中国の新小銃弾薬 DBP10

 これまで紹介してきたように、中国の5.8mm弾薬には性質の全く異なるハンドガン用は除き、小銃用の普通弾薬と、機関銃およびスナイパーライフル用の重弾薬の2種類があります。最近これを統一するための新弾薬が登場したということです。なお、この文章は中国の銃器雑誌「軽兵器」の記事をもとにこの弾薬を論評したもので、順番が逆になってしまいましたが、この記事の内容も後日お知らせする予定です。

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最新の飛躍か、それとも続けてのパッチ当てか 国産5.8m小口径新弾薬を評価する

(頑住吉注:原ページの最初の画像のキャプションです。「「軽兵器」2011年12月上旬号に掲載された2種類のDBP10普通弾薬の写真」)

2011年をずっと見ていくと、国産小火器の領域での最大のニュースとしては、最新世代の小口径銃器ファミリーおよびその弾薬の公開、登場以上のものはなかった。この、かつてネット上で「05」式あるいは「95改」の名を冠された新システムがついに神秘のベールを脱ぎ、雑誌「軽兵器」2011年12月上旬号で詳細な秘密解除が行われた。それらの性能は一体どうなのか、文章中の宣伝通りに完璧なものなのか否か? 筆者はすでにある資料を総合し、2つの部分に分けてこのシステムに対する詳細な分析を行う。この文章の中ではまず新弾薬の性能に対する分析を行う。

2種の5.8mm旧型弾薬

国産の5.8mm小口径銃器ファミリーは1989年に正式プロジェクトとして立ち上げられ、1995年に設計定型に至り、1997年に駐香港部隊によって初めて対外的に公開された。2000年までに、新世代国産小口径銃器ファミリーの全メンバー(95式アサルトライフル、95Bショートアサルトライフル、95分隊用軽機関銃、88式スナイパーライフルと88式汎用機関銃、および用いられる各種弾薬を含む)はすでに完全に世間の人の面前に姿を見せている。このうち前の3者は5.8mmDBP小銃普通弾薬を発射し、後の2者はDVP88機関銃普通弾薬を発射する。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「国産の塗装仕上げスチール薬莢のDBP95 5.8mm小銃普通弾薬」)

5.8mm小銃弾薬研究開発の初めに、国内ではアメリカの5.56mmSS109、M193小銃弾薬およびロシアの5.45mm7H6小口径小銃弾薬に対して広範な試験を行うことにより、国外の現代小口径小銃弾薬の貫通力、停止作用、精度および弾頭設計の特徴に対しいずれも比較的深い認識が得られた。だが何故かは知らないが、DBP95小銃弾薬の設計にはいかなる新基軸もなく、やはり7.62mm56式普通弾薬の3つの部品からなる構造が続けて使用された。弾頭の弧形は単弧線に設計され、円柱形、弧形、フラットノーズ型のスチールコアが使われ、銅で被覆されたスチールジャケットとスチールコアの間には鉛製ジャケットが充填された。この種の5.8mm普通弾薬の弾頭重量は4.15〜4.2gであり、95式小銃によって発射した時の初速は930m/sで、弾頭重量と初速はいずれも比較的高い。このため同じ射撃距離において、この弾頭が持つエネルギー量がSS109や7H6弾よりも高いというのは正常なことである。だがこの2者と比べると、5.8mm普通弾薬の構造にはいかなる新基軸も改良設計もなく、その長さ:直径比はSS109弾の4.14に近く、7H6の4,66に比べるとずっと小さい。構造、長さ:直径比とも目立った所はない。旧式な56式小銃弾薬と比べると、5.8mm普通弾薬の唯一の差異はスチールコアの硬度が向上していることである。これはこのことで弾頭の貫通性能を向上させることを望んでいるのだが、そのスチールコアは比較的小さく、長さ:直径比は大きくなく、先端とジャケットの間の鉛ジャケットは厚く設計され(7H6弾はこの部分が空洞の設計になっており、スチールコアの抵抗も減少するし、生体目標命中時の弾頭の変形確率も増加している)、ハードターゲット命中後、スチールコアは鉛ジャケットとジャケットを押しのける時により多くのエネルギーを消耗する。これに加え、スチールコア先端部が平面で、いずれも一定程度弾頭の貫通力に影響する。この種の影響が一体どのくらい大きいのかとなると、筆者は国内の関係機構が公開した資料の中にぴったりのデータを探し出していないが、遠距離において5.8mm普通弾の貫通力がSS109弾や7H6弾よりはるかに大きいという説は、間違いなくあまり根拠がない。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ロシアの5.45mm7H7小口径小銃弾薬全体、弾頭断面図の特写、発射後の弾頭およびスチールコアの外観。この弾の先端が飛び抜けて鋭く尖っており、しかも鉛ジャケット前方に空洞部があって、この弾丸の貫通力を比較的強くし、同時に生体目標内で極めて容易に安定を失い転倒するようにしているのが見て取れる。」 ちょっと分からないんですが、この文章に頻繁に出てくる「7H6」というのは西側で言う7N6のことなんでしょうか。またこの部分だけに出てくる「7H7」はタイプミスでしょうか。)

