MP7A1とMG4

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 このH&K公式サイト表紙から「ENGLISH」をクリックするとニュースのページが表示されます。MG4の画像がある項目の「Read more (PDF) ...」をクリックすると、「loyal, Magazin fur Sicherheitspolitik」誌2006年10月号のMP7A1、MG4に関する記事が見られます。


部隊の新兵器

陸軍の歩兵および空軍、海軍の防御戦力がMP7サブマシンガンとMG4軽機関銃で武装されている。MG4は分隊のスタンダード兵器としてMG3と交代する。この銃はそうこうするうちに外国でも採用されている。 (筆者Soren Sunkler 頑住吉注:「o」と「u」はウムラウト)

新世紀に入るまでドイツ連邦国防軍の手で持って撃つ銃のコンセプトの大部分は1960年代半ばかそれ以前の技術に基づいていた。「未来の歩兵」(UdZ)システムと、これに属するMP7A1サブマシンガン(2002年)およびMG4マシンガン(2005年)の導入により、この分野にゆっくりとした変化が起きている。一部交換されるべき銃器であるMG3とMP2「Uzi」のコンセプトと技術は成功したものだったが、年数上の理由からそうこうするうちに旧式化してきている。

H&Kによる新しいサブマシンガンMP7A1は近距離領域防御兵器(PDW、パーソナルディフェンスウェポン)であり、貫通力の高い新しい弾薬4.6mmx30を導入している。この銃はUzi、そして導入されているP8(9mmx19)にさえに取って代わるが、完全に交代するわけではない。この銃の本来的な前任者は折りたたみストックを持つMP5k PDWである。MP5k PDWは特殊部隊とドイツ連邦国防軍の野戦猟兵にのみ導入され、真のPDWの採用までの応急の解決策だったものである。元々MP7は後方要員、ドライバー、パイロット、重火器の操作要員用と考えられていた。彼らはアサルトライフルによって煩わされるべきではないが、充分な防御ができるべきだと考えられたのである。

新兵器は「3つが1つの中に入った解決策」である。この銃はピストルのように隠して携帯でき、サブマシンガンの外観を持ち、ほとんどアサルトライフルのような貫通力を達成する。このため快適に、そして素早くフォアグリップを起こし、ショルダーストックを引き出すことができる。マウントレール上にはリフレックスサイトの大部分がマウントできる。サイドのレールはレーザーモジュールの取り付けさえ可能にする。このためターゲットを昼でも夜でも能動的に照らすことができる。この銃は夜視眼鏡「Lucie」または上のマウントレール上の夜視能力強化装置の使用によって夜間戦闘能力を与えられる。これに加えサイレンサーもある。この新しいPDWは後部の装填レバーによって発射準備のための装填が行われる。このレバーは右利き射手にも左利き射手にも適し、これは両側にあるセーフティとセレクターを兼ねたレバーも同様である。ただしドイツ連邦国防軍は3発バーストトリガーシステムを採用しないことを決めた。選択により20発または40発のマガジンを省スペースにグリップ内に挿入できる。弾薬はこの銃の特別の特徴である。この新しい高速弾薬はNATOの要求を4倍上回った。この弾丸は200mで1.6mmチタン板と20層のケブラーからなるターゲット(ロシア製防御ベストを模造したもの)を貫通し、そしてこれにより全ての従来型防御衣類を貫通することになる。時代遅れの9mmx19弾薬と違いダブルペネトレーションは回避されている。エネルギーがほとんど完全にまず最初に命中したターゲットに伝達されるからである(頑住吉注:ドイツで警察の使用していた9mmパラベラムのフルメタルジャケット弾によって犯人の背後にいた罪のない人物が死亡した事件には何度も触れましたが、こういうことはない、ということです。ちなみに時代遅れというのはあくまで軍用に使用するフルメタルジャケット弾のみを指していると思われます)。結論は次の通りである。攻撃者の防御ベストは大きな確実性を持って貫通されるが、その背後にいる無関係の人物はほとんど危険にさらされない。これとは異なり「Uzi」はモダンなベストをどれも貫通せず、その代わり簡単に2つのソフトターゲットを貫通する。

