H&K P2000SKとSW99コンパクト
「Visier」2004年6月号に、H&KとS&Wの新製品であるプラスチックフレームのサブコンパクトピストル、P2000SKとSW99コンパクトのレポートが掲載されていました。
従来、S&WとH&Kのレパートリーの中にサブコンパクトポリマーピストルがまだ欠けていた。しかし今、両社はこれを追加した。
ドイツの官庁もまたミニフォーマットのプラスチック公用ピストルの調達に興味を示し、以来今日まで、長年モデル26(9mmパラベラム)、27(.40S&W)、36(.45ACP)のグロックに制圧されてきたこのマーケットは活気づいている。この結果として次のような現象が起きている。ワルサーは夏にはサブコンパクトポリマーモデルを供給可能にする予定だ。SIGザウエルは3月のIWAでP250DCcを紹介した。この銃は新シリーズ最初のピストルであり、その寸法は小型グロックにきわめて近い。AKAHとならんでドイツへのS&W製品の輸入元2社のうちの1つであるWischoは、テスト用に新しいサブコンパクトバリエーションであるSW99をすでに準備した。そしてH&Kも編集部に、最新にしてこれまでで最小のポリマーモデルであるハンディなP2000SKを提供した。
オベルンドルフからのニュース
ニーダーザクセン州警察は、メーカーがこのモデルを供給可能になる前であるにもかかわらず、すでにP2000の小型化バージョンをオーダーしていた。今、P2000のより小さい姉妹機種は製造中である。H&KのP2000SKのサブコンパクト化に向けた「収縮プロセス」は、グロックがすでに1990年代半ばに実際にやってみせた方法と別の方法で行われたわけではない。グリップフレームは短くされ、だがそれでもなお9mmパラベラムがダブルカアラムマガジンに10発ロードできる。これに加えバレルとスライドがある程度短くされたが、減少した重量はなお100パーセントの機能を保証するものである。ただし、このためにリコイルスプリングをダブルにして協力させている。
リアおよびフロントサイトには3つのホワイトドットが入り、光の状態が悪くてもターゲット像を素早く把握できるようになっている。SKの公用使用者はフレームのピカティニーレールにタクティカルライトを装着でき、そのため闇夜でも使用できる(頑住吉注:ご存知のようにドイツでは一般市民が銃にライトを装着することは禁止されています)。グリップ後部は1本の保持ピンを抜くことで簡単に交換できる(使用者が別のグリップ後部を持っている場合に限る)。別のグリップ後部は量産前のテスト銃にはまだついてこなかったが、量産品には標準装備される。
H&Kの提供によるテスト銃は「Combat Defence Action」トリガーを備えている。H&Kはこのタイプのトリガーをトリガープル2.75kgでも3.25kgでも供給している。「Mantheiトリガースキャン」(頑住吉注:「Visier」が多くのレポートで使っている、トリガープルのレットオフ時の重さだけでなく推移等もグラフで示すことが出来る計測機械)はテスト銃を2.9kgのトリガープルと示した。H&Kのトリガーシステムは人差し指の実感としては非常に軽く調整されたDAOトリガーに似ている。「一部コック」システムにより、トリガーは最初の一発以後再び14mmのフルストローク出発点ポジションに戻される必要がなく、約8mmのストロークで充分である。不発の場合はハンマーをトリガーによって完全にコックして作動させることもできる。ただしこの場合のプルは5300g近くになる。「Combat Defence Action」トリガーになじめない人のために、H&KはSKのコンベンショナルなDA/SAトリガーとアンビのセーフティ/デコッキングレバーを備えたバリエーションも供給する。
アンビで幅の狭いスライドストップは親指が短くても良好に届き、マガジンキャッチもグリップ両側から操作できる。総合的にP2000は非の打ち所のない加工を示している。スライドはその誘導レール上を動くが、ガタはない。バレルは閉鎖状態で「Bombenfest」(頑住吉注:「爆弾に耐える」、転じて「絶対確実」。「Cz75スポーツU」でも同じ表現が使われており、特にしっかり保持されているとき使う表現のようです)に見え、チャンバーを上から押してもバレルはわずかにすら下に動かず、左右の遊びもほとんど感じられない程度に留まっている。
SW99
