2.6.2 固定された包底面と可動バレルを持つピストル
 
 この構造の銃の場合、包底面はフレームに固定されている。バレルはフレーム内でバレル軸線方向に移動可能に収納され、バレルスプリングによってその後端を包底面に押し付けられている。2.6-4は連発作動時の動きの経過を示している。Rはここでもバレルを表し、Sは包底面を表している。発射の際バレルはレスト位置(1)からバレル内壁における弾丸の摩擦によって前方へと加速される。この結果バレルはストッパー位置まで走る(2)。バレルスプリングはバレルの後退をもたらす。バレルはこの際に弾薬をマガジンから受け取り(3)、そして最終的に再び発射位置に来る(4)。



図2.6-4 固定された包底面と可動バレルを持つセルフローディングピストルの動きの図式

 このタイプの銃は稀である。図2.6-5はベルリンのA.W.Schwalzloseによって1908年に作られた7.65mmブローニング弾薬仕様のピストルを単純化した断面図で表現している。この銃は前に位置するグリップセーフティありでも、なしでも作られた。



図2.6-5 シュワルツローゼポケットピストルの単純化した断面図。口径7.65mmブローニング、ピストルの全長約140mm、銃身長約105mm。

 固定された、あるいは発射時に後方に滑るバレルを持つ銃の場合、バレル内における弾丸の摩擦がリコイルショックを減らす。銃が弾丸によってバレルを使い、いわば前方に引っ張られるからである。だがシュワルツローゼピストルの場合リコイルショックは強められる。弾丸だけでなくバレルも前方に加速されるからである。

 前方に走る塊の運動量は次のようになる。

m1v1+m2v2=Kt

 m1は弾丸の質量、v1は弾丸の速度、m2はバレルの質量、v2はバレルの速度である。ガスの運動量は無視されるべきである。この(頑住吉注:この種の銃で前方に加速される部分の)運動量は弾丸の移動時間(この場合約0.5ms 頑住吉注:1/2000秒)の間に手に伝達される。一方ノーマルなセルフローディングピストルの場合、これはよりゆっくりと伝達される。前出の方程式によれば、作用するリコイルショックの力K=I/tである。短い伝達時間および大きな運動量ゆえに、Kはシュワルツローゼピストルの場合、後退するスライドを持つ匹敵する銃よりもはっきり感じられるほど大きくなる。リボルバーの場合のようにこの銃は発射時リコイルショックによって強く持ち上げられるので、バレルはサイティングの際ノーマルな射撃距離(25m)において明らかにターゲットの下を指さねばならない。このことはこれに応じて高いフロントサイトによって達成される。

 シュワルツローゼピストルの場合この強いリコイルショックが、マガジン上部に位置する弾薬が一部マガジンから出、その前にある空間内に滑り、弾丸がいくらか上に傾くという結果をもたらす。するとすぐ弾薬は前方に走るバレルによってフリーにされる。後退するバレルはその後でこの弾薬をチャンバー内に受け入れる。この再装填の経過は可動のスライドを持つセルフローディングピストルの場合よりはるかに直接的でなく、信頼性にも欠ける。

 さらに、ハンマーに特別なコック設備が必要になり、薬莢の投げ出しが次の弾薬によってなされねばならないことも考えるべきである。したがってこのようなタイプの初期のピストル(そして今日まで最後のものである)が特別な成功を収めなかったことは不思議とは受け取られない。


 ここで取り上げられているのはいわゆるブローフォワード式の銃です。私は日野式の「実銃について」で、ブローフォワード式の銃とは原則的にはスライドにグリップが付属したブローバック式の銃のことであるとしましたが、サイト「waffeninfo.net」の説明も、ここの説明もそれとは異なっています。つまり、この種の銃は包底面が固定された単純な単発ピストルやリボルバーに近いものであり、包底面がブローバックするのではなくバレルが弾丸との摩擦で前進するのだ、ということです。この部分の解釈は異なっていますが、「実銃について」で書いた、通常のブローバックよりリコイルショックが強く感じられるのでは、という推測は当たっていたようです。その理由は、この形式ではバレルも前方に強く加速され、これも弾丸とならんで反動を生むからだ、とされています。ただ、この筆者は「リボルバーの場合のようにこの銃は発射時リコイルショックによって強く持ち上げられる」と書いていますが、この筆者の理屈に従えば同程度の運動量の弾丸を発射する同程度の重量のリボルバーを発射した場合よりはっきりリコイルショックが強くなくては理屈に合わないはずで、どうも釈然としないものが残ります。