P30ピストル

 http://www.heckler-koch.de/flashintro.html

 このH&K公式サイト表紙から「ENGLISH」をクリックして表示されたページの左に縦に並んだメニューのうち「PRODUCTS」、「Self-loading pistols」を選択するとオートピストルの製品紹介ページが表示されます。この一番上にあるのが最新作にして今後一番力を入れて販売していこうとしているP30ピストルです。ピストルの側面画像をクリックするとこの銃の紹介ページが表示されます。ちなみに今後いちいち断りませんが私のはドイツ語からの訳文なので英語とは多少のずれが生じると思います。


P30

ヘッケラー&コックP30 システムを伴った安全

「システムを伴った安全」 これは決して空虚な皮相のみの言葉ではなく、P30の開発および設計に際し首尾一貫して追求された高性能の約束である。その結果は可能な限り最高度の安全性とパーフェクトな作動性が統合された目下最もモダンな警察ピストルである。P30はその安全上の特徴、ディテール、オプションで入手可能なシステムコンポーネントによって今日警察ピストルに課せられる全ての要求を満たす。

 蓄光によって長時間発光する(放射性物質ではない)コントラストの強いドットの付属したオープンな角型サイトは不都合な光の状況に際しても素早く正確なターゲットの把握を可能にする。

 ピストーレP30の最適なグリップデザインは可能な限り最高の射撃快適性を提供し、ベストの射撃結果を支援する。グリップフレームは高品質の、ファイバーで強化されたポリマープラスチックで作られている。人間工学的にパーフェクトなグリップ角度は最高度の指差すような自然な射撃、命中可能性を保証する。

P30の数多くの特徴のうちのいくつか
●戦術的追加器具のための受け入れレールMIL−STD−1913(ピカティニー)
●個人に適合するための交換可能なグリップ後部とグリップ側面を伴う構造的に最適なグリップフレーム
●両側から操作可能なマガジンキャッチと紛失の危険がないスライドストップ
●オートマチックなハンマー・ファイアリングピンセーフティ
●装填状態指示器

P30のトリガーバリエーション

P30はいろいろな要求に個人的に適合できるモジュール化されたトリガー、デコッキングシステムを持つ。

P30
スパー付きハンマー内の隠されたコッキング部品を伴う革新的なセーフティトリガー、中央に配置されたデコッキングレバー、(デコッキングレバーを操作しない場合)最初から最後まで等しく保たれるCDAトリガープル約20ニュートン、レットオフ前に重くなるはっきりしたポイント。

P30V1
スパーなしハンマー内の隠されたコッキング部品を伴う革新的なセーフティトリガー、デコッキングレバーなし、最初から最後まで等しく保たれるCDAトリガープル約20ニュートン、レットオフ前に重くなるはっきりしたポイント。

P30V2
P30V1に似ているがCDAトリガープル約32.5ニュートン。

P30V3
スパー付きハンマー内にコッキング部品がなく中央に配置されたデコッキングレバーを持つコンベンショナルなSA/DAトリガー。

P30V4
P30V1に似ているがCDAトリガープル27.5ニュートン。

P30V5
スパーなしハンマー内にコッキング部品がないコンベンショナルなDAOトリガーで、最初から最後まで等しく保たれるDAOトリガープルは約36ニュートン。

P30V6
P30V5に似ているがトリガープル約39ニュートン。


 ページ左側のメニューのうち「UP-TO-DATE」をクリックするとニュースのページが表示され、2006年10月18日のニュースとしてこの銃が取り上げられています。下の「Read more」をクリックすると警察および運輸管理技術の専門誌である「Polizei Verkehr Technik」誌2006年9、10月号のこの銃に関する記事が見られます。


P30 新しい連邦税関の公用ピストル

筆者Marc Roth弁護士 オベルンドルフ/ネッカー発

 ヘッケラー&コックは最近入手可能になった警察ピストルP30によってこの生産物カテゴリーに新しい尺度を設定した(頑住吉注:直訳するとよく分かりませんが、要するに「この銃は今後の警察ピストルの指針ともなるものだ」というような意味でしょう)。最初の使用者として連邦税関が13.500挺のP30の調達を決定している。ウルム試射局による成功裏の公的証明書発行の後(頑住吉注:ドイツではこの公的機関のテストを受けて合格したものしか警察の制式ピストルとして使えないことになっています)、最初の量産ロットの供給は完全な成功となった。

 それだけではなくノルウェー警察が新しい警察ピストルとして約7,000挺の採用を決定した。これによりP30の量産スタート後1ヶ月で20,000挺以上のこのニュータイプの銃が販売されたことになる。

歴史
 すでにヘッケラー&コックP2000ピストルはドイツの、そして国際的な警察マーケットできわめて成功している。すなわちP2000はドイツのニーダーザクセン、ハンブルグ、バーデン・ヴルテンブルグ州警察だけでも総数約40,000挺が使用されている。これとともに多数の特殊投入コマンドがP2000の採用を決定している。

 さらにアメリカでは約30,000挺のP2000がいわゆるICE契約の枠内で「ホームランドセキュリティ」の領域に供給された。ひっくるめて50,000挺以上のヘッケラー&コックピストルの契約が成立している。

 これと平行してヘッケラー&コックはいくつかのユーザーのテストの枠内で勝ち取られた知識に基づき、マーケットが重視する新しい要求に合った特徴を持つ新たな警察ピストルを開発した。その結果がピストーレP30である。

 このためP30は警察ピストルP2000の首尾一貫してユーザーを志向した発展開発品であると言うことができる。

P2000と比較してのP30の本質的特徴
 特別な重点は完全に新方式のグリップ人間工学に置かれた。

 このためヘッケラー&コックはユーザーがそれぞれ異なるボリュームの交換可能なグリップサイドプレートおよびグリップ後部により、グリップフレームの個人的形状に関し最大限の柔軟性を提供する世界唯一のシステムを開発した。