DBP5.8mm普通弾薬に設計上これらの欠陥があるかもしれず、その遠距離における貫通力や停止作用が突出したものではない結果をもたらしており、もしこの弾薬をスナイパーライフルや汎用機関銃に使用すれば遠距離における貫通性能は必然的に満足できないものになる。この他、88式スナイパーライフル、88式汎用機関銃はいずれも95式研究開発グループの外で、他の科研部門によって単独で設計されたものであり、構造は95式と全く異なり、戦術技術性能に対する要求はさらに高く、特に遠距離目標に対する貫通力は既存の7.62mm53式スチールコア普通弾を超えることさえ要求された。これは本来定められた有効射程が600mに過ぎないDBP95普通弾には満足させられず、別に研究開発された新しい重弾頭の5.8mm弾薬でやっと解決できた。

53式小銃弾薬を超えるという要求が出るに至ったのは、当時国内で一度非常に流行した、あたかも道理がありそうにも聞こえる考え方のせいである。すなわち威力がより大きい小口径弾薬を研究開発し、もって旧式な53式小銃弾薬に換え、小銃、機関銃弾薬の真正の統一実現を企図するというものである。惜しいことに、この考え方は中国だけのものではない。第二次大戦終結後には早くも、アメリカとヨーロッパの一部の国は第二次大戦後期のドイツのMP44アサルトライフルの設計思想に対し詳細な消化と吸収を行い、もって未来の歩兵武器弾薬の趨勢を確定した。ロシアも潮流を追いかけて動き、いずれもいくつかの小〜中口径弾薬を研究開発した。例えばイギリスの早い時期の.280(7mm)小銃弾薬、アメリカの7mmx49テスト小銃弾薬、ロシアの6mmx49小銃弾薬等がそれで、いずれも共用弾薬を求めるための努力だった。だが小銃にも配慮すれば機関銃にも配慮することはできず、機関銃にも配慮すればやはり小銃としては威力が大きすぎることになり、フルオート時のコントロール性が悪くなった。最終的な結果としてアメリカ人は5.56mm小口径小銃弾薬の誕生まで、大威力の7.62mmNATO弾薬を選択した。一方ロシア人は7.62mm口径のM43中間威力小銃弾薬を研究開発し、大威力の7.62mmM1908小銃弾薬と同時に装備した(国内の56式および53式小銃弾薬はそれぞれこれらのコピー生産品である)。5.45mm小銃弾薬研究開発後も依然7.62mmM1908小銃弾薬は汎用機関銃用の弾薬として残されている。

