ベレッタPX4ストーム

 先に紹介した「公用ピストル、SMG、PDWのトレンド」の記事の中に、ベレッタの「新しいマルチキャリバーピストルが今年の秋、アラビア湾のセキュリティメッセで公開された」旨の記述がありましたが、その時点で私はそれを全く知りませんでした。そして次の号にあたる「Visier」2004年12月号には早くもこの銃のレポートが掲載されていました。私も雑誌に関わっていた頃に経験がありますが、この記事は通常のようにサンプルを借りて試射まで行ったものではなく、イベントの現場で撮影させてもらい、レポートの形式に仕立てたものです。それでも独占レポートということなので内容的には貴重だと思います。
 この銃はごくおおざっぱにはクーガーをプラスチックフレーム化したものに近く、公用を意識した機種と思われます。

 ベレッタUSAの公式紹介ページはここです。
http://www.berettausa.com/product/spotlight/spotlight_px4_main.htm

 こちらは今回訳した「Visier」の記事の写真の一部をスキャンしてアップしたページです。
http://www.npsa.lt/ginklai/BerettaPX4Storm/B_px4.htm


交代?(頑住吉注:「Visier」は凝った記事タイトルをつけることが多くていつも苦労しますが、今回は珍しく何のひねりもないタイトルです)

 イタリアからの予期せぬ出来事。すなわちそれはPX4ストームというベレッタの新製品と、それを新しいピストルファミリー構築のベースとする方向性である。この独占レポートは、これが92系シリーズにとって何を意味するのかということも密かに教える。

 アメリカのニュージャージー州、Picatinnyにあるこの役所は、「Office of the Programm Manager Soldier Weapons」」という名称であり、USアーミーにおける銃器調達に関し相応の管轄権を持つ。目下この機関が新しい陸軍公用ピストル公募の準備をしているという兆候が強まっている。1982年に採用されたM9、別名ベレッタM92は苛酷な実射において批判される点があることが分かっており、部隊は交代を要望している。だがひょっとするとヨーロッパ最大の銃器コンツェルンはこの先も足をアメリカ人のドアの中に留めるかもしれない。ベレッタ社のDr.Paolo Raffaelliは、彼の社が公用ピストルサイズの新ハンドガンに取り組んでいるという噂が正しいと認めた(頑住吉注:持って回った書き方で分かりにくいんですが、「ヨーロッパ最大の銃器コンツェルン」とはベレッタ社のことで、アメリカ軍が制式ピストルを更新するにしてもベレッタ社が引き続き供給する可能性もある、すなわちその候補がこのPX4ストームだ、ということではないかと思います)。

 2004年10月初め、カタールの首都ドーハにおける専門展示会ミリポルでデビューしたベレッタPX4ストームは、なおいくらか一般大衆の外でお祝いされている(頑住吉注:またよく分からない言い回しですが、たぶん単にまだいまいち一般の知名度が低いという程度の意味だと思います)。公的機関の代理人らとは異なり、Visier誌ライターのNicola Bandiniだけが現場においてこの新製品を詳細に観察した世界最初のジャーナリストとなった。

個々のバリエーション
 2年間の開発局面の後、PX4ストームはプラスチック製フレームつきで、そして9mmx19、9mmx21、.40S&W、.45ACPという4つの口径で出現した(頑住吉注:ご存知でしょうが、9mmx21というのはイタリアで軍用弾薬の9mmx19を使用する民間用ハンドガンが禁止されている関係で民間用として代わりに使われている弾薬です。本来は9mmx19より強力ではないんですが、薬莢が長いので多量の発射薬を入れてホットにすることもでき、「9mmメジャー」などといってアメリカのマッチで多用されたことがあります)。この銃はトリガー、セーフティ設備の互いに異なる以下のバリエーションで提供可能である。

「FS」 DAトリガーと、デコックおよびセーフティがコンビネーションされたレバーを持つスタンダードバージョン(頑住吉注:「DAトリガー」と言ってますがこれはDA/SAのことで、要するにM92FSと同じようなタイプですね)。
 ダブルアクションオンリーでセーフティなし。
DS ダブルアクションだがデコック機能なし(頑住吉注:FSとほぼ同じだがコック&ロック可能、つまり東京マルイのブローバックM9みたいなタイプですね)。
 ダブルアクションでデコック機能のみあるがセーフティ機能なし(頑住吉注:92シリーズにもありましたがレバーはデコック機能のみで、たぶん作動後スプリングの力で復帰するんでしょう)。
「Fast Action」 つまりセミダブルアクション撃発機構つき。

