中国製QSZ92自動拳銃

 中国語のサイトに、国内ではまだよく知られていないQSZ92ピストルに関し詳細に紹介されているページがありました。

http://www.gun-world.net/china/handgun/qsz92/qsz92.htm

後に追加:ご指摘をいただきました。こちらも参照してください。


QSZ92自動拳銃系統

全体記述

QSZ92式半自動拳銃系統(通称92式拳銃)には2種の異なる口径の型がある。これら2種の口径の拳銃系統の研究開発は軍の使用部門が提起したもので、1987年から検討が開始され、1994年に正式プロジェクトとして立ち上げられ、工業部門に研究開発が委ねられた。1998年に9o拳銃およびその弾薬の設計定型が完成し、2000年に5.8mm拳銃およびその弾薬の設計定型が完成した。

新型拳銃系統は現在装備されている(頑住吉注:トカレフの?)模倣品である54式7.62mm拳銃に代えるために研究開発されたものである。要求には中国独自の特色が含まれ(頑住吉注:カッコ内に具体的説明があり、「無法量化」、「定義的指標」といったようなことが書かれていますが意味不明です)、全体性能は世界の同類武器の先進レベルに達するかあるいは超越し、新材料、新しい技術工程を広範に採用し、新構造に新機軸をも盛り込んだものである必要があった。このため、軍の論証部門科学技術人員は作戦部隊、特殊作戦部隊、各級司令部機関や軍事学校、また拳銃および拳銃弾薬生産に関係する工業部門にまで深くコミットし、会議を招集し、新拳銃の研究開発に関する意見を広く求めた。調査研究を通じて新拳銃の研究開発を導く思想が明確化した。すなわち威力を高め、弾頭の殺傷効果と装甲貫通力を増大し、重量を軽減し、維持修繕性を高めることである。さらに外形は美しくあかぬけしたもので、大量生産の便のため主要部品は互換性があるべきだった。

拳銃の口径を選定する論証の際、どんな口径を採用すべきかに関して異なる意見が一貫して存在した。1つの意見は外国の拳銃との口径統一を重視し、9mmx19パラ口径の採用を強く主張した。この意見は、意見を求められた人数の17%を占めた。その理由は次のようなものだった。外国の軍用拳銃の大多数は9o口径を採用しており、また9mmx19は鉛芯弾頭を持ち、人員に対し十分な殺傷威力を持ち、停止作用が良好である。ただし装甲貫通力は劣る。軍による拳銃弾の装甲貫通力に対する要求を満たすためには鋼芯弾頭を採用することができる。外形寸法やバレル内弾道はパラ拳銃弾と同じもので、新拳銃は新開発の鋼芯弾を使うこともでき、また作戦使用や輸出に有利なようにパラ鉛芯拳銃弾を使うこともできる。

別の意見は小口径拳銃の採用をあくまで主張し、これは意見を求められた人の63%を占めた。その理由は次のようなものである。小口径、小質量、高初速の弾頭の採用で殺傷威力の向上を図ることは現代歩兵兵器の一つの発展趨勢であり、近距離では小口径、小質量、高初速、細長い形状の鋼芯弾は人体への侵入の後容易に安定性を失い、偏向と転倒をもたらし、比較的大きな空洞を作り、人体に対し比較的大きな殺傷作用を持つ。かつ、焼き入れ処理された鋼芯は良好な装甲貫通力も持つ。この他、小口径弾頭は質量が小さく体積が小さいため弾薬携行量が増加し、将兵の負担を軽減し、作戦能力を高める。

論証研究を経ても2種の口径案はそれぞれ充分な理由があり、取捨選択し難かった。このため論証部門は9o拳銃を大隊長以下の軍官に装備し、5.8mm拳銃を連隊長以上の軍官に装備するという提案を行った。新拳銃系列の研究開発は同時進行されることになった。

実際上これら口径の拳銃2種の戦術、技術的指標は基本的に近く、いずれも軍用自衛戦闘拳銃の使用に関する要求に基づいて提出されたものだった。5.8mm拳銃の研究開発時、当初研究開発人員が戦術、技術指標に基づいて要求した設計方案では、銃の全長は190mmとされた。設計方案の詳細な検討の際、専門家と軍隊の使用者は、連隊長以上の軍官の自衛拳銃としては体積が大きすぎると感じ、銃全長の短縮を提案した。1995年3月、銃器弾薬廠で試験が行われた。銃身は110mmから90mmに短縮されたが、弾丸の精度と威力は110mm銃身と基本的には変わらなかった。そこで短銃身方案の設計が開始され、銃全長は170mmとなった。1996年2月までに短銃身方案は(頑住吉注:両口径型?)同時並行で設計、試作、試験されたが、いずれも理想的な結果には至らなかった。射撃時に手が振動(頑住吉注:リコイルが強すぎたということでしょう)し、銃口火炎、騒音が大きかった。1996年3月、当初の戦術、技術指標に回帰し、長銃身設計方案が設計の定型が完成するまで進行した。

