実銃について

 まず、今回製作にあたって最も重要な資料として使用した「DWJ」2002年5月号に掲載されたP11レポートの内容を示す。


水中で発射するための特殊ピストル

防水

2001年9月11日のテロ攻撃以来、一般大衆の特殊部隊に対する関心が非常に高まっている。部隊、組織、訓練、使命とならんで、しばしば特殊銃器に関する質問も受ける。H&KのアンダーウォーターピストルP11もそのような銃器のひとつだ。

闘ダイバーが水中で敵の戦闘ダイバーから身を守ることを可能にする武器を装備する困難というのは、戦闘ダイバーの実戦投入それ自体と同じくらい古い問題である。最初は自衛のためにナイフだけを携行したが、もし距離をおいて敵を排除する武器があれば非常に有効な戦闘ダイバーの運用に貢献するということがすぐ明らかになった。このような認識が、いくつかの国に銛の装備を導いた。だが、銛は比較的大きく、扱いにくかったので、開発は水中で役立つハンドガンを使用する方向に向いた。
 ほとんど圧縮されない水中での従来型の銃器使用には、内部において極度の圧力が生じるという問題があった。弾丸がマズルを通過するとき、この圧力は全方向に伝播する。これにより銃と射手が傷つけられる可能性がある。さらなる問題は塩水の中での使用による腐食を防ぐことだった。
 旧ワルシャワパクトでは、水中で使用するため、翼によって安定させる矢状弾を発射するアンダーウォーターピストルSPP1とアンダーウォーターアサルトライフルMSPが開発された(頑住吉注:他のいくつかの資料ではSPP−1の弾丸には翼はないとされている)。西側の銃器メーカーの製品で今日これに該当するものとしては、H&Kが開発し、製造しているアンダーウォーターピストルP11が知られているだけである。

説明およびその効果
 P11の構造と機能方式は従来型のハンドガンと本質的に異なっている。水中ではメカニカルなパーツ数は最小に制限しなくてはならず、またP11は海水とコンタクトするため腐食防止領域でも特に優れていなければならないという要求があり、これはそうした事実に制約されているためである。その上、通常オートピストルのような連発銃は水中では問題が多い。さらに銃身内部に入り込んだ水は射手にとって危険である。
 P11においてこの問題は「銃身の束」(頑住吉注:ドイツ語でペッパーボックスを「ブンデルリボルベル」と言いますが、ここでは銃身の「ブンデル」と表現されています)の使用によって解決されている。これには5本のセパレートな銃身と、5つの電気によって発火する発射薬と、5つの矢型の弾丸が含まれ、個別順々に発射が行われる。バレルはプラスチックのキャップで水密とされ、このキャップは発射時に貫通される。水密の「銃身の束」は誘導・ロッキングブロック(頑住吉注:形は都合上やや異なりますが、今回の製品にもあるバレルグループ下のフレームとかみ合うレール状の部分のことです)によってフレームに差し込まれ、スイング式のロックパーツで固定される。バレルには口径7.62mmx36の矢型の弾丸が入っており、左回りで発射される。
 P11の射撃経験を持つ兵士の発言によれば、非常に撃ちやすいそうで、つまりP11はほとんど反動を生じさせない。
 「銃身の束」の上にはフロント、リアサイトからなるオープンサイトがある。この銃を使い、水中の暗い状態でもよりよいサイティングができるように、サイトとしてトリチウムがインサートされた「Beta−Light」が装備されている。
 700gの「銃身の束」は2つのバリエーションが使用できる。水中用弾薬入りと水上用弾薬入りだ。
 「銃身の束」とならんで、500gの重さのプラスチック、金属結合素材製フレームがP11の2つ目の主要構造グループを構成している。ここには「銃身の束」に含まれる以外の機能があり、発火メカニズムが内蔵されている。発火メカニズムはグリップ内の2個の12Vバッテリーによって電気が供給されている。トリガーを引くことによって電気インパルスが放たれ、これがコンタクトピンによって発射薬に伝えられ、発射薬は発火する。
 次のコンタクトピンへの切り替えは発射後自動的に行われる。
 矢型弾の有効射程は水中で15mである。だが、この際弾道が横方向の水流および水草への命中に対する抵抗力が非常に弱いという点を考慮する必要がある。水上での使用では戦闘距離25mというのが現実的である。だがこの場合も銃の命中精度は横風に非常に影響されやすい。弾丸の貫通力は命中角度に大きく依存するが、水中では近距離において1cm厚までの鉄板を貫通できる。水上ではこれが25mからなお可能である。
 P11は運搬用アタッシェケース、水中用、水上用2つのコーデュラホルスター、「銃身の束」運搬ケース1個、電気による発火メカニズム用のテスターとともに供給される。

