ワルサーP22サイレンサーモデル
「Visier」2004年5月号の「スイス銃器マガジン」ページに、ワルサーP99をスケールダウンしたような銃であるP22のサイレンサーモデルに関する記事がありました。この記事は商品紹介の体裁で、価格も掲載されていましたが、「スイスではサイレンサーモデルが合法なのか?」という疑問を持って読んでみました。しかし本当に興味深かったのはその点でも、またP22自体に関する記述でもありませんでした。
ワルサーP22サイレンサーモデル
3年近く前、ワルサー社は新しい小口径ピストルP22を発表した。今、同社はこのモデルに2つのセットバージョンを追加した。だが、ターゲット交換用バレルとドットサイトが付属しただけのセットUよりも、サイレンサーとオプティカルサイトとのコンビネーションがなされたセットTの方が興味深いように思われる。
「Action & Fun in .22LR」のタイトルの下、「スイス銃器マガジン」はP22をすでに2002年1月号でレポートしている。この外形寸法を削減した「ピストルちゃん」は、全長159mm、重量は弾薬なしで480gしかない。視覚的には大口径ホルスターピストルP99をモデルにしているが、外装ハンマーに見られるように設計上の単純化が行われている。シューターはP22をデコックするには旧来のピストル通りトリガーと親指を使って対応する。P99のようなデコッキングボタンはない。
このピストルで目立つのは素早い分解と組み立てである。そしてちょっとした特色はバレル交換システムであり、これは87mmのノーマルショートバレルを127mmのターゲットバレルに交換できるということだ。ショートおよびロングバレルはサイレンサーと共にセットTに標準装備されている。
「スペシャルタスクフォース」
ワルサーはP22-SD(頑住吉注:ドイツ語ではいわゆるサイレンサーを「音」「弱める」という2つの単語が結合した単語で表現し、この頭文字を取ったのが「SD」です。日本のトイガンマニアにはMP5SDがいちばん有名でしょう。)を、「Special
Task Force」の上位概念の下に宣伝している。周知のように、サイレンサー銃は現在軍および警察の特殊部隊によって運用されている。少なくともドイツの警察特殊部隊は主に下はサブマシンガンまでのロングアームにおいてこれにあてはまる。だが、例えばH&K USP SOCOMのような世界的に見かけられるサイレンサー装備のハンドガンもこれに含まれる。口径.22LRのサイレンサー装備銃が多数兵器庫に装備されているのと全く同様にである。
そんなわけで(頑住吉注:サイレンサーつきピストルも、.22LR仕様のサイレンサー銃もこのようにポピュラーであるから)、ワルサーは新しいSDコンビネーションのP22で、確実に実りのある大地に足を踏み入れたように思われる。だが、アウトサイダーたちはサイレンサー装備銃の使用戦術に関し、わずかに、あるいは全く経験を持たない。ここでは、この知られていない分野に関して分かりやすい解説を行う。
P22は特別な使用のための要求に対応して(頑住吉注:セットTに標準装備されていないアクセサリーをさらに追加することによって)装備を強化できる。「Quick
Release」ロックシステムを持つワルサーレーザーモジュール装備のセットVが示すようにである。その上P22にホワイトライトをマウントすることも不可能ではない。
サイレンサー
発射音は、個々の雑音の合計、より正確に言えば急速に発生してまた次第に消えてゆくいろいろな周波数からなる圧力振動を合計したものから構成されている。だが、個々の雑音を取り上げても、程度の差はあれ大きな影響を総合結果に与えており、それらは聞く人の立ち位置、銃のタイプ、口径そして弾薬に依存している。
雑音の背景には、いくつかの機械的に作られた作動雑音が含まれている。例えば射撃によってスライドがぶつかる音、そして全く同様にファイアリングピンの衝突、そして弾薬の発火に続いて起こるセミ、フルオート銃のサイクル音である。