SW99コンパクトのポリマーフレームには「ワルサーバナー」と「Frame made in Germany」の文字列が目立たないように入っている。これは、SW99シリーズがワルサーとS&Wという2企業の共同製作であることを示している。フレームだけがドイツ製のように表示されているが、それだけではなく小パーツも含めてドイツで作られている。ただしスライド、バレルは例外で、これらはスプリングフィールドで作られている。この地はマサチューセッツ州にあり、ピストルの組み立てもそこで行われている。
メーカーによると、SW99と比較できるワルサーP99のサブコンパクトモデルは、すでに警察使用に向けての公的証明書の発行が決定済みで(頑住吉注:詳しい事情はよく分かりませんが、ドイツでは「ウルム射撃試験局」などでの厳しいテストの上、警察での使用に適する銃に公的証明書が発行されるようです)、またプライベート分野でも6〜7月に供給可能になるという。SW99は基本的に広範囲にわたってワルサーのP99と一致する。ストライカー方式のため、手に対してバレルが低く位置することになり、またストライカーがコックされているか否かがスライド後部の赤いシグナルピンで判別できる。デコックはスライド上部のボタンで行う。この操作はウィークハンドの親指で行うのがベストである。
アンビのマガジンキャッチの機能はH&Kに似ている。P2000SKと全く同様に、SW99コンパクトもマガジンキャッチを押し下げるだけでマガジンが排出される。ただし、これは銃の機能上のことであり、実際の使用上はマガジンキャッチを親指で作動させたとき、グリップが小さいのでたいてい小指はマガジンの下部にかかり、マガジンはグリップ内に留まってしまう。このとき人差し指はトリガーから離しているべきであり、マガジンを排出するために射手はしばしば小さなグリップを中指と親指だけで保持しなくてはならないことさえある。
H&Kとは異なり、S&Wのリアサイトは左右調節でき、ケースには高さの異なる3つの交換用フロントサイトが入っている。だが、調整可能という長所に水をさす不安要素は、サイトがプラスチック製だということだ(H&Kはスチールである)。P2000に比べ、スライドストップは親指がさらに届きやすい位置にある。ただし、左利き射手が親指をここに伸ばしても何もない。SW99コンパクトはP2000と違い、片側にしかスライドストップがないのだ。H&K(およびワルサーとグロック)と似て、S&Wも「塩浴硝酸処理」によるハイテク表面コーティングを行っている。ベルベット状マットフィニッシュは「Melonite」と名付けられ、光沢のあるスチールを黒くすると同時に反射防止も意図している。だが、S&Wによるバレルとスライドの表面処理は、ニトロカーボン処理の後黒く酸化させるという「QPQ製法」のH&Kのそれよりずっとマットが強い。何故なら、メーカーがSW99の上部にステンレスという素材を選んでいるからだ。ステンレススチールは「塩浴硝酸処理」によってノーマルなスチールと同じフィニッシュクオリティにはならない。
シューティングレンジにて
P2000SKが全てのテスト弾薬を障害フリーで消化したのに対し、SWは9mmパラベラムバージョンでも.40S&Wバージョンでも1種類の弾薬のみ問題が生じた。9mmパラベラムバージョンにSellier&Bellotの短いホローポイント弾を使ってはいけない。例えばそれぞれの2発目が送弾時にしばしばフィーディングランプですでにつっかえて動かなくなる。
だが、MagtechとSpeerのホローポイントテスト弾薬では完璧に作動した。弾丸先端部にソフトなプラスチックを充填したフェデラルのEFMJ(頑住吉注:「エクスパンシブフルメタルジャケット」。「ホローポイント弾」の項目参照)でも同じだった。一方.40S&WバージョンのSW99コンパクトは意外にもMagtechのフルメタルジャケット弾薬と合わなかった。一部の弾薬は装填されるが、大部分はチャンバーには入るものの、完全閉鎖の2mm手前でスライドが止まってしまい、そのつど手で押してやらなければならなかった。
2種の9mmパラベラムピストルの射撃快適性は理屈からしてもそんなにいいわけがない。H&K製品は、バレル位置が低いSW99コンパクトにくらべいくぶんマズルジャンプが大きい。
