中国人によるPDWの現状分析

 期待されたほど普及が進まないPDWの現状に対する分析です。

http://xinqiaolianweiyuan.blog.163.com/blog/static/120967810201222164316473/


PDW 理想は豊か、現実は貧弱

(頑住吉注:原ページの最初の画像のキャプションです。「アサルトライフルは砲兵など非小銃手が自衛武器とするには実際かさばって重い」)

核心の提示

PDWの概念が世に問われてから現在まですでに26年が経つ。かつて評論界が大きな期待を寄せた前衛的武器であるのに、何故各国が広範に装備する武器となり難かったのだろうか?

個人自衛の必要と既存の武器の限界

現代陸軍の中の非小銃手には主に、運転員、飛行員、設備操作員、技術兵、通信兵、装甲兵、砲兵、後方勤務人員および指揮部人員等々がある。軍隊の近代化の程度が進むほど、非小銃手の比率も高くなり、80%にさえ達し得る。彼らは長期間本職である専門的仕事を行い、射撃訓練はおろそかになるので、もし小銃を発射しても自衛は難しい。現代の戦争では、大迂回、一点突破、敵後方への航空降下、敵後方への奇襲などの戦法が増加し、前線と後方の境界が次第に模糊とし、指揮部、砲兵陣地、装甲兵集結地、後方勤務補給基地などが特殊部隊の襲撃に遭う可能性が増大している。こうした手薄な部門は陸軍の急所であり、特に指揮部がひとたび襲撃を受ければ全体の戦局の惨敗を招くかもしれない。伝統的なサブマシンガン、カービン銃は訓練がおろそかになっている人員が手にしても命中率は極めて低く、拳銃の命中率はさらに低くてむしろ自殺道具に近いとさえ言える。非小銃手は習得が簡単で命中率の高い個人自衛武器を切迫して必要としている。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「サブマシンガン、特に小型サブマシンガンの実戦における命中率は低く、非小銃手の自衛にはより良い武器が必要である。」)

PDWという概念の誕生

1986年、アメリカ陸軍は「先進個人自衛武器」計画を最初に提出した。これに対する要求は、防弾衣を着た単体生体目標に対抗でき、距離50mでの命中率が90%、距離100mでの命中率が50%というもので、同時に重量が軽く、体積が小さく、反応が早く、携行が快適で、操作と維持メンテナンスが簡便であることも要求された。1989年4月16日、NATOはAC225号文書を発し、メーカーに「歩兵小火器公告2000」の中の計画に基づき個人自衛新型武器(PDW)の研究開発を行い、非小銃手に大規模装備することを要求した。その主要な指標は次の通りだった。1.左右いずれの手でも片手によるフルオートあるいはセミオート射撃が行える。 2.装弾数が現役のサブマシンガンより少ないことは許されない。 3.両手での肩付け射撃ができる。 4.威力と射程が現役の拳銃弾薬を超えていることが必須。 5.正確度と射程はNATO標準の5.56mm小銃弾薬に接近することが必須。 6.大多数の現役防弾衣を撃ち抜けること。この後数年、関係する指標は何度も修正された。NATOのD29号文書の中で最後に確定したPDWの戦術技術パラメータは次のようなものだった。実際の射程は200m前後、100m以内ではCRISAT(小火器技術共同研究プロジェクト)標準ターゲットを撃ち抜くことができ、しかもターゲット貫通後その剰余エネルギー量が生体目標殺傷に充分であること。CRISATターゲットは1.6mm厚のチタン板と20層の32Bケブラーからなり、当時のソ連の特殊部隊に支給されていた防弾衣をシミュレートするのに用いられた。1980年代、2大陣営の対峙は最も厳しい時期にあり、NATO部隊はソ連のあり得る大規模奇襲を高度に警戒し、非小銃手の自衛に関する要求は強烈だった。D29号文書が定めた指標に基づいた、使用が簡単で、威力が大きく、近距離自衛作戦では当時のソ連のAK-47、AK-74アサルトライフルに対抗できるPDWは、非常に理想的な武器だった。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「1988年のアフガニスタンにおけるソ連軍特殊部隊。NATOはかつてソ連特殊兵が自軍の後方を襲撃することを恐れていた。」)

