ノリンコ製品のグレードは?

少し古い情報ではありますが、まず「Visier」2002年12月号に掲載されたCZ75系のハンドガンに関する記事からです。


 CZ75は世界で最もコピーされているピストルのひとつだ。多くの国々で、それぞれの手法でコピーされている、いわば現代の古典といえる。オリジナルのチェコ製も供給され続けてきたが、今回新登場したスポーツバージョンはドイツの助けを得て作られている。この「スポーツU」は、146mmのロングバレルと、ワンピースのロングスライドが特徴である。ただ、後者はCZ製ではない。6inバレル用ロングスライドはシュツットガルトのKurt Tschofen社が削りだし、調整を加えたものである。同社は「我々はスライド、ブッシング、プラグ、リコイルスプリングガイドを製造している。」と語っている。残りの素材は輸入業者のフランコニアを通じてCZから供給される。いわばチェコ、ドイツ合作なわけだが、両者の合体にあたって調整のための後加工の必要はわずかしかないという。「フレームの、スライドとかみ合うレールはドイツ側で削っているし、精度の高い工作をしているので後加工の必要はわずかしかない。たいていはフレーム側に多少の修正を施すのみだ。」という。「スポーツU」の加工と仕上げは似たクラスの純西ヨーロッパ製ピストルと比較しても明らかに成功している。
 テストした銃のスライドの作動にはほとんど遊びがない。バレルは閉鎖状態では完璧にびくともしない。これはマズルブッシングががっしりと保持するからである。普通CZ75シリーズには分解工具は必要ないが、タイトなブッシングは素手で回すと爪が割れてしまうので、輸入業者のフランコニアからガバメントと同じスタイルのブッシングレンチが供給される。
 マットブラックのブルーイングフィニッシュは手作業で上品に行われ、好感が持てるし実用的でもある。SAのトリガープルはシャープで、1760gの重さだ。このプルでは本格的なスポーツ射撃用には重すぎるが、カスタムパーツの使用とチューニングによって1300gまで軽減できる。トリガーメカニズムは小さなトルクスネジでフレームに固定されている。
 サイトはカスタマイズなしにスポーツ射撃に満足いくものが付属している。LPA製の小型ミクロメーターリアサイトがロングスライドにセットされている。15段階にクリックストップし、上下調節では25mにおいて1クリック10mm、左右ではより細かく約5mm着弾点が移動する。フロントサイトは3.5mm幅の角型で、スライドにアリミゾ結合されている。出来は非常によい。
 レンジでこの新しいブルーノ製6in銃を撃った。グリップはホーグ製ラバーグリップで、手の小さい人にもフィットする。長い、しかし重すぎないスライドはまっすぐマズル方向を向いている。
 「スポーツU」は強装の9mmパラベラムで決して作動不良を起こさなかっただけでなく、470gのスライドは弱装の弾も問題なく消化した。25mからの5発のグルーピングを測定したが、最小のものはたった21mmだった。これほどの命中精度を示したのはラプアのCEPPだけだったが、フィオッチでも30mm、PSグランドでも27mmという好結果が得られた。
 「スポーツU」の価格は1179ユーロで安価とはいえないが、射撃成績と装備からすれば非常に安いといえる。ワンランク上のP210ターゲットモデルにも性能では負けない。市場で直接競合するのはH&K USPエリート、タンフォリオゴールドマッチということになろう。タンフォリオに比べ、「スポーツU」はスライド一体なのでスタイルがいいし、全体の加工も上等である。その上、全てのタンフォリオが常に期待通りの射撃成績を上げるわけではない。H&Kとの比較ではオールスチール構造なので約200g重い。だから即安定性が高いとは言えないが、スポーツシューターの中にはこの程度の重さがある銃を好む人も多い。

データ
モデル:CZ75スポーツU
価格:1179ユーロ
口径:9mmパラベラム
装弾数:16+1
寸法:全長240mm 全高143mm 全幅35mm
バレル:146mm(6条ライフリング)
内径:山部8.82mm 谷部9.02mm
重量:1130g(マガジン含む)
タイプ:オールスチール、ブルーイング仕上げ。DA/SAトリガー(アジャスタブルトリガーストップつき)。LPAミクロメーターサイト。M1911タイプのバレルブッシング。ホーググリップ。