「こいつは刺激し、噛み付き、打撃する。」.40S&WバージョンのSW99のテスト者はそうコメントした。この弾薬は小型ポリマー銃に使用した場合、常に特別な「手の関節壊し」である。反動とマズルジャンプは同クラスの9mmパラベラムと比べて弾丸重量の比較から予想するよりずっと強い。不快なのは、.40S&WのSW99において、強い反動によってマガジンキャッチのシャープなエッジが人差し指に痛みを与えることだ。リコイルが弱い9mmパラベラムではこの問題は起こらなかった。.40S&Wの9mmパラベラムに対する成績上のプラスが最大でも20%であることを考えれば、9mmバリエーションがよりよい選択であるように思われる。特に使用者がこのミニピストルで日常的にトレーニングしたいと思っている場合は。
9mmパラベラムバージョンのP2000SK、SW99コンパクト、.40S&WバージョンのSW99コンパクトという3種の銃を、全て「フリーハンド」で25mから撃った場合、10発のグルーピングはそのつど10〜12cmとなった。シッティングの依託射撃では、ずっと密な集中が得られ、P2000SKとPMCフルメタルジャケット弾の組み合わせでは5発のグルーピングが23mmにすらなった。たいていはこの2〜3倍になったが、サブコンパクトピストルはマッチガンではない。命中結果が好感を持つものになるか、首を振るようなものになるかは、結局のところトリガーコンセプトとグリップデザインによって決まる。シューター全員がH&Kの「Combat Defence Action」およびS&Wの「Anti−Stress」トリガーに馴染まなかった。そしてグリップに関しては手袋の大きさによっては指の負担が大きくなり、特に小指がグリップにもマガジンボトムにも置き所がなくなると不快である。
結論
純粋な加工技術からは、P2000SKはSW99コンパクトを引き離している。アメリカ人が「Fit&Finish」と呼ぶ、パーツのはめあいとスチールパーツの表面加工では、P2000SKの方が明らかに勝っている。だが、S&Wの加工も根本的に劣っているわけではない。そしてシューティングレンジではよりよい加工がさほど大きな長所として現われなかった。両社のピストルのグルーピングは、(依託射撃では)P2000SKの23mmという例外を除けば、実際何度やっても50〜85mmの範囲だった。SW99はP2000SKより小さい全高という点で勝っており、また17連発のS&Wまたはワルサーのベーシックモデルよりはるかにジャケットの下でのコンシール性が高い。
これに対し、P2000SKはその寸法上ノーマルなP2000とほとんど変わらない。マズルジャンプがいくらか小さいので、SW99はP2000SKよりいくらか速い連射ができる。だがその差は大きなものではない。そして価格でも大きな差はない。購入決定は全く個人的な問題である手の形と、それと関連する供給可能なトリガーシステムによって決まるだろう。手の形によるというのは当然より大型のバリエーションでも基本的に同じではあるが、ミニピストルの場合は交換可能なグリップ後部によって手の形に応じて変わる対応能力が相対的に大きくないのである。
次々と(頑住吉注:別扱いの囲み記事)
H&KはP2000も、新しいSKコンパクトモデルもたくさんのトリガーバリエーションで提供する。今回テストはしていないが、ベースモデルのP2000SKは全くコンベンショナルなDA/SAであり、デコッキングレバーを備えている。バージョンV1、V2、V4は「Combat Defence Action」トリガー装備であり、すなわち初弾から最終弾まで常に一定のトリガープルであり、いずれもデコッキングレバーは備えていない。3種の「CDA」システムの差はトリガープルだけで、それぞれ2.0kg(V1)、2.75kg(V4)、3.25kg(V2)である。V3バリエーションはベースモデルから露出したハンマースパーのみによって区別される。V5はDAOトリガーを備え、このトリガープルは約3.5kgである。一方S&WはSW99とSW99コンパクトをワルサー方式の「Anti−Stress」トリガーのみで提供している。これはDA/SAシステムでデコッキングボタンを備えたものだが、このシステムの特殊性はSAモードでも極端に長いトリガーストロークになっているところにある。ワルサー自身はP99を3種のトリガーバリエーションで提供している。すなわち「Anti−Stress」トリガー、クイックアクション(グロックのセーフアクションに似たもの)、DAOである。
