ドイツ語版「Wikipedia」におけるローラーロッキングの説明

 私にとってどういうシステムなのかもうひとつ分からないローラーロッキングシステムをドイツ語版「Wikipedia」で調べてみました。ちなみにドイツ語では「Rollenverschluss」=「ローラー閉鎖機構」と言います。

http://de.wikipedia.org/wiki/Rollenverschluss


ローラー閉鎖機構

 ローラー閉鎖機構はオートマチック銃器のための閉鎖機構システムである。これには完全にロックされたローラー閉鎖機構と、オープン時に遅延のみが行われるローラー閉鎖機構が存在する。

支持ローラー閉鎖機構(頑住吉注:右にイラストがあり、クリックすると拡大表示されます)

 支持ローラー閉鎖機構はいろいろなガス圧ローダーで使用されている。この閉鎖機構は閉鎖機構ヘッド(赤 頑住吉注:どう見ても茶色ですな)を側面のローラー(藤色)によってカーブ部品(頑住吉注:薄い青)内にロックする(完全なロック)。あやつる部品(緑)はこの際、ローラーが負荷下でカーブ部品から閉鎖機構ヘッド内に滑り込むのを妨げる。撃発後ガスがバレルにあるガス取り出し穴を通ってガスシリンダー内に侵入し、ガスピストン(頑住吉注:オレンジ色)を動かした後になって初めて、閉鎖機構キャリア(暗い青)が後方に動かされる。この際あやつる部品も閉鎖機構ヘッドから引き抜かれる。弾薬底部を通じて閉鎖機構ヘッドに及ぼされる圧力はこの時ローラーをカーブ部品から閉鎖機構ヘッド内に押し込むことができ、これによりロックが解除される。この時閉鎖機構ヘッドも後退し、この際空薬莢を引き出す。薬莢が投げ出され、閉鎖機構の部品群が最後部に位置した後、スプリングが全ての部品を再び前方に押し、同時に新しい弾薬が供給される。

MG42も見よ(頑住吉注:原ページにはこの項目へのリンクがあります)

可動状態で支持されたローラー閉鎖機構(頑住吉注:同様に右側にイラストがあり、クリックすると拡大表示されます)

 可動状態で支持されたローラー閉鎖機構は、重量慣性力を利用する重量閉鎖機構(頑住吉注:ストレートブローバック)の、より小さい質量(つまり軽量)で間に合わせる1段上の形式である。この閉鎖機構は構造および製造上比較的複雑でコストがかかる。そのメリットは、発射の間にわずかな重量のみが移動し、そしてその運動が直線的に行われるところにある。このことは命中精度にポジティブな影響を及ぼす。その上このシステムは最高度の力によって負荷をかけられない。

 軽量な閉鎖機構ヘッドはこの場合、安全上の理由からゆっくり後退するべきである(圧力引き下げ)。一方閉鎖機構(キャリア)は比較的重く、大きな力の達成のため急速に動くべきでもある。このため加速システムが組み込まれねばならない。この加速システムはあやつる部品によって実現する。

 撃発後、薬莢はチャンバー内の圧力によって後方に動く。この際薬莢は閉鎖機構ヘッド内の包底面にあてがわれており、閉鎖機構ヘッドも同様に後方に動く。だが閉鎖機構ヘッドが後方に動けるためには、ローラーが閉鎖機構ヘッド内に押し込まれねばならない。だが、あやつる部品が対応して後方に動いた時にのみ閉鎖機構ヘッド内に十分なスペースができる。カーブ部品内およびあやつる部品前部の傾斜角により、この際ローラーがカーブ部品によって内側に押される1mmごとのためには、あやつる部品は何倍も後方に動かねばならない。これによりあやつる部品と閉鎖機構は閉鎖機構ヘッドよりも何倍も速くなる。このため閉鎖機構は急速に動くことができ、一方閉鎖機構ヘッドはガス圧が安全なレベルに低下した時になって初めて薬莢を完全にチャンバーから取り除く(梃子の原理も見よ)。