 中国製のCZコピーであるNZ85Bは、オリジナルと細部でしか区別できないほど似ている。この銃はセーフティがアンビになっている。オリジナルと異なり、この銃はセーフティをかけた状態でハンマーがDAの動きをする。トリガーを引くとハンマーは起き、そして落ちるが、セーフティコック位置で止まる。このセーフティは優れたシステムとはいえない。ハンマーコックでセーフティをかけて携帯することは可能だが、ここから即発射することはできない。この状態からセーフティを解除すると、トリガーを引かなくてもハンマーがセーフティコック位置まで戻ってしまうのだ。オートマチックファイアリングピンブロックが装備されているのはよいが、現在ではオリジナルにも大部分の製品において装備されている。
 サテンフィニッシュの表面処理はオリジナルと比べて大いに見劣りする。スライドはところどころがいいかげんにポリッシュされ、半つや消しのフレームとは色が違っている。スライドとかみ合うフレームのレール、スライドの滑り止めセレーション部も含め、各所に荒い加工跡が残っている。グリップは出来がよくないが、幸いCz75用のカスタムグリップはホーグなど豊富に市場にあり、ノリンコ製品にもそのまま使用できる。
 スライドのセレーションは誰にとってもつかみにくく、ハンマーダウンから引こうとすると指をすりむいてしまう。Cz75の設計は元々スライドがつかみにくいものだ。何故中国人がオリジナルの深いミゾを単純に真似なかったのかは謎だ。他のノリンコ製コピー品、M1911、SIGザウエルにはこういう問題はない。ノリンコの輸入業者でもあるフランコニアはこの問題をすでに伝え、次回ロットからは改良されるという。
 マガジンにも問題点が見つかった。マガジンを銃に挿入する前、送弾を確実にするため、マガジン後部を物に叩きつけることがある。このとき、マガジン底板後部が前に押され、底板が外れてマガジンフォーロワ、弾薬を含めてマガジンの中身が全て地面にぶちまけられてしまうのだ。ノリンコのマガジンが改良されるまでは、CZのマガジンで代用することができる。マガジン底板とロック鉄板のみの交換なら安いが、これだけCZ製と交換しようとしても合わない。
 25mでのグルーピングは平均45mm程度になった。ハードクロームメッキのバレルは全鉛弾や銅メッキした鉛弾もよく消化した。最もよい成績を上げたのは自分で鋳造した130グレイン弾で、37mmのグルーピングだった。続いてPSグランドの安価なフルメタルジャケット弾の38mmがこれに続いた。中国製品はオリジナルと全く同様に命中精度がいい。このくらいあたる銃は普通この倍の値段がするものだ。
 問題点を指摘したが、ノリンコNZ85Bは期待に応え、手頃なクオリティを示した。ただ、マガジン、セーフティ、セレーションの問題は些細な初期トラブルで済ませられる問題ではない。これらはガンスミスなら簡単に修正できるが、NZ85Bが低価格だからといって高い加工費を必要とすることを正当化は出来ない。そんな費用をかけるくらいなら誰もがその金で本物のCz75を買うはずである。とはいえ、ドイツマーケットにおいて、NZ85Bが最も安価な「ワンダーナイン」であるのは確かだ。

データ
モデル:ノリンコNZ85B
価格:359ユーロ
口径:9mmパラベラム
装弾数:15+1
寸法:全長210mm 全高140mm 全幅38mm
バレル:114mm(6条ライフリング)
内径:山部8.82mm 谷部9.04mm
重量:1040g(マガジン含む)
タイプ:オールスチール、ブルーイング。DA/SAトリガー。アンビのサムセーフティ。オートマチックファイアリングピンブロック。予備マガジンつき。リアサイトは左右調節可。ホワイトマーク入り。


 最初に登場している「CZ75スポーツU」という銃はちょっと興味をそそられる存在ですが、検索しても見つかりません。何か問題があって少数作られただけで終わってしまったのかも知れません。この記事自体は去年読んでいましたが、そんなわけでちょっと情報価値が低いと思い、お伝えしていませんでした。でも国内ではあまり紹介されないノリンコ製品に関する内容もあり、今回こちらメインでお伝えすることにしました。ノリンコNZ85Bはここでは「CZ75のコピーであるがセーフティがアンビになっている」とされていますが、これはCZ85をほぼそのままコピーしたものですよね。仕上げが悪いのはまあいいとしても、セーフティ、セレーション、マガジンの問題は銃のことをよく分かっていない人が作ってるんじゃないかと思わせて不安になります。ただ、こんな荒い作りでも命中精度がこのサイズの実用銃として最高クラスだというのは面白いですね。オリジナルCZ製品は499ユーロということなんで、命を託すプロでなければこっちでいいかと思う人も多いでしょう。
 続いて「Visier」2004年3月号に掲載された、「スイス銃器マガジンチーム」によるノリンコの新製品の紹介記事です。