H&KP2000SK 9mmパラベラムの射撃成績
メーカー/重量/タイプ | 弾薬の全長(mm) | グルーピング(mm) | 初速(m/s) | 初活力(ジュール) |
IMI Ultra/115grs/FMJ | 29.4 | 53 | 330 | 406 |
Magtech/115grs/JHP | 28.1 | 48 | 325 | 394 |
PMC/115grs/FMJ Match | - | 23 | 325 | 394 |
Federal/124grs/EFMJ | 28.6 | 62 | 324 | 422 |
Speer/124grs/Gold Dot | 28.5 | 73 | 325 | 424 |
SW99コンパクト 9mmパラベラムの射撃成績
メーカー/重量/タイプ | 弾薬の全長(mm) | グルーピング(mm) | 初速(m/s) | 初活力(ジュール) |
IMI Ultra/115grs/FMJ | 29.4 | 75 | 325 | 394 |
Magtech/115grs/JHP | 28.1 | 69 | 340 | 431 |
PMC/115grs/FMJ Match | - | 76 | 310 | 358 |
Federal/124grs/EFMJ | 28.6 | 85 | 330 | 438 |
Speer/124grs/Gold Dot | 28.5 | 60 | 321 | 414 |
SW99コンパクト .40S&Wの射撃成績
メーカー/重量/タイプ | 弾薬の全長(mm) | グルーピング(mm) | 初速(m/s) | 初活力(ジュール) |
Magtech/160grs/SWCL | 29.9 | 74 | 325 | 548 |
Magtech/180grs/FMJ | 29.9 | 56 | 290 | 409 |
Am.Eagle/180grs/FMJ | 28.6 | 48 | 274 | 438 |
S&B/180grs/FMJ | 29.9 | 84(48) | 277 | 447 |
IMI/180grs/FMJ | 28.5 | 82 | 283 | 467 |
※略称および注:FMJ=フルメタルジャケット。JHP=ジャケッテドホローポイント。SWCL=セミワッドカッターブレイ。全てのグルーピングは依託射撃で25mから5発で検証。括弧内のグルーピングはトリガーのせいで逸れ弾となった1発を除いた4発の値。初速はMehl BMC17で測定。
コンパクトポリマーピストルたち
メーカー | H&K | S&W | S&W | タウルス | グロック | H&K |
モデル | P2000SK | SW99コンパクト | SW99コンパクト | PT111 | 26 | P2000 |
口径 | 9mmパラベラム | 9mmパラベラム | .40S&W | 9mmパラベラム | 9mmパラベラム | 9mmパラベラム |
価格(ユーロ) | 798 | 811 | 811 | 585 | 619 | 747 |
トリガーシステム | 各種あり | DA/SA | DA/SA | DAO | セーフアクション | 各種あり |
スライドの型 | スチール・QPQフィニッシュ | ステンレス・Melonite | ステンレス・Melonite | ブルーイングしたスチールまたはステンレス | スチール・Tenifer | スチール・QPQ |
装弾数 | 10+1 | 10+1 | 8+1 | 10+1 | 10+1 | 13+1 |
寸法(全長x全高x全幅 mm) | 161x33x117 | 168x31x113 | 168x31x113 | 155x31x113 | 156x31x104 | 178x34x128 |
銃身長(mm) | 82 | 89 | 89 | 79 | 83 | 93 |
サイト | スチール | プラスチック | プラスチック | スチール | プラスチック | プラスチック |
リアサイトの調節機能 | 交換可能 | 左右 | 左右 | 交換可能 | 上下左右 | 交換可能 |
重量(g) | 685 | 640 | 634 | 530 | 1095 | 705 |
キャプション