もう一つの音の原因であり、聞こえる音の強烈さに関連して過小評価してはならないのは、バレル内で加速される弾丸に圧縮される空気によって起こる圧力波である。これは通常サブソニック弾でも生じる。
忘れてはならないのは、バレル内の弾丸の周囲を抜け、先行して進む火薬ガスである。ついで実際に銃のマズルから弾丸が出ることで、ここでもまた空気のおしのけが起こり、そして弾丸の後を追ってガス本体の爆発的拡張が起こる。この後、地面、および障害物による発射音の反射がやってきて、音はこれによってさらに非常に大きくなる。ただしこれはその場の状況によって一部緩和される可能性がある。
発射音は超音速で飛ぶ弾丸によっても引き起こされる。空気中での音の伝播速度は弾丸より遅いからである。弾丸の先端部では円錐形の衝撃波が形成され、これは「超音速音」と呼ぶ。これは成長する時間があって初めて知覚できる。だから、極端に近距離ではサブソニック弾との比較において超音速の弾が音の強さの全体において重大な欠点にならないという結果が生じる。
確認しておく。弾丸が、空気を媒介物とする音波の速度(平均330m/sとされる)を越えて早く飛ぶほど音は大きくなる。そのつどの媒介物の密度に依存して音の速度も変わる。これにより水中では約1500m/s、鉄の内部では5500m/sに達する。
「超音速音」の回避は、音速以下(サブソニック)の弾薬の使用、またはバレルおよびサイレンサー(あるいはサイレンサーのみ)の構造上の措置(この領域によって弾丸の速度を適した速度まで削減する)によって成功する。サイレンサーのみのタイプは主にピストル弾薬で機能するが、ライフル弾薬でもないわけではない。
サイレンサーの主要課題は発射音を削減することであり、発射音の主要な原因は高温高圧で漏れる発射ガスである。このガス圧を(一時的に)貯蔵し、減速し、渦を巻かせ、緊張を解き、そして冷却することが有効である。これは遅くとも発射ガスがマズルを出てサイレンサーに入ったらすぐに行わなくてはならない。
「ハンドガン用サイレンサー構造学」は非常に複雑で、分厚い専門文献のテーマになるほどのものである。例えば音の伝播と音の強さの計測装置、ガス動体力学とガス圧低下に関する項目などで、これでもまだほんの一部である。まず第一に、バレルに組み込まれたサイレンサーシステムと、マズル領域に取り付けるそれとが区別される。
前者のバリエーションは通常サイレンサーがバレル全体を包んでいる。重要な長所は「反応室」の比較的大きな容積であり、場合にもよるがより安定したシステム設計になる。ただし、ライフリングおよびバレルの長さはサブソニック弾に合わせてよりよく調整しなければならない。主要な使用分野は軍、警察によるスナイパーライフル、サブマシンガンである。ハンティングに使われることはこれらに比べればまれで、時としてハンドガンに使われることもある。例えばかつてアメリカのOSS(Office
of Strategic Services)ピストルであった.22LR口径のハイスタンダード、ロシア製9mmマカロフのサイレンサーモデル、7.65mmx17口径の中国製M67のような機種である。
だが、後者の「前に置かれた」サイレンサーも多数が使用されている。こちらでは開発された原理はコンビネーションと共にさまざまである。このタイプの中にはタービン状薄板、ガスをそらす「じょうご」、星型の薄板、円錐状のもの、らせん状のもの、スプリングで加圧されたチャンバー、仕切り板状のもの、厚い円盤状のもの、壁を二重にしたもの、特殊な皮膜をかぶせたものなどがガス貯蔵、反応原理といった機能概念の下で使われている。前述のように、たいていいろいろな機能方法がコンビネーションされている。このような同化原理と全く同様に、ガス圧の引き下げは別の方法である冷却によっても達成される。温度低下および緊張緩和は、銅または真鍮のワイヤーを編んだ金網をきつく巻いたもの、多孔性の金属であるアルミニウムのくず、または単純にアスベストを満たしたもので行われる。
