MP446バイキングその2

ロシアの新型ピストルMP446「バイキング」については以前「Visier」によるレポートを紹介しましたが、今回紹介するのは「DWJ」2003年8月号に掲載されていたレポートです。


「グラッチ」の姉妹モデル:バイカル MP-446「バイキング」9x19(7N21)

堅実な実用銃


 新しいロシアのアーミーピストルとなった「グラッチ」(ミヤマガラスの意)に続いてIschjjewskの銃器メーカー バイカルが登場させた「バイキング」は、一見して「グラッチ」と区別しにくいほどよく似ている。ただし、フレームはプラスチック製で、最近流行のモダンなピストルグループに分類される。

 ミリタリー、ポリス、ディフェンス用にと、プラスチックフレームの銃が流行だが、今ロシア人もこの種の銃を送り出してきた。ただし、今回紹介するこの銃はまったく目新しいものというわけではなく、2、3年前から銃器ショーで展示されていたものだ。この銃は約10年前に着手された「グラッチ」プロジェクトと同じWladimir Jaryginによって開発されたものである。「DWJ」読者にはJaryginの名は以前から知られている。1984年7月号ですでに彼が手がけた国際的に成功したスタンダード、ラピッドファイアピストルであるバイカル34/35を紹介したことがある。
 「バイキング」は彼の手によるスチールフレームの基本モデル「グラッチ」をグラスファイバーで強化したプラスチックフレームに変えたものと言っていい。広告では使用目的は「スポーツおよびトレーニングピストル」とされている。この銃の表記には「Wiking」と「Viking」の2つがある。ロシア文字はどちらでもないし、キリル言語の「B」はどちらともつかない発音である。
 このピストルも、使用弾薬である9x19(7N21)も技術的に新しいものではない。ロシアではオリジナル弾薬の「パンツァーブレヒェンデル」(装甲破り)などが使用されているが、ドイツでは禁止されており、当然使用できない。しかし、原理的に新しい内容がないからといって、この銃が興味深い物でないということにはならない。ロシア人がわが9mmルガーの使用を選択したことも興味深いし、それだけでなくここはどうしてこうしたのか、どうして他の方法にしなかったのかといった2、3の興味深い点がある。

なじみのある、しかし普通でない
 ブローニング方式のティルトバレル、エジェクションポート自体を使ったロッキングシステム(原型はMAS M35)、SA/DAのトリガーシステム、ダブルカアラムマガジン、これらはすでに何百回もコピーされた周知のものだ。原理的に新しいものではないにもかかわらず、2、3の特徴が目を引く。
 例えば、112mmのバレルはツーピースになっており、チャンバー部は別体でバレルにかぶせられている。これにより非常に頑丈なロッキング部となっている。これに類似の方法としてはワルサーP1、FN M35が知られている。風変わりなのは、ロッキング部に遊びがないために発射時スライドが即バレルを後方に押すことと、バレルをティルトさせるカム部がチャンバーの前方にあることだ。こういう設計で失敗した前例としてはスターM28がある。この銃はこのような特徴を持つため命中精度が悪いという評価を受けた。
 さらに問題なのはカム部の形自体である。通常はバレルがスライドに押されてわずかにまっすぐ後退してからティルトするようになっているが、この銃では即ティルトが始まる形になっている。実験によれば、このような特徴を持つ銃は着弾が上下に散りやすく、またファイアリングピンに強い負担がかかる。この部分は西側モデルに劣っていると考えられる。
 スチール製のリコイルスプリングガイドは実に芸術的な形に削り出されている。これはスライドストップ軸の抜け止めの機能もあり、着脱時に非常に強いリコイルスプリングのテンションに逆らって前方に引き出す必要があるからである。バレルの固定はタイトである。ライフリングはコンベンショナルな形状の6条で、内部の仕上げは良い。ただし、チャンバー内部は同じ弾薬を使用する銃より15/100mm径が大きすぎ、発射後のケースが膨らんでしまう。新しいロシア製9x19Code 7N21の寸法が西側で通常使われている9x19より大きいのかもしれず、計測してこの銃のチャンバーと一致するのか確認してみたい。ライフリングは右回りで、約250mmで1回転のピッチだ。谷部は内径9.05mm(.356)だ。
 フレームには4カ所にスライドとかみ合う短いレールがある。このレールはフレームに鋳込まれて一体になっているわけではない。削り出しのトリガーメカの一部であり、プラスチックフレームに差し込んで2本のピンで固定されているので交換できる。メインスプリングハウジングはアルマイト処理されたアルミ製で、それ自体が挿入されたマガジンと接して保持する役目を果たしている。これは21.1mmと非常に幅があるマガジンを収めるグリップを少しでも小さくするためだろう。
 この銃は一番上まで弾薬が2列のダブルカアラムダブルフィードなので、フィーディングランプが隣り合って2列ある。前例としてはH&K VP70、ステアーGBがあり、またサブマシンガンでは普通のデザインである。これは装弾数を多くするためだが、一方送弾が複雑化する。しかし、MP446では問題は認められなかった。しかも、リップがワイドなため装弾が容易である。弾は鉄板のリップの上から押し込み、パチンとはめこんでいけばよい。ただし最後はかなり力が要る。ローダーがあれば、マガジンを抜かずにエジェクションポートから装弾することも可能だ。マガジンの長さは120mmで、17発装填できる。弾薬なしで760gの銃は、フル装填するとプラスチック製にもかかわらず約1kgに達する。グリップフレームの厚みは32mmで、ランヤードリングの取りつけが可能だ。予備マガジン1本が標準装備されている。
 マガジンキャッチは簡単に左利き用に差し替えることができる。人間工学的によくできたアンビセーフティはハンマー、トリガー、スライドを完全にロックする。スライドストップは後方に長く延長されており、操作しやすい。コックアンドロックが可能で、即応性が高い。
 オートマチックファイアリングピンブロックはなく、ハンマーをセーフティコックに入れることで安全が確保される。これはハンマーの両側がコックを妨げない形のスライドの張り出し部でカバーされていることを考えに入れても欠点である。これはトカレフの特徴を引き継いでいるのだろう。この銃は全長が195mmに対し、銃身長が112mmと比較的長い。これはショートリコイルによるバレルの後退距離(4mm)、フィーディングランプ等が短く設定されているなどのデザインによるもので、一般的には銃身長が全長の半分に満たない機種もある。
 エキストラクターは真上にある。ローディングインジケーターの機能もあり、触って確認することもできる巧妙なデザインだ。