国内外における使用
 P11は主に特殊部隊および対テロ部隊に使用されているが、普及に関し使用できるオフィシャルなデータはない。H&Kも生産数に関するデータを公表していない。確実なのは、P11が海軍武装ダイバー分隊およびKSK、そして陸軍の遠距離偵察隊といったドイツ連邦国防軍内組織によって使用されていることである。GSG9もおそらく少数のP11を使用可能と思われる。
 写真で確認できる外国への普及状況に関しては、イタリアがP11を海軍の戦闘ダイバー集団である「Incursori」で使用している。専門家はイタリアの第9連隊「Col Moschin」および「Grupo di Intervento Speciale」もP11を使用していると推測している。さらにこれとならんで他の国々、すなわちイギリスのSBSおよびSAS、アメリカのデルタフォースおよびSEALs、イスラエルの「Flotilla 13」、デンマークのフロッグメン兵団、オランダのBBE、フランスの「Groupe d’ Intervention Gendamerie Nationale」が使用していると推測される。

評価
 H&KのP11は水中銃の問題に確実な、革新的な解決をもたらしたものである。だが、少ない装弾数、大きな重量が欠点と評価される。射撃成績にもなお改良の余地がある。だが、P11が戦闘ダイバーに使用される際は、たいてい夜間、敵の領海などでの作戦であり、その上しばしば小さな浮遊物で汚れた港、海であり、そのためこの銃は近距離のみで使用チャンスがあると計算しておく必要がある。
その使命は、使用する戦闘ダイバーに戦闘において敵の戦闘ダイバーを上回る射程距離という優位をもたらすことと、結果の不確実なナイフによる決闘に至らないようにすることであり、この銃はそれを完全に満たしている。

テクニカルデータおよび特徴

メーカー:H&K
口径:7.62mmx62
バレルの数:5
全長:
200mm
全幅:60mm
ライフリング:右回り、
180mm
で半回転
弾薬の種類:水中、水上用
発火:電気式、24V(12Vブロック型バッテリー2個使用)
サイト:トリチウムがインサートされたフロント、リアサイト。照準長146mm
重量:「バレルの束」700g、全体重量1.2kg
耐水性:水深10mまで
有効射程:水面下15m、水面上25m
最大射程:1540m(水面上)
初速:190m/s
マズルエネルギー:155ジュール(弾丸重量は約8.5g・131グレインとなるはず)
付属品:ベルトに装着するホルスター、発火メカニズム用テスター、「バレルの束」運搬ケース、運搬用アタッシェケース