問題のフィールド
消音を行うというその主要課題は別として、実際の使用では当然システム上の欠点も示される。ありうるものとしては例えばオートマチック火器においてバレル重量過多、あるいは過度の堆積が起こって早く汚れてしまうことによる作動不良である。だが他にもスタンダードなサイトでは視界が制限される、最初の1発は音が大きい(次はより静か)、最初の1発の着弾点が狙点よりずっと下になる、消音のためのマテリアルがわずかの射撃の後に消耗してしまう、などの問題もある。
技術や構造次第では、ロングアームに組み込まれたマズルブレーキがそうであるように、ほとんど整備不要で、「最初の一発問題」がなく、多数発射しても使用可能時間が長いといったものにもなりうる。同様に、今回紹介する品がそうであるように、ハンドガン用に特化し、よりコンパクトな型でセミオート作動におけるありうる困難を助け、追加の「impulsgebung」(頑住吉注:「ステアー『タクティカルエリートSD』と『M9A1SD』」の項目参照。ちなみにあちらは「Impulsgeber」という「〜を行うもの」、こちらは「〜」自体の形ですが語のベースは同一です。)なしでもオートでの作動に問題を生じにくいものもある。
サイレンサー装備のP22
P22のサイレンサーを詳しく見ると、重量は250gであり、全長は162mmとP22本体よりなお4mm長い。だが、比較的ガス圧の弱い弾薬用であるため、直径は約30mmしかない。総体としては充分な内容積が保証されているに違いない。もしそうでないと、バレルからの多すぎるガスの逆流がオープンしたスライド方向に向かうという結果になる可能性がある。その上、ガスの高い流速は過小評価できないものである。こうした理由でサイレンサーの長さには特別な重要性があるのである。
一般に、サイレンサーの各銃器タイプに合わせた調整はそうでなくても非常に複雑なものである。例えばティルトバレルのハンドガンに長すぎるサイレンサーを装着した場合、ロック解除局面がまだ弾丸がサイレンサー先端から去らないうちに起こる可能性があり、サイレンサー内部構造にぶつかるかもしれない。大きく角度が変わるからである。同様に、重すぎるサイレンサーはピストルを単発銃に変えてしまうおそれがある。だが、P22は固定バレルを持ち、これが問題全体を単純にする。
ワルサーは操作マニュアルの表題「使用」の中で、3g以上の弾丸を使用してはいけない旨注意している。メーカーによれば3g以上の弾丸は短いバレル内で充分安定せず、サイレンサー内部構造を傷つける可能性があるからである。
より単純なサイレンサー構造
カタログの資料と操作マニュアルには供給されているモデルごとのいろいろなサイレンサーのテクニカルデータが記載されている。
操作マニュアルの断面図には、見える範囲内に約1ダースの仕切り板と、それだけでなくいくつかのスプリングさえ示されているが、実際にはこの新製品のサイレンサーはこれより明らかに少ない内部構造で済ませている。弾丸が通過する穴を開けた4つの「磨耗フリー」のアルミニウム製「浅い鉢」が減音を意図して組み込まれている。全部でこれだけの単純な構造なので、比較的クリーニングしやすいという長所もある。
サイレンサー取り付けの前提条件は射手がバレルにねじ込むアダプター部品である。サイレンサーを取り付けていない時はキャップが露出しているバレルのネジを保護する。
操作マニュアルの「重要なヒント」の節で、ワルサーはサイレンサー内部表面を濡らす可能性(Wet
Support System)を指摘している。これは、流体(水、オイル)をこのようないわゆる「乾式」サイレンサーに蓄積することによって、流体の高温高圧の蒸気を噴霧し、これによって消音するというものだ。この最終結果として、一方ではガスの流れからの機械的エネルギー剥奪が起こり、そして一方では流体の「電光のような」ガス気化を通じてのガスの冷却が起こる。これにより少なくとも2、3発の間、さらに追加のデシベル低下が起こる。
