Uberti製レミントンローリングブロックピストルレプリカ
「Visier」2005年2月号に、イタリアのメーカーであるUbertiが製造し、アメリカだけでなくドイツでも販売されているレミントンローリングブロックピストルのレプリカに関する記事が掲載されていました。
Einmal ist keinmal(頑住吉注:「Einmal」は「一回」、「ist」は英語の「is」、「keinmal」は「一回もない」といった意味です。「一回だけではやったうちに入らない」といった意味かと思ったんですが内容と合いません。ことわざかもしれないと思って検索したところ、ここに紹介されていました。 http://ja.wikiquote.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E3%81%AE%E8%AB%BA 「『そのうちに』は決して実現しない」という意味だそうで、ここでの「Einmal」は「いつか」という意味でした。内容と関連しての意味については後で触れます)
テーマが装弾数ということになれば、Ubertiのローリングブロックピストルは下の順位になる。だが、テーマが遠距離射撃ということになればそうはならない。
レミントンをモデルにしたローリングブロックピストルは、ドイツにおいて長年ウェスタン銃器シーンにおいてスターには属してこなかった。イタリアのUberti工場がすでにかなり以前からモデル1871アーミーのレプリカを提供し、The American Historical Foundationのようなアメリカの企業が限定品のエングレーブ入りスペシャルモデル、例えばBuffalo Bill Coudy個人所有のローリングブロックピストルを想定したモデルを人々に提供していたことに関してもこの事情は同じである。こうした製品があるにもかかわらず、それはドイツのシューターサークルの中ではたいていただ単に「手に入れたいといつも考えているもの」に留まっていた。ほとんど誰もグリーンの銃器所持カードの中に単発後装ピストルを正当化するレアな登録を行うことを欲しなかった。
だが、2003年春以来、スポーツシューターはこの種の後装ハンドガンをイエローの銃器所持カードでも購入できるようになった。Ubertiの製品輸入業者Hegeは、約450ユーロの価格で一連のポピュラーな弾薬仕様のローリングブロックレプリカを提供している。これには.22LR、ウェスタン弾薬である.44-40ウィンチェスターと.45コルト、そしてモダンなオールラウンダーである.357マグナムが含まれる。テストされた銃は.357マグナム仕様である(頑住吉注:というわけで、この記事のタイトルは、「『ローリングブロックピストルか。まあそのうち買おう』と考えているようではいつまでも買わないことになる。法改正で購入しやすくなったこの機会に今すぐ買え」といった意味のようです)。
スチールの代わりに真鍮
テスト銃は特にその真鍮で作られたトリガーガードによってオリジナルと異っている。オリジナルの場合はスチールで作られている。この黄色い金属はいくつかの「ス」を除いてきちんとポリッシュされ、きれいに、傷なくレシーバーにフィットされている。レシーバーはレシーバーできれいにポリッシュされた表面が美しいケースハードゥンを示しており、内部パーツも良好にフィッティングされている。両ウォールナットパーツ(頑住吉注:グリップとフォアグリップ)は良好にピカピカに研磨され、いい感じでラッカー塗装されているが、金属パーツと木製パーツのフィッティングは完全にパーフェクトではない。見のがしようのないいくつかの引っ掻き傷が口を開けていることが良好な全体印象をいくらか損なっている。
薬莢の引っかかりと切れ
9.5インチバレルにも満足できない。外的にはブラックにブルーイングされ、半分がオクタゴンのバレルは非の打ち所がない印象を与える。その440mmで1回転の6条コンベンショナルライフリングが施され、ポリッシュされたボアも、一見すると欠点がないかに見える。段差のない「Ubergangskonus」(頑住吉注:「U」はウムラウト。直訳すれば「移行コーン」で、チャンバーからボアへの移行部のことと思われます)も正しいように見える。だが、このバレルは遅くとも最初の射撃において欠点フリーで工作されたものとは全く異ることを示す。すなわち、このバレルは発火しない状態だというのにエキストラクション問題を起こした。特にSellier&Bellot弾薬の発射済み薬莢はチャンバー内に完全に張り付き、他の製品の薬莢もわずかに引き抜きやすいだけだった。ノギスの使用が示したように、バレルから抜いた薬莢は例外なく腹部が膨らんでいた。すなわち、直径は平均9.75mmだった。比較すると、9.6mmの数値がノーマルである。チャンバーの内径は9.77mmになっていた。法規制の緩和によって同様に大衆化した.357口径のKorthリボルバーはチャンバーの内径が9.66mmしかない。
