ロシアメディア、武直ー10を評する

 以前紹介した「武直ー10の原設計はロシアによる」説も含まれていますが、墜落事故直後にこういう記事が出るのは偶然なんでしょうかね。

http://military.china.com/important/11132797/20140310/18385236.html


ロシアメディア:中国が金を出し、ロシアの設計局が総動員で直ー10の設計図を描いた

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「カーモフ設計局の製図員A.ヨーゲンソンが描いた『941プロジェクト』試験機の説明図(資料画像)」)

「霹靂火」のルーツは北方に?

中国初の専用武装ヘリである直ー10の就役、公開以来、そのあだ名「霹靂火」は軍事愛好者の中に急速に広まっている(頑住吉注:武直ー10関連の記事はずいぶん読みましたが見たことないすよ)。だがロシア航空業界では、人々はより「中華カーモフ」の呼称をこのテレビなどへの出演率が極めて高い飛行機に好んで用いている。理由はこの機の原設計にロシアサイドの参与があり、「ロシアの血脈」が流れているからである。

最近ロシアの「空天防御」誌はウラジミール ガノゾフの文章を掲載し、直ー10の前世と現世を簡単に要領よく詳説している。本報はこの文を翻訳し、読者の参考のみに供するのであって、その視点と内容を事実と認める、あるいは認可することを意味しない。

「中華カーモフ」の由来

1980年代、中国陸軍航空隊成立直後、西側との協力の助けを借りて世界の潮流を追いかけることを希望した。だが1990年代の初め、この努力は政治情勢の変化が原因で深刻に挫折させられた。アメリカと西欧はもはや中国がソ連を牽制することを必要とせず、中国に対し軍用および軍民両用装備を販売する活動を中止したのである。

中国は直ちに眼光を転じ軍事工業産業が依然強大なロシアに投げかけた。ロシアは対中国協力によって崩壊に瀕した経済を救うことを急いだ。当初、中国サイドはミル設計局の製品と技術に強い興味を感じ、甚だしきに至ってはこの設計局が研究中だったミルー28「ハボック」武装ヘリの生産ライセンス購入を考慮したことがある。何故ならこの機が1991年の湾岸戦争の中で大活躍したアメリカのAH-64「アパッチ」ヘリと同一のクラスに属し、有効に敵サイドの生体戦力を殲滅できるからだった。しかし、ミルー28は直ちにロシア陸軍に気に入られ、中国サイドは再度仕切り直し、その資源をロシアのもう1つのヘリの巨頭であるカーモフ設計局に投じる方向に転じた。

当時「ショック療法」下にあったロシアは完全に不景気で、軍サイドの発注が欠乏していたカーモフは財政的な支持を急ぎ探し求めていた。ちょうどこの時、中国からの契約が天から降ってきたのである。1994年、この設計局の総設計師ミハイェフは中国サイドと、技術協力任務書に署名し、内部のコードナンバー「941プロジェクト」の名目で、南方の隣国のために6トン級武装ヘリを開発した。この機はターボシャフトエンジンを採用し、動力が強い、燃料消費が少ない、重量が軽い、寸法が小さいことが要求された。武器方面では、この機は主に23mm固定式航空機関砲と中国サイドが自ら研究開発する対戦車ミサイルを装備し、外部吊り下げポッド内には12.7mm機銃と集束ロケット弾が配備できるというものだった。

カーモフ設計局は一定数の優秀なスタッフを集め、極めて短時間内に中国サイドの委託を完成させ、かつロシア軍新型ヘリプロジェクトを引き受けるためにチームを鍛錬することを決心した。ミハイェフは設計チームを指導する職責を技術設計所所長V.ドーリンに与え、その他の参加人員には主席空気動力学専門家E.ヴィデロシヤン、V.ケウォケフ、A.ビロゲフ、動力装置所所長V.デミヤノフ、伝動装置責任者V.ケーマコフ、外観設計師L.ワシリイェフなどがいた。注意に値するのは、設計過程の中にさらに1つの困難が存在したことである。すなわちこのプロジェクトはいくつもの段階に区分けされ、それぞれの段階の完成後必ず中国サイドの認可を獲得する必要があり、その後やっと次の一歩の研究開発経費が受け取れたのである。

1996年1月11日、ミハイェフは最終設計図に署名し、空力レイアウトと風洞実験結果を含む技術材料は全てロシア連邦武器輸出部門を通じて中国サイドに引き渡され、最後の一部分の検査の上での引き取り作業は中国で行われた。続いてカーモフ設計局はさらに専門家を中国に派遣し、中国サイドの技術人員と交流を行った。2013年、ミハイェフはアメリカメディアのインタビューを受けた時、「941プロジェクト」の果実は有名な直ー10に他ならないが、カーモフはこの機の具体的生産には介入していない、とした。だが少なくとも外観から見ると、後に登場した直ー10とカーモフのオリジナル方案との差異は大きくない。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは「中国陸軍の直ー10武装ヘリ(資料画像)」です。)

中国サイドが自力で技術的難関を克服した

ロシア軍事工業界の人物の言い方によれば、1995年までに中国は早くもすでに国産武装ヘリの初歩方案を持っていたが、実体としての機を作り出すにはまだほど遠かったのである。工程学の角度から言うと、新型ヘリを開発したければ、エンジン、ローター、変速機構の技術的難関を克服することが必須で、事実は中国サイドがこの領域いずれにおいても決定的な突破を取得済みであることを証明している。