 可動状態で支持されたローラー閉鎖機構は特にヘッケラー&コックの銃器に使用されている。例えばP9S、MP5、G3である。

 ピストルの場合、閉鎖機構はたいていケース(スライド)に固定されている。これら2つの構造部品はこの状態で一緒に後方に走る。閉鎖機構を再び前方に押すため、スプリングがバレルに巻かれており、発射の際スライド前端によって圧縮される。


 前者がいわゆるフルロック、後者がハーフロックです。前者に関してはロックの手段がローラーだというだけで普通のガスオペレーションと変わりません。ここでは直接触れられていませんが、ショートリコイルと組み合わせたシステムもあり、これもロックの手段がローラーであること以外普通のショートリコイルと変わりません。ですからこれについては問題ないでしょう。

 問題は後者です。私は正直このシステムのいろいろな説明を読んでもさっぱり理解できないまま中年のおっさんになりました(笑)。しかしサイト「waffeninfo.net」のページの内容を紹介する際に、こういうことなのでは、という簡単な仮説が浮かびました。その後サイト「、「WaffenHQ.de‥‥die Welt der Waffen」」内のSIG510のページの紹介の際にもこの仮説に再び触れ、またFA-MASのページでも形態は違うものの同じ原理なのではとの記述を行いました。今回のドイツ語版「Wikipedia」の記述はこれとほとんど同じものでした。「Wikipedia」というものの性格上間違っていないとは言い切れませんが、まあ明確に間違っていれば修正される可能性が高いだろうとも思います。くどいようですがここで私なりの表現で再度説明をします。



 ローラーカーブ部品の窪み内にはまっています。発火後、ガス圧によってボルトは後方に押されますが、この図で上下にしか動けないローラーに邪魔されているのでこのままでは後退することはできません。後退するためにはローラーを内側に引き込む必要がありますが、これはあやつる部品が邪魔しています。そこであやつる部品を後方に押しのけて邪魔を排除してやらねばなりませんが、ローラーあやつる部品の形状の関係により、ボルトヘッドが一定距離後退するためにはあやつる部品をそれより長距離後退させねばなりません。このため梃子の逆のように大きな力が必要になって後退が遅れることになるわけです。なお、このイラストではローラーが当初あやつる部品の傾斜部より後方のストレートな面に接しているように描かれており、ちょっと変ですね。 http://www.waffeninfo.net/verschluss/bild/roldelboltani.gif この「waffeninfo.net」によるアニメーションの方が分かりやすいです。

 ただ、「Faustfeuerwaffen」ではこれほどではありませんが比較的分かりやすい、まったく別の説明がなされており、これが全くの誤りなのか、「そういう側面もある」のかは依然として不明です。

 今回これを書くにあたって日本語版「Wikipedia」も見てみたんですがこの項目はありませんでした。根からの文系人間でメカに弱い私ばかりでなく、実際のところこのシステムについて自信を持って説明できる人ってごく少ないんじゃないでしょうか。


2007年8月31日追加

 いろいろ考えたんですが、やはり「梃子の逆」の説明は間違ってはいないとは思うものの、それだけでは説明しきれない気がします。もしそれだけならば、軽い閉鎖機構を異常に強力なリコイルスプリングで閉鎖したストレートブローバックのような射撃フィーリングになるのではないでしょうか。実際にはローラーロッキングはリコイルショックが軽く感じられると評価されています。他の条件が同一の銃というのは存在しないのでガスオペレーション、ショートリコイルと比べてどうかは断言できませんが、少なくともストレートブローバックより軽く感じられるのは間違いないはずです。この理由はやはり「まったく別の説明」の中にあるように、ローラーが内側に押し込まれてストレートブローバックに近い状態になるまでに、ローラーを介して後退する運動量のかなりの部分が直接レシーバー、フレームなど、要するに射手が保持している部品に固定されている部品に伝達され、結果的に運動量が比較的ゆっくり、段階的に伝達されるからなのではないかと思います。また、同時に説明されているベネリ製オートの場合、「梃子の逆」では説明がつかないと思われます。

