはピカティニーレールを必ず装備するようになってきましたが、この記事ではデコッキングレバーの代わりの新しいトレードマークのようだとされています。本当にそういう意図かどうかは疑問ですが、確かにモスキートの場合実用上必要だからマウントレールを装備しているとは思えませんね。
 










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