 続いてHK4の「実銃について」に表紙画像がある分厚いドイツの本「HK」におけるP11に関する記述を引用する。


海面下の:P11

が「青い惑星」はその名を理由なくつけられているわけではない。その表面は70パーセント水で占められているからである。そして戦争は陸上でのみ起こるわけではない。敵はすでに早くから冷たい水をもその戦いの競技場として選択してきた。だが、その際は水上でのみ戦いが演じられた。というのは、水中での活動の技術的前提条件が欠けていたからである。年代史に信を置いてよいならば、アレキサンダー大王はすでに戦闘ダイバーによって彼の戦争に勝つことを試みていた。13世紀には戦闘ダイバーはすでに定着した攻撃テクニックに属していたし、レオナルド・ダ・ビンチの時代には長時間水中に留まるための釣鐘型潜水器が存在した。
 水中での活動を可能にするための全ての技術的前提条件は、ずっと開発が続けられてきている。個人用ゴム製スーツ、酸素ボンベ、銛は魚雷や水上で操作する大砲とともに使用を想定してU−ボートに装備された。だが、これに適したハンドガンは珍品にすぎず、しかもこれは水中で携帯するものではあるものの、水中で発射できるものではなかった。こうした特殊銃調達の最先端にいたのはアメリカのSEALsであり、こうした例外的兵士のためにアメリカ海軍はすぐにロックできるスライドと、サイレンサーを装備したS&W M39を開発した。いくらか大きい銃としてはイングラムMAC10および11、ストーナーライフル、そして当然H&K MP5が想定された。
 だがそれは充分なものではなかった。というのは相変わらず水中で狙って撃つ能力が欠けていたからである。これは例えば艦上機が航空母艦に降りる際の制動ワイヤーに似ているように思える。というのは、水中で使用する武器の問題でも最初に浮かんだアイデアがベストであり、時々より洗練され、より安全な形に改良が行えただけだということだ。つまり銛がその手段として選択され続けたのである。1960年代、いくつかの会社が圧縮空気またはジャイロジェット風のロケット方式による水中銃の実験を行った。だが、火薬ガスで加速される細い矢状弾こそ効果的な可能性を持つように思えた。というのは、これによって20mまでの距離を克服できるからである。そこでアメリカの会社Steavensはこのタイプの試作品を作った。これは約2kgの重さのステンレス製ペッパーボックスだった。20cmの長さの矢を.375口径の発射薬内蔵パイプに差し込むもので、単に.22薬莢が点火用に備えられていた。6本のバレルが束になり、回転は手動で行わなくてはならなかった。ロシアではこのシステムがアレンジされ、4本バレルのバリエーションが作られた。これとならんでカラシニコフに似たセミオートライフルも開発された。この銃は「APS」といい、口径は変更されて.223である。矢の寸法は5.66mmx120で、30mの有効射程を持つ。
 高い技術的ハードルに直面しながら、H&Kも1980年代半ばにアンダーウォーターピストルを開発した。ドイツではP11が遠距離偵察隊、戦闘ダイバー、GSG9に、そして国際的にはイギリス、デンマーク、ノルウェー、フランス、オランダ、そして当然アメリカとイタリアで使用されていることが以前から知られている。ちなみにイタリアでは、この銃が軍によって「トップシークレット」に分類されているにもかかわらず、すでに早くからイタリアの戦闘ダイバーがこのアンダーウォーターピストルを持っているところがいくつかの出版物に掲載されていた。

設計としては…
 これについては簡単なレポートがあったのだが検閲を通過しなかった。というのは、P11の重要な構成要素は依然として秘密事項の「ドグマ」を担っており、テクニカルデータも同様に公的なランク付け「NfD」(公用オンリー)の適用を受けている。これに従う必要があるのは著者だけでなく、H&Kも同じである。そういうわけで、ここでは例えば1994年に公開された非常に詳しいアンダーウォーター銃に関する報告文がすでに利用している、参考文献リストをあげることもできない。
 ここでは公表が認められた全体写真のコピーと、公表を許可された言葉による描写を示すにとどまる。すなわち、
「P11ピストルは公的な秘密保持規則の適用を受けている。より詳しいディテールの公表は許されていない」
 非常に好奇心をそそる資料がある。それはこの銃に関するナンバー1910790のパテント資料である。だが、これは興味を満たすのにわずかしか役立たない。というのはこれは秘密パテントであり、現在見ることができないからである。残念。


 資料としては「DWJ」の方が新しく、「HK」に比べれば情報がオープンになっているのが分かる。「H&K P11」等で検索するとさまざまなサイトにヒットし、「(発射音は)サイレンサー装備の9mmピストルと同じ」、「銃身長18cm」、「全ポリマー製構造」、「9.5x117mm fin stabilised tungsten dartを発射する 」、「水深18m、距離10mで22cmのグルーピング」、「MP5SDよりわずかに音が大きい」など、相互に矛盾するものも含めて多くの情報が得られる。ただしそのうちかなりの部分はゲームにおける武器選択などのページであり、フィクションが含まれている可能性も高いと思われる。

 「水中で使用するため作動するパーツ数を最小にしなければならない」という制約から、より先に出現した旧ソ連のSPP−1とH&K P11には(バレルグループが回転しない広義の)ペッパーボックス構造であるという大きな共通点がある。ダイビング用のグローブを使用していても支障がないようにトリガーガードがきわめて大きいなどデザイン上の類似点もある。しかしP11はSPP−1よりはるかに特殊な構造を持っているようだ(ちなみにSPP−1の改良型SPP−1MについてはGUN誌2002年10月号に床井雅美氏によるレポートが掲載されているので参照してほしい。それによればその弾丸の直径は4.5mm、長さは115mm、重量は13.2g、初速は250m/sとなっている)。
 