 ちなみに、

http://en.wikipedia.org/wiki/Roller-delayed_blowback

 英語版の「Wikipedia」では「Roller-delayed blowback」としてこんなページがありましたが、明らかにドイツ語版のそれをトレースしたと思われる、頑住吉のそれがまだましに思えるほどひどいイラストはあるものの、どういうシステムであるのかという説明は意図的に避けられている感じです。アメリカ人のマニアの間にも自信を持って説明できる人が少ないということじゃないでしょうか。

2010年10月10日追加

 久しぶりに見ると原ページの内容が追加されていたのでフォローします。なお、ボルトヘッドと「あやつる部品」の後退距離の差を表した原ページの、私のとそっくりなイラストは、私が以前見たときにはまだありませんでした。また英語版は独立したページがなくなり、ブローバックのページに吸収されており、依然として原理的な説明はありません。


この閉鎖システムの長所

・重量閉鎖の長所は保たれている(頑住吉注:シンプルである等のストレートブローバックの長所が維持されている、ということです)。

・低い後退速度が保証されている。このことは良好な閉鎖機能の支持を約束する。

・ボルトとボルトキャリアの運動が、時間的遅延なくガス圧を追って推移する。ボルトとボルトキャリア、全体の動きが同時に、遊びなく開始されることにより、衝撃的な、アンコントロールなショックが避けられる。

・反動によって起こる力が時間の経過の中で突出したピークなく影響を及ぼす。このことはマテリアルをいたわる。

・バレルも閉鎖機構も回転や傾き運動をせず、このことは命中精度上有益である。

・薬莢が閉鎖機構を押し動かすのであって、引き抜かれるのではない。これによりエキストラクターは、銃から薬莢を投げ出す際にのみ要求される。

この閉鎖システムの短所

・後方に作用する運動量が分割されるこのシステムの場合、比較的弱い弾薬の際、閉鎖機構のための運動量が小さすぎ、そしてこのため充分な作動のための余裕が使えるものとして存在しない、という事態が起こり得る。つまり、こうなると薬莢は完全に引き抜かれないか、あるいは投げ出されず、新しい弾薬が供給されない。

・ボルトキャリア間隔、つまりボルトヘッドとボルトキャリアの間の遊びは正確に計算されなければならない。この遊びが小さすぎる、あるいは大きすぎると、ローラーはもはや正確にカーブ部品の中に押し込まれない。こうなるとバレルがまだ圧力下にある時に薬莢がすでに引き抜かれることがあり得る。

・フルオートの際、ハンマーが閉鎖機構の前進中にレットオフされ、閉鎖機構の後をついていく。点火の開始と、発生した閉鎖機構の跳ね返りが重なると、加速システムが機能上正しい位置にない時点で点火が始まる。こうなると閉鎖機構は速すぎる速度で動き、過早にオープンする。この理由から跳ね返りセーフティ(閉鎖機構を押すように作用する追加ウェイト)が必要である。

・チャンバー内のフルート(圧力相殺ミゾ)により、作動のための余裕が提供される。ガス圧が薬莢の内部と、そして外部にも作用し、薬莢が引き抜かれる際の押しつける圧力を減らし、そしてこれにより摩擦抵抗を減らす。圧力軽減ミゾは作動上の問題、そして安全上の問題を、閉鎖機構システムによってではなく薬莢のマテリアルによって解決している、と言ってもよい。


 長所は要するに「ビシッ!」と動くのではなく「ヌルッ」と動く、という感じでしょうか。突発的な衝撃がなく運動量が徐々に伝達されることは耐久性にもよく、リコイルショックも弱く感じられるわけです。

 一方短所は弾薬の強弱に対応する能力が低くデリケートであることと、そもそも多少の無理のあるシステムである、ということでしょう。よく日本では小口径高速弾薬には適さない、とされますが、ここにもそういう記述はないですし、ドイツ人がそういう記述をしているのを見たことはありません。















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