国内では共用の考慮から、新型の5.8mm弾薬に距離1000mでの貫通力が53式スチールコア普通弾薬を超えなければならないというだけではなく、しかも弾道がより低進し、初速がより高く、精度がより良くなければならないことを要求した。これらの要求は新弾薬の研究開発に比較的高い難易度をもたらした。これらの目的を達成するため、新しいDXVP88重弾薬の弾頭構造、スチールコア、弾頭の寸法、いずれにも新たな設計がなされ、貫通力が優先順位1位に置かれた。その弾頭重量は5gで、全長は26.6mmに達し、DBP95小銃弾薬の弾頭の4.2g、24mmと比べるとかなり大きくなった。弾頭部の弧形部分にはダブル弧形設計が採用され(頑住吉注:たぶんボディ部はゆるやかにふくらみ、先端部は直線に近く先端が尖っている一定のカーブではない弾頭の形を指しているのだと思います)、より鋭さを増したのが目立ち、弾頭内部には比較的細長い先の尖った硬いスチールコアが設計された。全長は約20.3mm、直径は元のままの4.1mmで、スチールコアは鉛ジャケットの前部から挿入され、スチールコアの先端から弾頭のジャケット先端内部までには一定の空洞部がある。これらの措置の採用後、DVP88小銃弾薬は距離1000mで3.5mm厚のQ235鋼板を貫通する能力を持った。ただし、もしこの弾薬が世界の大多数の弾薬を超えた、はなはだしきに至っては距離1000mにおいて7.62mmNATOの威力よりさらに大きいと言うならば、それは阿Q精神(頑住吉注:負けていても理屈をこじつけて勝ちだと自分に思い込ませる精神)を帯びた誇張に他ならない。結局のところDVP88と7.62mmNATOはクラスの異なる弾薬なのである。この他貫通力は弾薬の威力の大小を計る唯一の基準というわけでもない。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「アメリカの5.56mmM855小口径小銃弾頭の外観と断面の特写。この中の1は真鍮製ジャケット、2は尖ったスチール、3は鉛コアである。この弾は特殊な構造設計に頼って近距離内での殺傷力と遠距離での貫通力を保証している。」)

こうした曲折を経て、口径と薬莢は同じだが弾頭が全く異なる2種の5.8mm小銃弾薬が出現し、「2種類の弾薬が5種類の銃に分配される」という現状が生じた。この2つの弾薬は完全に共用ではなく、互換使用できるというだけである。この意味は、本来DBP95小銃弾薬を使用する武器は重弾も発射でき、2種の88式銃器もDBP95小銃弾薬を発射できるが、その結果は性能の発揮と武器の寿命に影響する、ということに他ならない。皆さんはこれを大きなことではないと思うかもしれない。だが実際の部隊装備後、やっとこれが面倒なことだと分かった。2種類の弾薬の外観や全長は基本的に同じであり、実際の使用時にはきわめて混じってしまいやすい。銃器の性能の不一致(例えば88式スナイパーライフルを使って対テロ任務を遂行する時、やっとのことでこの種類の弾薬を使って照準合わせを終えたのに、弾薬が変わったらまずいことに人質を撃つことになってしまう)がもたらされるだけでなく、同時に後方勤務保証にも面倒がもたらされる。これはいささかでも軍事常識がある人なら皆知っている、避けるべき問題であり、設計と生産中にも実際に起きており、しかもはっきりと長年存在していた問題である。そこで2004年から開始された新世代小口径銃器ファミリーの研究開発作業における、銃器ファミリー自体以外の別の重要な任務は、国内の現在のあらゆる5.8mm口径銃器への使用を満足させる、新しい5.8mm小銃弾薬を研究開発することに他ならなかった。この研究の成果こそDBP10 5.8mm汎用小銃弾薬に他ならない。

「新基軸」は本当に新基軸か?

新世代銃器ファミリーは95-1と命名された。文字通り95式銃器ファミリーにパッチを当てたグレードアップ版に他ならず、主に95式銃器ファミリーが暴露した重大問題を解決したもので、構造や自動原理にはいずれも大規模な改造はなされていない。具体的細目に関しては雑誌「軽兵器」を見ていただければよい。最大の変化の1つはまさに新型のDBP10 5.8mm小銃弾薬を使用するよう改められたことである。新弾薬の研究開発目的は、DBP95普通弾薬とDVP88式重弾薬に代わることであり、旧式な95銃器ファミリー(3種類の銃器)、03式小銃(03式は悪いものではないが、この出現自体がまさに中国の特色の産物である)、新しい95-1銃器ファミリー(これにも3種類の銃器がある)、88スナイパーライフル、88汎用機関銃、合計9種類の異なる銃身長、異なるライフリング条件の銃で使用することを合わせ考慮することである。つまり、DBP10弾薬は普通の小口径小銃弾薬であって小口径弾薬に常に見られる長所を備え、同時に中口径大威力小銃弾薬としての使用も合わせて配慮し、一定の遠距離射撃能力と制圧能力を備え、もってスナイパーライフルおよび汎用機関銃にも使いやすくするということである。「軽兵器」の文章を見ると、DBP10弾薬に対し結論された3点の「新基軸」は、それぞれ、1.「1種類の弾薬で9種類の銃に使える」機能を実現したこと、2.真鍮弾頭ジャケットに対する認識を高めたこと、3.初めて弾薬の設計にスプライン曲線(頑住吉注:通るべき2つの点があらかじめ決まっていて、それをゆるやかな曲線でつないだものを指すらしいですが、原ページのイラストで見るとライフリングと接する部分がかなり前後に長くほとんど直線状になっているようです)設計を採用したこと、である。これから見ると、この弾薬はオールマイティ弾薬と言うべきであり、全世界の弾薬の集大成であり、かけねなしのスーパー無敵多機能弾薬である。事実は果たしてこうなのか? 欧米やロシアが苦労を重ねて数十年探し求めてきた最良口径の汎用小銃弾薬が、意外にも突発的に中国で実現されたのだろうか?