理想は豊か 典型的PDWの性能は優秀

PDWを名乗る武器は多く、主なものにチェコのCZW-438(頑住吉注: http://www.czechweapons.com/en/products/military-weapons/personal-defense-weapon-pdw-czw-438/ )、フィリピンのFloro PDW(頑住吉注: http://guns.wikia.com/wiki/Floro_PDW )、アメリカのコルト社のMARS(頑住吉注:これは「インド製MSMCサブマシンガン」にも登場しましたね)、ベルギーのFN P90、ドイツのHK MP7、スウェーデンのInterdynamics MKR(頑住吉注: http://world.guns.ru/assault/swed/interdynamics-mkr-e.html )、アメリカのKAC PDW(頑住吉注: http://www.knightarmco.com/pdw.html )、アメリカのMagpul PDR(頑住吉注: http://www.youtube.com/watch?v=8oLcHkCcz_c )、ロシアのPP-2000(頑住吉注: http://www.gunsworld.net/russain/smg/pp2000/pp2000.htm )、スウェーデンのCBJ-MS(頑住吉注: http://www.gotavapen.se/gota/cbj/cbj_ms.htm )、ロシアのSR-2 Veresk(頑住吉注: http://www.gunsworld.net/russain/smg/sr2/sr2.htm )、ベルギーのVBR PDW(頑住吉注: http://wn.com/VBR-Belgium_PDW )などがある。このうち最も典型的と言えるものは以下の3種だけである(頑住吉注:最後に挙げられたVBRなんてどう見ても荒い仕上げの手作り品ですし、英語版「Wikipedia」からリンクされている公式サイトもなくなっているらしく表示されません。)。

1.ベルギーのFN-P90

P90は最も早く登場したPDWである。1986年に「先進個人自衛武器」計画が発表されて以後のベルギーFN社の進度は最も速く、1987年10月には早くもサンプル銃を提示して公開射撃デモンストレーションを行った。同年、サンプル銃はアメリカにおける第5回国際小火器会議に参加した。1990年、FN社の新型武器はP90パーソナルディフェンスウェポンとして定型に至った。1991年第2四半期には少数生産が開始され、同年のシンガポールにおける第4回アジア安全保証業務展示会でデビューした。

FN社のP90の性能はPDWの基準に完全に符合する。P90の全長は500mm、空虚重量2.68kg(空マガジン付きで)、戦闘全備重量3.0kgである。P90の初期型が発射したのは新型のSS90弾薬で、弾頭重量1.5g、初速850m/s、マズルエネルギーは542ジュールだった。距離10mで15x15x15cmのNATO20%標準ゼラチンに対する運動エネルギー伝達量は500ジュールにもなり、マズルエネルギーの92%に相当する。しかも弾丸の転倒が早く、貫通ルートの湾曲が複雑である。距離150mでの運動エネルギー伝達量は依然200ジュールに達する。9mmパラべラム弾薬の弾頭重量は8gで、拳銃から発射された場合の初速は350m/s、マズルエネルギーは490ジュール、距離10mでゼラチンを射撃した場合、180ジュールの運動エネルギーしか伝達されず、貫通ルートは直進してまっすぐに抜ける。SS90弾薬の距離10mでの殺傷力はすでにNATOのSS109小銃弾薬(540ジュール)に近づいており、自衛弾薬としてはこれですでに高性能と言える。

SS90弾は距離150mで48層のケブラーを貫通できる。距離175mではアメリカのPASGTヘルメット(.357マグナム拳銃弾薬に抗することができる)の両側を貫通できる。距離30mでは3.5mm厚のNATO標準鋼板を貫通できる。一方、距離10mにおいて9mmパラべラム弾は24層のケブラーがもう撃ち抜けない。NATOのD29文書はPDWは実際の射程が200m前後であるべきであり、100m以内ではCRISATターゲットが貫通できなければならず、しかもターゲット貫通後その剰余エネルギーが人員殺傷に充分であることも必須であると規定していた。初期のP90はSS90弾薬を発射し、距離150mでCRISATターゲットが貫通できた。後期型がSS190弾薬用に改められて以後は、弾頭重量2.0gとなり、初速は715m/sまで下降し、CRISATターゲット貫通距離は200mにまで延長された。

