ザウエルS205ファントム

 「Visier」2005年6月号に、最近流行のやたらメカメカしいスナイパーライフルと思われる銃のレポートが掲載されていました。ザウエルのS205ファントムという銃ですが、メーカーでは訳あってスナイパーライフルとと呼称していないそうです。


ファントム-As(頑住吉注:「As」には英語のエースと同じ、つまりトランプの切り札や第一人者、人気ナンバーワン商品といった意味があります)

かつてフランス映画Bosewicht(頑住吉注:「o」はウムラウト)でブルーのマスクをつけてそうしたのと全く同様に、ザウエルの新しいプレシジョンライフルS205ファントムは(シューター)世界に息つく暇も与えないことを意図している。何故かはこれを読め。(頑住吉注:「Bosewicht」=「いたずら小僧」というドイツ語題名の、「ファントマ」ものの映画があったようですが、日本語題名は不明です)

3部作においてJean Maraisが演じた大悪党ファントマの笑い声は決して過去のものではない。この新しいS205ファントムを編集部に持ち込んだときのザウエル&ゾーンの生産マネージャーMatthias Klotzもそれに該当した。ただ彼がそのとき青く変身しなかったというだけである(頑住吉注:わけわからんことを書いてますけど、要するにただこの銃がメーカーにとって会心の作で、編集部に持ち込んだときもこの人が上機嫌だったというだけのことです)。この銃の開発史は本来1980年代にすでに始まっていた。というのは、大規模な射撃競技会がほとんど国民スポーツキャラクターとなっているスカンジナビアにおいて、ノルウェー、スウェーデン、デンマークのシューターたちが、彼らの古いスポーツライフルの後継機種探しにおいて協力していたからである。モジュラーシステムのおかげで、ザウエル200は当時、要求項目リスト内で要求された全ての判断基準を満たすことができた。1987年にザウエル200STRがスカンジナビアン ターゲットライフルに決定するまで、テストシリーズは複数年に延びた。

 このベースから、後にシングルローの着脱マガジンとワンピースで黒色の木製ストックを持つスナイパーライフルSSG3000が生じた(頑住吉注:ドイツ語でスナイパーにあたる言葉は英語に直訳するとシャープシューターであり、これにライフルであるゲベールを加えた語の略がSSGです)。この銃は1992年にプレゼンテーションされた。当時スイス人によって刺激されて生まれた、ISSFレギュレーションにしたがい、UITシューティング(300m)のために発展開発され、これに基きこの競技の技術的基本条件を指向して生まれた特製品が205系システムである。この銃はこのため10連マガジンや重量制限を理由としたアルミニウム製機関部といった特徴を持った。スイス向けの本来のライフルは、当初まだ木製ストックを持っていた。しかし、スポーツ銃器製造によって知られるヘンメリー社がこの205用のアルミニウム製スケルトンストックをわざわざ開発した。ザウエル&ゾーンとヘンメリーはすぐに意気投合し、このUITライフルを今後ワールドワイドに、リングフロントサイト、精密距離調整リアサイト、かげろうよけのベルト、ブルーのアルミストックつきのS205スーパーターゲットとして販売する。今ここからプレシジョンライフル、ザウエルS205ファントムが生じた。

似ている。だが変わっている。
 この205は、200/202システムと非常に似ているにしても、完全に新しいライフルである。パーツは互いに交換できない。唯一の例外。205系のバレルは202に適合する。しかし逆はできない。当然メーカーはバレル内にダイレクトで機能する6個の閉鎖用突起を持つ閉鎖機構はそのままにしている。マガジン挿入穴の前にあるダブルカアラムの10連着脱マガジン用マガジンキャッチや、セーフティシステムのようなさらなる特徴も、200および202シリーズを思い起こさせる。発火機構の後方でセーフティをかけ、トリガー前方で解除するこのシステムは、完全に等しい配列がなされているが、セパレートのボルトキャッチを持たない。使用者が205のボルトを取り去りたいときは、銃のセーフティを解除し、ボルトハンドルを持ち上げ、そして再びセーフティをかける。これで初めてレシーバー後方に引き抜くことができる(頑住吉注:ボルトキャッチと訳した「Kammerfang」は、文脈上弾切れのときボルトを後方で止めるものではなく、ボルトを銃に保持するパーツのことを指しているようです)。