そんな簡単なことがどこにあろうか!

新弾薬の共用性に関し、上述の紹介を見ると、皆さんの心中に自然に疑問が生じると信じる。この「共用」それ自体にまさに議論の余地がある。DBP10弾薬は95-1小銃専用に設計されたもので、旧式な5.8mm銃器への使用も「合わせ配慮した」だけである。新しい95-1銃器ファミリーは新しいライフリングの設計を採用しており、ライフリングの条数、ピッチはいずれも旧式な5.8mm銃器とは異なる。だから同一種類の弾薬をこれら異なる条件の武器に使用して同様の性能を発揮できることを望むというのは、愚か者の語る夢と違いはない。「2種の弾薬を5種の銃に使用する」互換性に比べちょっとましというのがせいぜいである。これと同時に、すでに生産されているDBP95普通弾薬およびDVP88重弾薬にはまだ少なからぬ在庫があり、同様に部隊に装備され使用されてもいる。このためDBP10の量産、装備後、我が軍は同じ期間内において、外観を見れば基本的に同じだが使用性能が異なる3種類の5.8mm小銃弾薬に直面しなければならない。これは世界中のいかなる現代軍隊にもまずない状況であると考えられ、さらに言えば後方勤務管理の悪夢である。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「国内で目下装備されている数種の小銃普通弾薬の断面図。左から右に、53式スチールコア普通弾薬、56式スチールコア普通弾薬、DBP95 5.8mm普通弾薬とDVP88 5.8mm重弾薬。DVP88の弾頭構造が比較的大きく改良されているのを除き、他の3種類の弾頭構造はいずれも類似しているのが見て取れる。」)

DBP10の薬莢は以前の5.8mm薬莢と同じままにすることが必須だったので、新弾薬の新しい所は弾頭と装薬の変化に体現するより他ない。これをもって設計時に提出された内部弾道学的性質は普通弾に似ており、外部弾道学的性能は重弾薬に似るという要求を満足させるのである。DBP10普通弾薬の弾頭の構造と寸法はDVP88普通弾薬と基本的に同じであるが、スチールコアの直径が3.8mmに減少し、鉛ジャケットの厚さが増加した。このようにすると弾頭の飛行安定性が増す他、弾頭がライフリング内を窮屈に進む際の圧力も減少させることができる。この弾薬は破天荒にも国産小銃弾が長期にわたって銅で被覆されたスチールをジャケットの主材料と考える局面を打破し、H90真鍮ジャケットを採用した。95-1銃器ファミリーのバレルは6条ライフリングに改められ、弾頭がライフリングにはまり込む部分の寸法も減少した。弾頭の変形量も小さくなり、同時に弾頭が誘導されて回転する際の横方向の力も分散することができた。これは射撃精度の向上に対し一定のメリットがある。旧95銃器ファミリーが使用していたのは通常通りの4条ライフリングで、ピッチは240mmである。一方95-1は210mmに強まり、弾頭の飛行安定性が向上した。この目的は遠距離における貫通性能の向上である。実はロシアの5.45mm系列がやはり4条のライフリング設計になっているのを除き、西側の国の小口径小銃はずっと6条ライフリングを採用している。しかも圧倒的多数の国が生産するSS109小銃弾薬の弾頭のジャケットは真鍮製である。弾薬の加工に便利であるだけでなく、同時に武器の寿命向上と精度にもメリットがある。だが中国はずっと銅資源の輸入と消費に関する大国であり、1960年代中期に弾薬生産のスチール材料化を実現し、すでにスチール材料あるいは銅で被覆したスチール材料を弾薬製造に使用することが習慣になっている。このため、DBP10弾薬が真鍮ジャケットを採用したことは何ら優れた新基軸ではなく、他人のすでに行った古い道をなぞったに過ぎない。同時に真鍮はより柔らかく、より延展性に富み、弾頭がライフリング内を窮屈に進む際の圧力と摩損が減少する。こうして初めて新弾薬を旧95銃器ファミリーで発射した時のバレル寿命に関する要求が満足させられるのである。