ノリンコ スナイパーライフル

ノリンコが作った最新のオートマチックライフルは、カラシニコフをベースにしたブルパップ型で、西側の弾薬である.223レミントンを使用する高精度ライフルとして作られている。我々は残念なことにオリジナルスコープ未入手の状態でこの新製品の最初のテストを行った。

 ノリンコ製品の輸入業者「Marius Joray」からの荷、新しい「5.56mmセミオートマチックスナイパーライフル」(これがこの品のフルネームである)を開封するやいなや、もうトラブルに見舞われた。付属のスコープやアクセサリーも含め、ライフルのコンプリートセットの代金を払ってあるのに、ケースの中に横たわっているのはライフルだけで、あとは何一つなかった。そばではジャーナリストがほとんど時間的余裕がない中で、極東からの新製品を冬の低温の環境下でいろいろ厳しくテストしてやろうと準備を整えてイライラしながら待っているというのにである。
 こうなるともうどうしてよいか分からない。なぜなら中国人に迅速な対応というものを期待することはできないからである。彼らの口座にドルを払い込んでしまえば、一般的に彼らは遠いスイスからのクレームに対応しない。編集長とも相談し、最初のテストはスコープなしで行うことにした。前例もあるし、特にこの銃の場合スコープマウントベースの他に、緊急時にはスコープなしでも射撃できるようにコンベンショナルなサイトもある。
 このようないきさつの後、我々はつっかえつっかえの研究活動に移った。なぜならこの銃に関して何の情報もなかったからである。輸入業者も何も知らないし、他の専門誌にも何も載っておらず、インターネットにも情報がなかった。最近になって急に開発されたものなのだろう。このため、以下の記事は全て推測、計測、常識的判断によるものである。
 本題に入ろう。
 ぱっと見にはモダンなブルパップ型のアサルトライフルと映るこの銃を、ノリンコは「スナイパーライフル」と称している。これはドイツ語では「スチャルフスチュッツェン」(頑住吉注:英語に直訳すれば「シャープシューター」)であるし、「政治的に正しい」言い方をすれば「プレズィジョンズゲベール」(頑住吉注:プレシジョンライフル)である。この銃が何に適しているかは、実際のテスト結果による事実に即して決めることにしよう。