グリッピングは良好、トリガーフィーリングはいまいち
 グリップは形、感触、慣れ親しんだ105度の角度、すべて好感が持てるものだ。滑り止めのミゾは見慣れないものだが違和感はない。トリガーリーチはSAで63mm、 DAで72.5mmとほどよいものだが、SA時にトリガーフィンガーが入るスペースが小さい。切迫した状況下で急いでグリップを握るとトリガーフィンガーがトリガーの先端近くにかかる可能性があり、こうなると測定の結果5.5kgもあったトリガーが引き切れない可能性が高い。SAのプルは1700gと比較的軽いが、ハンマーが落ちた後の遊びが長く、スムーズではない。多くの人はトリガーチューニングとトリガーストップが必須と感じるだろう。スライドは精密鋳造だが、削り出しのように見える。内部は機械加工跡が少なくきれいに仕上げられており、外部はサンドブラストによるサテンフィニッシュになっている。スライドとプラスチックフレームとの質感は見事に一致している。外観上つやがあるのはエジェクションポートから見えるチャンバーだけだ。リコイルスプリングはきわめて強く、何回も引く時は苦労する。そんなときはハンマーをコックしてから引くとよい。
 右のスライドのすべり止めミゾが左よりずっと短いのは不思議だが、よく見れば理由は明らかだ。右側にはディスコネクターがあるためこの部分の肉厚はわずか0.75mmしかなく、この部分にはミゾが設けられないのだ。分解は慣れ親しんだ方法だが、スライドストップは任意のスライド位置で抜くことができる。ただし、セーフティはオフにしておかなくてはならない。
 アジャスタブルサイトつきのバリエーションも存在するが、テストしたのはスタンダードな製品だ。多くの人はこれで満足するだろう。フロントサイトは幅3.5mmで、この部分は削り出されている。リアサイトはアメリカのノバックローマウントキャリーに似ており、アリミゾ結合されている。ハンマーの両サイドをカバーするデザインのため照準長がやや圧迫されているが、それでも150mmあり、これは受け入れ可能な長さだ。リアサイトのミゾは大昔の銃によくあったU字型だが、素早いサイティングはしやすい。サイトは3ドット式だが、使用者はこのドットを水平に並べることを優先させるか、サイトの上端を水平に並べることを優先させるか決めなくてはならない。両者は銃を目に近い位置で構えない限り一致しない。