 PX4のスタンダード型はこの秋、軍および警察でテストされている(頑住吉注:「軍」、「警察」とも単数形ですがどこの国のか特定されてません。ドイツのとは思えませんからイタリアのだと思います)。量産品の銃は2005年春マーケットに登場する。そしてDr.Paolo Raffaelliの情報によれば、より小型のPX4ストームコンパクトおよびマイクロはそれぞれ2005年秋、2006年春に続いて登場する。

技術的ディテール
 まず新ピストルはアメリカのカテゴリーにおける「フルサイズ」に該当し、より小さいコンパクトあるいはサブコンパクトクラスには属さない。全長193mmにより、この銃はベレッタ92FSよりたっぷり25mm短く、そしてベレッタP8000クーガーより約13mm長いということになる。ちなみにPX4はP8000クーガーのように閉じたスライド、別の言い方をすればそれ以前ベレッタのトレードマークだった非常に特徴的な上部が大きく開放されたスライドを持たずに登場した。上部が大きく開放されたスライドはベレッタがその最初のオートピストルである7.65mm口径モデル1915ですでに導入していたものであり、そしてそれ以来ずっと同社のたいていのピストルモデルで保持し続けたものである。1995年に紹介されたP8000クーガーによって初めて閉じた上部を持つ9mmパラベラムバージョンの銃が結果として生じ、そして今これがPX4スライドの構造の基礎としての役割を果した。

傾斜の代わりに回転
 バレルの「あやつり」と閉鎖でもベレッタは普通から逸脱している。すなわち92系でお馴染みの「Schwenkriegel」(頑住吉注:英語で言うロッキングブロックですが言葉の成り立ちは全く違い、あえて直訳すれば「方向転換かんぬき」といったところです)から離れ、P8000クーガーが持ったような、そして設計者Karel KrnkaとGeorg Roth(頑住吉注:ステアーの初期モデルの設計者です)がすでに前の前の世紀の転換期に開発していたような、バレル回転閉鎖システムに移った。すなわちこの方式ではバレルはロック、アンロックの際回転する。そして同時にバレルはコルトガバメントのスタイルで傾斜はせず、一直線上に前後に移動する。
 (頑住吉注:これは基本的にはクーガーと同じであるが)だがベレッタはPX4シリーズ用にクーガーシステムを綿密にモデファイした。PX4には、120度が3つというバージョンの代わりに、180度作動する2つの閉鎖用突起がある(頑住吉注:クーガーの場合正面から見ると閉鎖用突起が放射状に3等分された120度づつの位置にあり、閉鎖解除にも120度回転しますが、PX4では正面から見ると2つの閉鎖用突起が左右方向に一直線上に突き出しており、閉鎖解除には180度回転して垂直になるわけです)。この方式は以前苛酷な使用をした後の9mmx19を越える弾薬仕様のクーガーでありえたような、部分的な極度の火薬の残りかす(頑住吉注:による作動不良?)を阻むよう意図されている。ベレッタによればその上銃の射手自身によるクリーニングを簡単にするという(頑住吉注:もう少し補足します。説明の便のため閉鎖用突起と書きましたが、実際には独立した突起ではなくチャンバー自体が多角形で、先端をやや平らにした角の2つがラグの役割を果します。うち1つ、エジェクションポート側の突起はエジェクションポートの前縁とかみあってロックが行われ、独立したリセスを機械加工で削る必要がありません。ただし写真ではおぼろにしか見えませんが奥の突起とかみ合うリセスは削られているはずです。この方法はいわばティルトバレルにおける独立したラグ、リセスがなくチャンバーがエジェクションポートにはまってロックするシステムの回転バレル版に近いものと言えるでしょう。この方が製造コストも下がるでしょうし、確かにクリーニングも楽そうです。)。

スリムな胸囲
 ストームのスライドは完全に新しい形状を示している。それはベレッタではお馴染みの四角形断面の真ん中の上に丸い部分がある形状ではない。代わりにPX4のスライドは、側面に2つの、バレルに沿った「斜め平面」のある新しい上部を手に入れた。この「斜め平面」はマズルに近づくにつれて幅広く、そして同時に深まっている。これが重量を削減している。それでもバレルとスライドで銃の正味重量の75%を占めている。この(頑住吉注:前方に行くにつれて大きく肉がそがれた)デザインは、このピストルがフロントヘビーにならないように配慮したものである。結果的な形状でクーガーのスライドデザインを思い出させるのは、もはや内向きにカーブしたエキストラクターの配置とエジェクションポートの開口だけである。