ひどいチャンバーに直面して予想されるように、問題は不格好に膨らむ薬莢に留まらない。というのは、薬莢の肉厚が薄い、ただし他の銃の場合には良い薬莢、例えばSellier&Bellotブランドで亀裂が発生した。そしていくつかの例では完全にちぎれさえした。だが、肉厚が厚い薬莢でもチャンバー内径フルまで、そして再使用したらすぐさま似たような底部のちぎれが発生しそうなほどマテリアルが伸びた。そういうわけで、この銃に自分でロードした弾薬で同種の問題があったときは、コスト上の、そして安全上の理由から「halskalibrierte」された薬莢のみ使用するべきである(頑住吉注:「hals」は「首」、「kalibrierte」は「キャリバーされた」といったような意味で薬莢の種類を指しているはずですがこのあたりの知識が乏しいんで意味不明です。ただ文脈からして薬莢先端部の弾丸を保持する部分だけ薄く、後は肉が厚くなっている薬莢のことではあるまいかなあと思うんですが)。
だが、裂けた薬莢と分離した底部の責任は、大きすぎるチャンバーだけにはない。というのは、テスト者が「虐待された」(頑住吉注:不適正な銃によって発射後痛んだ)薬莢を並べ、間近で点検したとき、薬莢が傾いて立っていること、そして規則的な折り曲げが目についた。このために実施した閉鎖機構のテストが示したところによれば、このローリングブロックは閉鎖状態で、つまりハンマーが落ちた状態で約0.4mm後方に動くことができる。というのは、このブロックを後方に引いた状態の隙間に、0.4mmの隙間ゲージのブレードがぴったりはまった。これはテスト銃が発射状態で0.4mmの遊びを持っているということにほかならない。普通許される上限はこの1/4である。これなら薬莢のちぎれも理解できる。メーカーはこの部分で明らかにへまをやっている。
メーカーは他の部分でもへまをやっている。シングルアクショントリガーは極端に重く、作動値は3,000gを超えている。これはかみ合い部分を徹底的に磨いた後では1,700gと我慢できるものになった。両手射撃ならOKであるが、片手射撃の場合はどちらかといえば重すぎる。これも腹立たしいこととして、エキストラクターはバレル左の誘導部内で固定されており、これを滑らせるには約0.1mmのスチールを磨き取らねばならなかった。分解時には分解時で、横に走る閉鎖ブロックの保持ボルトも同様にきれいに磨かれておらず、苦労しないと元の位置に戻せないことが再び気になった。こうなるとレシーバー内の穴ぐりの角を削り取ったスムーズな面が奇跡にも思えてくる。
サイトもパーフェクトには至らなかった。アリミゾに対応する脚部によってマウントされた高い角型フロントサイトは、固定ネジによって正確にアリミゾにフィットされ、きれいに固定される。「Federtreppenkimme」(頑住吉注:「バネ+階段+リアサイト」、といったところで、スプリングでテンションがかけられ、階段状の台座を前後に移動することで段階的に高さが変えられるリアサイトです)のスクエアノッチもきれいなサイト像を提供する。だが、約50発発射後、命中弾が横に移動した。というのは、リアサイトをその台座に固定しているネジが緩んだからである。接着剤一滴で救済策になる。
粗すぎ、低すぎ
射撃結果が示すように(表参照)不十分な上下調整の修正は簡単ではなかった。158グレインの弾丸を使った場合、この銃は25mで約10cm、50mでは約10〜15cm着弾が高すぎた。そしてこれは全て常にリアサイトを可能な限り低くセットしてのことである(頑住吉注:リアサイトを低くすれば着弾点は下がりますが、それでも高すぎるということです)。
ここから論理的帰結として明らかになる結論は以下の通りである。フロントサイトを約1.4mm高くしないかぎり、上下調節は不要である。そうすればこの銃は重い弾を使って100mから「ブチ」のように集まった集弾になり、軽い弾を使うと25mから低い命中になる。しかしこれは良好に調節可能である。この銃を全ての弾薬向けに役立つようにするためには、より高いフロントサイトの他に高さが細かく調節できるリアサイトが必要である。現在マウントされているエレメントは適していない。階段部分の高さ調節は0.5〜1mm粗すぎる。というのは、照準設備の高さは0.5mm段階でしか変えられず、この結果命中点は25mの距離で約70mm移動する。これは100mでは一気に280mmに拡大する。