P90が使用するのは50発の大容量マガジンで、火力持続力が強い。P90が使用するSS90弾薬は後座運動量が小さく、およそ9mmパラべラム弾薬の46%、SS109弾薬の34%で、フルオート時に比較的安定し、特に射撃技術に疎い非小銃手に適している。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「サイズの小さいP90は近距離作戦に非常に適している」)

2.ドイツのMP7/MP7A1

MP7はP90をぴったりと追う優秀な新人である。ドイツのHKは非常にユニークな兵器会社で、かつて世間の流れと関係なくG11ケースレス小銃を研究開発したことがある。1990年4月、HKは4.73mmケースレス弾薬を使用する近距離自衛武器(NBW)サンプル銃を研究開発して登場させた。ケースレス弾薬プロジェクト失敗後、NBWプロジェクトも当然終了した。HK社もNATOのPDW概念の市場は前途有望と考え、それまでの研究成果とHK36小銃の4.6mmx36銅製薬莢弾薬の成果を利用し、継続してPDWを研究開発した。だが後にPDWという概念の使用を止め、サブマシンガンと改称し、機種名をMP7とした。

MP7はサブマシンガンを自称しているが、その設計指標はPDWの概念に符合している。MP7は全長415/638mm(ストック縮め/伸ばし)、空虚重量1.9/2.0kg(20/40連空マガジン付き)で、P90と比べより小型軽量である。この銃は高強度プラスチック製レシーバーを採用し、アメリカ軍のMIL-STD-1913標準ピカティニーレールを使用し、レールにはリフレックスサイトが装着できる。MP7は4.6mmx30系列弾薬を使用する。その標準軍用DM11弾頭は全体がスチールコア、真鍮ジャケットの徹甲弾構造で、重量2.0g、初速692m/s、マズルエネルギーは476ジュールである。DM11は強い貫通力を持つ。距離25mでNATOの20%標準ゼラチンの貫通深度は350mmに達し、50mでも280mmに達する。距離50mで9mm厚の鋼板を貫通できる。距離100mでの散布円直径は10mmで、CRISATターゲットおよびターゲット後方の150mm厚のゼラチンを貫通できる。距離300mでもCRISATターゲットを貫通できる。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「MP7/MP7A1の威力はP90と比べさらに大きく、自衛武器の中の秀作の典型である。」)

3.アメリカのKAC CQB PDW

KAC CQB PDWはここ数年勢いが比較的強まっているPDWである。2006年2月、アメリカのナイツ社は狩猟用品年度展示会(SHOT Show)において初めて新型の6mmx35 CQB PDW(室内近距離戦闘/個人自衛武器)を展示した。5月にはさらに国家安全保証業務工業協会(NDIA)小火器年会に参加した。これは全く新しい武器で、空虚重量2.04kg(203mmショートバレルの場合)、発射速度650発/分、弾頭重量4.21g、銃口初速度739m/s(254mmロングバレルの場合)、マズルエネルギー1150ジュール、有効射程300m、最大射程400mで、給弾方式は20および30連マガジンである。KAC CQB PDW(まだその他の名称やナンバーはない)は軍用/法執行武器市場向けに登場したもので、主にCQB/CQCあるいはVIP護衛に用いられ、車両運転員など第二線戦闘人員にも適している。この弾薬の指標からは、これがまさに近距離銃撃戦に適したショートアサルトライフルであることが見て取れる。社は、後座力は5.56mmx45と比べ、ショートバレルのライフルからM855弾薬を発射した時より40%低下し、それでも距離300mでの精度は1/30度(散布円直径17.28mm)であると称している。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「KAC CQB PDWの立ち位置はヌエ的で、非常におかしなものである。」)