コンパクトな構造方式とスチールインサートが入れられグラスファイバーで強化されたポリアミドの使用によりMP7は2kg以下の重量である。この銃は回転ヘッド閉鎖機構を持つガス圧ローダーとして快適に、片手でさえ射撃できる。そのリコイルショックは従来型の9mm弾の半分しかない。このこととも合わせてMP7は例えばボディーガード用や室内用などの近距離防御用の銃器としても宿命付けられている。しかしこの銃は実際には今日までドイツ連邦国防軍などの特殊部隊だけで実戦使用されている。特にアフガニスタン、ボスニア、コソボの野戦猟兵の人物防御コマンド(CPT、Close Protection Teams)がこの銃で武装されている。KSK(頑住吉注:「コマンド特殊兵力」)もこの銃を携行している。本来考えられていたエンドユーザーである後方要員、ドライバー、パイロット、重火器の操作要員にだけはこのMP7はまだ届いていない。ドイツ連邦国防軍首脳部では「自己防御ピストルP46」(4.6mm、ウルティメイトコンバットピストル)をこの代わりとなる全員用としている。つまりMP7は部隊の独占的ユーザーサークルのみに留まりそうな様相を示している。そうこうするうちにこの銃は17カ国、特にイギリス警察とイタリア特殊部隊によって調達されている。

5.56mmx45弾薬仕様の新マシンガンMG4をめぐる調達史も同様に興味深い。この銃の採用によってドイツ連邦国防軍は使用弾薬という点においてスタンダードライフルG36の後を追った。歩兵分隊の主要武装のための等しい弾薬は補給、重量、実戦使用可能性に関して極度に有利と判明している。しかしこの銃の採用は主により少ない負担でより強い火力を持っているという理由からである。この結果として歩兵分隊は今日1挺の代わりに2挺のマシンガンで武装することができている。ただし古い、そして重いMG3(7.62mmx51)はその最終的な使用終了まで護衛車輌および輸送車輌上の銃架に据えられた銃として留まるとされている。新しい射手装甲車「プーマ」は初めてスタンダードにMG4で武装されるとされる(頑住吉注: http://www.danmil.de/15433.html ブラッドレーなどと同じジャンルの歩兵戦闘車です)。

シュヴァーベンのオベルンドルフに所在するメーカーのヘッケラー&コックは2001年、ロンドンの専門展示会で初めてMG4をプレゼンテーションした。それ以前にアメリカ部隊や他の同盟国軍は(頑住吉注:5.56mmx45弾薬仕様の)軽機関銃による圧倒的にポジティブな実戦経験を報告してきていた。比較可能なモデル(頑住吉注:はっきり書いていませんが当然ミニミのことでしょう)同様MG4もまた構造上弾薬の変動やひどい汚れに際しもはやさほど作動不良を起こしやすくはなく、そしてこれによりMG3よりも信頼性が高いという事実もある(頑住吉注:これは反動利用式のMG3とガス圧利用式のミニミおよびMG4の比較のようです)。さらにこの銃はドイツ連邦国防軍が従来使用していた他の軽機関銃(LMG36およびG8)よりも安全性が高く、コンパクトで、操作が簡単である(頑住吉注:前者はG36、後者はG3強化型の軽機関銃です。ちなみに後者の商品名はHK11A1であり、これで検索すると中国のサイトばかりがヒットします。中国語は読めませんがどうも中国軍で採用しているらしいです)。オープンボルトファイアシステムとして閉鎖機構は射撃休止中最後部位置に留まり、冷たい空気の流通を可能にしている。このため(頑住吉注:多くのアサルトライフル強化型軽機関銃と違って)意図しない弾薬の「コックオフ」は排除される。