実射
 ロシア人が以前から主張しているところによれば、25mから4発の最低グルーピングは150mmとのことだが、これは技術的、製造上あまりよくない点があるのでそんなものだろう。字義通りのスポーツ銃としては悪すぎる。テストした中ではMagtechのソフトポイントフラットノーズが80mmと最も良い結果になったが、これはレストでの結果である。着弾点は平均で75mm狙点からずれており、サイトは調節できないが、これは実用ピストルとしては受け入れ可能な結果だ。
 弾薬が左右交互に送弾されるシステムは少なくともフラットノーズ、レッドブレットではハンディキャップとなるので、申し分のない作動は意外だった。作動にひっかかりが感じられることもあったが、送弾不良には至らなかった。これは強いリコイルスプリングのおかげだ。
発火性能も申し分ないものだった。弱装弾でも排莢不良は起きなかった。

DWJの結論

 ロシアの銃器は信頼性に定評があるが、その長所はこの新製品にも受け継がれていた。印象としてはプルーフされた銃器技術に基づく堅実な実用ピストルであり、革新的なものではないが、ディテールには興味深いものを含んでいる。基礎となった「グラッチ」との本質的な差はスチールパーツで補強したプラスチックフレームの使用のみだが、これは実際上長所ばかりではない。スポーツピストルとしては多くを期待できない。この銃は明らかに軍用の携帯銃器であり、民間人の護身用にも向いている。使用弾薬は世界的に普及したベストのものだが、ロシア製の特殊弾薬は国内ではどこでも入手不可能である。

価格:519ユーロ


 「Visier」と「DWJ」は同じドイツ国内の銃器専門誌ですが、前者が1コマ漫画を掲載していたり、割と周辺領域のグッズ等を取り上げることが多いのに対し、「DWJ」の方が内容が固くて難しい傾向があります。傾向としては「Visier」がコンバットやアームズ、「DWJ」がGUN誌に近いですが、全体的傾向として日本の専門誌よりずっと固いです。これは日本の専門誌がどうしても年少者が多いトイガンマニアを意識しなくてはならないのに対し、ドイツの専門誌は実銃中心だからということもあるでしょうし、やはり国民性もあるでしょうね。この記事も私にとっては難解で、いったんは訳をあきらめたくらいです。いくぶんかでも力がついてきたというのもあるかもしれませんし、辞書を新しくしたことも大きいですが、何とか大筋の内容が示せました。まあしかしこれは今回に限ったことではないですが、内容的に8割くらいしか合っていないと考えてもらった方がいいです(笑)。ほとんど間違いない訳文ができるくらいなら仕事にできますし、そんなのがタダで読めると思ったら間違いです(笑)。
 
 Wladimir Jarygin(ウラジミール・ヤリジンで大体発音合ってますかね)が過去に設計した「バイカル34/35」というのは、床井雅美氏の「現代ピストル図鑑 最新版」P75に掲載されている「バイカル・モデル IZH−35M」のことだと思います。この銃はあまり外観的に大きな特徴がなく、グラッチやバイキングとのデザイン的な共通性も見て取れません。本をお持ちの方はP117も見てください。「ワルサー・モデル KSP2000」という銃が掲載されていますが、これは「バイカル・モデル IZH−35M」と同一モデルで、バイカルが製造し、ワルサーブランドで販売しているものだそうです。安いからという理由が大きいんでしょうが、ダメな銃ならワルサーブランドに傷がつきますし、おそらく価格の割には優秀な銃であり、設計者もそれなりの手腕を持った人物なんだろうと想像されます。

 独立したロッキングラグ、リセスを持たず、エジェクションポートにチャンバーがはまりこむことでロックされるブローニング改良型のショートリコイルは明らかに現在の公用拳銃の主流です。これは「SIGロッキング」とも呼ばれるのでSIG P220シリーズが元祖かと思ったら、フランスのMAS M35が原型だという記述があり、驚きました。この銃は名前どおり1935年に採用されていますが、ややこしいことにM1935Aという銃とM1935Sという銃があります。床井雅美氏の「現代軍用ピストル図鑑」P170〜171に両方が掲載されているのでお持ちの方は参照してください。使用目的、ティルトバレルによるショートリコイルという作動方式、使用弾薬、サイズなど大筋同じような銃でありながら、全く共通性のない2つがともに採用されているわけです。当時は航空機も似たような機種が多数同時に制式にあって混乱し、ドイツに対抗する際の障害になったといった評価がありますが、社会、政治システムからくる同じ問題だったんでしょう。「SIGロッキング」の元祖となったのはM1935Sの方で、「HANDGUNS OF THE WORLD」(Edward C.Ezell著)という本に確かにこの方式のロッキングであると確認できる断面図イラストがありました。「フランス警察がSIGプロ採用」の項目で、「フランス人の作った銃にろくなものはない」みたいなことを書きましたが、この点は大いに評価すべきですね。

