mte.224VA

 4つの部分軍(頑住吉注:陸、海、空軍、海兵隊)に沿岸警備隊と特殊部隊を含めたものの武装を考慮し、相応の改良を意図する米軍のJSSAP(ジョイントサービススモールアームズプロジェクト)の進行の中で、一分野OPW(オブジェクティブパーソナルウェポン)用にある兵器が要求された。これはピストルのように携帯でき、しかしピストルの属性を越えることが意図されたものだった。目下いくつかの会社がそのような兵器システムを開発している。これにはH&KのPDWが挙げられ、それはHK SOCOMピストル(Mk.23)のサイズに達する。

 しかしOPWのための要求はノーマルなピストル弾薬(9mmパラベラム)によっては達成できないため、例えばファブリックナショナルのP90の場合のように新しい弾薬の開発と使用が始まった。1997年、ミリポル97においてさらなる新弾薬である.224BOZが披露された。これは5.56mmにネックダウンされた10mmAUTO薬莢からなっている。この発明に刺激を受け、Martin Tumaはチェコ人Petr Voborilと協力して.224VOB弾薬を開発した。これは5.56mmにネックダウンされた7.62mmトカレフ薬莢であり、ノーマルな.223弾を受け入れるものだった。いくつかの改造ピストルによるテストの後、この弾薬用に特別に開発された銃が必須であるという結論が得られた。この新しいピストル、すなわちmte.224VAは始めから簡単に保持でき、それでいて非常に効果的である。この銃は長時間塩水に漬けていても耐え、50mまでの水深に耐える。この銃は重量閉鎖機構を持ち、セミ、フルオートの発射が選択できる。この際高い発射速度にもかかわらず、2〜3発の発射が可能である。ちなみに重量閉鎖機構(スライドがその自重によって閉鎖機構となる)はセルフローディングピストルにおいては9mmパラベラムより下の弾薬に使われる。こうした銃の場合ガス圧が比較的低いからであり、このためロック機構のある閉鎖機構が放棄できるのである。mte.224VAは他の全てのPDW同様サイレンサーを装備することができる。サイレンサーは2本のネジによってバレル左右から固定できる。このサイレンサーは2つに分割されている。すなわち、最初のより小さい部分(ダイレクトにバレルに設置され、バレルのアダプター、フラッシュサプレッサーとして役立ち、発射時に発生したガスを先へ伝える)、そして第2の、そしてより大きい部分(ガスの速度を低下させ、この結果超音速音を生じさせず、静かに発射される)である。サイレンサー装着時には速度の損失を埋め合わせるためより重い弾丸が使用される。するとこの弾丸はバレルをまだ約320m/sのうちに去る。トリガー前方のフレームには両面に、ランプまたはレーザーターゲット器具のようないくつかの器具の受け入れのために役立つレールがある。こうした器具のケーブル結合はトリガーガードを通ってグリップに導かれ、その後そこで銃のグリッピングを向上させるゴムカバーの下でそれぞれのオン・オフスイッチに取り付けられる。スライド後部の荒い溝は銃のより簡単な操作に役立つ。このため使用者はグローブをしていても銃の装填ができ、あるいは挟まった薬莢を除去できる。これは他のいくつかのピストルでは容易には出来ないことである。

 この銃は公用および軍用のみに供給されている。しかし民間マーケット用には.22LRバージョンが存在する。.224VAのフルオートバージョンの部品はセミオートの.22LRバージョンのそれと交換できない。はめあいが異なるからである。アメリカマーケット用には、その地を支配しているマガジンキャパシティを10発に制限する法のため、マッシブなスチール体がマガジン内に溶接されている。この措置を取り消すよう試みようとすると、マガジンは使用不能となる。mte.224VAにはグリップフレームの長さの16連マガジンも、銃から突き出す26連マガジンも使える。薬莢の長さに基づき、.38スーパーオート弾薬のマガジンも使用できる。

名称:mte.224VA
メーカー:martin tuma engineering GmbH(スイス、ソロサーン)
重量:1,360g以下(OPW要求カタログによる)
銃身長:165mm
口径:.224VA
銃口初速度:720m/s(サイレンサー使用時は320m/s)
発射速度:940発/分
有効射程:200m


 本題と直接関係ありませんが、「JSSAP」というのは米軍全軍の小火器の開発と購入を各軍の代表者による事前協議の後に統一して行い、重複を避け、コスト削減を図ることを目的としたもので、その第1号プロジェクトがかのXM9ピストルトライアルだったということです。

 実は一般に考えられるよりもピストルというのは戦場では役に立たないものであり、これを何とかしようという試みがときどき現れるのは納得いくことです。敵のボディーアーマーが貫通でき、従来のピストルより射程が長いものというコンセプトはFNファイブセブン、H&K P46に似ていますが、それらの弾薬がPDW用に新規設計されたものだったのに対し、この銃に使われる.224VAは7.62mmx25トカレフ弾薬をネックダウンしたもので、しかも弾丸も通常の5.56mm弾の流用だということです。おそらくトカレフ弾薬用のピストルを簡単にコンバートできるというメリットを狙ったんでしょうが、実際には新規設計の銃が必要になったということです。ただ、安価で入手しやすく、バリエーションも豊富な弾丸の使用はある程度のメリットをもたらすはずですし、トカレフ薬莢製造の設備があれば比較的簡単に生産できる、すなわち普及しやすいというメリットも考えられます。

 ストレートブローバックになっているのは、スライドの後退力は発射される弾丸の運動量によるので、エネルギー量が多くても弾丸が軽いと後退力は弱まり、通常のショートリコイルではうまく作動しなかったということだろうと思います。ただ、弾丸重量が明記されていませんがノーマルな5.56mmである以上55グレイン程度はあると思われ、これで初速720m/sだとすればファイブセブンやP46よりかなり強力ということになります。それらの銃はディレードブローバックを採用しているのにこの銃はストレートブローバックで問題ないのかという点はやや疑問です。圧力は通常のピストル弾薬よりかなり高くなるはずで、それを早期にスライドの後退が始まるストレートブローバックで発射した場合薬莢切れが起こるのではないかという心配もあります。

 弾丸の運動量が小さければリコイルショックも軽くなり、フルオートも比較的制御しやすくなるはずで、作動に問題がなければフルオートが選択可能というのは大きな売りになるでしょう。というか、私は以前からファイブセブンやP46に何故フルオートを設けないのか疑問に思っていました。

 銃のデザインは明らかにCz75亜流で、おそらくなじみやすいという意図でしょう。ちなみにスイスでもスフィンクスなどのCz75亜流品が生産されているようです。少なくともファイブセブンよりとっつきやすそうな印象ですし、操作性にも大きな問題はなさそうです。明記されていませんがたぶん赤いレバーがセレクターでしょう。

 とまあ、かなりいい線を行った銃のように思えるんですが、お分かりのようにこの情報はやや古いものであるにもかかわらず、この銃に関しては全く聞いたこともなく、検索してもろくな情報に行き当たりません。要するに成功できなかったということでしょう。













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