現実は貧弱 PDWの苦しい境遇


PDWの概念が広範な注目と期待を集めた後であるのに、アメリカ陸軍は1994年、運転員など非小銃手に個人自衛用としてM4カービンを支給した。そこでP90プロジェクトは重大な挫折に遭遇した。2009年までに、40の国と地域が全部で12,000挺だけ購入した。後にP90がNATOのPDW選定に参加した時、MP7との競争は激烈で、最終的には両者ともNATOの制式武器とはならなかった。自分の家の子が一番可愛いという原則に基づき、ベルギーの軍、警察はP90を購入し、ドイツの軍、警察はMP7を購入した。MP7が登場してすぐの時は追い風も強く、ドイツのKSK特殊部隊、憲兵部隊、およびイギリスのSAS(特別空勤団)が装備した。2005年、イギリス国防部は1500挺余りのMP7の、1回限りという性質での購入を行い、9mmブローニング拳銃とSA80アサルトライフルとの代替に用いた。装備したのは警備部隊に属し、総額は340万ポンドにも達した。2006年、ドイツ国防部は全部で434挺のMP7A1を購入してドイツ陸軍、海軍特殊部隊、憲兵隊近距離防御チーム(close-protection teams)に装備した。2007年には870挺のMP7A1購入の計画を発表した。同年、スウェーデン国防軍は6500挺を購入した。海外情報を総合すると、MP7の購入数量もこの程度を出るものではないようだ。KAC CQB PDWに至っては、性能がM4等のショートアサルトライフル明らかにかぶっており、玄人受けはよくても一般受けはしないというやつで、軍や警察に大量購入、装備されたとのニュース報道はまだない。

現在の装備実態から見て、最も典型的な2種のPDW、すなわちP90とMP7A1の軍隊内での装備の主要な方向は特殊部隊であり、作戦対象は本来の来襲する特殊部隊への対抗から、第二線の非小銃手の襲撃に変わっている。法執行部門では主に特別警察隊に装備され、積極的に犯罪者を攻撃するのに用いられている。これはPDWの初志とは全く違う方向性である。装備対象の中でPDWを自衛の方向で用いているのはアメリカの大統領特殊勤務隊、ドイツの憲兵隊近距離防御グループなど少数の組織で、装備数も少ない。

現在のPDW関連の市場分析は、普遍的に潜在的装備量は非常に大きいと強調している。第二次大戦の期間、50%の将兵が第一線戦闘人員だった。1991年の「砂漠の嵐作戦」になると、20%の将兵しか前線で作戦行動せず、80%の軍人は主に火砲による支援、通信、化学兵器防御、後方勤務補給、維持修繕メンテナンスなどの「第二線任務」を担当した。特にアメリカ陸軍の中では女性兵士の比率が比較的高く、彼女たちはなおのこと射撃には長けていない。理屈から言えば、PDWのアメリカ軍内での市場容量は非常に大きい。しかし1991年の湾岸戦争時、アメリカ軍の第二線部隊が襲撃に遭うことは極めて少なかった。アメリカ軍の新型個人自衛武器に対する重視も足りない。1994年、アメリカ軍はM4の個人自衛用としての装備を開始した。さらに2001年のアフガニスタン戦争勃発以後、アメリカ軍はまたしても新しい状況に遭遇した。すなわちアフガニスタンの地形は山がちで、交戦距離が比較的遠くなり、M16A4、M4でも有効射程不充分、遠距離における残存エネルギー不足のきらいがあり、近距離自衛にしか使えないPDWはなおさら期待されなくなった。2003年のイラク戦争勃発以後は、アメリカ軍は多くの基地を持ち、第二線人員は基地内に引っ込み、反米武装勢力も散発的に迫撃砲での攻撃、自爆攻撃ができるだけで、第二線人員の安全問題は突出しなかった。反米武装勢力が基地の間の後方勤務車両隊列を襲撃する主要な手段は道端の爆弾であり、PDWはやはり力を発揮する余地がなかった。1986年のPDW概念提出から現在まで、アメリカ軍はM4のみをPDWとして使用し、当時の初志とは大きく方向性が変わってしまった。ここ数年、何度もアメリカ軍の新たな評価があり、PDW購入準備の情報が流出しているが、後には全て具体化していない。当然当時のPDW大論争と結論は同じである。すなわち、M4ショートアサルトライフルは後座力が大きく、切迫した状況下では命中率が低く、練度の低い射手の自衛武器としては効果に信頼が置けない。だがアメリカ軍が新しい口径の武器の大量装備を決心するには、必然的に後方勤務に関係し、また重大な弾薬供給費用も必要となり、議会の意見統一は恐らく難しい。現在ドイツ軍は表面上アメリカ軍よりも個人自衛問題を重視しており、MP7A1を支給して自衛に用いる必要があると表明している。だが現在の情報を総合的に分析すれば、ドイツ軍の購入数量は限られており、また多数は特殊部隊に使われており、現在ではMP7A1もPDWを自称してさえおらず、サブマシンガンと改称している。P90も最近数年これに追随し、やはりサブマシンガンを自称するようになった。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「アメリカ陸軍比較判断を行った後、M4ショートアサルトライフルをPDWとしての使用のために装備した。」)