グロック(左)とタウルスは何年も前からサブコンパクトポリマーピストルを提供している。両メーカーは9mmパラベラムとならんで.45ACP、.40S&Wモデルも供給している。オーストリアおよびブラジル製であるこれらのピストルは、価格的にはS&W、H&Kよりずっと安い。
P2000SKは技術上基本的にはH&K USPをベースにしている。ブローニング方式の閉鎖システムであり、ダブルのリコイルスプリングと追加のバッファーを持つ。テスト銃ではハンマーはスライドに隠れている。DA/SAバージョンのみ手動でコックできる。
S&WはSW99コンパクトを9mmパラベラムでも.40S&Wでも製造している。ただし、ワルサー方式の「Anti−Stress」トリガーシステムのみである。トリガーシステムがワルサーによっているだけではなく、フレームとほぼ全ての小パーツもワルサーによるものだ。ただしスライドとバレルは例外である。
外観上SW99はワルサーP99と、スライドの滑り止めミゾが前部にもあり、スライド形状がいくらか異なるといったディテールのみによって区別される。
全高のコンパクトさではSW99(左)は明らかに新しいP2000SK(中央)より勝っている。だが、マーケットに供給されている中で最も全高が低い10連発の9mmパラベラムピストルはグロック26である。このためS&WとH&Kにはグリップ形状上より多いスペースがある。グリップ後部は交換できる。
SW99(右)はサブコンパクトの中ではバレルが長く、他と隔たっている。グロック(左)とH&K(中央)の差はわずかである。SW99のリアサイト前方のボタンはデコッキングレバーの役割を果す。グロックもS&Wもリアサイトが左右に調節でき、その上グロックは上下にも調節できる。S&Wの高さ調節はフロントサイトの交換による。
2002年の始めに初めて紹介されたH&K P2000は力強いマガジンのフィンガーレスト以外では新しいSKとほとんど区別できない。だが、P2000のいくらか長いグリップには13発の9mmパラベラムが収まる。
ワルサーはP99において、QPQコーティングされたノーマルスチールのスライドとバレルでSW99と差別化している。だがこの他にワルサーではS&Wにない多くのトリガーシステムを選択できる。DA、DAO、クイックアクションである。
P2000SKは左のスライドストップによって分解する。右のスライドストップは分解してもフレームに留まる。SW99にはアンビの分解ラッチがトリガー上方にあり、分解するためにはこれを押し下げる。
P2000SKのトリガーはコンスタントに約2900gが続いて落ちる。このシステムは装填によって常に「一部コック」される。SW99の「Anti−Stress」トリガー(下)はDAモードではいくらか「ぶよぶよ」した感じを受ける。SAでは安全のため事前に「空走距離」があるが、使用者はすぐ慣れる。
H&K P2000SKの公式紹介ページはここです。
http://www.hk-usa.com/pages/Civilian/handguns/p2000sub.html
SW99コンパクトの公式紹介ページはここです。
http://firearms.smith-wesson.com/store/index.php3?cat=293590&item=831461&sw_activeTab=1
SW99は「Visier」でレポートされているものと全く同じのようですが、P2000SKは公式よりずっと小さなフィンガーレストのついたマガジンが付属しています。
まず、記事内に明らかに誤りだろうと思われる部分があります。P2000SKのDA/SAモデルにアンビのセーフティ・デコッキングレバーが付属するとありますが、そもそも原型のP2000にすらマニュアルセーフティはなく、側面のデコッキングレバーもないはずです。あるのはスライド後部に移動したデコッキングレバーだけで、P2000SKもこういうタイプだと思われ、現に公式でもそう紹介されています。このタイプはレポーターの手元になかったのでうっかりUSPの事情と混同したのではないかと思います。そしてこれは明確に誤りとは言えず主観の問題ですが、P2000とP2000SKのサイズがほとんど変わらないというのは言いすぎだと思います。写真をよく見ればたいていの人が「結構違う」と感じるのではないでしょうか。ただ、全長で17mm、全高で11mmの差が、新しくバリエーションとして作るにしては小さすぎると言われればそうかもしれないですね。