 まずP11はきわめて珍しいことに電気発火メカニズムを採用している。水中では水の抵抗によってハンマーなどの動きが減速されてしまう。それを補おうとハンマースプリングを強めると、(トリガーを引くだけで連射しようとすればSPP−1のようにDAとなるので)トリガープルが重くなって連射しにくくなるし、地上での使用に問題が生じるおそれも出てくる。その意味では電気発火式というのは合理的のようだが、電気を通す海水の中で使用し、バレルグループ、バッテリーケースは着脱式であるということを考えればかなりの困難を伴うと思われる。どの資料にも明記されていないが、銃の性格上海中で(少なくとも海水に濡れた状態で)バレルグループが交換できないということは考えにくい。具体的にどうやって電気発火メカニズム周辺に海水が入り込まないように処理しているのかは不明だ。

 水中で銃を発射すると衝撃波が発生し、全く圧縮されない水の中ではこれが近くの人体にストレートに伝わって射手を傷つける可能性があるという。ちなみにこれに類似した話として、太平洋戦争中沈没する軍艦から脱出して近くの島に上陸する場合、水中爆発が起こらないうちに腹部を水から上げないと内臓がやられてしまうと言われていた、という話がある。またバレル内に全く圧縮されない水が入り込んでいると、発射時に異常な圧力でバレルが破裂するなどの危険もある。そこでP11ではマズルをシールドで覆い、発射前にはバレル内に水が入らないようになっている(ちなみにSPP−1では非常に長い弾丸を使い、銃身内部が最初から半分以上弾丸で占められている)。なお発射前バレル内に水が入らないのにはこの他に水の抵抗によって弾丸の加速が妨げられないようにするという意味もあるだろう。

 サイトにはトリチウムがインサートされ、暗く透明度の低い水の中でも比較的狙いやすいよう配慮されている。操作はきわめて簡単で、基本的にはトリガーを引くだけでいい。通常操作しにくいとされるクロスボルト式セーフティも、少なくとも分厚いゴム製グローブをつけた状態ではレバー式より操作しやすいと思われる。

 さて、P11に関する最も大きな謎は電気発火による発射薬への点火以後、どのようなシステムで発射が行われるのかということだ。「現代軍用ピストル図鑑」(徳間文庫)の中で床井雅美氏は「ロケット方式で発射する」と説明されている。今回の2つの資料、ネット上の情報全て含め、ロケット説をとっているものは他に見つからなかったが、確かにロケット説には説得力がある。「サイレンサーらしきものがないにもかかわらず発射音が非常に小さい」、「反動がほとんどない」、「ロケットなら生じる衝撃波は非常に小さくてすむはず」、「水流や風の影響を受けやすく命中精度が低いらしいという性格はロケットと一致する」、「5本の砲身をP11と似た形で束ねた電気発火式のロケット砲(21cm Nb.W42)をナチ・ドイツが多用しており、いかにもドイツ人が思いつきそうだ(?)」、「H&Kが協力したらしい映画『トゥームレイダー2』における描写はロケットっぽかった」などロケット式を支持するような事実が多数あるからだ。

 しかし「DWJ」もロケット式なら全く記述がないとは考えにくいし、トーンとしてロケットとは読めない。「HK」の方も明記してはいないものの文脈からすれば明らかにロケット式ではないと読める。