下部は軽量な構造方式
 PX4により、ベレッタは同社初の公用ピストルフォーマットにおけるモジュラーとして作られたハンドガンを登場させた。すなわち、トリガーグループは全ての作動、点火エレメントが、簡単に取り除けるボックス内に一緒に統合されている。このボックスはフレーム内にセットされ、1本の弾力のあるプラスチック製ピンによって固定されている(頑住吉注:要するにプラスチックフレーム内に内部メカを組み込んだ亜鉛ダイキャストのサブフレームを組み込み、ピンを何本か抜くことで内部メカをそっくり取り出せるという日本のトイガンによくある形に近いわけです。また、ここをずっと読んでいる方はご存知のようにこの形式を取っている実銃にはMP446バイキング、ステアーM-A1、ザウエルP250DCcがあります。ボックスが1本のピンで固定されている旨書いてありますが、これはハンマーの軸になっているピンのことのようで、たぶん日本のトイガンの一部同様真の軸はパイプ状になっているんでしょう。スライドストップやトリガー軸も抜かないとユニットとして取り出せないのではと思いますが詳細は不明です)。このアイデアの背後には次の事実がある。すなわち修理不能の損傷または障害が起きた場合、このボックスを最短時間でそっくり交換できる。

良好にコンビネーションされた
 PX4の下部構造はそう描写されるのがベストである。というのは、その構造は多くの有名なピストルモデルの要素を統一したものである(頑住吉注:要するにいいとこ取りの寄せ集めデザインということです)。グリップ角度はクーガーと同じである。そしてワルサーP99が初めて試みたように、グリップの形とトリガーからグリップ後部までの距離を、1本のスプリングで固定されたいろいろなインサート部品によって変えられる。この部品を交換するためには、射手は単にマガジンを取り出すことが必要となる。その後、射手は例えば自分の自動車のカギや小さな刃物の助けによってマガジン挿入穴内に収められたスプリングを押し込み、その後グリップ後部部品はグリップ下に引き出せる。

 全てのオーストリア製グロックピストルの所有者は取扱説明書を調べることなしにPX4ストームをも分解できる(頑住吉注:要するに同じ分解方法だということです)。操作者は分解のためにトリガーガード上にある2つの滑り止めミゾつきのロックパーツ(ベレッタの場合深い窪みの中に収められている)を、親指と人差し指で引き下げる必要がある。その後手で上部分を約2mm前に押し動かし、そして上へ持ち上げることが出来る。

 操作者はこのピストルを2つの主要グループに分解するわけだが、このときP8000の場合にはまだそういうケースがあったようにどこかのパーツが転がり落ちることはない。すなわち、「かんぬき-スプリンググループ」(頑住吉注:クーガーと似た、リコイルスプリング、ガイド、そしてバレルとかみ合って回転させる上向きの突起のついたブロックを含むひとかたまりを指すようです)がバレルとスライドを結合した状態に保つからである。より軽くスライドが引けるよう配慮して、リコイルスプリングはガイドに通されている。P8000の場合と異なり、PX4では紛失する可能性はない。バレルのかみ合いを解いてスライドから取り出すことを可能にするために約30度回転しなくてはならならず、それで初めて操作者はリコイルスプリンググループを取り去ることができる。

 ドーハで初めて行ったドライファイアテストが示したように、PX4のグリップ角度はクーガーのそれに酷似している。したがってこの銃は射撃姿勢をとる際、直感的に射手の手に非常にまっすぐな角度に持ってくることができる。その上さらに特別に軽いピストル全体の重量がプラスとして加わる(頑住吉注:特別に軽いのはクーガーと比べた場合の話で、プラスチックフレームオートの中で特に軽いわけではありません)。この銃の重量はは9mm弾薬17+1発のフル装填時でさえなお軽い。事実、PX4ストームは非常にリアヘビーな印象を与える。射手が装填状態の銃で目を閉じて狙うと、彼はトリガーガード以外はもはや存在しないような気がする(頑住吉注:重心位置のトリガーガード付け根下部が中指付け根にかける小さな重量を感じるだけになる、ということが言いたいんでしょうがいくらなんでもオーバーでは? ただまあハンドガンの場合重心が後方にある方が軽く感じる傾向があるのは確かで、データ上の重量が同程度である他のプラスチックフレームオートより軽いような印象を受けるのは事実なのかもしれません)。

 トリガーの作動抵抗とキャラクターは紹介された見本品の場合ソフトでクリアな印象を与えた。これはダブル、シングルアクションモードともである。試験的に使ってみたこの銃の場合約1500gでハンマーが落ちた(頑住吉注:これはSAと思われます)。

