インド製MSMCサブマシンガン

 現在、中国、インド、ブラジルが世界三大新興国と言うべき存在になっています。中国は独自性のある銃器をすでに多数出現させていますし、ブラジルもタウルスがかなり以前からコピーを脱却し、一流に迫る製品をいくつか生んでいます。しかしインド製の銃というと、これまで基本的にコピー製品しか知られていませんでした。そのインドがユニークな特徴を持つ新しいサブマシンガンを登場させたということで、中国でも注目されています。なお、検索してみましたが登場から2年以上過ぎているにもかかわらず、この銃について詳しく触れている日本語のページはまだないようです。

http://blog.163.com/dandandang2010@126/blog/static/140949716201021810255781/


インドのMSMC新型サブマシンガンを評価する

2009年10月分の軍事ニュースに関して言うと、北京の盛大な閲兵式とアフガン、パキスタンの膠着した対テロ情勢以外にも、さらに1つの国外からの情報が読者の広範な興味を引き起こし、多くの国内ウェブサイトが次々と転載した。これこそインドが独自に研究開発したModern Submachine Carbine、略称MSMCに他ならない。本年度12月に最後のテストを終え、続々と部隊に装備され始める見込みである。

MSMCがひとたび出現するや、すぐさま国内の多くの銃器愛好者の視線を引き付けたのは、この銃がずっと南アジアに覇を唱える野心を持つ近い国であるインド由来であるからだけではなく、その独特の5.56mmx30口径と27年の長きに渡る研究開発時間のためだけでもなく、より主要な理由は小火器工業が発達していないインドがこれを世界一流の「先進コンパクトサブマシンガン」と称し、「殺傷力と発射速度はショートバレルのライフルに相当し、近距離作戦および個人自衛への使用に非常に適している」と称したことだった。それでは、こうした言い方は本当なのか嘘なのか、MSMCサブマシンガンには一体どんな斬新独特なところ、あるいは称賛に値する部分があるのか? 以下我々に詳しく分析させてほしい。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「レシーバー上部に反射式サイトを装備したMSMCサブマシンガン。ストックは伸ばした状態。そのプラスチックパーツの加工水準は初期の型と比べ大きく向上している。」)

「半自動」の真相

1980年代以降になって、インドの経済と総合的国力の水準は大きく向上し、1998年にはついに核大国に仲間入りさえしたものの、通常兵器国産化方面では終始発展が遅かった。軍部の移り気や現実離れした要求が、設計の成果を現実に転じることを長時間にわたって困難にした。インドは40近い国有軍事工場を持っているが、小火器を含め国内の大部分の通常兵器は依然輸入頼りであり、品質低劣で信頼性が劣ることは、国外からのインド国産兵器に対するほとんど一致した印象となっている。MSMCも例外ではあり得ず、国内のウェブサイトではこの銃に対しほとんど批判「一辺倒」であり、特にニュースの中の「この銃は単発発射方式を採用」との一句がさらに無数の冷ややかな嘲笑と辛辣な風刺を引き起こした。

だが、この時間違っていたのはMSMCではなかった。インドのいくつかのプロジェクトの結果は確かにやや喜劇的だったが、この国の都市装備研究および武器開発センター(ARDE)の専門家たちが、本当に愚かにも30年近い時間を費やして連発不能なサブマシンガンを研究開発するはずもない。詳しく調べればすぐ分かったが、これは実は翻訳ミスに過ぎなかった。国内の各メディアが繰り返し転載したのは、実は全て北方の某研究所の「総合報道」から来たものだった。一方国外のウェブサイト上のあらゆるMSMCに関する資料は全てこの銃の発射方式が「Single and Auto」(セミ・フルオート)であると紹介しており、ただこの銃が「enables single hand firing」(片手射撃ができる)と指摘しており、たぶん銃器専門用語を熟知していない某翻訳者が「単発発射」と誤訳したのだろう。実物の写真を見ると、この銃のセレクターレバーには3つのポジションがあり、これもこの銃が連発機能を持っているに違いないという証明である。同様に国内におけるこの報道の翻訳が信頼できない証拠はまだあり、この報道の中には「MSMCは主に、インド軍やその他の有力部門が目下使用している旧式のロシア製9mmサブマシンガンとの交換に用いられる」との記述がある。実際にはインドはいまだかつていかなるロシア製サブマシンガンも装備したことはなく、ロシア式武器としては一部のルーマニアおよびブルガリアでコピー生産されたAKMがあるだけで、これはイギリスのスターリング9mmサブマシンガンの誤りと推定される。

