米中対抗関連2題
いずれも最近何故か突然に署名記事が多く出るようになってきている「幽州司馬」という筆者によるものです。
http://military.china.com/kangzhan70/zhjw/11173869/20160622/22920646.html
アメリカ、EA-18を用いて中国の島嶼のレーダーを破壊することを欲する 攤牌かそれとも忽悠か? (頑住吉注:前者はトランプなどで手の内を見せて勝負に出る、後者は法螺を吹くみたいな意味らしいです。)
(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「アメリカ、E/A-18『グラウラー』実戦機をフィリピンに配備することを準備」)
最近、アメリカ第7艦隊はE/A-18「グラウラー」実戦機をフィリピンに配備しようとし、同時にフィリピンに赴く者にはさらに120名の支援人員がいる。第7艦隊の声明は、この挙はフィリピンの飛行員養成訓練およびフィリピンの領空と領海のパトロールを助けるためだ、とする。この前、米軍はすでに10機のA-10「ホッグ」攻撃機、3機のHH-60G「ペイブホーク」ヘリおよび200名の戦闘人員をフィリピンに派遣して配備しており、その意図は中国の南海における行動の抑止にある。
アメリカのシンクタンク企業研究所の評論によれば、E/A-18実戦機はA-10攻撃機に比べ飛行速度がより速く、かつ実用上昇限度がより高く、中国の南沙の島礁上の軍事施設に対応するのに用いることができる。もし必要なら、この機は中国が島礁上に新たに建設したレーダーを破壊することができる。2機種が同じくフィリピンに赴くことは中国に、「お前たちの南沙の資産は脆弱だ、もし南海防空識別圏の設立を宣言したら、我々にはお前たちにそれを執行できなくさせる能力がある」と教えようとすることに他ならない。ならばアメリカのこのやり方は一体中国と「攤牌」する決意か、それとも継続して「脅し+忽悠」する戦略を採るのか? 幽州司馬は、後者の可能性が明らかに前者よりはるかに高いだろうと考える。
(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「AGM-88『HARM』系列高速対輻射ミサイルを搭載した米軍実戦機」)
E/A-18「グラウラー」実戦機にはどんな傑出した性能があるのか?
E/A-18「グラウラー」実戦機はアメリカ海軍のF/A-18E/F「スーパーホーネット」戦闘機を基礎に研究開発されてできたものである。E/A-18は新世代の電子対抗設備を持つだけでなく、同時にF/A-18E/Fの全部の武器システムとずば抜けた機動性能をも留保しており、このことはE/A-18に空母上でも陸上でも比較的良く電子攻撃任務が執行できるようにさせる。ある軍事専門家の評論は、E/A-18「グラウラー」実戦機は現在戦闘力最強の電子妨害機で、また電子妨害能力最強の戦闘機でもある、としている。
(頑住吉注:これより2ページ目)
電子攻撃任務の執行時、E/A-18「グラウラー」実戦機は外部搭載した電子戦吊り下げポッドに頼ってソフト殺傷を行う他、もう1種ある主要なハード殺傷手段は、AGM-88「HARM」高速対輻射ミサイルである。このミサイルの最大速度はマッハ3前後に達し、射程は90〜150kmで、同時にこのミサイルの誘導弾頭は目標をロックオンした後、もし相手方がレーダーをOFFにしても、ミサイルの誘導弾頭は依然「記憶」に頼ってロックオンしかつ目標を攻撃することができる。AGM-88自ら搭載するブロードバンド捜索レーダーとコンビネーションすれば、現役のほとんど全ての各機種のレーダーはその攻撃から逃れ難い。前述のように、アメリカサイドはE/A-18「グラウラー」実戦機は中国の島礁上のレーダーを破壊できると称しているが、これは主にこの対輻射ミサイルに頼ってのことに他ならない。
E/A-18「グラウラー」実戦機はスムーズに攻撃任務が完成できるのか否か? (頑住吉注:この前の画像のキャプションもこれと同じ内容です。)
E/A-18「グラウラー」実戦機にこのような「神兵の利器」の助けがある以上、この機は米軍が賦与するカギとなる重要任務を満足いく形で完成できるのだろうか? 幽州司馬は次のように考える。E/A-18「グラウラー」実戦機が任務を完成できる可能性は微々たるもので、もし僥倖にも完成したとしても、飛行員は生命という代価を支払う必要がある。何故こう言うのか? 原因はごく簡単で、AGM-88「HARM」高速対輻射ミサイルの射程は90〜150kmしかなく、一方中国が島礁上に配備する紅旗-9対空ミサイルシステムの最大射程は200kmだからである。しかもE/A-18「グラウラー」実戦機は決してステルス実戦機ではなく、紅旗-9対空ミサイルシステムが配備するフェイズドアレイレーダーの、この種の目標に対する発見距離は少なくとも300km以上である。このため、E/A-18がもし中国の島礁のレーダーを破壊する任務を執行すれば、撃墜される可能性が非常に高いのである。