 だがこの点の最終的判定は、将来量産品から出た見本品を手にしたときに初めて下せる。

古典作品の終わりではない
 新しいPX4ストームピストルファミリーはベレッタ92シリーズと交代するために作られたのではない。ベレッタ社のDr.Paolo Raffaelliはこれに関する全ての質問に対し、きっぱり「No」と答えた。

 そのかわりに彼はこれに関し、Gardone Val Trompiaの会社(頑住吉注:ベレッタ社)は両銃器シリーズを平行して提供していくと説明した。Raffaelliによれば、92系ピストルはまだ非常に生き生きとして元気であり、2005年1月にはラスベガスにおけるSHOT Showで「ラジカルな新形状バージョン」がイタリアの有名人に贈られる予定である。彼によれば公用マーケット向け、民間マーケット向けとも同様に予定されたその型は「90Two」という。

「春から供給可能」(頑住吉注:囲み記事で、本文にも登場しているベレッタ社のDr.Paolo Raffaelliのインタビューです。ちなみに少なくとも私にとってくだけた話し言葉はきっちりした書き言葉よりはるかに解釈が難しく、本文より確度は低いです。)
 PX4のケースではヨーロッパマーケットはUSマーケットの請求権の下で苦しむことはないと、ベレッタグループの公用注文に管轄権のあるマネージャーDr.Paolo Raffaelliは約束した。VisierライターのNicola Bandiniはドーハで彼と話した。

Visier:ヨーロッパのシューターは新しいPX4の商品化から何が期待できるでしょうか。
Dr.Raffaelli:あなたのその質問が無意識に、過去に属するヨーロッパ向けと比較してのUSマーケット優遇に基づいているのであれば私はあなたに、旧世界のシューターおよびコレクターが甘い夢を持てることを保証します。すなわちベレッタはワールドワイドに活動している会社であり、実際全ての国で契約を行っています。そういうわけですから我々は他の中の1顧客をあからさまにひいきすることはできないのです。疑いの余地なくアメリカマーケットは非常に大きいです。アメリカマーケットは常に我々にとってベストの存在であると証明されてきたかもしれません。それにもかかわらず、きちんとした量が個々のマーケット向けに見込める場合には、我々は持てる力の全てをもって、新ピストルを大西洋のこちら側でも同時にマーケットに持ち込むために努力します。
Visier:ところでそれはいつになりますか?
Dr.Raffaelli:最初の4〜5千挺は初春には商品になります。これはラスベガス(SHOT Show)とニュールンベルグ(IWA)における両大規模メッセの直後のことです。PX4ストームのコンパクトバリエーションの場合は我々は2005年秋まで待つことになります。そして第3のモデル、サブコンパクト型のPX4ストームマイクロが導入されるまでには、さらに6カ月が過ぎることになります。ここに挙げた全ての銃は、9mmx19(自国では9mmx21)、.40S&W、.45ACPという4つの口径でスタートします。
Visier:ステンレスモデルも登場しますか?
Dr.Raffaelli:その種の銃は現時点では計画されていません。ですがベレッタは需要からくるこのような種類に常に強い注意を向けてきています。プラスチックフレームを考慮に入れた場合、ステンレスバージョンは疑いなく興味深いバリエーションになる可能性があります。しかし私の考えは、スポーツバージョンに大きな注意を向ける価値があるというものです。スポーツバージョンはPX4ストームのスタンダードバージョンとほとんどならんで供給されることになります。そしてスポーツバージョンはきっと全てのヨーロッパのシューターに興味を持たれるでしょう。
Visier:あなたはミリタリーマーケット向けにどんな期待を持っていますか?
Dr.Raffaelli:さあて、私は目下のところ正確なことは言えません。ベレッタの開発チームはますますミリタリー向けに活動しており、その目標はプラスチックフレームを装備したPDWタイプのフルサイズバージョンです。我々は現在当然そのスペシャルなマーケットに力を注いでいます。我々は強い反響を期待しています。そして正直な話、その上この銃を非常に競争力のある価格で警察部門に提供し得るように持っていくことも意図しています。

キャプション
新しいベレッタのセルフローディングピストルPX4ストームにはフレーム前下部にランプのための受け入れ部がある(その種のものはドイツでは公的機関のみが装備する)。トリガーガードの上にあるディスアセンブリーレバーのための窪みがよく分かる。

PX4のプラスチック製フレームにはP8000クーガーのようなリングハンマーがある。グリップは前後がチェッカリングになっている。グリップには右利きでも左利きでも操作できるマガジンキャッチボタンがある。銃は5つの(ランプは含まない)主要グループに分解でき、クリーニングしやすい。回転バレルは2つの閉鎖カムを持つ。閉鎖カムはスライドのエジェクションポート内、および後部にリコイルスプリングがマウントされたブロックとかみ合っている。下:ベレッタはスライド側面を削ることで重量を削減している。