イントロダクションにS&Wのレパートリーにもサブコンパクトポリマーピストルが欠けていたとあります。これは正しいのですが、実は以前はこれに近いものがありました。「SW9M」の項目で触れた同名の銃がそれです。マガジンはシングルローですが、9mmパラベラムを使用するプラスチックフレーム、DAオンリーのオートで、今回登場した2機種に近いサイズです。ところがこれがどうしようもない駄作で短時間で生産中止になり、SW99コンパクト登場までこのクラスが空席になっていたというわけです。フルサイズのシグマはグロックの露骨な真似でいまいちぱっとせず、オリジナルのコンパクトシグマは大コケ、結局ワルサー方式を導入するしかなかったわけです。伝統あるアメリカのメーカーS&Wの新規開発能力の衰えを感じるようでちょっと寂しい気がします。
さて、注目したいのは両者の特殊なトリガーシステムです。まずP2000SKの「Combat Defence Action」ですが、基本的にはDA/SAに近く、ただしデコッキングレバーもなければ手動でデコックすることもできません。装填時には必ずスライドを引きますからこのときハンマーはコックされ、SAに近いモードで撃つことになります。ただしこのコックはフルコックではなく、ドイツ語を直訳すると「一部コック」となるハーフコックであり、要するにセミダブルアクション状態になるわけです。基本的に発射は常にこのセミダブルアクションで行われます。DA/SAだと最初非常に重かったトリガープルが2発目から急に軽くなり、極度のストレス下ではつい力が入って暴発させてしまうといった事故が起きやすいですが、「Combat Defence Action」ならトリガープルが常に一定で、しかもDAオンリーより軽いプルで撃つことができます。また初弾は14mm引かなくてはなりませんが、2発目からは8mmトリガーを戻すだけでいいのでDAオンリーより素早く、正確な連射ができます。ハンマー式とストライカー式の差はあれ、大筋グロックのセーフアクションに似ています。ただし、グロックは不発が起きるとトリガーは引かれたままリターンすらせず(個人的感覚に過ぎませんが、私はこれが耐え難く気持ち悪いです)、当然再撃発はできません。一方「Combat Defence Action」はトリガープルが極端に重くなるものの再撃発が可能です。ただ、現在まともな弾薬を使っていれば不発はほとんどなく、万一あった場合は再撃発しても発火するとは限りませんからあきらめてスライドを引いて排出した方が早いという可能性もあります。グロックは長年にわたって高い評価を受けており、この部分が大きな欠点と評価されていないのは確かです。
SW99の「Anti−Stress」トリガーは「Combat Defence Action」やセーフアクションよりずっと理解しやすいシステムで、ほとんどDA/SAと変わりません。違うのはSA時にトリガーが通常のように後方で止まらずに前方に大きく戻ることです。「Anti−Stress」というのはストレス状況下でも暴発しにくい、つまり普通より長くトリガーを引かないと発射しないということです。ただし前段階ストロークは非常に軽いプル(この時は基本的にトリガーリターンスプリングのテンションがかかるだけなんでしょう)なのでDAオンリーよりブレが少なく、命中精度に悪影響が少ないわけです。ここには明記してありませんが、当然いちばん前までトリガーを戻さなくても連射できるはずです。デコックしてDAで撃つ場合はDA/SAとなんら変わりません。
両者とも方法は違うもののDA/SA、DAオンリー、定評あるセーフアクションなどの長所を組み合わせ、暴発しにくく、かつ連射が早く正確にできる理想のトリガーシステムを目指したものであると言えるでしょう。ただ、個人的には(セーフアクションも含めて)どれも何かしらメカニズムとして不自然な部分がある気がしていまいち好きになれません。実際「Visier」もテストした全員が「Combat Defence Action」、「Anti−Stress」トリガーになじめなかったとしています。P2000SKの場合DA/SAを選ぶこともできますが、SW99は「Anti−Stress」トリガータイプしかないので嫌なら他の機種を選ぶしかないですね。