コッキングレバーとショルダーストックは運搬および行進のために折りたためる。取り扱いおよび運搬のためのグリップ(頑住吉注:キャリングハンドル)は素早く問題ないバレルの交換を可能にする。内蔵されたオートマチックセーフティは装填時の意図しない発射あるいはコントロールを失った射撃続行を妨げる。カバー上の見て、触って確認できる装填指示器は銃の装填状態を示す。混同を防ぐため訓練の際に交換された弾薬供給部には演習弾薬しか装填できず、実弾の入ったベルトは装填できない。そうこうするうちに義務として課されているマウントレールには残光強化器、温像器具、レーザーモジュールがマウントできる。機械的距離調節サイト(1000mまで)の別の選択肢としてキャリングブリッジ内の3倍スコープが使える。ドイツ連邦国防軍の発表によれば2006年初めまでに最初のMG4、20挺が部隊に供給された。これらの銃は主にアフガニスタンの守備中隊で実戦使用中とのことである。(筆者Soren Sunklerはフリーのフォトジャーナリストおよび本の著者である。彼は例えばアフガニスタン、イラク、アフリカ、イスラエルからレポートを寄せている)

数と事実 (頑住吉注:囲み記事)

 MP7とMG4の調達数は武装プロジェクト「未来の歩兵」(IdZ)と関係付けられている。つまり217のIdZ基本システムにこれまで434挺のMP7が調達された。2007年末までに拡大されたさらなる870のIdZシステムがこのサブマシンガンで装備されることが計画されている。これはMG4にも同じことがあてはまる。つまりこの銃もIdZシステムのユーザーにのみ支給される。これは歩兵部隊および装甲歩兵部隊の一部、空軍および海軍の防御戦力のことを言っている。MP7およびMG4による陸上戦力の横断的武装は恐らく陸軍の新武装コンセプトによって決定することになる。こうした銃に関係するコストに関してはドイツ連邦国防軍もメーカーのヘッケラー&コックも公表しないままである。

(写真キャプション)
新しいサブマシンガンMP7A1を持った歩兵戦力。「アサルトライフルの貫通力」

MG4、歩兵部隊の新しいスタンダードマシンガン

残光強化器付きのMG4。歩兵分隊のマシンガン射手。「極度にポジティブな実戦経験」


 過去に紹介した記事とかぶる内容が多いですが、情報が新しいだけにいくつか目新しい情報もありました。MP7A1をイギリス警察やイタリア特殊部隊が使用していること、本来のPDW用としてはまだ供給されておらず、その目的にはUCPが当てられる見込みであることなどです。ただMP7A1ならまだしもピストルで敵のアサルトライフルに対抗するのはきわめて困難と思われます。

 「新世紀に入るまでドイツ連邦国防軍の手で持って撃つ銃のコンセプトの大部分は1960年代半ばかそれ以前の技術に基づいていた」というのは採用は1958年ですが戦時中の試作ライフルの発展型であるG3、戦時中のMG42にわずかな手直しを加えただけのMG3、1950年代に登場したUZI等のことを言っているんでしょう。プラスチックフレームを持つP8ピストルはこれに入らないと思われますが、ピストルの重要性は低いものに過ぎません。ライフルでも機関銃でもサブマシンガンでもそうした古いコンセプトが時代遅れになって新世代の銃器が採用されてきているわけですが、考えてみればドイツが考案し、全世界が追随したと言っていい汎用機関銃は今や多くの先進国においてその重要性を大きく減じているわけですね。

 H&K公式サイトの「PRODUCTS」をクリックするとさまざまな製品が見られますが、「Machine guns」の項目にはもうMG4ただ1機種しかありません。「Submachine guns」の項目にはMP7A1の他にUMPやMP5シリーズがあり、「真のPDWの採用までの応急の解決策」とされているMP5K PDWも健在です。ただし現用の製品はUMPに似た(同一?)プラスチックストックに変更されているようです。UMPのストックはエジェクションポート前にある突起とストックをかみあわせることによって折りたたみ状態で保持しますが、この新型MP5K PDWは本体側に突起が新設されているんでしょうか。左面の写真しかないので確認できず、気になります。