 プルーフされた11mm角柱レールつきアルミニウム製機関部とならんで、重い、フルートつきの、フリーフローティングマッチバレル(直径21mm)が、特にこのプレシジョンボルトアクションライフルの心臓部を形作っている。銃身長は希望により670から700を経て740mmまで変わる。ロングバレルは特に距離調節リアサイトを使ってロングレンジ競技会に参加を希望する射手が使用する際に使われる。この場合何cmでもより長いサイトラインが長所をもたらす。我々のテスト銃は全く特別なディテールを持っている。すなわち、このテスト母体「V605」はさらにHorst Roh(頑住吉注:後の「o」はウムラウト)設計による一体のマズルブレーキつき「ヘビーマッチ」特別バレルを装備しており、マズル部で26mmというたっぷりした太さがもたらされている。多くの反射面のおかげで、このマズルブレーキは非常に高い効果度に達し、.308を6.55kgの重量の銃から発射した際でさえ確実にコントロールされる。

皆にオープン
 205ファントムは「生態地位的生産物」であり(頑住吉注:「棲み分け」→「従来品の隙間を埋めるもの」という意味のようです)、「プレシジョンライフル」の名称だけを担っている。これによりJ.P.ザウエル&ゾーンはこのライフルを皆に解放している。「発想は自由」のモットーに従い、社は顧客のファンタジーをかきたてようとしている。エッケルンフォルデは第一には、ハイ-エンドシューティング器具を探している民間の購入者を視野に入れている。しかしこの新製品は再三にわたって公的ユーザーの興味にぶつかっている。‥‥そしてすでに調達もされている。その際ザウエルはこのファントムを全く意図的にスナイパーライフル(SSG)とは宣言していない。 「(頑住吉注:そんなことをしたら)我々が自分たちを笑うべきものにすることになるからです」 (頑住吉注:ザウエルの生産マネージャー)Matthias Klotzは言った。 「我々のSSGは3000系です。ファントムのフルアジャスタブルストックは、フィールドにおけるハードな実用にはあまりにも複雑で繊細(頑住吉注:「filigran」 辞書に載っていないんですが、「金銀線細工」が形容詞化した言葉であり、こういう意味だと思います)です。このストックはその長所をシューティングレンジ、あるいは「アーバンスナイパー」として完璧に発揮します(頑住吉注:野戦には不向きでも、都会での対テロ用スナイパーには向いている、ということでしょう)。」 プレシジョンシューターライフル(PSG)として使用されたとき、この新製品は真の隙間を埋めることになる。というのは、ツーピースのストック(頑住吉注:ショルダーストックとフォアストックが別体)により、1挺のライフルに3、4つのショルダーストックをマウントすることができ、多くのPSKs(頑住吉注:警察特殊部隊=Polizai Sonder Kraftのことではないかと思いますがはっきりしません)のシューターに個人的に合わせることができるからである。