全体的に言って、国外ウェブサイトのMSMCに対する評価はやはり相対的に公平妥当であり、この銃が「珍しい口径弾薬を採用したCQB(室内近距離戦闘の略)武器システムである」、「比較的低い後座力はこの銃を連発射撃時でも比較的良好な安定性を保持できるものにし、コンパクトさとバランスが良好で、隠蔽された行動に適する」と考えている。さらにその他の長所には、新設計の弾薬を採用し、精度と殺傷力がある程度向上した、流行のピカティニーレールが装備されている、右手でも左手でも操作できるコッキングハンドルとセーフティ/セレクターレバーと一体式グリップ・トリガーガード、同時に勤務性が向上し、またメンテナンスや維持修理に便利、三角スリングは銃を携行しやすくし、また各種の姿勢で便利に射撃できる等々が含まれる。このように銃全体に関する評価は良好であり、あるいは少なくとも世界同類武器の普遍的水準に到達し得る新型銃器であるとも言え、この銃が単発の半自動射撃しかできないというのは、やはり明らかに不合理である。

原型の謎

弾薬および用途から見て、MSMCはドイツのHK社のMP7の概念と類似したパーソナルディフェンスウェポンであり、高速小口径専用弾を発射し、その威力は普通クラスの防弾衣に対抗できるに違いない。だが外形および全体レイアウト上、MSMCは9mm徹甲弾を発射するロシアのSR-2Mサブマシンガンにも非常に似ている。それでは、MSMCは一体この2種の武器のインド版なのか、それとも別に出所があるのか? これに関してはこの種類の武器の発展史から語り起こす必要がある。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ロシアのSR-2Mサブマシンガンの外観。この銃が採用している水平移動式ハンマーの設計はVSS消音スナイパーライフルにルーツがあり、銃の全体構造はMSMCに比べずっと簡単であり、体積もより小さい。」 私ロシア系の銃器のデザインは好きな方ですが、これはちょっといただけません)

1960年代後期、兵個人用軽防御装甲の普遍的装備およびショートアサルトライフルの出現は、普通の拳銃弾を発射するサブマシンガンの発展をボトルネックに遭遇させた。このため一部のメーカーは新世代サブマシンガン研究開発のために、全長が標準的小銃弾薬より短い新型弾薬を提示した。ただしその弾頭の初速は普通拳銃弾薬に比べずっと高く、より良好な貫通性能を有していた。この種の思想の早期の代表はフランスのGIATの小型サブマシンガンと、アメリカのコルト社のIMP個人多用途武器システムである(頑住吉注:ブッシュマスターの原型)。それらは大量装備されなかったが、そのずば抜けた性能はやはり軍に深い印象を残した。アメリカは1980年代末に新型サブマシンガン研究開発計画を始動させ、PDWと称し、これは第二線の非直接作戦人員専用に装備し、その自衛能力を向上させるものだった。10年後、ベルギーは率先して世界初の真正パーソナルディフェンスウェポンを登場させた。P90サブマシンガンである。その後HKのMP7系列も出現した。これらの武器はいずれも新たに研究開発された全く新しい小口径弾薬を使用し、体積や重量が小さいが初速が高いという特徴、突出した近距離内での貫通力および威力を備えていた。一方ロシア等一部の相対的に保守的な国は、旧式拳銃弾薬に対する継続的改良、新しい弾頭の設計と初速向上により、貫通力不足の問題を解決した。このような新しい旧式弾薬は共用が可能で、装備にかかるコストが低下した。相対的に言って、全く新しい設計のP90およびMP7の性能はやや優れているが、その代価は価格が安くない新弾薬の使用が必須なことに他ならず、これを国の軍隊全体を換装するということで言えば、コストはやはり相当に高くなる。軍事費の状況がが厳しく、同時に科研力量が限られたインドに関して言えば、最終的に上述の2種のモデル以外の第3の道を選択した。それは現有の武器を基礎に改良を加え、同時に新型小口径弾薬に換え、したがって比較的低いリスクと代価をもって、独特の近距離作戦武器を研究開発する、ということに他ならなかった。