PDWの欠陥

PDWの現在の窮状と、それ自身の持ついくつかの固有の欠陥には密接な関係がある。P90は最初のPDWであるが、戦闘全備重量は3.0kgに達し(50発装填)、3.1kgであるM4ショートアサルトライフル(30発装填)と比較して重量上のメリットはなく、全長も500mmに達する。もし運転員がこれを自衛に使うなら、背負っても、あるいは車内に置いても、いずれにせよいささか不便である。P90の法執行期間への販売価格は1,200米ドルである。一方M4の購入価格は800〜1200米ドルである。以前FN社はP90を値下げすると宣伝したが、まだ実現していない。MP7は重量と体積の上で重大な進歩が見られ、ストックを縮めた時415mmしかなく、空虚重量も1.9kgしかない(20連空マガジン付き)。現在の人類の機械技術レベルからして、MP7をこのような重量、体積にすることはすでに極めて難しいことである。もしさらに軽量化したければ、弾薬を少し小型化軽量化し、後座インパルスを減少させることによってやっとさらに一歩の軽量化が可能になる。さもないと重量が軽すぎになり、必然的に後座力が大きすぎになり、射撃時のコントロールが難しくなる。MP7の空虚重量は1.9kgしかなく、フルオートの発射速度は950発/分で、明らかに高い。後にHK社は改良を行い、MP7A1では発射速度が850発/分にまで低下した。だが発射速度は依然低いとは言えず、フルオートでの散布の密集度が公表されているのはずっと見られていない。これはデータが悪いため発表に適さないと推測される。PDWは口径が小さく、当然弾頭重量が軽く、後座力が小さい。しかし弾頭重量がもし小さすぎれば、さらに1つの問題がある。すなわち遠距離における残存エネルギーの不足である。P90のSS90弾薬の弾頭を1.5gにすると、距離10mにおけるゼラチンに対する運動エネルギー伝達効果はSS109小銃弾薬の93%にも達した。だが結果的には軽すぎるため、遠距離における残存エネルギーが低く、最終的には弾頭重量2.0gのSS190弾薬に改められた。MP7は研究開発時、遠距離における残存エネルギーがすでに重視され、標準軍用のDM11型スチールコア弾薬の弾頭重量は最初から2.0gとされた。物理学の原理から次のことが分かる。軽い弾頭ほど容易に高速を獲得し、同時に後座力も小さくなり、フルオートが容易にコントロールできる。一方軽い弾頭ほど容易に失速し、このため小口径弾には遠距離における残存エネルギーが低く、風による偏差が大きくなる欠陥があることは必然である。個人自衛武器の口径と弾頭はより小さく、より軽くすることがすでに難しくなっている。現在のPDWはすでに、「拳銃と比べ威力が大きく、サブマシンガンと比べ貫通力が強く、小銃と比べ軽便である」を実現している。もしさらに「拳銃の体積と軽便さ、小銃の近距離威力」という優越した特性を持ちたくても、現在の人類の技術条件下では実現できない。PDWの貫通力は不足で、防弾衣を着た敵に直面すると自衛は難しいという批判を行う評論がある。筆者はこの説には反対である。PDWという概念の提出時、世界各国の防弾衣は普遍的に非常に薄弱だったし、ソ連軍の個人防御はCRISATターゲットのレベルに相当するに過ぎなかった。現在のアメリカ軍の「インターセプター」防弾衣は炭化ホウ素板挿入後、NATO7.62mmx51やロシア軍の7.62mmx54の弾頭さえ防御できる。M16系列でもその力はないのに、どうしてPDWにヘビー級防弾衣を撃ち抜けと過酷な要求をするのか? MP7A1が発射するDM11型弾頭は距離50mで9mmの鋼板さえ撃ち抜き、100mでは5mmの鋼板を撃ち抜く。中国の5.8mmx42DBP87弾の距離100mでの普通鋼板に対する貫通深度は8〜10mmである。一方7.62mmx39 56式普通弾薬は距離100mで6〜8mmの普通鋼板しか貫通できない。これと比較するとMP7A1は自衛武器として、近距離貫通能力はすでに低いとは言えない。補強板を挿入していない防弾衣の防御力は一般にIIIAクラスに達し得るだけで、近距離でMP7A1に遭遇すればやはり貫通されるのである。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「駐イラク大使館警備チームは95式小銃を使用してPDWに充当している。近距離においてMP7と95小銃の威力は近い。」)