P2000のスライドストップはアンビになっています。分解状態のイラストは「P2000問題その2」の項目にあります。外観上右のスライドストップが圧入されているように見え、どうやって分解するのか不思議でしたが、実際には両者のフィットはゆるく、分解時に左のスライドストップは普通どおり抜けるということです。左のスライドストップの先端部は歯車状になっていて、一方右のスライドストップの軸穴はこれに対応してギザギザの穴になっているので組み込めば連動するわけです。キャプションに「右のスライドストップは分解してもフレームに留まる」とありますが、たぶん右のスライドストップはスライドで回転を制限され、スライドを外すと上に通常より大きくスイングでき、これによってフレームとのかみあいが外れて分解できるのではないかと思います。
命中精度は両者とも使用目的からして充分すぎるほどで何ら問題はなく、P2000SKの方がいくらかいいですが実用上差はないと見ていいでしょう。
この記事は新製品であるP2000SKとSW99コンパクトを比較するという体裁になっていますが、実際マーケットではこの2機種が競うという形ではなく、2機種が共に現チャンピオンである小型グロックに挑むという形になるはずです。今回のレポートを読む限り、実力的には両者ともグロックに少なくとも大きく劣らないものを持っていそうです。ただ、両者を小型グロックと比較した場合、何よりも価格が高いですね。このドイツでの価格差がアメリカでのそれとイコールであるかは分かりませんが、同程度だとしたら後発機種で価格が高く、決定的に優れている点も見当たらないということで競争としては苦しいのではないでしょうか。ただ、グロックのセーフアクションが嫌だという人はある程度いるはずで、P2000SKのDA/SAモデルにはある程度の需要はあるのではないかと思います。
さて、最後に本題と直接関係ない話です。SW99コンパクトには9mmモデルと.40S&Wモデルがあり、使用弾薬以外の両者の寸法、重量等の条件はほぼ同じです。そして9mmパラベラムと.40S&Wのエネルギー量は極端には変わりません。それでも.40S&Wモデルの方がリコイルが格段に強く感じ、手が痛くなり、これを使って日常的に訓練するのは苦しいだろうという評価です。これは「発射により射手が格段に大きなダメージを受ける」ということなわけですが、私は弾丸の持つエネルギー量が大きく変わらなくても、.40S&Wの方が「着弾により相手が格段に大きなダメージを受ける」可能性もあるのではないかと思いますが、いかがなもんでしょう。この筆者はドイツ人らしく.40S&Wはリコイルが大きいくせに「成績上のプラス」は少ないので9mmパラベラムの方がいいと言いたげですが。
2004年6月20日追加
「DWJ」2004年5月号にP2000SKのショートレポートが掲載されていました。独立した項目を設けるほどではないのでここに含めます。
H&K P2000SKはコンシールドキャリー用の銃である。
ショートストーリー
より短いことはよりよいことである。少なくともかなり多くの使用目的においては。ピストルメーカーもそのことを知っている。このシリーズにおける最も若い新芽であるサブコンパクトピストルがIWAにおけるH&Kの新製品、P2000SKだ。これはそのショートレポートである。
それはまるで自動車生産のようだ。つまりすでに成功しているモデルをベースにしたステーションワゴンやクーペに、技術上本当の意味での大きな新味が見られないようなものだ。それにもかかわらずそのようなモデルバリエーションは広範な大衆の好奇心をひきつけるのと同様に専門世界の興味をひきつけるのである。今年のIWAにおけるハンドガンの新製品も同様に既存の大口径ピストルをベースにしたバリエーションだ。すなわちH&Kが発表したP2000のサブコンパクト型、P2000SKである。
こうした事情により、この銃はある意味「コンパクトバージョンのコンパクトバージョン」である。というのは、P2000がすでに基本形であるUSP/P8、およびそのコンパクトバリエーションであるUSPコンパクト/P10の技術上さほど大きな変更点のないよりコンパクトで丸みを帯びさせた変種だからである。それでもP2000SKの独自性はすぐに目につく。だが、目に飛び込んできたこの銃は長さ、というより短さにおいてすら大きな差はないのである。163mmという全長もP2000より8mm短いだけだ。視覚上主に注意を引くのは短いグリップフレームだ。これがP2000SKの全高をたった117mmにすることに寄与しており、またこの結果マガジンキャパシティは9mmパラベラム10発となっている。だが、このコンパクトなグリップフレームもまた「ノーマルな」P2000よりわずか10mm短いだけなのだ。それでもこのグリップフレームは視覚的にきわめて短く見える。10発のマガジンキャパシティは他のサブコンパクトピストルたちのスタンダードと一致し、そしてアメリカでは市民用に許される最大の枠組みまでせりあげてあることになる。