スライド側面は前まで削られているので、前のスライドの滑り止めミゾは比較的短くなっている。スライド後部にはベレッタに特徴的なデコッキングレバーがある。セーフティオンのためには下に回転させる必要がある。

あぶみ型に曲げられたワイヤースプリングが除去可能なグリップ後部インサートを固定している。インサートはスプリングの取り出し後、下に外すことができる。ベレッタは現在までに3つの異なる大きさのインサートを開発しており、これによりお手本のワルサーP99を追っている。


モデル:ベレッタPX4ストーム
価格:未定
口径:9mmx19、9mmx21、.40S&W、.45ACP
装弾数:17+1発(9mmx19の場合)
寸法:全長193mm 全高140mm 全幅36mm
銃身長:102mm
照準長:146mm
空虚重量:780g(9mmx19、9mmx21)、815g(.40S&W)
型:プラスチックフレームを持つセルフローディングピストル。いろいろなトリガーシステムで供給可能(これはDA)。フロント、リアサイトは左右調節可。グリップ形状はいろいろに変えられる。


 私は本来のベレッタデザインは好きな方ですし、クーガーまではやや首をかしげながらも許せたんですが、9000Sでは「げ、なんだこの無様なデザインは」とショックを受けました。今回のPX4ストームのデザインも率直に言って大嫌いです。ちなみにPX4が9000Sのフルサイズバージョンでなかったことは、9000Sがダメダメだった証拠でしょうね。

 PX4のデザインは曲線的な部分と直線的な部分がいかにも不調和に見え、ひっかかりにくくしたいという意図は分かるんですが何ともはっきりしないセーフティレバーのデザインは子供の粘土細工かよと突っ込みたくなります。ただ、気色悪い印象を受けた原因のひとつだったスライドの斜めの削り加工は本文にあるような合理的根拠があってのことでした。だからって好きにはなりませんけど。

 回転バレルは理論上ティルトバレルより命中精度上有利とされますが、これはあくまで理論上のことで他の要素からいくらでも逆転の可能性はありますし、もし命中精度が多少良かったところで公用ピストルでは実際上さして有利にはなりません。コストダウンの工夫もしているようですがティルトバレルよりコストがかかるのは避けられないでしょう。他の部分ではこの銃はさして新味があるわけでもなく、最新のドイツ製品に比べると左利き射手向けの配慮では明らかに劣っています。私はこの銃が大成功する可能性は低いと思います。

 ちなみにクーガーと比べて変更されている点はおそらくクーガーにおいて実際に出た不満点なんでしょう。まず重量の過大ですが、これはスライドの軽量化とプラスチックフレーム化で解決されています。価格の過大もプラスチックフレーム化とロックシステムの簡略化でかなり改善されるでしょう。ロッキング部分の複雑な形状により、多弾数発射後の汚れで作動不良が起きるという問題もあったようで、これも形状の簡略化、またクリーニングしやすい形状にすることでによってどのくらいかは不明ですが改善されているようです。分解に関する変更を見ると屋外で分解した際に分解時にパーツが脱落、紛失しやすいという問題もあったらしいことが推察されます。

 本題以外でも興味深い点がいくつかありました。

 まず前回に続きこの記事にも米軍がサイドアームを更新する兆候が強まっている旨の記述がありました。アフガンでは調査の結果実際にはほとんど使われていないとされたハンドガンですが、イラクではどうもそうではないようです。対テロ戦争によって西側先進国が想定し、また実際に直面する戦争が様変わりしたことには何度も触れましたが、アフガンの山岳戦はともかくイラク等における市街戦では近距離戦闘が多くなり、ハンドガンの重要性が増し、これまでほとんど腰の飾りの役割しか果さずぼろが出ていなかったM9への不満が限度を越えてしまったのかもしれません。また、電気機器やそれに付属するバッテリーの携帯などで兵士の負担が増し、より軽量なハンドガンが求められていることもあるのかも知れません。

 92系の「ラジカルな新形状バージョン」、「90Two」というのがもうすぐ登場するというのもちょっと楽しみです。

 インタビュー記事を見ると、ドイツの銃器愛好家はヨーロッパメーカー製品であってもアメリカマーケット優遇の結果新製品がなかなか手に入らないことに不満を持っているらしいことが分かります。

 まだ写真も何もありませんが、PX4ストームにはクーガーにもなかったサブコンパクトバージョンが登場するということで、これが登場したら9000Sの存在意義はなくなるのではないでしょうか。








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