PDWの将来を予測

未来において強国の間で大戦が勃発する確率は極めて低く、第二線部隊が敵国の特殊部隊の襲撃に遭う確率も低い(頑住吉注:こう言っちゃ何ですが、比較的近い将来において大国間の戦争が起こるとしたら、中国が原因でアメリカと戦争になる可能性が最も高いでしょうけどね)。強国の部隊のPDWに対する必要性は限られたものであり、一方貧国の部隊は高くて専用のPDWを買うことができず、やはりサブマシンガン、拳銃等で無理に間に合わせるだろう。未来の世界では対テロ、治安戦など小規模な戦闘が主流を占める交戦スタイルとなるかもしれず、PDWの近距離威力が大である、精度が高い、貫通力が強い、同時に過度な貫通の危険も小さく、遠距離残存エネルギーが小さいという特性は、治安部門、要人警護用に大規模装備される優れた武器になることが有望である。目下PDWの概念にはまだ論争があり、サブマシンガンが軍、警察の必須装備武器である。いろいろなPDWの中で最も典型的なP90とMP7A1はすでにサブマシンガンと改称した。それでは今後各種のPDWは名前付け遊びになる公算が高い。ユーザーがPDWを必要とすれば、これはPDWなのであり、ユーザーがサブマシンガンを必要とすれば、今度は私はサブマシンガンでもありますよ! と言うわけである。あるいは、これこそPDWの最終的な生きる道なのか?


 PDWの普及が進まない理由として「弾薬が高価である」ことを挙げる人がいますが、それは話が逆なのであって、大量生産されないから高価になっているだけです。アサルトライフル並みとは言わずとも、その数分の一でも生産されればずっと安価になるでしょう。普及が進まないのは、わざわざ完全新規の弾薬を導入するほどのメリットがないからでしょう。一番はっきりしているのがナイツのKAC PDWであり、M16系カービンとの差が余りにも小さすぎます。マグプルPDRは5.56mmx45を使用しながら非常にコンパクトなので、KAC PDWよりは有望と思われます。しかしこれはブルパップデザインでショートバレルのアサルトライフルであって、あえてPDWという名称を使用する必要はないのではないかという疑問があります。PP2000も全くの小型サブマシンガンに過ぎず、これがPDWだと言うならマイクロUZIに貫通力を高めた特殊9mmパラべラム弾薬を使用してもPDWだということになるでしょう。こう考えるとPDWというのはアサルトライフル、サブマシンガンと同列に論ずべき小火器のカテゴリーではなく、例えば「ホームプロテクション用の銃」(言うまでもなくショットガンであったりライフルであったりハンドガンであったりします)のような用途上の分類に過ぎないのではないでしょうか。

 そう言えば中国にはPDWと称する銃はありませんし、あえてPDWに分類したくなるような銃もありません。5.8mmx21を使用する05式サブマシンガンがいちばん近い感じですが、空虚重量2.2gはいいとしてサイズ的に95式系に近すぎ、威力はずっと弱く、KAC PDW同様あえて装備するメリットが小さい気がします。今後西側のPDW弾薬より低威力で銃を小型化させやすい5.8mmx21を使用するよりコンパクトな「サブマシンガン」は出現するんでしょうか。またCS/LS06サブマシンガンにロシアと同じ9mmパラべラム特殊弾薬を使用すれば、装弾数50発とも合わせPP2000以上のPDWになるかも知れません。










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