ストック
 これに関し、ファントムは当然スポーツシューターのノウハウから学んでいる。というのは、ザウエルはS205スーパーターゲットに際し、アルミ製スケルトンストックを使用し、初めてそれを正方形に、タクティカルに、黒色に作った(頑住吉注:このストックは湾曲した角柱状のストック本体にチークピースやバットプレートが付属したスケルトンストックであり、本体の断面が基本的に正方形に近いことを言っているんだと思います。ちなみに初めのほうに書かれていたように、純スポーツタイプのS205スーパーターゲットのアルミ製スケルトンストックは青色だということです)。バットプレートは高さが変えられ、これによりいろいろな射撃姿勢に最適に適合できる。その傾斜角度も2本のネジによって調節できる。アルミ製キャリングエレメント(頑住吉注:これも文脈上その上にいろいろなものを「担っている」ストック本体のことらしいです)には上下左右に調節できるチークピースがある。これに関しても傾斜が調節できる。ファントムはコンプリートなチークピースつきで納品され、たいていの射手はその後自分の必要に応じてノコやヤスリで適合させる(頑住吉注:チークピースが大きめに作られていて、自分で切断したり削ったりするようになっている、ということのようです)。マッチグリップさえ同様に角度とトリガーからの距離が調節できる。それを取り外すと、その下にショルダーストックを機関部に結合しているネジが現われる。エッケルンフォルデの中の人はよく考えて仕事をした。というのは、全てのネジは1本のみの6角レンチで回すことができるのである。スポーツストックを越えて、ファントムのストックは高さが調節できるツーピースのErdsporn(ゴムバッファーおよびサイドにロックナットつき)を持っている(頑住吉注:「Erd」は地面、「Sporn」はスパイクなどの他、砲の駐鋤も指す言葉で、プローンのときストック後部を支える一脚状のパーツです。英語に直訳すればグラウンドスパイクあたりでしょうが、実際英語で何と呼んでいるのかは知識不足で不明です)。

 フォアストックはUITレール内に、共に供給されるスリング金具も、適するバイポッドも受け入れる(頑住吉注:UITレールというのは、フォアストック下部にある、チェーンロックのレール部に似た長いレールのことらしいです。バイポッドやスリング金具は任意の前後位置に固定できます)。(頑住吉注:フォアストックの)ざらざらした両サイドのグリップ面は、4つのネジを抜いた後に取り外すことができ、全ての種類の、そしてそれによりランプやレーザーのようなタクティカル器具も含めたもの用のマウントレールに場所を提供する。しかしフォアストックにネジ止めされたバイポッドつきのU字型のブリッジも考えられる(頑住吉注:要するに、



フォアストック左右には滑り止めのザラザラ部がネジ止めされています。これを外してサイドにレーザーモジュール等を装着することもできますし、その他にこの簡略化したイラストのような特殊なマウントの装着も考えられるということです。空色がフォアストック、赤がフリーフローティングバレルです。フォアグリップに黄緑色のブリッジ状マウントをバレルをまたぐような形で装着し、左右からネジ止めします。こうすれば真上にアクセサリーを装着できるわけです。ワルサーWA2000のように、銃を吊るすような形でこれにバイポッドを付属させることもでき、こういう形の方が下から支えるより有利だという説もあります)この結果S205ファントムはバイポッドに垂直に吊るされた状態のように調整可能である。当然使用者は場合によってはピカティニーレールもさらにその先に取り付けられる。例えばZeiss-Hensoldt NSV 80のようなアタッチメントを装着するためにである(頑住吉注:以前にも出てきましたが、これは通常スコープのさらに先に設置して暗視機能を持たせるアタッチメントです。当然スコープを装着するレールの先に長い延長部がないと設置できません)。

見解の問題
 ザウエル製マウントに装備された、軽量なSchmidt&Bender製4〜16倍x50 PMUは、Koblenz-Pfaffendorfの薄暗いインドアシューティングレンジにおいて、またもや切り札の役割を完璧に演じた。マッチトリガーメカは(テスト銃の場合)1530gに事前に調整されており、(頑住吉注:前後位置が)調整可能なトリガー本体はトリガーフィンガーに対する個人的な適合を可能にしている。ひとたび自分に合うように調整すると、この太いマッチバレルが12インチで1回転のライフリングのおかげで口径.308において168グレイン弾と最も相性がいいことがすぐに示された。(頑住吉注:距離100mで)IMIマッチは12mmの結果で、(頑住吉注:これでも素晴らしい結果であるのに)これはベスト成績の8mm(温まったバレルから)を出したLapua Aficionado+より下となった。このブルバレルはより重い弾丸も難なく消化した。だが、安い弾薬ではグルーピングは30mmにまで開いた。標準装備されるかげろうよけのベルトは来るのが遅くて使用できなかったが、太いバレルのおかげで少数の発射ではかげろうはそもそも発生しにくかった。