92式拳銃系統の論証、研究開発は同時進行された。要求により9o拳銃は新型弾薬(頑住吉注:スチールコア)の使用も9oパラ弾薬の使用もできたので、新型弾薬の研究開発が終わる前にパラ弾薬を使用して試験が進行した。このため9o拳銃の研究開発の進行は比較的早かった。研究開発グループは十数種類の方案中、まず5種の方案を専門家の詳細な評価のために提供した。

9A型方案:半自由(頑住吉注:ハーフロック、すなわちディレードブローバックのことらしいです)バレル短後座回転閉鎖機構、ハンマー回転式撃発機構、プラスチック製グリップフレーム、グリップフレーム上方両側に等しくセーフティレバー設置、銃全体はユニット構造。

9A1型方案:9Aの変形で、異なる点はアルミ合金製フレームにワンピースグリップが取り付けられていること、発射機構の部品がフレーム上に個々に設置され発射機ユニット化されていないこと。

9B型方案:バレル回転閉鎖機構、ファイアリングピン撃発機構、アルミ合金フレーム、発射機構の部品はフレーム上に個々に設置、セーフティはスライド後部に位置。

9C型方案:バレル上下偏移閉鎖機構(頑住吉注:ブローニング形式のことでしょうか)、ハンマー回転式撃発機構、リコイルスプリングは銃身に巻かれ、アルミ合金フレームにプラスチック製ワンピースグリップが取り付けられている。発射機構の部品はフレーム上に設置

9‐II型方案:バレル上下偏移閉鎖機構、ハンマー回転式撃発機構、リコイルスプリングはバレルの真下に位置、ハンマースプリングはキックバネ、スライド両側に等しくセーフティレバー設置、合金製フレームにツーピースのプラスチックグリップが付属。

以上5種の設計方案は専門家の詳しい評価を経て、9A型方案と9‐II型方案をさらに試作、試験に進め、その後で1つの方案に最適化することが提案された。5年近くにわたる多次の最適化設計、試作、試験を経て、9o拳銃の設計定型が完成した。

2種の口径の拳銃系統の研究開発が開始されたばかりの頃、研究人員はある構想を提出していた。すなわち、技術工程簡略化、構造の簡略化、コスト低減と大量生産の便、および研究開発進度加速のため、2種の口径の拳銃に同一種類の構造方案を採用することである。しかし当時この種の設計思想は普遍的に受け入れられておらず、そこで科研人員から設計方案を募集し、比較、最適化設計が進められた。5.8mm拳銃にも5種の設計方案があった。すなわち、バレル回転閉鎖、バレル随動閉鎖、2種のバレル起落式閉鎖、中間ブロック閉鎖である(頑住吉注:「起落式」はブローニング形式に近いものではないかと思われますが「バレル随動閉鎖」、「中間ブロック閉鎖」はどういうものか不明です)。5種の設計方案の加工試作、試験を経、専門家の詳しい評価を経て、バレル固定の自由遊底慣性閉鎖方式(頑住吉注:ストレートブローバックのことだと思われます)の採用が決定した。ハンマー回転式撃発機構、双排双進式(頑住吉注:ダブルカアラム ダブルフィードのことらしいです)マガジン、アルミ合金フレームとU字型プラスチックグリップも採用され、リコイルスプリングはバレル下方に設置された。

1995年3月から1996年2月、2種並行して行われていた5.8mm拳銃の短銃身設計方案の試作、試験が行われたが、理想的結果は得られなかった。1996年3月、設計グループは「原指標保持」の不変の要求に基づいて改めて試作を行い、排莢、給弾等の技術的難題を解決したが、射撃時の手の震動現象は比較的重大だった。9o拳銃は大規模な試験のを経て構造が比較的成熟していた。特に弾性を持つ発射機支架と発射機構を採用してスライドの後退力を吸収し、手が震動せず、グリップが快適でフィーリングが良かった。そこで5.8mm拳銃にも9o拳銃の技術成果を採用することが最終決定された。2種の口径の拳銃は主要部品が共通となり、5.8mm拳銃は新方式のバレル回転半自由遊底原理を採用することとなった。試験を通じ、射撃時に手が震動する問題は根本から解決された。使用部門の報告によれば5.8mm拳銃は射撃時の後座力が非常に小さく、9o拳銃よりさらに快適で精度もさらに良好であるという。