インドは元々イギリス植民地であり、加えて長期間周辺国家と戦争状態にあった。このためその小火器装備は種々雑多だった。だが1990年以後、陸軍の主力部隊は徐々にインド国産の5.56mmINSAS系列銃器ファミリー装備に統一された。この銃はインドの独自研究開発によるもので、当時世界のそれぞれの名銃の長所を一身に集めたものであるとも称された。だがこの銃は生産装備初期には必ずしも志通りには行かず、極端な低温の地域でジャムが起き、プラスチック製マガジンは凍結して裂け、3点バーストがフルオートになる等の問題を起こした。このため多くの部隊はむしろ旧式のL1A1あるいはAK系列の使用を選んだ。後に関連する問題が徐々に解決されるにつれ、INSASはついに各種の旧式で雑多な小銃に取って代わり、インド軍が最も常用する標準制式小銃となった。一方MSMCはまさにINSASを基礎に改良してできた小型化サブマシンガンである。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「インドの街頭でINSAS小銃を装備しているミリタリーポリス」 バレル周りはFNっぽいですし半透明プラスチックマガジンを使っていますけど、全体的にはどう見てもAK亜流でしょう)

目下公表されているMSMCサブマシンガンの資料は比較的少ないものの、この銃を仔細にINSAS小銃と対比さえすれば、すぐに手がかりを見つけることができる。MSMCのアッパー、ロアレシーバーとガス導入部位等のカギとなる重要部位はいずれもINSAS小銃の後期改良型と非常に似ている。このためMSMCはINSAS銃器ファミリーに属する一種の変形銃に違いなく、あるいはINSAS銃器ファミリーから発展変化したものとも言える。一方ロシアのSR-2Mサブマシンガンはレイアウト上はMSMCにより似ており、特にマガジンもグリップ内に設置され、さらにはハンドガードとレシーバーの形状が似てはいるが、両者の内部機構等カギとなる重要部分の隔たりははなはだ大きい。対比によってすぐ見いだせるが、SR-2Mのロアレシーバーの上下の寸法はMSMCよりずっと小さい。これは主にSR-2Mの内部設計がAK系列のそれと全く異なっており、ハンマー水平移動式発射機構を採用し、同時にボルトの閉鎖突起がボルトヘッド外周に設計されておらず、ボルトの後ろ寄りの直径が比較的小さい部分の外周上にあるからである。このためロアレシーバーの上下の寸法が大幅に小さくなり、銃全体の構造を非常にコンパクトにしている。この種の構造はロシアの9mmVSS消音半自動スナイパーライフルで最も早く採用され、これを基礎にその後多種の構造的にコンパクトなサブマシンガンや小型アサルトライフルが発展して生じた。一方MSMCのロアレシーバー部分の構造はAK系列に類似しており、明らかにより肥大し、マガジン、グリップとレシーバーの大小の比率は明らかにバランスを失っている。この銃はこの種の典型的な、自動小銃を改良してできた小型弾薬を発射するサブマシンガンに属している。この他指摘に値するのは、インドはさらにINSASを基礎に、同様の5.56mmx30口径のMINSASカービン銃を研究開発したことがあるが、この銃は明らかにINSAS小銃の短縮型だった。ただしAK-74Uに似た金属製の下方に折りたたむ方式のストックを使用し、他の部分の設計はいずれもINSASに類似していた。しかし間近に見れば、MSMCとMINSASはそれぞれ異なるユーザー向けに開発されたもので、両者の間に競合関係はない。

MSMCの構造をざっと分析する

MSMCサブマシンガンは新しい銃であり、外形も人に新鮮な感覚を与えるが、内部構造の設計方面では依然伝統的であり、新しい構造や原理を採用してはいない。この銃はガスオペレーション式、ボルト回転閉鎖、回転ハンマーによる撃発原理を採用し、前後位置が調節できる金属伸縮ストックを使用し、銃全体はグリップユニット、ロアレシーバーユニット、ストックユニット、ボルトユニットおよびマガジンなど若干部分に分けることができる。もしストック部分を省けば、この銃のレイアウトはAK-74Uショートアサルトライフルに非常に似ている。グリップとマガジンハウジング、両者の位置が一つに合わさっているに過ぎない。MSMCのような種類の近距離戦闘専用に設計された武器に関して言えば、マガジンをグリップ内に設置するのは銃の全長短縮に最も有利である。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「下方に折りたたむ金属ストックを使用したMINSASカービン銃の、INSASとの最もはっきりした差異は5.56mmx30弾薬仕様の金属製のカーブしたマガジンを使用するよう改められていることだ。この銃は多くの特徴上MSMCサブマシンガンに近く、あるいは似ている。」)