一方最後の一点はスプライン曲線の弾頭形状に関する問題に他ならない。弾頭の飛行抵抗を減少させ、存速能力を高めるため、DBP10弾薬は弾頭の弧状曲線の寸法を新たに設計し、本来のダブル弧曲線形状をスプライン曲線形状に改め、弾頭はより鋭さを増したのが目立ち、弾形係数がより良好になった。だがこの種の設計は弾頭製造具の加工および生産時の検査に対しいずれも比較的高い要求を課す。同時にこのような設計になった理由は創意がそうさせたわけではなく、本来の5.8mm小銃弾の寸法がすでに決まっており、既存の銃器との共用も合わせ考慮し、また性能向上も望み、止むを得ず採られた一種の変則的方法である。同様の状況はDVP88重弾薬登場時にもあった。当時の「軽兵器」でその性能がいかに優秀であるか大げさに語られる、といったこともやはり発生していた。その中ではこの弾薬の弾頭の外形がダブル弧曲線の設計であることは、「世界水準を超えた」新基軸だとされた。実際にはこのようなものは国外では新鮮ではなく、例えば7.62mmx51 NATO弾薬が採用しているのがまさにダブル弧曲線形の弾頭であり、ただ国内ではいまだ採用されたことがなかったに過ぎない。

度を越えた「共用」は実は「非共用」である

最良の口径の小銃弾薬は存在するのか否かという問題に関しては、以前の別の文章、「(頑住吉注:意味不明の慣用句ですが、たぶんいろいろな花が咲き乱れていると目移りする、というような意味と思われます)・アメリカの新型小口径弾薬と「最良の口径」の確定」(ブログ内にある。自分で探されよ)の中ですでに比較的詳細な分析を行った。真正の最良口径は確定することが難しい。何故なら銃器の種類ごとに用途、性能とも異なり、1種類の「最良」を強硬に指定すれば、その最終的な結果は、何らかの種類の特性を比較的良好に発揮させることもできず、同時に新たな弊害ももたらされる、ということに他ならない。つまり通常言うところの「あぶはちとらず」である。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ロシアが1990年代に研究開発した6mm汎用弾薬(中)。元々の計画はやはりアサルトライフルの使用にも供せるし、また中口径大威力小銃弾薬に取って代わることもできる新型小銃弾薬を研究開発したいというものだった。しかし広範な種々のテストを経て、最終的にはやはりこの目標は実現できなかった。」 恐らくこれは、「ゲナーディ・ニコノフとAN-94」に登場した、カラシニコフの息子がAK後継機種に使った弾薬でしょう)