それに加えて、「Loud First Shot」すなわち最初の1発の音が大きく、2発目がよりよく消音されるという「音響学問題」がある。この原因は最初の1発発射前と後でのバレル及びサイレンサー内の異なるガス粘性、そして異なるガス密度であるとみなされる。熱した空気の異なる「粘り」は、サイレンサー内部でガスの動き、流れに意味を持ち、消音機能を助長するという有利な働きをするからである。それに対しまだ燃焼しておらず燃焼のための高い酸素含有率とアフターバーンの傾向を持つ空気は、高いガス圧および比較的高い音の周波数を導いたと考えられる。
初めての経験と指示
サイレンサーの着脱は簡単で、しかも操作マニュアルでよく説明されている。必要な取り付け工具は標準装備されている。マウントされたサイレンサーによってP22のスタンダードなサイトは隠されてしまう。そのためブリッジマウント(頑住吉注:フレーム前下部に取り付け、スライド前部をぐるっと避けて上にマウントレールがついたタイプのマウント)とレッドドットサイトが必要である。代替措置として単にレーザーモジュールを取り付ける方法もある。
追加のバレルウェイト(頑住吉注:スライドを前方に延長するような形でバレルに取り付けられる、よくあるコンペンセイターみたいなものです。ただしバレルにガスポートはないので単なるウェイトの役割しか果たしません)の有無に関わらず長いターゲットバレルにサイレンサーを装着することができる。唯一の欠点は、バレルウェイトをつけていると、アダプターが干渉して取り付け工具が使えなくなることだ。この場合そのかわり入念に手作業で締めることが要求される。
すでに解説したように、ワルサーのサイレンサーは「乾式」だ。これはメーカーによれば「追加素材としての液体なしでも完全な減音成績」に達するということだ。だが、いくらかの液体を入れてもかまわない。すなわち「サイレンサー内部をオイル、水などで濡らすことで、何発かの間、なお何デシベルかの成績向上がありうる」(ワルサーによる原文のまま)。より安く、同時により適性が高い補助素材は水であると思われる。主な欠点はさびの危険だ。だが、私にはこのような単純なサイレンサー構造により、クリーニングと腐食防止は総体として問題なしであると思われる。
ワルサーはそのほかの補助素材としてオイルを挙げているが、この場合たぶん多くの射手が通常のガンオイルを使うと考えられる。オイルは比較上より少ない熱しか取り上げないが、程度の差はあれ明らかに消音効果はある。しかし一方でオイルなのだから空気と混合して爆発性を帯びる可能性がある。そして忘れてはいけない。オイルはあらゆる方法で汚れの堆積をはがす。そしてそしてその汚れはスライド方向にも大量に流れてくる。ありうるその結果は作動不良である。
実射テスト
ショートバレル、サイレンサーなしという状態のP22から、サブソニック弾5種類を15mから射撃したところ、一部はグルーピングが30mm以下となった。その際2つの最も結果が悪かった種類は単発銃の機能にしかならないという問題も生じ、このため結果的に完全にレースから脱落した。
これに対しいくつかのスタンダードおよび比較的初速が抑えてあるハイベロシティ弾薬でも、例外なく、明らかに、初速が300m/s以下に留まった。この際、2、3の弾薬ではショートバレルとサイレンサーの組み合わせによりグルーピングが悪化した。だが、作動には問題はなかった。
15mからのターゲットバレルでの射撃も、その成績はほっとするものだった。期待通り、グルーピングはさらに縮小した。
未使用のP22(通常の保存状態から初めて撃つ場合も同じだと思われるが)は、最初の3マガジンにおいて、各発射後、前後にひどくもうもうと煙を出した。それ以後は、P22は連射してた場合でもわずかの煙さえ出さなくなった。
すでに言及した2種類の必ず単発銃になってしまう弾薬と、さらに3種類の排莢不良が起きる弾薬は別として、他はサイレンサーありでもなしでも、途中でクリーニングしていないにもかかわらず機能問題は起きなかった。そして、これは自ら招いたことではあるが、手の大きい射手が意図せず小さなグリップのマガジンキャッチを作動させてしまうことがあった。喜ばしいことに、スライドは最終弾発射後必ず後方でホールドされた。