グリップユニットは一体のプラスチック注型品であり、ハンドガードとマガジンハウジングを兼ねており、しかもロアレシーバーとストックユニットを連結する機能も果たしている。全体的に見て、MSMCのグリップ部分の設計は明らかにMP7とは大きな隔たりがある。プラスチック部品の表面、エッジといった細部からは、その金型加工のレベルはまだ明らかに粗雑であることが見て取れる。グリップ両側には滑り止めが設けられておらず、わずかに前後に波型の滑り止め突起があるだけで、グリップからフォアグリップへの移行部も自然とは言えない。手袋をして射撃する時トリガーを引きにくいという問題を避けるため、グリップ前に大型のグリップガードを設計し、通常のトリガーガードを放棄している。ただしこのガードは見た感じ比較的薄く、野戦環境下での粗暴な使用に耐えられるか否かはまだ検証待ちである。MSMCが使用しているのはカーブした金属製マガジンなので、グリップの外形設計の難度は比較的高い。手で握る部分の寸法が大き過ぎないことを保証するのと同時に、できるだけグリッピングを快適にし、銃を構えて照準しやすくしなければならない。ただし避けることができない1点は、この銃のグリップを比較的垂直に近く設計することが必須だということである。このため長時間握った後は必然的に手や腕の疲労を引き起こす。連結の堅固さを保証するため、グリップユニット全体がロアレシーバーを完全に包み込み、このためロアレシーバーの表面は見えない。この銃がプラスチック製ロアレシーバーを採用したとの錯覚を容易に引き起こす。実はこの銃のロアレシーバーはやはり全体が鋼板プレスで成型されており、外部がプラスチック部品で包まれているに過ぎない。これもこの銃がINSAS小銃から発展してできたという1つの重要な証拠である。

ロアレシーバーユニットはMSMCサブマシンガンの最も重要なユニットであり、銃全体のあらゆる部品を連結する役割を果たしている。この銃のロアレシーバーは明らかにINSAS小銃のロアレシーバーを短縮してできている。プレス・リベット型レシーバーに属し、レシーバー本体は鋼板プレス構造で、前部にバレルエクステンションがリベット止めされている。バレルエクステンションとバレルは連結されている。バレルには順にフラッシュハイダー、バヨネットベース、ガス導入リング兼フロントサイトベース等の部品が装備され、バレル上方にはピストン・シリンダーやコッキングハンドルがある。AK系列と異なるのは、MSMCサブマシンガンとINSAS小銃のコッキングハンドルはいずれもピストン・シリンダーの左側に設置されており、かつコッキングハンドルはボルトと剛性の連結がされておらず、このためコッキングハンドルがボルトとともに往復運動しないことである。この他コッキングハンドルの先端部は折りたたむことができ、もって銃の全幅を減少させている。MSMCサブマシンガンのコッキングハンドルはさらに左右向きを変えて装備することができ、左利き射手の使用に便利になっている。だがその設計は充分簡便なものではなく、交換は比較的面倒で、銃全体の分解後やっと実行できる。MSMCのフラッシュハイダーは円柱形に多数の穴があるタイプで、フラッシュハイダー後部はバヨネットベースになっており、バヨネットが装着できる。これは現代サブマシンガンには珍しいが、MSMCの字面の意味は「モダンサブマシンカービン」なのであって、カービン銃にバヨネットを装着するのは普遍的なことである(頑住吉注:この名称は単にイギリスがサブマシンガンのことを伝統的にマシンカービンと呼んでおり、元宗主国の影響が大きいインドにも受け継がれただけで、この銃をカービン銃よりに作ったとかいうわけではないと思います)。一般の銃器と異なるのは、MSMCのバヨネットベース上部にはさらにガイドレールが加工されていることで、いくつかの小型アクセサリーが装着できる。だがこのガイドレールは短く、またマズルに近く、加えてアッパーレシーバー上部が本来すでに比較的長い標準ガイドレールになっているため、この小さなガイドレールの実用価値は大きくない(頑住吉注:画像で見るとこのレールはアッパーレシーバー上のレールよりずっとバレル軸線に近く、レーザーサイトを装着する場合に有利ではないかと思われます)。フロントサイトベースの設計はINSAS小銃のそれの設計と基本的に同じであり、ガス導入穴閉鎖レバーも伴っている。このレバーはINSAS小銃では同時にライフルグレネード発射時に使用する簡易リアサイトでもあり、立てるとガス導入穴が閉鎖される。だが短小なMSMCサブマシンガンではこの装置は明らかに大いに余計なものである。なぜならその比較的短いマズルではライフルグレネードを発射することは全くできず、あるいは部品の共用性から考慮してフロントサイトベース兼ガス導入リングというこの部品に新たな設計をしなかったのかもしれない。この銃のトリガーはマガジン前方にあるので、操作に便利なようにセレクターレバーはトリガーの上方の位置に設置され、操作上の面倒が避けられている。一方INSAS小銃のセレクターはレシーバー後方のトリガー上方に位置している。MSMCのセレクターは同様に3つのポジションを持つ。すなわちS、A、およびRである。このうちSはセーフティ位置、Aはフルオート位置、Rはセミオート位置である(頑住吉注:リピーティングの頭文字ですね)。MSMCのボルトシステムには大規模な改良はなされておらず、このため発射機構はやはりロアレシーバーの後方位置に装備され、トリガーは連結バーを介して発射機構とつながり、これにより発射過程をコントロールするのである。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「インドがある武器展示会で展示した初期のMSMCサブマシンガン。その小型トリガーガードと、鋼板プレスと溶接で作られたストックに注意。いずれも正式に定型に至ったタイプとは大きく異なる。」)