ブルパップ形式
 この中国製品が採用しているブルパップ形式は新発明ではない。イギリス人は第二次大戦後、最初のブルパップ形式のオートローダーを開発した(EM-1およびEM-2)。50年代始めには「オートマチックライフル キャリバー.280 MK-1」として部隊テストを行った。アメリカ人は後に「ブッシュマスター」でこれに続いた。現在の代表機種はオーストリアのAUGである。この間、さらに南アフリカ(ベクターCR-21)、イスラエル(IMIタボールTAR-21)、フランス(FA-MAS)などが開発を行った。これらの全ては閉鎖機構が明らかにトリガーの後方にあり、これにより同じ銃身長で短い全長を達成している。
 中国人はベースとしてカラシニコフを使っている。カラシニコフはブルパップ形式に非常に向いている。リコイルスプリングが閉鎖機構の後方ではなく、上に配置されているので、全長が短くまとめられるのだ。フィールドストリップをすれば、ノリンコスナイパーライフルがカラシニコフベースであることは明らかに分かる。3本のピンを抜けば、全てのポリマー部分(ピストルグリップおよびトリガーガードと一体のフォアグリップ、ショルダーストック、ガスピストンのカバー)が取り除ける。これにより、バレル、フロント及びリアサイトハウジング、レシーバーが残る。このレシーバーから見ていこう。レシーバーは1本の角型鋼材から削り出されている。下部には10連マガジンが収容され、上部には2ピースの閉鎖機構(頑住吉注:ボルトとボルトキャリア)のためのレールが走っている。前部はバレル基部を保持している。バレルには緩いテーパーがかけられ、チャンバー直前では直径19.8mm、フラッシュハイダー直後では17.8mmである。マズルから約200mm後方にはオートマチックで作動させるためのガスを誘導する穴がある。バレル上部の構造に小さなピストンが内蔵され、これが閉鎖機構に力を伝達する。ピストンを収容しているケースの上部は同時に折りたたみ式のフロントサイトを固定している。スイスの兵役経験者ならシュトルムゲベール57で知っている、あの形式だ。同様の折りたたみ式リアサイトがチャンバー上に配置され、その前方にはスコープマウントベースがある。
 レシーバーはバレルも含めて全長が899mmで、銃の全長920mmはこれより少し長いだけだ。銃身長(薬莢の底部から銃口まで。フラッシュハイダーは含まない)は620mmだ。これはこの弾薬用としては長い部類で、初速は必然的に速くなる。例えばPE90(銃身長528mm)によるGP90弾薬の初速は893m/sであり、これに対しノリンコは924m/sだった。出所不明のある軍サープラス弾薬では992m/sに達し、RWSターゲット弾薬では1013m/sにさえ達した(命中はしなかったが)。
 命中精度のテストは、少なくとも最初のうちは期待できそうなものだった。単純なピープサイトを使い、100mからシッティング、レストでの5発のグルーピングが60〜80mmとなったからだ。だが、高価なターゲット用ホローポイント弾、RWSでの結果は全くの失敗だった。100mではただの1発の命中弾も発見されず、25mまで近づいて初めて「集弾」が得られたが、驚くなかれ600mm(!)だった。RWS弾薬はこのライフリング8インチのバレルと特別に相性が悪いようである。。
 最終的な判定はオリジナルのスコープを使ってのテストの後でいいかもしれない。この銃の信頼性は現時点ですでに証明済みであり、きっと注目を集める存在になるだろう。

弾頭重量(グレイン) 初速(m/s エネルギー(ジュール)
サムソン 55  929 1538
GP90 63 924 1743
サープラス品 55 992 1754
RWSターゲット 55 1013 1829


ノリンコ セミオートマチックスナイパーライフル
銃器タイプ:ガス圧作動、回転閉鎖式ボルト
メーカー:ノリンコ チャイナ ノースインダストリーズCorp.
口径:.223レミントン
銃身長:620mm
サイト:リアサイトは円盤状で8種類の距離に調節可。フロントサイトは左右調節可。夜間用発光マーキングあり。スコープマウントベース装備。
マガジン装弾数:10
セーフティ:トリガーメカニズムをロックするレバー
トリガープル:1500g
全長:920mm
全高:224mm
全幅:59mm
重量:4.135kg
素材:スチール、プラスチック
価格:お問い合わせ


 えーあの、ここに出てくる中国人に関する評価は私の意見ではございませんのでよろしく(笑)。私としては当然中国人にもいろんな人がいるわけで、何百人の中国人と商取引したわけでもあるまいに一般論として「中国人はこうだ」と断言するのはいかがなものかという気もいたしますです。まあそれはさておきまして、この銃はプラスチックを主な素材としたブルパップライフルで、どう見ても普通のアサルトライフルに見えるんですが、メーカーはスナイパーライフルと称しているわけです。スタイルは「非売品ギャラリー」で紹介している87式とも違い、それよりはやや普通と言うかおとなしめ、でもそれなりに未来的な感じがします。イラスト化しやすい横位置の写真がないんで勘弁してください。もし本当に重要な存在ならじきに画像が見られるでしょうし、見られなかったらどうでもいい存在だということです。
 命中精度はターゲット弾薬で異常に散っています(こりゃエアソフトガンとしても悪すぎと言われる数字ですね)が、他の弾では100mから60〜80mmに集まっているということなので、全然使い物にならんということはないはずです。しかしこれは普通のアサルトライフルの精度であって、スナイパーライフルの精度ではないですわな。専用スコープをつけたからといって命中精度が飛躍的に改善されることは考えられません。
 NZ85Bにしろ、このスナイパーライフルにしろ、ノリンコ製品は一見かなりいい線を行っているようで、どっか抜けているというか、命を託すツールとしてはちょっと不安な感じがします。







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