サイレンサーとデシベル値
少なくともテスト中にはサイレンサーの成績低下は確認されなかった。高い発射数も、マテリアルの加熱も何の役割も演じなかった。だが、相応の配慮(ウェット サポート システム)なしの場合、既述の「最初の1発の音が大きい」効果が生じた。
計測はBruel&Kjaer(B&K 頑住吉注:「u」はウムラウト)社製「Sound
Level Meter」で行った。計測は「信仰上の問題」というわけではないが、音のレベル調査はまったくもって「芸」である。ワルサーは消音レートをマニュアルの中に20ないし25デシベル以上と書いているが、結局のところこの検証実験は実験の規定や周囲の状況が同一である場合のみ可能である。同じ銃と同じ弾薬を使っても、実験の状況が違えば(例えばオープンスタンドであるのか、フリーフィールドであるのか、ホールであるのか、風の音はするのか、周囲に障害物はあるのか、他の銃の騒音があるのか、など)、計測結果もまた違ってくる。というわけで、公表できる数値は常に計測場所におけるスナップショットにすぎないのである。ワルサーは他の条件を公表していない。
まとめ
ワルサーP22サイレンサーセットは、主に銃器法の規制がゆるい国向けの輸出を狙ったものであるといってよい。というのは、スイスやドイツの現在の状況下では、これを購入できる権利のある市民は少なすぎるからである。この点を別にすれば、この銃はこのクラス内では定評ある良好な射撃成績と、加えて役立つサイレンサー機能を持つ、綿密な加工がなされたピストルモデルである。
ワルサーP22セット1
銃器タイプ:ストレートブローバック(頑住吉注:ちなみにドイツ語を直訳すれば「スプリング/重量閉鎖」)のSA/DAピストル。交換バレルとグリップ後部インサートつき。
メーカー:カール ワルサーGmBH
口径:.22LR
銃身長:87mm/127mm(固定式)
サイト:リアサイトは左右調節可能。交換式フロントサイト。Top
PointUつきブリッジマウント
装弾数:10発
セーフティ:レバーセーフティ。オートマチックファイアリングピンセーフティ。安全レスト(頑住吉注:セーフティコックのことだと思います)。マガジンセーフティ。ローディングインジケーター。組み込みのキーロック式セーフティ。
寸法:159x114x29mm/199x114x29mm(いずれもサイレンサーなし)
サイレンサー:162x30mm、重量250g
空虚重量:480g/582g(いずれもサイレンサーなし 頑住吉注:銃身長40mmの差でこれだけの重量差が生じるとは考えにくく、後者はバレルウェイトつきの数値ではないかと思います)
素材:プラスチック、スチール、軽金属。
価格:756CHF
P22 .22LRの射撃結果
メーカー | 弾丸タイプ | 弾丸重量(g) | 初速(m/s) | 初活力(ジュール) | グルーピング(SDなし・mm) | グルーピング(SDあり・mm) | 初速(m/s) | 初活力(ジュール) | グルーピング(SDなし・mm) | グルーピング(SDあり・mm) | |
CCI | HP(銅メッキ) | 2.59 | 267 | 93 | 36 | 40 | 295 | 113 | 27 | 27 | |
CCI | HP | 2.59 | 252 | 83 | 26 | 32 | 278 | 100 | 15 | 14 | |
レミントン | HP | 2.46 | 224 | 62 | 22 | 42 | 263 | 85 | 22 | 39 | |
CCI | ラウンドノーズ | 2.59 | 258 | 86 | 29 | 37 | 266 | 92 | 22 | 33 | |
フェデラルターゲット | ラウンドノーズ | 2.59 | 271 | 95 | 42 | 47 | 289 | 109 | 39 | 29 | |