MSMCのアッパーレシーバーカバーユニットは形状がAK銃器のレシーバーカバーと似ているが、INSAS小銃同様上下レシーバー間の連結にはヒンジ構造が採用され、前に向かって回転して開くだけで取り外すことはできない。これは両者がいずれもアッパーレシーバーカバー後端のピープ式リアサイトを使用するからで、もしAKのようなアッパーレシーバーカバーの位置固定、装着方式にすると正確な照準基準線が保証できないからである。ヒンジ結合方式で前部に位置が確定したヒンジ軸があって初めてオーケーなのである。この種の設計は初期のプレス・溶接ストックを使用したサンプル銃で出現しており、後期のMSMCではこの設計がさらに一歩改良された。これは初期の連結方式のレシーバーカバーは回転を必要とし、アッパーレシーバーカバー上に比較的長いガイドレールを装備することができなかったからである。一方後期のレシーバーカバー上のガイドレールミゾはピストン・シリンダーの前部までずっと伸びており、このためアッパーレシーバーカバー前部とロアレシーバーの間に新たな連結方式が設計された。レシーバーカバー前部とバレルエクステンションの間にはガイドミゾによる位置固定が使用され、レシーバーカバー後部にはもはやAKのような種類のリコイルスプリングベースによって固定する様式は使用されず、固定ピンにレシーバーカバー後端を貫通させて位置決定する方法に改められた。固定が堅固なだけでなく、クリアランスもなくすことができ、できる限り照準基本線に影響しないことが保証された(頑住吉注:うーん、おぼろにしか分かりませんね)。ただこの設計には見たところ足りない所もある。それはレシーバーカバーのガイドレールが延長されたものの、途中にレシーバーカバー前部の位置決定のために譲ってガイドレールが加工されていない所があることに他ならない。このようにすればガイドレールは前が短く後ろが長い2段式になり、しかも前部の比較的短いガイドレールの用途は多くなく、このためこの設計は明らかにガイドレールが比較的短いという問題を根本的には解決できない。実はもし思考方式を転換すれば、すなわち本来のレシーバーカバーの設計は変えず、ハンドガードの両サイドに別途ガイドレールを増設すれば、アクセサリー追加装備の問題も解決できるし、レシーバーカバーの連結方式を新たに設計する必要もないのである。