 さて、すでにご存じの通りMP446は次期ロシア軍制式拳銃MP443の姉妹モデルであり、スチールフレームであるか、プラスチックフレームであるか以外に重要な違いはないようです。「次期」と言ってますが、実際のところ現在どれだけ更新が進んでいるのか全然情報が伝わってきません。冷戦時代じゃあるまいし、大国であり武器輸出大国でもあるロシアの制式拳銃に何年も前に決まったにしては、いくら何でも情報が少なすぎじゃないでしょうか。ここまで情報がないと、以前冗談として書いた「欠点がばれるのが嫌だから国外に出さない」説が真実めいてきます。武器輸出によって外貨を獲得したい立場にあるロシアのこと、本当にいいものなら「ロシア軍も採用した最新軍用拳銃!」といって輸出に力を入れそうなもんです。
 で、その疑惑を補強するように、MP443と基本的に同一メカであるMP446には命中精度が悪いというはっきりした欠点があるわけです。その理由はバレルをティルトさせるカム部が前寄りにある、ティルトが早く起きすぎる形になっているなどによるということらしいです。

カム部の比較

 一番上がMP446、次がCz75などバレルがスライドストップ軸に沿ってティルトする普通の機種、次はグロックなどバレルが独立したブロックに沿ってティルトする機種、最後は悪い前例とされているスターM28をそれぞれ単純化したイラストです。現在ではグロック等の形式が最も多数派のようです。スターM28とほぼ同型のスターM30に関してはGUN誌1984年3月号にターク氏によるレポートが掲載されているのでお持ちの方は参照してください。この記事では25mにおけるグルーピングは平均で100mmをかなり超え、あまりよくないという評価になっています。また、ほとんどのグループで1〜2発とんでもない方向に飛び、スチールフレーム、アルミフレームの2機種とも同じなのでこれが実力なのだろうとされています。イラストのようにスターはバレルをティルトさせるカム部が明らかに普通より前寄りにあります。長いパーツを前後2点で保持する場合、前後のそれぞれ1点におけるパーツ同士のガタの大きさが同じなら、なるべく離れた2点で保持した方が全体のガタは小さくなります。カム部が前寄りになれば理論上それだけ命中精度が低下する傾向になるはずですが、スターの場合それだけでは説明がつかない気がします。MP446はスターよりさらにカム部が前寄りになっています。設計者が何故こういう形にしたのかは想像がつきます。お持ちの方は「現代ピストル図鑑 最新版」P20のMP446の断面図、GUN誌1984年3月号P42のスターの断面図を、通常の機種の断面図と比較してみてください。通常カム部がトリガー上部の機能部と上下に重なり合って狭苦しい感じなのに対し、MP446やスターはカム部が前方に避けられており、みた感じずっとすっきりした印象を与えます。双方の設計者とも、「みんなこうすりゃいいのになあ」と思いながらデザインしたのかもしれません。実際にはこの形には問題ありだったということでしょう。
 グロック等の形は、バレルがわずかにまっすぐ後退したのちにティルトするようになっています。Cz75等でも程度の差はあれ、急激にティルトしないような形になっています。ガバのようなリンク型はすぐティルトしますが、リンクの軸が比較的離れているためややゆるやかにティルトするようです。これらに対し、MP446の場合は即、急激にティルトする形のため、弾丸が銃口を出る前に微妙にティルトが開始されてしまい、これが命中精度を低下させる、ということではないかと思います。こういう形だとファイアリングピンに負担がかかる、というのは、ファイアリングピンがプライマーに食い込んだ状態のまま早期にティルトが開始されるため、先端を折ろうとするような力がかかる、と言うことだと思います。カムがバレルの短距離の後退ですぐ、大きくティルトする形であることは他のデザインとも合わせて銃身長の割に全長が短いという長所も生んでいますが、こういう余裕のないデザインでは簡単な改良でティルトのタイミングを遅らせるのは無理っぽい気がします。ちなみにスターはイラストのように普通より長距離まっすぐ後退してからティルトするようになっており、この点は有利かとも思われるんですがね。
 25mからの最高のグルーピングは80mmですが、9種類のテスト弾薬を平均すると約155mmであり、これはやはりスター以上に悪いですね。高性能の長物エアソフトガンに負けかねない命中精度ということです。これが設計からくる必然的な結果だとするなら、例えばスターでフレームがスチールでもアルミでも同じ傾向が出たように、MP443の命中精度も同じように悪い可能性が高いと思われます。これでも軍用拳銃としては実用上ほとんど問題ないでしょうが、新しく採用された軍用拳銃のグルーピングがより古い他国の優秀な軍用拳銃の3倍に広がるというのは隠したくなっても無理はない気がします。「隠す」とまではいかなくても、現在のトレンドからすれば大きい、非常に重い、それでいて命中精度が低いのでは輸出しても成功しないだろうと判断しているのかもしれません。ただ、信頼性は申し分なく、上まで2列のダブルカアラム、ダブルフィードマガジンのため、装弾数は17+1発で、類似機種より1〜3発くらい多いというメリットもあります。