 グリップのデザイン自体は何十年にもわたるこの分野の経験を持ち、多くのスポーツ銃器のグリップ(とりわけすでに警察用スナイパーライフルであるヘッケラー&コックPSG-1のグリップも造形している)Mossingen(頑住吉注:「o」はウムラウト)所在のKarl Nill社との緊密な共同作業の中でなされた。

 それだけでなくこのグリップフレームは下方に延長されている。より良いグリップ快適性とならんでこのグリップフレームは15発という増加したマガジンキャパシティをもたらした。

 さらにこのグリップフレームは前部に今やNATOインターフェイスMIL-STD-1913(ピカティニー)を装備している。この結果国際的に入手可能な増設器具(ランプ、レーザー等)に関しより多い交換性および柔軟性がある。

 全部で6つのトリガーバリエーション(表1参照)とならんでFX染色マーキング弾薬の使用のための青色のグリップフレームを持つ練習用銃器、黄色のグリップフレームを持つ取り扱い練習用銃器が使用できる。

 テクニカルデータは表2を見よ。

(キャプション)
写真1:ヘッケラー&コック P30右側面。

写真2:ヘッケラー&コック P30左側面。

写真3:ヘッケラー&コックによってパテントが取得された新しいシステムはそれぞれ3つの異なるグリップグリップサイドプレートおよびグリップ後部からなる。これは完全に任意のコンビネーション(非対称も含む)で組み込み可能であり、このため全ての手の大きさおよび形への個人的適合を可能にしている。

写真4:スライドストップおよびマガジンキャッチははっきりと延長され、このためかなりより早い、そして快適なマガジン交換を可能にしている。

写真5:スライドストップは「紛失できない」形になっている。すなわち分解時に分離不能に銃のグリップフレームに結合されたまま留まる。

写真6:装備オプションとして装填状態指示器が入手可能である。この場合弾薬がバレル内にあるとすぐエキストラクター爪の上側に赤くマーキングされた「旗」が突き出す。これにより装填状態がかなりより良く見え、また触って確認できる。

写真7:マガジンフォーロワも同様にオプションで色付きにすることができる。これにより安全点検の際マガジンが空であることがすぐ分かる。スタンダードではフォーロワは黒色であるが、連邦税関バージョンではフォーロワは白色である。

表1

バリエーション P30 P30V1 P30V2 P30V3 P30V4 P30V6
トリガープル(ニュートン) SA時18〜24
DA時56〜46
18〜24 30〜35
DA時56〜46
SA時18〜24 25〜30 36〜42
トリガーストローク(mm) 14未満 14未満 14未満 SA時約7
DA時14未満
14未満 14未満

表2
テクニカルデータ

口径:9x19mm
使用可能な弾薬の種類:RUAGアクションシリーズ、MEN-QD/QD-PEP、および公的証明書が交付された有害物質の乏しいプライマーを持つソフトコア弾薬タイプ全て
マガジンキャパシティ:15発
全長:177.5mm
全幅:34.8mm
全高:138mm
銃身長:98mm
照準長:148.5mm
空マガジン込み重量:740g
空マガジン重量:93g
トリガーシステム:DAO、SA/DA、CDA


 KSCさんがUSPコンパクトの発売を発表した時、今から新規開発するならP2000にすればいいのになあと思ったもんですが、もし仮にそうしていてもすでに最新モデルではなくなっていたわけで、莫大な開発費を必要とする量産メーカーも大変だなあと思います。

 この銃の最大の特徴はグリップ側面も交換可能になったことで、個人的にグリップ後部を交換したくらいではそんなに変わらんだろうと思っていたのでやはりという感じがしますが、こんな簡単なことでパテントって取れるんだなあという変な感心もしました。しかしながらグリップ側面と後部だけでも「最大限の柔軟性」「世界唯一の」と威張るほど多様な手の大きさに対応できるのか疑問です。左右非対称の大きさにできるというのは面白い特徴ですがそんなことをする人が実際どれだけいるでしょうか。むしろ、金属シャーシをプラスチック製グリップフレームに鋳込まず着脱式とした銃でL、M、S3種類(あるいはそれぞれ右利き、左利き用で6種類)くらいのグリップ部の大きさが異なるプラスチックフレームを用意した方が多くの人の満足が得られるのではないでしょうか。

 「FX染色マーキング弾薬」というのは「知識の断片」の「FX訓練用弾薬」の項目でも紹介した、染料を内蔵したプラスチック弾を発射し、モデルガンのようにブローバックさせて連発もできるという練習用特殊弾薬です。黄色のグリップフレームを持つ銃は発射機能はないがそれ以外の操作は実銃同様にできる操作練習用のダミー銃でしょう。

 スライドストップが抜けないと書いてあり、他に独立したテイクダウンラッチらしきものもないのでどういうことかと思いましたが、どうもスライドストップを数mm抜くと分解でき、それ以上は抜けない、そしてこの状態では赤い警告表示が見える、ということらしいです。軍と違って警察官が現場で銃をフィールドストリップしてスライドストップを紛失するというケースはあまりなさそうではありますが、面白いアイデアですね。

 「CDAトリガー」というのは「知識の断片」の「H&K P2000SKとSW99コンパクト」の項目でも出てきた「一部コック」システムです。「ハンマー内の隠されたコッキング部品を伴う〜トリガー」云々というのは残念ながら意味不明です。

 実戦経験を踏まえて改良されていっているんですから実用性は上がっているんでしょうが、個人的にはUSPからP2000、そしてこのP30とだんだん嫌いなデザインになっていっています。皆さんはどう感じるでしょうか。










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