92式拳銃系列の2種の拳銃は外形上非常に似ている。相違点は9o拳銃にはグリップ上に五角星があり、5.8mm拳銃にはないという点、9o拳銃のトリガーガード前部には滑り防止のくぼみがあり、5.8mm拳銃のトリガーガードは丸いという点だけである(頑住吉注:まあ正確に言えば銃口を見ても分かりますし刻印も異なっていますが)。内部構造も基本的に同じで、スライド、フレーム、発射機構、マガジン、バレル、バレルブッシング、バレルブロック(頑住吉注:バレル後部下側に位置し、バレルを回転させる「あやつるカーブ」のあるパーツです)、リコイルスプリング、リコイルスプリングガイド、スライドストップの構成も類似している。パーツ点数も同じでいずれも41種類43点である。その中で発射機構に関する部品は16種18点であり、形状寸法は完全に同一である。互換性のない部品にはバレル、フレーム、バレルブロック、マガジンがある。この他自動方式も異なり、9o拳銃はショートリコイル式で大多数の9oパラ口径の自動拳銃と同じである。一方5.8mm拳銃は半自由遊底式である。このため5.8mm拳銃の一部パーツは9o拳銃に比べ簡単な形状をしている。例えば9o拳銃のバレル上にはロッキング用の突起と誘導用の突起があるが、5.8mm拳銃のバレル上には誘導用の突起しかない。

ただし自動方式が異なるためパーツの互換性が完全でないにしても、両種拳銃の基本構造は同じである。以下は両種拳銃の基本パラメータである。

92式拳銃はユニット化された設計がなされており、個々のパーツは大小のユニットを成し、平時のメンテナンスに便利であるだけでなく、比較的小さいパーツの紛失を避けることができる。例えば、ハンマー、ハンマースプリング、ハンマースプリングガイド、ハンマースプリングベース、撃発梃子、ブッシングが結合してハンマー小ユニットを成している。発射機大ユニットはハンマー小ユニット、プルパイプ小ユニット、ハンマーブロック小ユニット、セーフティ、ディスコネクターおよび軸から成る等々である。また1つのパーツが多機能を持つ設計方式も取られている。例えばリコイルスプリングはスライドストップのリターンスプリングを兼ね、ハンマースプリングベースはセーフティの定位軸でもある等々である。このような簡略化された構造はパーツ点数を減らし、使用に便利となっている。

発射機ベースは高品質の薄いスチール板をプレスして作られ、比較的良好な弾性を備えており、スライド後退時のショックを一定程度緩和することができる。発射機ベースは発射機構の全てのパーツを結合するばかりでなく上部にはエジェクターとスライドのガイドレールも設けられている。前のレールは比較的長く、コネクターが備えられている。後ろのレールは比較的短い。前後のレールは共同でスライドの運動をガイドする。劣悪な環境下での信頼性を高めるため、技術人員は発射機ベース上に容砂槽、排砂槽を設置した(頑住吉注:画像がありますが不鮮明でよく分かりません。UZIのレシーバーにプレスされたくぼみのように混入した砂を受け入れ、さらに排出もする仕組みのようです)。撃発方式はシングル/ダブルアクションであるため、待機状態下でもバレル内に弾薬がありさえすれば即射撃ができる。

セーフティ機構はファイアリングピンセーフティと不倒位セーフティをも含む。ファイアリングピンセーフティ軸はファイアリングピンをロックする。トリガーを引きさえしなければ、何らかの予期せぬ事が起こってもファイアリングピンが前進することはない。不倒位セーフティは毎回の発射全てが必ずスライドが定位置に復帰して閉鎖した後でないと起こらないことを保証し得るもので、さもなければ例えトリガーを引いても発射できない。マニュアルセーフティは発射機ベース上に置かれ、左右1つずつあって片手で操作できる。セーフティがオンの位置にあるときはハンマーもスライドもロックされ、この時ハンマーに圧がかかっても動かず、トリガーも動かない。セーフティには待撃解脱効能があり(頑住吉注:何のことかと思いましたが戦闘体勢から脱する機能、つまりハンマーがデコッキングされることを意味しているようです)、銃を待撃状態から直接セーフティ状態に転換できる。転換中ハンマーはそのスプリングの作用によって復帰するが、絶対にファイアリングピンを叩くことはなく、使用の安全が保障される。