攻撃任務自体非常に大きなリスクを持つ他に、アメリカサイドはさらに非常に大きな政治、経済および軍事的リスクを冒す必要がある。ひとたびアメリカが中国の島礁上のレーダーの破壊を決定すれば、中米両国の全面軍事対抗をもたらす可能性が極めて高い。幽州司馬の見たところ、現在のアメリカの国力をもって言えば、もし本当に中国と軍事対抗を行おうとすれば、決して勝利を獲得する充分な確信はない。しかも戦争によりもたらされる国力の衰弱は、アメリカに世界の覇権たる地位を失わせることになる。このことはアメリカにとって受け入れ難いと言える。このため、今回アメリカサイドがE/A-18を用いて中国の島礁上のレーダーを破壊するとわめき立てているのは、依然「大山鳴動してネズミ一匹」となり、最も主要な目的はやはり世論方面において勢いづけをし、フィリピンといったような南海の国をアメリカが中国を抑止する足軽や弾よけとさせることである。(作者:幽州司馬)
中国の対空ミサイルがこの機を射程などの単純な性能上理論的に撃墜できるというのはまあいいかもしれませんが、この機の最大の特徴である電子攻撃が中国に対しどれだけ有効なのかが全く考慮されていないのでは話しにならんでしょう。まあこれはやってみないと分からない種類の問題なのかもしれませんが、これも理論的には中国の攻撃兵器を手も足も出なくさせる可能性もあるわけですよね。また「現在のアメリカの国力」を見くびるのは非常に危険だなと感じます。確かに力が落ちたように見える部分もあるでしょうが、いざとなったら想像以上の力を発揮する可能性が高いと思います。でも同じような判断をしている中国人は多いんでしょうね。
http://military.china.com/kangzhan70/zhjw/11173869/20160623/22926476.html
アメリカの上将、東風-26がアメリカの艦を打撃するのは天に昇るがごとく難しい、とする あいにくと1つの事実を軽視している (頑住吉注:「天に昇るがごとく難しい」というのは飛行機とかない時代の古い慣用句でしょうね。)
(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「閲兵式で公開展示された中国の東風-26ミサイル」)
最近、アメリカ海軍作戦部長であるリチャードソン上将は評論を発表し、アメリカ海軍が直面する中国の対艦弾道ミサイルの脅威は決して乗り越えられないものではなく、しかも非常に多くの状況下でこの脅威は誇大化されている、と考えた。彼は新米国安全中心(頑住吉注:ニューアメリカンセキュリティセンターか何かですか)の年度大会で発言し、「私は、あちらはきっと遠距離正確打撃能力を持つと考える。だが皆が『対介入/区域拒止』を語っているのは願望に過ぎない。実際の執行の中では、それはより困難だ。」とした。
リチャードソン上将は次のように指摘する。対介入/区域拒止戦略は戦争が出現始めたばかりの時にもうすでに存在していた。中国の新兵器「東風-21D」および「東風-26」対艦弾道ミサイルがやや異なるのは、それが情報、監視、偵察能力を遠距離正確制御誘導武器と一体に結合したことである。だがまさにこのようだから、対艦弾道ミサイルは強大な「殺傷のチェーン」の支えを必要とし、これには情報、監視、偵察センサー、データネットワーク、指令およびコントロールシステムなどが含まれ、これでやっと有効に打撃が行える。この長いチェーンは容易に電子攻撃、ネットワーク攻撃およびその他の類型の攻撃に遭う。このためリチャードソン上将は、中国の「殺傷のチェーン」を破壊しさえすれば、もう有効に「東風-21D」および「東風-26」に対抗でき、中国が気軽に対艦弾道ミサイルを使用してアメリカ海軍を抑止することを望むのは天に昇るがごとく難しいと言うべきである、と考える。
(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「中央テレビ、珍しく東風-21Dミサイルが屹立する画面を公開」)
対艦弾道ミサイルはいかにして海上目標を打撃するのか?
