SIGザウエル モスキート その2

 「Visier」2005年6月号に、SIGザウエルのP226をやや縮小したような.22LRピストルであるモスキートに関する記事が掲載されていました。


Mini-job(頑住吉注:両方の単語ともドイツ語でも使われますが、ドイツ語なら名詞であるジョブの頭は大文字になりますからこれは英語のタイトルということになります。ちなみに日本ではアルバイトというドイツ語が臨時雇いのような仕事を指しますが、本来ドイツ語の「Arbeit」は仕事一般、さらには物理学上の「仕事」も指す広い意味の言葉であり、「Job」が日本におけるアルバイトを指す言葉として使われます。)

ピストルモデル226はローエンフォースメント領域においてフルタイムジョブを行っている。だが縮小されたモスキートバリエーションは何に適しているのだろうか?

 2200年前、中国でDavid Copperfieldの仲間(頑住吉注:魔術師?)が、岩、樹木、獣、そして人を伴う風景を盆の上に縮小し、Bonsaisの栽培を活気付けると称する魔法を使った(頑住吉注:しゃれた書き出しをしようと思ったんでしょうがわけ分かりません。まあこの人は盆栽が日本語だってことも知らんのでしょうし、趣旨と無関係なので無視しましょう)。小さくなるほどますます良い。すなわち、高さ40cmのスモモの木は依然として「巧の成績」に該当する(頑住吉注:無視無視)。エッケルンフォルデの中の人(頑住吉注:ザウエル)はそこまで遠くに行きたいとは思わなかった。この小口径モスキートのための宣伝文句は言う。 「モスキートはそのより大きな原型であるSIG-Sauer P226同様100%の機能と命中精度を提供し、そしてこれは90%のみの寸法においてである」 事実この.22口径ピストルは、大きな姉妹品と見間違うほど似て見える。しかしこの銃は当然警察公用としては考えられない(頑住吉注:要するに冒頭の妙な例え話は大筋、「人間は時として物を極端に縮小することに意義を見出すことがあるが、この銃は縮小モデルといっても90%に縮めただけのものである」ということを言うための前振りであるわけです)。

アメリカにおけるプリンキング
 ザウエルの情報によれば、モスキートのジョブはこれだとされる。これはひたすら現実的である。確固たるルールなしに、ことのついでに缶や他の小さなターゲットを射撃するものだが、いたるところで楽しまれている。しかしアメリカと違って、ドイツにおける射撃はシューティングレンジにおいてのみ可能である。非常に練習になるにもかかわらず、我国ではプリンキングはスポーツシューティングの概念の下には含まれない。だからザウエルによればこの銃の主要業務は大西洋の別の端(頑住吉注:アメリカ)で行われることになるだろう。それはうまくいく可能性がある。気前の良い父が息子にプリンキング用としてこのミニ226を贈るとき、たいていのライバルはだらしなく打ち負かされる。というのは、プリンキングピストルというものはしばしば単に並みからいいかげんまでの加工グレードだからである。モットーは「眼目は安さ」である。

 モスキートは全く違う。それはケースに入っている状態を一見してすでに明らかである。そこには豊富な付属品がある。標準装備の交換フロントサイト、さらに第2のリコイルスプリング、信号旗つき赤色のバッファー弾薬(頑住吉注: http://www.sauer-wolf.de/pd1040075447.htm?defaultVariants=search0_EQ_4,5%20mm_AND_%7BEOL%7D&categoryId=43 ドイツの一部スポーツ射撃団体では、運搬時にこういう実弾が明らかに装填されていないことを示すリボンのようなものの付属したダミー弾薬をチャンバーに入れることが規定されているということです)などで、これはより高価な大口径ピストルにもしばしば付属していないものである。モスキートの装備にも納得がいく。この銃はディテールの正確な小型化したP226のように見えるだけではない。ザウエルに特徴的な操作エレメントはフェイクではない。デコッキングレバー、スライドストップ、アンビのセーフティ、DA/SAトリガーは大きな姉妹銃のように機能する(頑住吉注:P220シリーズにマニュアルセーフティはないですが)。第一には輸出用に製造されているため、モスキートは従来型のP226とは違い、フレーム前部に(頑住吉注:ピカティニーレールと同寸の)ウェーバーレールがついて登場した。マーケットが提供するレーザーまたはライトターゲット器具をマウントすることが許される人はそうしてもよい。