DBP10新弾薬は以前の数種の5.8mm銃器との「共用」の保持を確保するため、薬莢の寸法には改変がなされず、薬莢のボディ部分の最大直径は10.4mm、リムの直径は10.5mm、薬莢の傾斜度は1:50.4で、その薬莢のテーパーは目下世界の三大小口径小銃弾薬の中で最大である。このため中国の5.8mmマガジンの弧度も各種の小口径小銃の中で最大で、これは携帯および使用時に大きな不便をもたらしている。すでに公開されているデータによれば、DBP10弾の距離1000mにおける残存運動エネルギーは220ジュールであり、一方元々のDVP88式重弾は200ジュールである。この運動エネルギーはSS109や7H6弾頭の距離1000mにおける残存エネルギーに比べてかなり大きいものの、DVP88重弾薬の弾頭は重量5gであり、DBP10弾頭はDVP88を基礎に改良してできたものなので、基本的にこの重量とさほど変わらないに違いない。つまり、この運動エネルギーの向上は、重量がより大きいメリットのせいに過ぎない。弾頭の外形および構造設計双方からは、DBP10弾薬は遠距離における貫通性能向上を主要な性能として設計されたものであることが見て取れる(この弾薬の貫通性能に関しては公開されている資料の中でまだ詳細に紹介されていない)。加えて95-1のライフリングピッチは210mmに改められており、弾頭の飛行はより安定し、このため本来小口径弾薬が持っている生体目標に対する殺傷力が比較的大きいというメリットは、歩兵の通常の交戦距離内では出現しにくい。必ず指摘しておかねばならないのは、公開されている資料の中で比較に用いられているSS109と7H6小口径弾薬は、それぞれ1970年代および1980年代に設計された製品であり、国産の53式普通弾薬は国内で1960年代にコピー生産された製品であることだ。最新設計の製品として、DBP10弾薬とこれら旧式弾薬自体との間には、技術年代上の隔たりがあり、簡単、直接的に対比することには厳密性や公平性の問題もある。この他、弾頭の距離1000mにおける残存運動エネルギーから見て、DBP10弾薬と7.62mmx54R LPSスチールコア普通弾薬、7.62mmx51M80普通弾薬のような中口径大威力小銃弾薬とは依然比較できない。これは、何故これほど多くの軍事強国が努力、探索しても実りがなく、全て小口径小銃弾薬と中口径大威力小銃弾薬の共存を選択しているのかの原因でもある。実際のところ、現段階における小火器発展のレベルから見て、いかなる国も中国のように安易に中口径大威力小銃弾薬を放棄、あるいは放棄の準備をしてはいないのである。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ボクサープライマー、塗装仕上げのスチール薬莢を使用しているDBP10普通弾薬と、ベルダンプライマー、銅で被覆したスチール薬莢を使用しているDBP10普通弾薬の外観と構造の対比。図ではその弾頭構造の設計がDVP88重弾薬と差異が大きくないことも見て取れる。」 イラストからは、ベルダンプライマーの「伝火孔」はダブル、ボクサーはシングルであるのも分かります。ボクサー、ベルダンの差異についてはここで触れたことがあります)

DBP10弾薬にはまだ1つ人を不可解にさせる所がある。この弾薬には目下2種類の様式があり、1つは塗装仕上げのスチール薬莢を使用しているがボクサープライマーを使用しているもの、もう1つは銅で被覆したスチール薬莢を使用し、伝統的なベルダンプライマーを使用しているものである。これもこの弾薬の1つの「独創」的なところと言える。何故同種の弾薬に2種類の異なるプライマー構造を使用しているのかは、現在まだ公開されている資料からは解答が得られていない。2つのメーカーの製品が共にトライアルに参加したのだと推測する人もいれば、前者は国外向け輸出のために設計されたのかもしれないと言う人もいる。この他、2010年1月23日の中央電視台7套(頑住吉注:CCTV-7。農業、軍事を扱うチャンネルだそうです)の、「人民子弟兵」という黄雪鷹(頑住吉注:「女槍王」の異名をとる中国のトップクラスの銃器技術者だそうです。どんな人かな、と興味を持ちませんか? こんな人です http://mil.cnr.cn/nbpd/jjnb/201105/W020110520320944249451.jpg まあそれはさておきモンゴル族だそうで、漢民族じゃないわ女性だわの中で頭角を現したんですから凄い才能の持ち主なんでしょう)を紹介した番組の中で、某国産新型小銃が試験中に早発火の故障(頑住吉注:完全閉鎖前に撃発が起こるということでしょうか)を起こしたと指摘されたことがある。黄雪鷹がメーカーの技術人員と共同で原因を調査したところ、ファイアリングピンとファイアリングピン穴のマッチングおよび定位置の寸法が問題を発生させたことに気付いたという。使用弾薬に問題が存在するか否かには話が及ばず、プライマーの様式の変更がこれと関係があるのかないのかは分からない。