ここまでのレポートはまるで完全な酷評のように読める。しかしこれはこの銃を正当に評価したことにならない。すなわち、このイタリア製ローリングブロックピストルはどの弾薬を使用しても例外なく良好な、ファーストクラスに達するほどの命中精度をもたらしたのである。「25mで25mmの成績は素晴らしい」と射撃記録には記されていた。この銃は5つの弾薬種類を使ってグルーピングが40mm以下になり(頑住吉注:25mから)、その倍という非常に遠距離からでもなお1つの弾薬種類で90mmのグルーピングになった。テストが証明したように、適した弾薬を使用した場合このローリングブロックピストルは100mからでもなお黒丸をとらえる(頑住吉注:と言われても。直径何cmか書いて欲しいです)。例えばこれは同種のハンドガン全てにできることでは決してない。この後、6インチバレルのKorthとの比較も、このピストルがその長いバレルとガスが気密されたシステム(頑住吉注:要するにシリンダーギャップがない)のおかげで明らかにパワーが大きいことを示した。すなわち、弾丸はリボルバーの場合より60〜100m/s高速でバレルを去った。
結論
Ubertiのローリングブロックピストルは原則的にはきちんと作られた銃である。この銃はよい弾薬を使えば普及している.357マグナム口径のレバーアクション銃と完全に張り合うことができる(頑住吉注:これはレストした場合の命中精度のことですね。撃ち合ったらそりゃたいがい負けるでしょう)。Ubertiはこの作品のトリガー、サイト、チャンバー、そして中でも閉鎖時の遊びをめぐる部分的な重大な欠点を取り除いたとき、このモデルによって真のヒット作を作ることができるだろう。
レミントンのピストル(囲み記事)
アメリカの会社レミントンは1865年に技術者Leonard Geigerが開発していたブロック閉鎖システムの権利を獲得した。これがローリングブロック閉鎖システムのベースとして役立った。レミントンはこのシステムを1866年頃初めてピストルにも使用した。コレクター界ではモデル1865ネービーとして知られるこの銃は、トリガーガードのないシーストリガーを持ち、.50リムファイア弾薬を射撃した。後には.50口径センターファイア弾薬向けの型も加わった。一部ショートバレルとトリガーガードを持つものもあった。だが、専門家たちはこれが後から加工されたものか新造されたものかに関して論争している。ネービーモデルの約6500挺の生産数のうち一部はアメリカ海軍に行った。コレクターはこれを検査刻印「P」と「FCW」、そして(全ての銃にはない)追加の刻印「I W.D.W. 錨のモチーフ」によって見分けている。1871年、1888年まで作られた同じく.50口径仕様のアーミーモデルが続いた。この銃は生産数が6000挺を越え、先行モデルとビーバーテイルがあることによって異なっていた。ミリタリーバージョンはたいてい「US」刻印と検査刻印「C.R.S.」によって見分けられる。レミントンがアーミー1871をスポーツシューターの希望に応じていくつかの弾薬仕様に改造することを始めたとき、工場は.22ロング、.22ショート、.25スティーブンス、.32S&Wリムファイア、.44S&Wセンターファイアのような弾薬仕様の1891ターゲット、1901ターゲットを追加した。1909年までにたっぷり850挺が工場から送り出された。
.357マグナム
弾薬 | グルーピング(mm) | 初速(m/s) | 注釈 |
Geco 142grs VMKS | 35/130(100mから5発) | 445 | 25mでは命中点は狙点より120mm高い。リアサイトは完全に下げてある。100mでは命中点は狙点より150mm高い。 |
S&B 158grs VMFK | 40 | 445 | 25mでは上に同じ。薬莢は引き抜き困難。 |
S&B 158grs TMFK | 26/220(100mから10発) | 452 | 25mでは上に同じ。100mでは命中点は狙点より180mm高い。薬莢切れ発生。 |
Winchester 158grs TMFK | 50 | 487 | 25mでは命中点は狙点より70mm高い。 |
Hirtenberger 158grs TMFK | 60/90(50m) | 485 | 25mでは命中点は狙点より90mm高い。 |
PMC 158grs TMFK | 45 | 459 | 25mでは命中点は狙点より90mm高い。 |
※射手はシッティング、レストして射撃。VMKSはフルメタルジャケットで円錐形の先端のみ平らになった形状。S&Bは弾薬メーカーSellier&Bellot。VMFKはフルメタルジャケットフラットノーズ。TMFKはセミジャケットフラットノーズ。PMCはアメリカの弾薬メーカーPrecision Made Cartridges。