MSMCサブマシンガンのボルトシステムは基本的にINSAS小銃と同じであるが、MSMCサブマシンガンが発射する5.56mmx30弾薬はより短いため、ボルトの長さにも一定の短縮がなされている。INSAS小銃同様、MSMCのボルトシステムもAK系列に似ており、ロングストロークピストン、回転閉鎖式ボルトである。唯一異なるのはボルトキャリアからコッキングハンドルが伸びていないことで、このためAK系列の、ボルトキャリアにあるコッキングハンドルの往復運動が着弾を右上方に偏向させる問題は存在しない。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「展示会に同時に出現した、バイポッドが付属したヘビーバレル型INSAS小銃とMSMCサブマシンガン。後者の図体が間違いなく小型精巧とは言えず、カービン銃と称してもオーバーとは言えないことが見て取れる。」 いやバレルがちょっと長いですけど基本的にフルサイズUZIよりちょっと小さいくらいでしょう)

ストックユニットはバットプレートと左右の支持バーからなっている。初期の支持バーとバットプレートはいずれも鋼板プレス、溶接様式だったが、後期のストックの支持バーは円柱形のスチールワイヤーに改められた。バットプレートはプラスチック製で、左右の支持バーと注型で一体化されている。左右の支持バーの内側にはストックの長さ調節に用いる多くの位置決定切り欠きがある。ストック固定金具は2つあり、それぞれレシーバー後端下部の左右両側に位置している。2つの円柱形のボタンであり、親指と人差し指を同時に使って押すと即ストックが引き出せる。適した長さの位置で固定金具を支持バーの位置決定切り欠き内にかみ合わせれば即固定できる。この種の改良後のストックは外形が美しく、比較的軽量でもあり、同時により堅固で耐久性のあるものになっている。

MSMCのマガジンは鋼板プレス成型のカーブしたマガジンで、ダブルカアラムダブルフィード様式で、マガジン表面には2本の補強ミゾがある。グリップ式マガジンハウジングと合わせて直接挿入して固定でき、使用は比較的簡単である。5.56mmx30弾薬は体積が小さいので、このマガジンは携帯、使用がいずれも比較的便利である。

新弾薬のルーツをはっきりさせる

MSMCサブマシンガンのもう1つの大きな注目点は、この銃が使用する5.56mmx30短弾薬であり、このため特別な紹介を必要とする。多くの国内の資料はこの弾薬がインドが独自に研究開発したものであると紹介している。だが筆者が国外の一次資料を調べると、この言い方は不正確であると分かった。実はこの短弾薬の原型はアメリカ、コルト社がMARS武器システム(頑住吉注: http://en.wikipedia.org/wiki/Colt_MARS )のために設計した5.56mmx30MARS弾薬だった。MARSとはすなわち「Mini Assault Rifle System」の略であり、意味は小型突撃銃系統である。この銃はコルトM16A1ショートアサルトライフルを基礎にレシーバーとバレルをさらに短縮し、しかも改良を加えてできた小型軽便な自動火器で、威力、火力の強さおよび精度は一般的サブマシンガンをはるかに上回っていた。もしMARS弾薬に重量3.56gの弾頭を使用し、MARSの長さ約280mmのバレルから発射すれば、初速は792m/sに達し、マズルエネルギーは1,117ジュールに到達可能だった。一方2.6g弾頭の初速は884m/s、マズルエネルギーは1,016ジュールに到達可能だった。このMARSシステムには体積が小さく軽便、威力が大きい、火力が猛烈等の長所があり、都市、路地での戦闘の際に一般的サブマシンガンに比べより多くのメリットを備えていた。特殊部隊や第二線人員の使用に非常に適しており、加えてこの銃はM16小銃を改良してできたもので、構造やレイアウトがM16と同じであり、換装後の訓練や使用にいずれも問題が生じなかった。だが、MARSの設計思想は正しかったものの、結局のところ5.56mmx30短弾薬は新型弾薬であり、加えて当時M4カービン銃がすでに大量装備され始めていたので、アメリカ軍は最終的にはやはりMARSを放棄したのである。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「5.56mmx30弾薬の実物(左)とイラスト(右)」)