P2000SKはマガジンを含め680gという重量により、今日でも軽い銃とみなされる。そしてこの銃は2つのトリガーバリエーションで入手可能である。1つはクラシカルなSA/DA銃で、SAのプルは2kg、DAのプルは5kgとなっている。もう1つはH&Kによって「Combat Defence Action(CDA)」と名付けられた「一部コック」であり、これはほぼDAオンリーに近いものである。これはコンセプトからはグロックの「Safe Action System」に似ている。チャンバーへの装填後、そして各発射後、発射機構は「一部コック」され、コンスタントな3.5kgのトリガープル、そして長い、安全なトリガーストロークとなる。グロックと比較しての長所は、不発が起こったとき、コックされていない状態でも、真の、重いDA(約6kg)でさらに射撃を試みることができる点である。このアクションはP2000のバリエーションV2と本質的に同じである。
いろいろな手の大きさに適応するためには、より大きな姉妹機種同様グリップ後部を交換する。だが、P2000のように4つの大きさはなく、P2000SKには2つの大きさの異なるグリップ後部があるだけである。
新しいサブコンパクトの加工はH&Kのスタンダード通りである。同社の別の銃を知る人なら、それが良好であることを理解している。プラスチック製グリップフレームは高品質の印象を与える。スライドはグリップフレームに「einlassen」されたスチール製誘導レール上に良好にセットされている(頑住吉注:「einlassen」には「はめこむ」という意味と「注ぎ込む」という意味があり、スチールのレールがプラスチックのフレームに組み込まれているのか、それとも鋳込まれているのか分かりませんが、たぶん後者だと思います)。もちろんP2000SKはスポーツ銃ではない。スライドのセッティングはマッチガンで知られるようなタイトなそれと同じではない。むしろそこには汚れても、砂まみれになっても銃の機能を保証する公差がある。スライドにはコントラストのはっきりしたホワイトポイントの入った単純な角型のオープンサイトもセットされている。そしてフレーム前下部にはピカティニースタンダードに基くレールがある。
DWJの結論
P2000SKはP2000シリーズの完成形であると思われる。そのコンセプトは警察その他セキュリティ業務向けになっている。コンシールドキャリーのためのコンパクトな作り、CDAトリガー、ピカティニーレールは一方では服の下での携帯を、一方ではより高い安全性とライトやレーザーサイトを装備したプロフェッショナルな使用を可能にする。このトリガーシステムは確かに万人向きではないが、あらかじめ想定された目的には非常に良好に合致している。このシステムは採用した官庁にもすでに適応している。公用にP2000を導入した官庁はこの銃を使うにあたって大きな切り替えが必要ない。また公的使用者個人はこの銃1挺でノーマルな公用拳銃とコンシールドキャリー用の両方の用途に応じることができるのである。
ハンターにとってもこの銃は興味深い。頑丈で、安全で、そして服の下でもかさばらない銃を798ユーロで入手することになるのである。
「DWJ」も見た目は小さいようだが実測値ではベースのP2000とさして変わらないと指摘しています。困ったことに「Visier」の記事では両者の全長の差は17mm、「DWJ」では8mm、公式サイトでは約15mmとばらついてしまっています。「DWJ」はIWAの会場で急いで取材、撮影した結果の記事のようですし、公式は公式、そして「Visier」との差はさほど大きくないので15mm程度と思っていいでしょう。「Visier」の記事にはP2000とコンパクトさにおいてさほど変わらないという点に関するフォローがありませんでしたが、「DWJ」はこの銃はサブコンパクトではあるが、同時に元々コンパクトを目指して開発されたP2000の完成形とも考えられ、コンシールドキャリー用だけでなく通常の公用拳銃としても使えるのだと主張しています。