長所と短所が同時に
 機関部、バレル、射撃成績に関しては多言を要しない。精密射撃に取りつかれたスカンジナビア人が、ザウエルとのスポーツライフル契約を15年後にもう一度延長したことが物語っている。S205ファントムの、スポーツ銃器製造由来のストックは、このライフルをライバルたちから際立たせている。‥‥そして同時に制限を加えてもいる。というのは、軍用SSGとしては、多くのネジを持ち、そして一部はネジ山が露出しているこのストックは、あまりにも繊細すぎる。しかしザウエルもこのことは分かっている。これに対し、ファントムはPSKs用としては比較的きれいな投入ゾーン(屋根、住居など)により、交換可能なショルダーストック、短い運搬時の長さといった代替案を提供する。大口径スコープ射手にも、レミントン700ポリス風のスタンダードプレシジョンライフルと比較して、そのコストでいろいろな調節ができるストックが有利である。というのは、射手の利益にあわせて完璧に調整されたストックを使うことでリラックスすればするほど、ますますいいスコアが出るからである。その上少しばかりより個性的な銃を求める人には、新しいカスタムショップ「Sauer individual」が秘密の希望を満たす(頑住吉注: http://www.sauer-waffen.de/index.php?id=477&lang=en )。

モデル:ザウエル S205ファントム
価格:3170ユーロより
口径:.308ウィン(.223レミントン、6.5x55、7.5x55および単発として6mmノルマBR)
装弾数:10+1
寸法(全高、全幅、全高):1189x86x193mm
バレル:670mm、4条ライフリング、.308の場合12インチで1回転(バレルには700および740mmもあり)
空虚重量:5450g、スコープ込み6550g
型:アルミ製レシーバー。6個の閉鎖用突起によるバレル内での閉鎖。マッチトリガー(1530gにあらかじめ調節されている。トリガーはずらせる)。フルアジャスタブルアルミ製スケルトンストック(バットプレート、Erdsporn、チークピース、ピストルグリップ)。UITレールおよびさらなるマウントレールの固定可能性つきフォアストック。フリーフローティングフルーテッドマッチバレル(径21mm)。交換バレルは649ユーロから。ダブルカアラム着脱マガジン。Sauer延長マウント用11mm角柱レール。.22LR変換システム(898ユーロ)。

ザウエルS205ファントム

弾薬:メーカー・重量・弾丸 100mグルーピング(mm)
American Eagle 150grs FMJ BT 30
IMI Match 168grs HP-BT 12
Lapua Aficionado+ 167grs HP-BT 8
Lapua 155grs Scenor 21
PMC 168grs HP-BT 10
S&B 150grs SP 30

注釈:HP-BTはホローポイントボートテイル。FMJはフルメタルジャケット。SPはソフトポイント。距離100m。依託用袋からの射撃。5発のグルーピング。グルーピングは着弾点の中心から中心で計測。


 こういったやたらメカメカしいスナイパーライフルが最近流行していますが、この種の銃はフィールドにおける酷使には耐えず、都市部における対テロ用に限定されるものであるようです。ただ、軍用にも使えるタイプの銃を集めた「.223ボルトアクション比較テスト」の項目と比較すればお分かりのように、命中精度はきわめて優れたものです。ベストのグルーピング8mmというのは、要するに100m先に直径約15mmのワンホールが開くという感じです。さらに遠距離での命中精度が示されていないのが残念ですが、.308を使用し、100mでこれだけの精度を出している以上遠距離の命中精度が悪いと言うことはないはずです。

http://www.sauer-waffen.de/index.php?id=184&lang=en

 これは本家ザウエルにおける公式紹介ページです。アメリカの子会社SIGアームズ公式にはこの銃の紹介は今のところないようです。






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