フェデラルクラシック | ラウンドノーズ | 2.59 | 260 | 88 | 39 | 21 | 277 | 99 | 21 | 26 | |
PMCマッチ | ラウンドノーズ | 2.59 | 262 | 90 | 35 | 44 | 287 | 107 | 26 | 30 | |
レミントンターゲット | ラウンドノーズ | 2.59 | 258 | 86 | 40 | 21 | 294 | 112 | 24 | 21 | |
エレー | ラウンドノーズ | 2.59 | 268 | 93 | 38 | 29 | 278 | 100 | 17 | 45 |
※ワルサー トップポイントUを使用し、シッティング、依託射撃の結果。距離は15m。初速はサイレンサーなしで計測。 頑住吉注:弾薬のうち上3つはサブソニック弾。初速、エネルギー、グルーピング(サイレンサー有り無し)の4つの数値のうち、空欄の前が87mmショートバレル、後が127mmターゲットバレル。
ワルサー公式サイトの紹介ページはここです。
http://www.carl-walther.de/englisch/defense/defense-92.html
バレルウェイトやブリッジマウントも見られますし、一番上のP22画像をクリックするとサイレンサーモデルの画像が表示されます。
しかしこう言っちゃ何ですがこの銃自体に関してはまあどうでもいいでしょう。興味深いのはサイレンサーに関する一般論です。ちなみに文中の専門用語には辞書に載っていないものが多く、例えば「圧力」+「波」、「圧力」+「振動」、「超音速」+「音」といった2つの単語が複合した単語を単に「圧力波」「圧力振動」「超音速音」と訳したりしていますが、日本の正式な専門用語とは異なるものもあると思います。意味が分かればよいということでご勘弁ください。
1、「発射音の原因は弾丸の後を追って放出されるガスだけではない」
作動音もけっこうある、というのは比較的よく知られていると思いますが、この他にファイアリングピンが衝突する音、発射ガスより燃焼速度がずっと早いプライマーの発火する音、弾丸を追い越して進むガスによる音、急速にバレル内を進む弾丸に圧縮されるバレル内の空気が放出されることによる音、弾丸がマズルから出た瞬間に空気の「おしのけ」が起こることによる音などがあり、これらを総合すると決して過小評価できない音になるということです。
PSSに関して調べたとき、大きくかさばるサイレンサーなしで高い消音効果が得られるという非常に好都合なものなのに何故普及しないのか、という疑問が残りました。また、「DWJ」の示した数値を見る限りどうも消音効果は画期的というほどのものでもないようでした。普通に考えると発射ガスを閉じ込めてしまえばほとんど無音化しそうに思いますが、音の原因はピストンによって発射ガスを封じても(もちろん完全に封じることはできないわけですし)まだかなり残り、結果的に高性能の通常型サイレンサーとさして変わらない音がしてしまうということではないでしょうか。また、「ステアー『タクティカルエリートSD』と『M9A1SD』」の項目にあったように、通常型サイレンサーでも種類によっては発射ガスをほとんど封じ込み、発射後チャンバーまわりからガスがシューシュー吹き出す、というものもあるわけで、これならPSSに劣らない消音効果があっても不思議ではありません。確かにかさばるサイレンサーなしでいいというのはメリットですが、特殊部隊等が身につける場合、体と平行になるサイレンサーは多少長くてもあまり邪魔にはならず、一方ごく小さな空間に無理に発射ガスを閉じ込めようとする危険、パワーや命中精度、またグリップの握りやすさが犠牲になるデメリット、汎用性では通常の銃にサイレンサーを装着したものに明らかに劣るなどの問題も考え合わせると、PSSのような特殊な形式は総合的に見てあまり有利とは言えないということなんでしょう。いつも書くことですが、「いいものなら真似され、普及するはず」です。