細かい差
 もちろん226とモスキートは双子ではない。だが、そのことは近くから見て初めて分かる。ブリーチ面とバレル内のライナー、そしていくつかの小パーツのみがスチール製である。フレームとスライドはNE-メタル製である。これは特別に高度な熱処理が施された圧力鋳造亜鉛合金である。心配する理由はない。BATF(Bureau of Alcohol Tobacco and Firearms)の厳格な許可判断基準に合格するため、この合金はジュラルミンより高い強度を持つ。機能技術上の差はクリアに理解できる。この.22口径銃は固定バレルと単純なスプリング/重量閉鎖(頑住吉注:ストレートブローバック)で働く。

安全性は保証つき
 アンビのセーフティレバーはファイアリングピンを不活性化する。つまり真のファイアリングピンセーフティとして機能する。その上この銃はさらに落下およびマガジンセーフティを持つ(頑住吉注:落下セーフティというのは落とした際の暴発を防ぐオートマチックファイアリングピンブロックのことです)。ドイツよりも厳格さの少ない保管ルールを持つ国々では、グリップフレーム後下部にある追加の子供用安全装置にも意味がある(頑住吉注:子供用安全装置とはキーロック式セーフティのことですが、ドイツではそもそも銃はカギのかかる保管庫に入れる決まりになっており、子供がいたずらすること自体が理論上ありえないということのようです)。施錠すると、スライドもハンマーも銃をロードしたりコックするために充分後方に引くことができなくなる。

 同様に、意識的に選択されたたっぷり2000gという非常に高いトリガー抵抗も一種の「安全装置」である。しかしこれは客よりもメーカーをより保護するものである。というのは、アメリカにおける収拾のつかなくなった製造物責任以外にこのピストルのトリガープルを説明するうまい根拠は存在しないからである。これで指の筋肉は鍛えられるが、グルーピングをよくするためにはより軽いトリガープルの方がよかったはずである。ただ、ザウエルが軽いアルミニウムをスライドおよびフレームに使わなかったことはピストルのためになっている(頑住吉注:重いトリガープルは命中精度にマイナスだが、銃が重いことで比較的ぶれにくくなっている、ということでしょう)。

シューティングレンジにて
 高いトリガー抵抗はテストにおいてこの720gの重さを持つ銃を想像よりずっと少なくしか邪魔しなかった。モスキートは15mの距離において、ポピュラーな.22弾薬を使って実に納得のいくグルーピングを提供することができた。31mmという最もタイトなグルーピングはウィンチェスターのX .22 HVを使って成し遂げられた。しかし、CCI MiniMagを使った4発のグルーピングはたった18mmであり、これはこの小さなピストルの命中精度ポテンシャルが短いサイトラインおよびトリガーの重さのせいで充分に発揮され得ていないことを明らかに示している。だからときどき射手に原因のあるそれ弾があった。テストでは、この小口径ピストルにおける異なる強さのリコイルスプリングの意味も示された。モスキートは強い方のリコイルスプリングを使い、RWSのピストルマッチ、ラプアMidasといったまぎれもないマッチ弾薬でさえ充分に機能した。Swartklipだけが恒常的な障害を引き起こした。この種類を除き、約200発後に1回のエキストラクション障害が、この間軌道に乗っていた空缶ハンティングを初めて中断させた。この問題はチャンバーを拭うことですぐ取り除くことができた。同じ重さの弾丸(頑住吉注:両方とも40グレイン)における銃口初速度はそれだけでは機能にとって決定的ではないことが分かった。RWSピストルマッチは17m/s Swartklipより遅いが、(ちょうどまだ)障害フリーで作動した。

改革の遅れ?
 取り付けられた高さ5mmのフロントサイトを使って、モスキートは15mで狙点通り着弾した。このお買い得な銃はその要求度の高い加工グレードと一致した命中精度を手にしている。この銃はワルサーP22を恐れる必要はない。むしろすでにドイツにおけるスポーツ規則が問題になっている。というのは、公式団体内には小口径ピストル用の競技がほとんどないのである(頑住吉注:.22口径の純競技銃による競技がないはずはなく、この銃やワルサーP22のような公用ピストルをややスケールダウンしたような小口径銃に向いた競技がほとんどないということでしょう)。これは残念なことである。この銃はそのハンディなグリップと299ユーロという安価さによって18〜25歳の若手シューター向きである(頑住吉注:安価は分かるとして、18歳以後手が大きくなることはあるまいと思うんですが)。最後に高い弾薬コストが怖気づかせて止めさせるということもない。つまりこのミニ226は大口径射撃の理想的な準備用になりうる。エッケルンフォルデの人もそう見ている。IWAにおいて、ザウエルは(頑住吉注:ドイツのスポーツ射撃団体)BDMPに5挺の等しいモスキートを贈呈した。ともかくこの団体はハンドガンを使ったダイナミックな小口径射撃のための競技(DKS-1)を持っている(頑住吉注:なるほど、通常の.22口径ピストル射撃競技は静止して精密射撃を行うものであり、これにこのような銃で参加しても勝ち目はないが、コンバットシューティング競技の小口径版のような競技ならこうした銃の方が有利になる、だがそうした競技は実際のところあまりない、ということですね)。この競技は楽しみを保証するし、これは重要なことである。というのは、「楽しみのあるところだけに成績もついてくる」とBDMP若年部門担当者Uwe Moller(頑住吉注:「o」はウムラウト)も言っているからである。問題は、こうした競技が何の役にも立たないのかどうかだけである。しかしスポーツ規則の前文によれば、全てのBDMP種目ですでに現在原則として小口径銃を使って適切な距離から射撃してもよいとされている。つまりモスキートはドイツでも切り札になりうる(頑住吉注:最後の部分はよく分かりませんが、適切なハンデを課せば大口径を想定した競技にこうした銃で出場することが可能ということではないかと思います)。