92式拳銃の生産においては新材料、新技術工程が採用された。例えば伝統的金属製フレームに代わって熱塑性がよく強度の高いプラスチック製グリップが組み込まれた。加工の技術工程は簡単であり、型によって一気に成形でき、一致性(頑住吉注:公差の少なさのことでしょうか)、経済性に優れている。発射機ベースにはプレス技術工程が採用され、効率が高い。化学複合成膜技術による表面処理が採用され、防腐食能力が高められている。

グリップ部分は銃全体の基座であり、発射機ユニット、マガジンユニット、マガジンキャッチ、スプリングが組み込まれている。グリップ尾部の定位面とトリガーガード上方に取り付けられたスライドストップは、発射機ユニットをしっかりグリップ内の定位置に置く機能も助けている。グリッピングは快適でフィーリングが良く、中国人の体に合っている。また厳冬期の使用における手が凍る(頑住吉注:はりつく、ということでしょう)問題も解決された。マガジンキャッチは必要に応じ組み込み方向を変えられ、左利きの操作者に便利となっている。

92式拳銃は片状(頑住吉注:あまり大きくない、平たく、薄いものを指すそうです)フロントサイトと缺口(頑住吉注:割れ目、裂け目などを指すそうです)式リアサイトを採用している。フロント、リアサイトにはいずれも仄かな光点が塗られ、夜間の照準射撃に便利である。配布された図からはフロントサイトの位置に変化が起きていることが分かる。設計定型時のフロントサイト位置は銃口帽上(頑住吉注:意味不明ですが画像からやや後退した位置であるのが分かります)だったが、現在生産されている型ではスライド前端に改められている。この他グリップ前端両側には溝が設けられている。レーザーサイトを取り付けることができ、速射能力を高められる。

これら2種の口径の拳銃の定型を装備部隊が試用した後、過去の問題が再び提出された。すなわち、軍は9o拳銃を装備するのか、それとも5.8mm拳銃を装備するのか? 目下軍は組織軍事院校と野戦部隊で2種の拳銃の対比試験を行っているところである。結果的にどちらの種の拳銃が装備されるかは現在なお不明である。ただし9o拳銃はすでに少数の大都市の公安系統によって試用あるいは採用されている。


 中国語を勉強し始めて半年もたっていないので不明な点もありますが、大筋では間違っていない自信があります。以前コラムに書いたように中日辞典は中国語の発音をアルファベットで表したもの(ピンイン)の順に構成されているので、発音が分からないと辞書を引くことができません。そこで今回大いに役立ったものが2つあります。まず、

http://www.frelax.com/sc/service/pinyin/

 このページです。漢字を書き込むとピンインが表示され、非常に便利です。もうひとつは中国語機能のある電子辞書です。手書きの文字を認識してピンインだけでなく意味も表示してくれます。両者を併用すればドイツ語とそう大差ない速度で読むことができました。

 中国の兵器開発というと、共産党のお偉いさんが鶴の一声で進めさせるようなイメージがあるので、各方面から広範な意見を集めて開発が進められたというのはやや意外でした。また中国の陸軍軍人というと保守的な考えの人が多そうなイメージですが、(専門家等も含まれるので軍人オンリーではないものの)6割以上が小口径案を支持したというのも意外でした。輸出を意識したためでしょうが最初からあかぬけしたデザインを目指したというのも意外です。結果はまあやや微妙ですが。

 この銃の9o版はベレッタM8000クーガーに近い、バレル回転式によるフルロックのショートリコイルです。5.8mm版は当初ストレートブローバックで開発が進められたものの、リコイルが強すぎたのでバレルが回転するハーフロックに改められたようです。「バレルが回転するハーフロック」ですから、おそらくサベージやM.A.B. PA-15のようなディレードブローバックではないかと思われます。

 この銃は流行のプラスチック製グリップを装備していますが、上部にプレス製のシャーシを組み込んでいます。ここまではよくあるデザインですが、フレーム前部にこのシャーシを露出させ、アクセサリーを取り付けるレールはこのスチール部に設けられているというのはうまいデザインだと感じました。エジェクターもこのプレス板と一体のようです。また詳細は不明ながらこの周辺にリコイルを吸収する機能も盛り込まれているようです。実効は不明ながら砂の混入に対処する具体的な工夫もピストルでは珍しいものと言えるでしょう。

 この拳銃が本当に世界最高水準の実力を持っているかは、中国軍、警察への普及状況を見れば、また本格的輸出が始まれば、すぐに明らかになるでしょう。














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