ちなみに以前紹介した「Dick Acousの新型サイレンサー」は、これら弾丸の後を追って放出されるガス以外の音の原因のかなりの部分(「弾丸を追い越して進むガス」「急速にバレル内を進む弾丸に圧縮されるバレル内の空気」による音)をも有効に減音できる優秀なシステムのように思えます。
2、「発射音は超音速で飛ぶ弾丸によっても引き起こされる」
これは皆さんご存知でしょう。ただ、少なくとも私はここで指摘されていた、衝撃波が成長するいとまがないような極端な近距離ではサブソニック弾も超音速弾も大差ない聞こえ方になる、というのは知りませんでした。
3、「弾丸がサイレンサー内部にぶつかる危険性」
精度の低いエアソフトガンならよくあることですが、実銃では設計、製造上よほど大きな問題がないかぎりこんなことは起きないだろうと思っていました。しかしよく考えれば当然ですが、ティルトバレルの銃の場合は精度に問題がなくても、あまり長いサイレンサーを装着すると弾丸がバレルと共に傾斜したサイレンサーの内部に接触するおそれがある、ということです。また、長さやライフリングのピッチに応じて各バレルの弾丸を安定させる能力は異なり、この限度を越えて重い弾を使うと過度の「みそすり運動」が起きてやはりサイレンサー内部に接触する危険がある、ということです。
4、「ラウド ファーストショット」問題
これは全く知りませんでした。1発目だけ大きな音がし、2発目以降、サイレンサー内部が高温になり、酸素が少なくなった状態では音が小さくなるという現象です。サイレンサーというものはそもそも発射したことを敵や第三者に知られないことが主な目的ですから、これは非常に困った問題です。なお、最初の1発目だけ着弾点が大きく下降するという現象も書かれていますが、これについては詳しい説明がなく、詳細は不明です。
5、「湿式サイレンサー」
これについては「ステアー『タクティカルエリートSD』と『M9A1SD』」の項目で初めて知りましたが、よく分かっていませんでした。サイレンサー内に高温の発射ガスが突入すると、内部の液体が「電光のような」蒸発を起こします。この蒸気にぶつかることによって機械的にガスが減速されますが、それだけではありません。液体が蒸発する時には気化熱が奪われます。これによってサイレンサー内部のガスが冷却されます。気体は冷却されれば圧力が低下します。ガスの圧力が低下すれば当然サイレンサーから出るときの音も小さくなるというわけです。前回の記事が説明不足だったのは確かですが、これくらいはまあ中学高校レベルの科学知識がちゃんと身についていれば分かるはずでしたね。水の他に油も有効ですが、当然気化しやすい水の方が効果が高く、また油には記事にあるようなマイナス面もあるということです。そしてこの「湿式サイレンサー」は「ラウド ファーストショット」問題の対策にもなるということです。
ちなみにMP5SDシリーズもそうだったはずですが、通常型サイレンサーの中には内部に目の細かい金網をぎっしり詰めたものもあります。これも私は金網にぶつけることによって機械的にガスを減速する効果しか理解していませんでしたが、ガスを冷却して減音する効果もあるということです。
6、「発射音をデシベル値で表現してもあまり意味がない」
計測器具の名称まで書いてあるのに、計測された数値は一切示されておらず、こうした数値は周囲の状況で全く異なるということが書かれているだけです。「ステアー『タクティカルエリートSD』と『M9A1SD』」の項目でもデシベル値による音の表現をしても実感とは大きく異なるのであまり意味がない旨の記述がありました。
ちなみに最初最も知りたかった、「スイスではサイレンサーが合法なのか」という問題に関してははっきりした記述がありませんでした。たぶん想定される読者には周知だからでしょう。ただ、「まとめ」での書き方からしておそらく基本的にはドイツでもスイスでも違法だが、少数特別な許可を得て所持できる人もいる、ということのようです。