 分解方法はガバメント等と似たオーソドックスな方法ですが、たいていのこの方式の銃がスライドをある1点に合わせてスライドストップを抜くのに対し、リコイルスプリングガイドが抜け止めになっているのでその必要はなく、どこでも抜けるということです。ただし、物理的にスライド前進状態でリコイルスプリングガイドを前方に引っ張ることは不可能ですし、スライドストップをかけて抜いたらスライドが猛烈な勢いで前方に飛び出そうとします。スライドを2〜3cm引いた状態で抑えながらリコイルスプリングガイドを前方に引き、この状態でスライドストップを抜くということでしょうか。リコイルスプリングは非常に強いそうですし、やりにくそうですね。

 価格ですが、以前紹介した「Visiser」の記事は「スイス銃器マガジンチーム」によるもので、価格はスイスフラン表示でした。これをドルに換算して「あまり安くない」と書きましたが、「sp−21」の記事で紹介されていたスイスフランの価格とアメリカでの実際の価格に大きな隔たりがあったのでこの評価は正しくなかったかもしれないと思いました。今回紹介されている519ユーロという価格はチェコ製Cz75よりは高く、グロックよりは安い、といったところで、やはりびっくりするくらい安くはないようです。

 さて、この「DWJ」で紹介されているMP446と、「Visier」で紹介されたMP446は外観上ほぼ同一です。スライドの刻印はそれぞれ「03 446 02249」、「02 446 01339」で、これは「446モデルの第3ロット、ナンバー02249」、「446モデルの第2ロット、ナンバー01339」という意味ではないでしょうか。「現代ピストル図鑑 最新版」P70に掲載されているMP446とも細部は異なるものの大体同じです。ところが、「現代ピストル図鑑 最新版」P21に掲載されているMP446は非常に大きく外観が異なっています。アンダーマウントもハンマーの両サイドをカバーする張り出し部もありません。これらが改良によってなくなるということは考えにくく、またグリップのトレードマークが空白であることからも、こちらは試作モデルではないかと思います。刻印は「ОП(ロシア文字) 0597」というドイツの銃器専門誌で紹介されたものとは別系列のものになっています(ロシア語が分かる人なら「ОП」から推測がつくかもしれません)。ただ、この銃ではエキストラクターが右面にあり、右方向への排莢である点が気になります。改良で排莢方向が真上になるというのもちょっと不自然な気がしますが、もしそうだとしたら意図は何なんでしょうか。左利き射手への配慮でしょうか。真上というのは右利き、左利き両者にとって集中力を妨げる方式のような気もしますが。また、ドイツの銃器専門誌で紹介されたものは本文中にもあるように右のスライドの滑り止めミゾがごく短くなっているんですが、「現代ピストル図鑑 最新版」P21に掲載されている方は同じ長さです。そして「現代軍用ピストル図鑑」P138に掲載されているものは左右同じ長さでありながら、ディスコネクターの切り欠き部を補強したような妙なラインが見えます。ドイツの銃器専門誌で紹介されたものが最終バージョンだと思うんですが、断定はできません。
 このようにMP446にはまだ不明の点も多く、早く日本の専門誌でレポートされるといいなあと思います。





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