全体重量から見ると、DBP10弾薬は全体重量が12.9プラスマイナス0.6gである。この重量は真鍮薬莢を採用しているSS109弾薬より大きいし、塗装仕上げのスチール薬莢を使用している7H6弾薬よりかなり大きい。これは我が国が当初に提出した小火器の重量軽減という目的に関して言えば、正反対とは言えないが、少なくともはなはだ遠くもある。もし56式普通弾薬の16.5gと比べれば、弾薬全体で3g余りしか軽減されていない。兵個人が200発の56式普通弾薬を携帯するとして計算すると、DBP10式小銃弾薬に換算すれば255発携帯できる。重量軽減の効果は西側の国の7,62mmx51NATO弾薬から5.56mmSS109弾への変更にも及ばないし、ロシアのM43弾薬から7H6弾薬への変更にも及ばないのは明らかである。小口径小銃弾薬は比較的材料の節約になると言う人がいるかもしれないが、実はこれは中口径大威力弾薬に関して言うことであって、56式普通弾薬のような中口径中間威力弾薬に関して言えば必ずしもそうではない。弾薬の生産中、弾頭のジャケットや薬莢にはいずれも板材あるいは棒材の原料が採用され、材料を加工機械に入れ、プレスあるいは押し出し加工を行い、さらに何度も引き延ばし加工を行って徐々に製造していく。弾頭のジャケットはさらにプレスで尖らせ、コアを入れ、尾部を巻き込み加工するなどの工程が必要で、薬莢にも熱処理、口部を絞り切断する等の工程を経る必要がある。加工時には分量に充分な余裕を留保することが必須であり、もって加工完成後の切り揃えに便利とする。この種の切り落とされる部分は加工の中で「金属損失」と呼ばれ、部品の直径が小さくなるほど、あるいは細長くなるほど、金属損失の率も大きくなる。このため1発ごとの弾薬が使用する金属を単純に計算するのは非科学的である。特に小口径弾薬に関して言えば、小口径薬莢と弾頭はいずれもその他の弾薬に比べ細長いため、生産過程における金属損失の率もより大きいのである(頑住吉注:切り落とした部分って、一定程度たまったら溶かして再利用とかできないんですかね)。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ロシアが改良した7H10弾頭の外観とスチールコアの外観(左)および7H22徹甲弾頭の外観とスチールコアの外観(右)の対比。この中で7H10スチールコアが使用しているのは普通の高炭素鋼であり、7H22が使用しているのは高炭素工具鋼である。国産の5.8mm口径弾薬も類似の考え方に照らして改良を行ってもよいが、どうしてもいわゆる「共用弾薬」を探し求めなければならないわけではない。」 ここの記述と照らし合わせると、やはりこの文章ではNがHに置き換わっているようです。あるいはキリル文字をアルファベットに変換する場合に2つのやり方があるのかも知れません。)

総合的に見ると、間違いなく初めての出現ではあるが、DBP10新弾薬にはいくらの「新たな境地」もなく、別の言い方をすれば突出したメリットはない。この弾薬のいくつかの性能はすでに早くになされた設計の中に制限されており、同時に過度に共用性も考慮され、いくつかの方面の突出した性能を犠牲にすることが迫られ、最終的に全体性能の凡庸がもたらされた。少なくとも部分的な性能上DBP10弾薬は世界のその他の小口径弾薬となお距離があり、まして全面的超越が実現されたとは言えない。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「既存のDBP95小銃弾薬には本来銅で被覆されたスチール薬莢と塗装仕上げのスチール薬莢の2種類の様式があり、DBP10の2種類の様式と外観が基本的に一致し、バラの弾薬は極めて混ざってしまいやすい。」)

注:本文で触れたデータはいずれも国内外で公開された資料から引用したものであり、一部の画像は「軽兵器」2011年12月上旬号から引用し、その他の画像はいずれもインターネット上から引用したものである。この他、本文は個人の視点を表すものにすぎず、自己の感慨を文章化したものに属する。専門家諸氏は思い切り叱らないでいただきたい。ただし例えば転載が必要なら出所も明記してほしい。


 かなり辛口の評価ですが、現在の路線のまま行けば2種類の旧弾薬を使い切ったらこの弾薬に統一されるということになるんでしょう。基本的にはこれまでの重弾薬に近いですが、真鍮ジャケットによってバレルへの負担を減らし、ライフリングピッチをきつくして弾丸の飛行を安定させ、飛行中の空気抵抗を減少させて遠距離における残存エネルギーを高め、スチールコアを細くして貫通力を高めてあるわけです。貫通性能は公表されていないそうですが、1000mにおける残存エネルギーが重弾薬の1割増しというのが事実なら重弾薬よりはっきり向上しているはずです。真鍮ジャケット、6本のライフリングと、中国の銃器がよりロシアの影響下から遠ざかり、部分的には西側に接近していることが分かり、興味深いです。この弾薬は5.56mmx45、5.45mmx39よりやや強装ですが、果たして本当に7.62x54Rフルサイズ弾薬を放棄してしまえるのかにも注目したいです。
















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