インドが独自生産している5.56mmx30短弾薬は、5.56mmx30 INSAS弾薬と呼ばれ、その弾頭重量は2.6g、弾頭の長さ17mm、弾薬全体重量9g、全長42mmである。この弾薬がコルトのMARS短弾薬からコピーされたのか否かに関し、インドサイドは明確に表明していないが、国外の各種のすでに発表されている資料から見て、両者のデータは高度に符合し、このためこの点はすでに争いのない事実となっている。この短弾薬の設計が基準に置いたのは肩付け射撃するミニ自動火器での使用であり、拳銃に使用することは考慮していない。このため細部にはやはりベルギーの5.7mmx28やドイツの4.6mmx30弾薬とはやや差異があり、バレルが比較的長い火器での発射により適し、もって比較的高い初速と良好な精度を獲得している。ただしインドが生産するこの短弾薬とアメリカのオリジナル品を比べると、主要な変化はまさに初速がやや低下していることであり、MSMCによって発射した時の初速は650m/sでしかない。このため国外の武器評論家はインドのMSMCシステムに触れる時、その弾頭の初速は低すぎ、これは100〜200mの射程内での威力の非常にはっきりした低下をもたらすはずであると批評したことがある(頑住吉注:バレルが短いからじゃないんですかね。この銃のシルエットはUZIに似てますが、中身がAK系ならラップアラウンドボルトではないはずですし、銃身長はMARSの280mmの半分くらいしかないんじゃないですか。)。

未来の展望

2008年以来、インドは何度もの小火器展示会上でMSMCサブマシンガンを展示してきたが、目下この銃はまだ大量装備されていない。インドサイドの言い方によれば、この銃は今年(頑住吉注:2009年)年末に最後のテストを完了し、まず特殊部隊と対テロ部隊に装備され、その後いくつかの旧式サブマシンガンを装備している部隊も続々とこの銃に装備変換するという。さらにMSMCサブマシンガンの設計上の特徴を合わせれば、インドがこれをPDWとは位置付けるつもりはまだなく、主にINSAS小銃に比べ軽便な特殊作戦武器として使用するつもりであることがはっきり見て取れる。

MSMCを、取って代わられるべきスターリングL2A3等の旧式サブマシンガンと比べると、性能はずっと先進的に違いないが、使用弾薬の変更は装備コストと後方勤務の負担も増加させるはずである。

MSMCサブマシンガンを、インドが以前装備していた各種の旧式サブマシンガンと比較すると、設計上明らかな進歩がある。比較的多くのプラスチックパーツを採用し、しかもアクセサリーのガイドレールが設計され、外観上大きく改善されている。だがその実際の性能の向上は限られたもので、特にサブマシンガンとしてはその構造は明らかにやや複雑で、体積も比較的大きく、しかも完全に使用に適するとは言えない。この他、この銃の細部の設計は簡潔で無駄のないものと言うには不充分である。例えばハンドガード前後の移行がはっきりしており、高さの落差が大きすぎる等々で、これらはいずれも外観全体のイメージに影響している。いくつかの部分、例えばバヨネットベースおよびその上の小ガイドレールは蛇足の感さえある。結局のところ、この銃は標準型アサルトライフルを基礎に改良してできた武器にすぎず、完全に5.56mmx30短弾薬の体積とサイズに照らし、「量体裁衣」(体格を採寸して服を仕立てる)したものにはなりきっていない。このインドの「花形」サブマシンガンが果たして「龍」なのかそれとも「蛇」なのか、世界の多くのサブマシンガンの中で自分の席を占めることができるのかとなると、この銃が大量に部隊に装備され、しかも実戦の経験を経た後でのみ知りうることである。


 多くの中国のサイトでこの銃を酷評、嘲笑する空気があったのは、今後ライバルとなってくるはずのインドに対する警戒感の裏返しだと思われ、この筆者はセミオートオンリーだというのは誤解だと正しく説明してはいますが、やはり全体的に評価が辛過ぎの傾向があるように感じられます。これまでオリジナル銃器を作ってこなかったインドにしては非常に意欲的で、かなりいい線を行っているように私には感じられますが。この筆者は「サブマシンガンとしてはその構造は明らかにやや複雑で、体積も比較的大きく、〜結局のところ、この銃は標準型アサルトライフルを基礎に改良してできた武器にすぎず、完全に5.56mmx30短弾薬の体積とサイズに照らし、「量体裁衣」(体格を採寸して服を仕立てる)したものにはなりきっていない。」と批判していますが、それらは大筋中国の05式サブマシンガンにも当てはまるんじゃないでしょうか。MSMCはピストル弾薬を主眼にした5.8mmx21を使用する05式よりもコンパクトで、強力で、完成度では上のように感じられますが。というか05式はサイズの割に威力が弱すぎで用途がなさそうな気がするんですが。

まあMP7系でさえ苦戦している国際市場でMSMCが成功するとは思えませんけどね。












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