SIGザウエル モスキート

弾薬 メーカー グルーピング(mm) 初速(m/s) エネルギー(J)
Denel Swartklip 42 271 95
Magtech .22RFLR 55 274 97
RWS .22l.r.Rifle 39 296 113
RWS Pistol Match 42 254 84
Lapua Midas 36 276 99
PMC Sidewinder HV 61(24) 296 113
Winchester X .22 HV 31 299 116
CCI MiniMag 61(18) 298 115
CCI Stinger 71(41) 372 134

全てのグルーピングはシッティング、レスト、距離15m、5発で計測(括弧内の数値はそれ弾を除く4発のグルーピング)。弾丸重量は40グレインで、CCIスティンガーは30グレイン。


 本家ザウエル公式サイトにおける紹介ページはここです。

http://www.sauer-waffen.de/index.php?id=279&lang=en

 アメリカの子会社SIGArms公式サイトにおける紹介ページはここです。

http://www.sigarms.com/products/classicpersonalsize-models.asp?product_id=233#

 以前「DWJ」の紹介記事の内容をお知らせしたことがありますが、そのときにはフレームがプラスチックとされていました。今回の「Visier」の記事では亜鉛合金とされているので材質が変更されたのかと思いましたが、上の両公式ページではプラスチックとされたままであり、またフレームのような大きなパーツがプラスチックから亜鉛合金に変更された場合に生じるであろう大きな重量増加も見られないので、たぶん今回の記事が誤っているのだろうと思います。ただ、実際に使用した筆者がフレームの材質を勘違いするとは考えにくく、どうも納得行きません。

 総合的な評価で筆者は「この銃はワルサーP22を恐れる必要はない」という表現を使っており、これが「勝るとも劣らない」という意味なのか、「完全に勝っている」という意味なのかドイツ語力不足のため不明ですが、たぶん後者に近いニュアンスではあるまいかと思います。しかし、トリガープルが非常に重いとされていますが、2000gならそんなに極端に重いわけではなく、しかもレストして撃っているわけですから、元々精度の高い弾薬である.22LR、完全固定バレルという条件を考えればもう少し命中精度が良くてもいいのではという気もします。以前「スイス銃器マガジン」によるワルサーP22サイレンサーモデルのレポートの内容をお伝えしましたが、そのときのデータを見ると同じ15m、シッティング、レストという条件だったので、ロングバレル、サイレンサー装着時などこの際関係ないデータを省いて転載しておきます。

メーカー 弾丸タイプ 弾丸重量(g) 初速(m/s) 初活力(ジュール) グルーピング(mm)
CCI HP(銅メッキ) 2.59 267 93 36
CCI HP 2.59 252 83 26
レミントン HP 2.46 224 62 22
CCI ラウンドノーズ 2.59 258 86 29
フェデラルターゲット ラウンドノーズ 2.59 271 95 42
フェデラルクラシック ラウンドノーズ 2.59 260 88 39
PMCマッチ ラウンドノーズ 2.59 262 90 35
レミントンターゲット ラウンドノーズ 2.59 258 86 40
エレー ラウンドノーズ 2.59 268 93 38

 銃身長がP22の87mmに対し101mmと長いこともあってかエネルギー量は全体にモスキートの方が大きいようですが、命中精度はどうもP22の方がいい感じですね。確かに全体的にはモスキートの方が高級感のある作りになっているようですが、総合的にそんなに差はないだろうという気がします。

 ちなみにこの銃にはP220シリーズとそっくりなディスアッセンブリーレバーがついており、なんとなく分解方法も同じかなと思っていたんですが、モスキートは固定バレルなのでよく考えれば同じなわけがありません。写真とキャプションによれば、ディスアッセンブリーレバーを回すとスライドが通常より大きく後退して後部が持ち上げられるという、ワルサーPPシリーズの変形のような分解方法が取られています。