直ー10の全体設計は古典的なものと言え、脚は後三点式で、後輪は方向転換可能な車輪である。機体の中部両側下寄りにはそれぞれ1枚の短い翼があり、翼の全幅は4.3mで、武器はここに搭載される。2名の飛行員は前後タンデムにコックピット内に座り、武器操作員が前、飛行員が後ろで、もって後者の視野を確保している。コックピットの写真からは、それぞれの飛行員いずれもがカラー多機能ディスプレイと相似の計器盤を持つことが分かり、このことは直ー10が2セットの操縦システムを持ち、武器操作員も必要な時は臨時に操縦員の役割を果たすことができることを説明している。機体表面に関しては、直ー10は各種の類型のセンサーを配備し、これには無線電信、赤外線および紫外線警告装置などが含まれる。機体下部の2つの赤外線デコイ弾発射機は非常に目を引く。さらに一歩確定できるのは、中国の技術者がヘリの赤外線輻射を低下させる方面で一定の措置を取ったことで、最も顕著な表れはエンジンの排気の端部に冷却システムを装備したことである。

捜索照準システム方面では、中国の技術者は国外の成熟した製品を参考に、直ー10のために目標キャッチ指示/飛行員夜視システム(TADS/PNVS)を装備した。武器操作員の隔壁の間には照準設備があり、これにはレーザー距離測定装置、テレビカメラ、熱成像装置などが含まれる。また、寸法が比較的小さい観測システムが機体の高い所に装備され、独立して作動でき、飛行員が夜間飛行を行うのを助けることができる。飛行員専用ヘルメット内にも夜視鏡が配備されている。

直ー10の固定武器としては23mm航空機関砲1門があるだけで、ロシア製AM-23航空機関砲のコピー生産品に似ており、機首の回転塔内に装備され、その他の武器は両側の短い翼の下の4つのラック上に分布する。その中で、評判最高なものとして挙げられるのは空地-10(紅箭ー10)対戦車ミサイルだろう。これはセミアクティブレーザー誘導弾頭を配備し、性能はアメリカのAGM-114「ヘルファイア」ミサイルに近く、最大射程は7〜10km、発射重量は45kg、1,400mm厚の装甲を貫通でき、1機の直ー10に最多で16発搭載できる。複雑化した任務の需要に対応するため、直ー10はさらに国産天燕-90近距離空対空ミサイルおよび90mm集束ロケット発射器を使用することができる。当然、もし長距離飛行を必要とすれば、直ー10は翼の下のスペースを空けて外部タンクの搭載に用いることもできる。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションは本文の一部を切り取ったものなので省略します。)

中国陸軍航空隊の地位上昇を連動させる

公開されている情報から、2010年末に初の量産された直ー10が中国陸軍航空隊に装備されたと判断できる。現在、中国陸軍航空隊には全部で10個直属連隊があり(1個教育指導連隊を含む。その他は全て集団軍内に編入される)、それぞれの連隊は3〜5個混成大隊を管轄し、いくつかの大隊は輸送ヘリ(ミルー17、直ー8)を装備し、別のいくつかの大隊は武装ヘリを装備する(直ー9W、直ー10)。さらに最近のある情報は、一部の陸軍航空連隊がすでに6個大隊に拡張編成されたとしており、陸軍航空旅団の雛形と見なされ得る。もし中国陸軍航空旅団が真に存在したら、それぞれの旅団は少なくとも1個直ー10大隊を包括すると言うべきである。2013年の状況から見て、すでに明るみに出ている直-10は少なくとも5個陸軍航空連隊(旅団)に装備済みで、このことから中国は今までにすでに50機を超えるこの機種のヘリを生産していると推測される。

中国陸軍航空隊は成長期にあり、陸軍の中での地位は日増しに増加している。地形が複雑な大国にとって、熱帯のジャングル、砂漠、山地、居民区などの地形はヘリの作戦に非常に適しており、これは必然の趨勢である。これにより、直ー10の装備は中国の総合国力増長の重要な印でもある。直ー9汎用武装ヘリに比べ、直ー10は技術的に飛躍しており、直ー10を低空攻撃機に充当し、陸軍地上部隊のために直接火力支援を提供することができる、と提案する人さえいる。

また、直ー10には将来中国海軍航空隊に配属され、上陸/輸送艦に搭載される非常に大きなチャンスがある。この種の状況下では、この機が演じるのは実際上ロシアのKa-29およびアメリカのAH-1ヘリの役割である。指摘しておくことが必要なのは、ひとたび海軍に装備されるとなれば、直ー10のエンジンは交換する必要があることだ。何故なら2012年珠海航空展で、陸軍航空隊バージョンの直ー10は外部搭載がない状態で一連の素晴らしい特技動作をデモンストレーションしたが、それでもその動力にやや不足のきらいがあることが見て取れたからである。もしより劣悪な海洋環境下で作戦するなら、その「心臓」を強化することは必須である。これについてある情報は、中国は全く新しい渦軸-16(頑住吉注:ターボシャフト)エンジンを研究開発中であり、その動力は2,040馬力(1,500キロワット)に到達可能だとしており、その時動力システムの直ー10に対する制約は完全に粉砕されることになる。(編集翻訳:李佳威)


 記事の取り上げ方としては「原設計はロシア」がメインですが、それに関してはまあどうでもよく、武器操作手にも操縦手同様の設備がある、デモンストレーションは外部搭載がない状態にもかかわらず動力不足が見て取れた、といった記述が興味深かったです
















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