対艦弾道ミサイルは実際には普通の弾道ミサイルの「改良版」である。普通の弾道ミサイルは最終的に落下する段階の速度が速すぎるため(マッハ10以上に達する)、コントロールし難く、ゆえに固定目標しか打撃できない。この限界を突破するため、対艦弾道ミサイルは末端制御誘導および機動の能力を具備することが必須で、このようにしてこそ移動目標が打撃できる。このためこの種の弾道ミサイルは主に大洋の中を航行する空母戦闘群、巡洋艦および駆逐艦などの大、中型水上艦艇に照準を合わせ、ゆえにこれを「対艦弾道ミサイル」と称する。現在アメリカを憂慮させる中国の「東風-21D」および「東風-26」ミサイルはこの種の対艦弾道ミサイルに属する。
現在、対艦弾道ミサイルがもし水上の大、中型艦艇を打撃したければ、3つの技術的重要なカギを克服することが必須である。これはそれぞれ次の通りである。一、弾道ミサイルはミサイル防衛システムを突破できることが必須で、例えばアメリカ海軍のイージスシステムなどである。二、この武器のシステムは目標を追跡し、かつミサイルが末端制御誘導段階の中で移動目標に命中する能力を持つことが必須である。三、正確で誤りのない、リアルタイムの目標位置決定情報を提供する必要がある。この3つの方面の問題を解決してのみ、対艦弾道ミサイルをやっと真の意味で「対介入/区域拒止」武器と評価できる。
(頑住吉注:これより2ページ目)
実は上述の3つの問題の中で、後の2つの問題は明らかに第1のそれに比べずっと重要である。何故なら対艦弾道ミサイルの落下段階での速度は依然非常に速く(マッハ10以上に達し得る)、かつ弾道はほとんど垂直で、ミサイル防衛システムにあらかじめ留保される反応時間はすでに非常に少ないからである。もし迎撃に成功しても、ミサイルの残骸は暴風驟雨のごとく敵艦に「洗礼」を加えることができる。まさにこのようだから、アメリカは対艦弾道ミサイルに対抗する重点をいかにして弾道ミサイルにアメリカの艦をロックオンできないようにさせるかに置く反面、弾道ミサイルが頼る「殺傷のチェーン」の打撃が重要中の重要事となる。
(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「中国がアメリカの艦に脅威を与える『殺傷のチェーン』は決して米軍上将が考えるように脆弱ではない」)
中国の対艦弾道ミサイル体系は本当に米軍上将が語るように脆弱なのか?
ならば米軍の電子攻撃、ネットワーク攻撃やその他の類型の攻撃の下、中国の対艦弾道ミサイルは正常な戦闘力を発揮できるのか否か、中国の対艦弾道ミサイル体系は本当にアメリカ上将が語るように脆弱なのか? 幽州司馬は、アメリカ海軍作戦部長リチャードソン上将が発表した言論には一定の道理があるが、彼はあいにくとある事実を深刻に軽視している、と考える。中国とアメリカは同じく軍事、科学技術大国に属し、いかなる国家の命運に関わる武器システムにも1、2種の指揮、コントロール方式しかないことはあり得ず、アメリカが中国の対艦弾道ミサイルの「殺傷のチェーン」を完全に破壊してしまうことを望むのは、ほとんど完成不可能な任務である。
米軍の眼中で、中国の対艦弾道ミサイルの情報、監視、偵察センサーなど重要なシステムは深刻に衛星、ネットワーク、C4ISRシステムなど重要な節目となるポイントに依存している可能性が高い。だが幽州司馬の見たところ、こうした重要な節目となるポイントの他に、海底の監視測定網、大型/超大型超地平線レーダー、甚だしきに至っては海洋ブイなどが全て中国の対艦弾道ミサイルの「殺傷のチェーン」の組成部分となり得る。アメリカがもし中国の対艦弾道ミサイルの「殺傷のチェーン」の完全瓦解を望むなら、中国の現有の国防、工業、科学技術体系を徹底して破壊しない限り、依然中国の対艦弾道ミサイルの脅威から逃れることは難しい。このため幽州司馬は、アメリカ海軍作戦部長リチャードソン上将の言論は、やはりアメリカ海軍を応援し元気づけ、したがって中国の対艦弾道ミサイルに対するアメリカ海軍の憂慮を弱めることをメインとするものだと考える。(作者:幽州司馬)
「殺傷のチェーン」という表現を使うこと自体の中にもう1ヶ所切断すれば全体が機能しなくなるというニュアンスが含まれていると思うんですが、何故この人は「完全に破壊」、「完全瓦解」が必要だと言うんでしょうかね。いつも書きますけど現在中国の軍事技術が全体としてアメリカはもちろんロシアより遅れていることは否定しようのない事実であり、その中でアメリカやロシアにも作れていない実用性の高い対艦弾道ミサイルが中国に作れるというのはあり得ないとまでは言いませんが考えにくいことだと思います。対艦弾道ミサイルを実現するような高い技術は他の部分にも波及し間接的にでもはっきり感じ取れるはずではないですかね。