 また、個人的にもロケット説にはいくつかの疑問がある。

●ロケットは推進薬を内蔵する関係上直径を小さくしにくい。7.62mmのロケットというのは細すぎないだろうか。ここまで細くしたら内部の推進薬のスペースの直径は6mm程度が限度になるだろう。ロケットを長くすれば推進薬の量は確保できるかもしれないが、極端に細長く充填した推進薬で急速な加速が可能だろうか。ちなみにロケットの直径7.62mmというのは最大の場合で、「矢状の弾丸」で尾翼部の直径が7.62mmだとすると本体はもっと細くなる可能性が高い。
●「水流の影響を受けやすい」とされてはいるが、銃口を出た直後の充分加速していない時点で水流を受けると遠距離における命中精度があまりにも大きく(事実上使用に耐えないほど)低下しすぎるのではないか。
●P11は全長の大部分がバレルになっており、バレルを長く取るよう苦労した設計のように見える。しかしロケットの場合多少のバレルの長さは初速、命中精度に大きく影響しないはずである。
●ロケット砲は肉厚がごく薄く、軽い砲身や構造で発射できるのが通常の火砲に勝る大きな長所であり、小火器に使う場合も基本的に同様である。しかしP11の個別のバレルは7.62mmという口径に比して非常に太く(たぶん20mm程度)、バレルグループ自体も非常に重い。重くかさばるのはP11の大きな欠点とされ、これには必然性があるはずだ。ロケットではこうはならないのではないか。
●メーカーに送り返さない限り再装填できないというのはきわめて大きな欠点であり、これもよほどのことがない限りこういう方法は取らないと思われる。単なる電気発火式のロケットなら再装填がどうしても不可能とは思えない。
●海水内での電気発火式には前述のような大きな困難がある。水の抵抗問題はどのみち発火機構を水密構造にするなら生じないはずだし、ロケットに点火するだけならあえて困難をおして電気発火にする意味が薄い気がする。
●電気発火式のロケットというのは第二次大戦時から多用されている技術であり、秘密パテントをとるようなものではない。他の部分に秘密があるにせよ「ロケット式である」ことを極秘にする必要はない気がする。

 そこで、筆者はあえて最高権威の床井氏とは別の推測を提示したい。P11はPSSの「実銃について」で紹介した「バレル内消音システム」、それもJ.ハットフレスの方式に近いものではないか、というものだ。筆者の想像をごく単純化したイラストで示す。



 青で表現したのがバレル(都合上短く表現しているが本当はもっと長い)、黄緑がピストン、黄色が弾丸、オレンジ色が発射薬だ。周囲は水色の海水だが、シールドがあるためバレル内部には海水は入っていない。トリガーを引くと電気インパルスによって発射薬に点火される。



 ピストンは弾丸を載せたまま高速で前進し、前部の狭窄部で停止して発射ガスを閉じ込める。弾丸のみがシールドを突破して高速で発射される。イラストでは示していないが、バレル内のライフリングはピストンとかみ合うのではないか(そもそも矢状の弾丸の場合普通ライフリングはないようなのだが)。この方式ならば、バレルを少しでも長く取ろうとした理由も、長時間にわたる極端な高圧とピストンが激突する衝撃に耐えねばならない個別バレルが太く、全体に重くならざるを得なかった理由も、メーカーに送り返さなければ再装填できない理由も説明がつく。「バレル内消音システム」は一般にあまり知られていないから秘密にしたがるのも分かるし、過去のそれはカートリッジを使用するものなので後方へのガス漏れが完全に防げなかったのに対し、再装填をあきらめ、また電気発火式とすれば後方を完全に閉鎖してガス漏れを防ぐこともできる。そしてこの周辺の新規性でパテントが取れるのも納得できる。
 弾丸を加速するストロークが薬莢内だけでごく短いPSSのシステムと違い、「バレル内消音システム」ならば基本的に通常の銃と同じ威力が期待できる。データ上エネルギーはPSSの方が大きいが、その分P11の方が余裕を持った構造にできるはずだ。逃げ場のないバレル内の空気が抵抗になり(真空にしてあるというのも考えられなくはないが)、シールドを破ることでもロスはあるだろうが、パワーを大きく低下させるほどではないと思われる。このシステムなら射手を傷つけるおそれのある衝撃波は非常に小さくなるはずだし、また通常のシステムだと水中に放出された発射ガスが気泡となって視界を妨げるが、この方式ならそれも防げる。

 地上用のバレルグループがあるのは、銃と予備のバレルグループが重く、他に地上用のハンドガンを装備するのが難しいためと思われるが、それだけでは説明がつかない。「DWJ」には、「水上用のホルスター」も標準装備されているとある。水中ピストルであるにもかかわらず、水中の使用を前提とせずに携帯することも多いということだ。これはP11を、「気付かれずに歩哨を倒す」PSSのような特殊消音銃として使用することを想定しているのではないだろうか。

 ちなみにP11が「バレル内消音システムである」とするゲーム関係のサイトが以前1つだけ見つかったのだが、今回探したら見つからなかったのでどうやら削除されたようだ。
 なるべく近いうちにP11の全貌が明らかになることを望みたい。たとえ推測が大はずれで恥をかくことになっても(笑)。







戻るボタン