「ザ・プロテクター」製作記

これは「ザ・プロテクター」の製作情況をお知らせした記録です。なお、他ページと重複する画像は削除しました。

9月14日
 「ザ・プロテクター」はきわめて特殊な形状をしていますが、分類上はターレットピストルに入ります。ターレットピストルはリボルバーが発明された頃、同じように連発システムとして考案されたもので、パイナップルの輪切りのようなドーナッツ状のマガジンに放射状にチャンバーが並んでいるものです。リボルバーとはブローバックとブローフォワードの関係みたいなもので、要するにリボルバーに及ばないために廃れた形式というわけです。最大の問題はリボルバーより弾倉が大型化しやすいということだったようです。しかし「ザ・プロテクター」はこの特殊な連発システムを非常にコンパクトにまとめた傑作です。まあ、現在この形式が生き残っていないということは問題点も多いということですが、それはおいおいお分かりになるはずです。今回の製品はたぶんトイガン史上最初で最後のターレットピストルとなるでしょう。
 形式としては原則的にモデルガンになります。各パーツの構成や働きはほぼ実銃通りに再現できそうです。ただ、昔の銃ですからほとんどのスプリングが板バネになっており、大部分をコイルに変更せざるを得ず、外部から見えてしまうものも出そうです。
 「ザ・プロテクター」はよく懐中時計と比較されます。しかし、本体の構成は底板があり、ハンマーなど撃発機構およびターレット回転機構があり、ターレットがあり、着脱式の上蓋がある、というものです。最大口径のモデルは8mmですから少なくともこの機種のターレットの厚みは9mm以下ではないはずです。メカ部分はは限界まで薄くなっているでしょうが3mm以下ということは考えにくいです。底板も上蓋も平面ではなくゆるやかな曲面になっていますから厚みは3mm以下ではないはずです。正確な厚みのデータはないのですが、懐中時計よりははるかに厚みがあるのは疑いの余地がありません。そして、精度、剛性に欠けるプラキャストで作ると、ここからさらに厚くなってしまうのはある程度避けられません。また、リボルバーと違い、外からはターレットが回っているのが銃口をのぞきこまない限りまったく見えないというのも難点です。場合によってはハンマーノーズでペレット弾を叩き出すようなギミックを加えることも考えますが、これにはターレットの停止位置およびハンマーの倒れるタイミングが完璧に正確でなくてはならないため難しいかもしれません。できたとしても飛ぶというほどは飛ばず、ちゃんと回転していることの確認程度に留まるでしょう。まあ、プレッシンの時もトリガーを握りこんだとき「カチ、カチ」と音がするだけで外からは何が起きているのか全く分からないという悩みがあって、それと似た感じです。
 救いなのは、ターレットを回すこと自体はリボルバーのシリンダーを回すことよりずっと容易だということです。リボルバーの場合シリンダーの中心近くに細かいラチェットがあり、これを動かさなくてはならないのできわめて高い精度が要求され、また大きな力が必要になります。これに対しこの銃ではターレットの底がラチェットになっているので中心から遠いところで動かすことになり、その分楽なわけです。

9月17日

 今こんな感じです。すでにほぼ機能が揃い、後は細かい造形に入ります。これはさほど困難ではないと思いますが、それより生産段階の方が苦労が多そうです。一体ではどうしても抜けない部分、強度の確保が難しそうな部分、作動の調整に苦労しそうな部分などが多いです。あらかじめお断りしておきますが、今回は原則完成品のみの販売になると思います。

9月21日

 現在はもう少し進んでいますが、おおざっぱな内部構造をお見せします。底部にハンマーメカおよびターレット回転メカが入り、その上にターレットが乗り、フタを閉める、というわけです。この時点ではターレットを動かすパーツを0.5mmプラ板とし、自身の弾性を利用しようと考えていたんですが(実銃ではおそらく薄くするためでしょうが、板バネを使っています)、無理っぽいのでスプリングで動く別パーツに変更しました。ハンマースプリングは残念ながら板バネにはできず、コイルになりますが、そのスペースはウェイトに利用します。
 ほとんどのスプリングが板バネからコイルに変更される他はほぼ実銃通りのメカとなります。後部のレバーを握りこむと上のアームがダブルアクションオンリーでハンマーを動かし、同時に下のアームがターレットを回転させます。レバーを押しきるとシリンダーストップにあたるパーツがターレット周囲の切り込みに食い込んで止め、ここでハンマーが倒れます。下に見えるスライドするパーツはセーフティで、シリンダー(ターレット)ストップを妨害することでレバーを押しこめなくします。フタはいわゆるバヨネット結合で、90度回転して着脱します。実物よりかなり厚くなりますが、それでも小パーツの厚みや強度、寸法のツメなどでギリギリの部分が多くなってしまっています。放射状のターレットなど型で抜くのが大変そうなパーツも多いです。大丈夫かなーといったところですが。来月末売りのアームズマガジンに間に合わせるために10月第一週中の試作品第1号完成を目指しています。

9月28日

 サーフェイサーをかける直前の状態です。現在は簡単な形状のパーツから型取りに入っています。今回いちばん型取りで問題なのはやはりターレットです。リボルバーなら全てのチャンバーと軸穴が同じ方向を向いているので一回でシリコンゴムを流し込むことができますが、ターレットは放射状なのでせいぜい2つくらいのチャンバーに流し込んだら硬化するのを待ち、次、次と進まなくてはなりません。また、もし金型なら各チャンバーごとに別方向に抜く細分化された型になるわけです。ゴム型の場合はそこまで必要ないとはいうものの、かなり大変です。
 ちなみに実銃は6〜10連発でした。リボルバーの場合装弾数が多くなるほどラチェットが細かくなって難しくなりますが、ターレットの場合は中心から遠いところで動かすのでこの問題はありません。むしろ装弾数が少ないと回転角度が大きくなって難しくなります。そこでこのモデルでは最大の10連発にしてあります。外観は最大の口径8mmのものになるべく似せていますが、肉厚をとらねばならない関係上ターレットに入るのは口径6mmのカートリッジになります。
 たぶん価格はアイバージョンソンと同程度になると思いますが、まだわかりません。

10月5日
 試作第1号何とか完成しました。

 グリップと言うのか、実銃ではハードラバー製のリング状の部分は裏からネジ止めする予定でしたが、肉が薄くて表面に凸が浮き出てしまい、2mmスチロール丸棒を植えて裏から熱でつぶして広げ、固定する方法に変更しました。結局スプリングは全てコイルになりましたが、メカや操作方法はほぼ完璧な再現です。というわけで、

 組み立てや作動調整は意外に簡単でしたが、アイバージョンソンのときも初めは簡単だったのがどんどん困難になったのでまだわかりません。発射機能は無理のようなので断念し、純モデルガンとしました。通常私はモデルガン形式の場合バレル内を閉鎖しますが、この銃の場合はバレルが筒抜けでないとターレットが回っていることが外部から全然わからないので今回は筒抜けになっています。まあ、全体の強度はLS製プラモデル程度なので問題ないと思います。通常の銃とは全く違う形状とメカで、製品としてはプレッシンより面白いものにできたと思います。「シャキンシャキン」という作動の感じは「死の標的」で見る実銃とよく似ているようです。


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