私はかつてレミントンのローリングブロックピストルを製品化して全然売れなかった経験があります。このときモデルアップしたのは今回紹介されている銃の原型になった1871アーミーより前の1865ネービーでした。この製品は私の手元にも残っておらず原型しかありません。原型は一応とってありますが再生産の可能性はまずゼロでしょう。私自身はわりと好きな銃なんですが。
メーカーの公式紹介ページはここです。
http://www.uberti.com/firearms/rolling-blocks.tpl
http://www.uberti.com/firearms/Rolling-Blocks2.tpl
http://www.uberti.com/firearms/images/large-341300.jpg
オリジナルの紹介ページにはこんなのがありました。
http://www.ken-drake.com/remington_rolling_block_pistol_1867.htm
記事中でバッファロービルの、として紹介されているのはこんな製品です。
http://www.ahfrichmond.com/projectgraphics/105rollB.ahf
スペインのデニックス製ローリングブロックライフルのレプリカが日本でも販売されていますが、私は触ったこともありません。私の製品を買った人は確か20人以下だったはずです。皆さんの中にもローリングブロックとはどういうシステムか知らない方も多いと思うので説明しておきましょう。
ローリングブロックは外観上ハンマーが前後に2つあるように見えるシステムで、真のハンマーは後方にあり、前のそれはブリーチブロックでファイアリングピンが内蔵されています。ハンマーコック時にはブリーチブロックはコックするように後方に起こしてチャンバー後方を開放することができ、この状態でカートリッジを装填します。装填したらブリーチブロックを元に戻して閉鎖します。
トリガーを引いてハンマーが落ちるとハンマー自体がこのようにブリーチブロックを支えて開放を阻止します。ハンマーが独立ロッキングブロックのような役割を果すわけですね。ブリーチブロックとハンマーの軸には強い負担がかかるのでこのように非常に太くなっています。
このシステムには、
●構造が非常に単純であり、複雑なロッキングラグ、リセスを削りだすようなシステムより製造もしやすい。
●当時としては非常にタフで高い圧力に耐えられる。
●バレル、レシーバー、ストックを完全に固定して作れ、銃自体の剛性が高く、破損しにくいだけでなく命中精度上も有利である。
●特別な安全機構がなくても不完全閉鎖でハンマーが落ちることはありえない。
といった長所があり、一時はロングアーム用として広く普及しましたが、
●連発化することは事実上不可能である。
●セルフコッキングのボルトアクションより発射速度が劣る。
といった理由からボルトアクション登場後は急速に廃れました。
この他、今回のレポートでこのシステムの意外な問題点も分かりました。上の図で示したように、ハンマーはブリーチブロックとほとんど接して倒れますが、スムーズに倒れるためにはいくらかのクリアランスはどうしても必要です。このクリアランスは閉鎖時にもガタになって残ってしまいます。わずか0.4mmのガタで、意外にも薬莢切れまで起こってしまうわけです。
これは想像ですが、当時の銃でも0.4mmくらいのガタは珍しくなかったんではないでしょうか。当時の黒色火薬を使用した比較的低圧の弾薬なら問題は起きなかったし、モダンなカートリッジでも.45ACPあたりなら問題ないが、高圧の.357マグナムでは重大な問題になってしまうということではあるまいかと思います。調整次第でこのガタを小さくすることは可能でしょうが、クリアランスを小さくしたために例えば汚れや小さな砂粒の混入でハンマーが抵抗を受けて不発が生じたり、あるいは長年使ってガタが大きくなってきた段階で薬莢切れが発生すると言った可能性は残るような気がします。
サイトも批判されていますが、これはあくまで当時の銃のレプリカであり、弾道特性が大きく異なる弾薬を使用することによってサイトの調整に問題が出るのはやむを得ないのではという気もします。この銃に精密に調整できるモダンなサイトを取りつけたらぶち壊しでしょう。
命中精度は高く評価されていますが、バレル、レシーバー、グリップフレームが完全に固定され、フロント、リアサイトともバレル上にきっちり固定されている、弾薬の命中精度測定器のようなこの銃の命中精度が悪かったらおかしな話で、むしろトップクラスのマッチ用オートピストルがずっと悪い条件下でさほど変わらない命中精度を示すことの方が凄いという気がします。