Molot Vepr 1V

 「Visier」2005年6月号に、「Molot Vepr 1V」という銃のレポートが掲載されていました。ほとんどの方は名前だけ聞いても分からないと思いますが、AKの支援火器バージョンであるRPKの輸出用民間バージョンです。レポートにはRPKの実力を推測する手がかりになりそうな内容も含まれていました。


実際以上の外観

ロングバレル、バイポッド、そしてドラムマガジン。ライトマシンガンのように好戦的な姿でやってきたこの銃は、単なるターゲットシューティング用セミオート銃である。

に50歳以上の傑作であるカラシニコフが依然として関心を引く存在であることは疑いない。そしてそれは、全ての兵役義務のある人がかつていつの日かアサルトライフルAK47あるいはその多くの変種や近代化型とともに泥の中を這い、または障害路上に痕跡を残さねばならなかった、かつての東側ブロックの国々においてだけではない。西側の土地にもこのガス圧ローダーの信奉者が存在し、その信頼性と丈夫な構造方式はすでに伝説的なものになっている。

 ライトマシンガンは、AK銃器ファミリーでもいくらかより稀な型に属する。これはロシア語ではRPKと呼ばれ、「Ruchnoi Pulemet Karaschnikowa」を表わしている。本来は7.62mmx39弾薬仕様であり、ワルシャワパクトアーミー内で1961年以後、1950年代の初めに採用されたRPDと交換された。RPDはまだドラムコンテナからのベルト給弾によって機能していた。RPKはアサルトライフルAK47と内部、外部が似ているだけでなく、その30連マガジンも使用した。しかしRPK射手(機械化歩兵分隊ごとに1または2)は火力を高めるため40連ボックスマガジンおよび75連ドラムマガジンを手にしていた。1970年代半ばの、ソ連の勢力範囲におけるより小口径の弾薬5.45mmx39への装備改変により、Ischewskの軍備工場Iscmaschはこれに対応するAK74のRPKバージョンも製造した。1990年代以来、プラスチック製「Schaftung」(頑住吉注:「a」はウムラウト。「Schaft」はストックなんですが、これは文脈上フォア、ショルダーストックをまとめて指すようです。「ストックまわり」としておきます)、折りたたみショルダーストックを持つ近代化バリエーション(「M」)だけがまだ生産されている。この銃は空虚重量4.6kgである。MolotのライフルVepr 1Vはこれをベースにしており、これは本来アメリカへの輸出用に口径.223で設計されたものである。Krefeldの会社、Waffen Schumacherはすでに2004年に74Molot 1Vの残り在庫を買い占めていた。これは我国で非常に素早く彼らの購入者が見つけたものである(頑住吉注:いまいち分かりませんが、アメリカ向け輸出の余剰分があるのに気付いた輸入業者Waffen Schumacher社の顧客が社にこれを買い占めるよう促し、結果としてそうした、ということでしょうか)。この最初のシリーズはまだモダンなロシアの軍用生産品からの(頑住吉注:合板ストックを持つ初期製品ではなく最近の、という意味です)AK74のように、その黒色のポリマー製ストックまわりによって目立っていた。現在輸入されている少数の品は茶色のストックまわりつきで来ている。

  SchumacherのMolot1Vは、5.56mmx45弾薬をセミオートのみで発射し、マガジンキャパシティもドラムマガジンの素敵な外観にもかかわらず10発のみに制限されたままである。これはスポーツ射撃のための民間用火器なのである。1000mまで目盛りがつけられたリアサイトを持つRPKと違い、このMolotセルフローダーはリアサイトのカーブが距離100、200、300mの区分のみに制限されたままである。このライフルはドイツの銃器法上問題ない。

 だが、Molotのセルフローディングライフル1Vは全てのRPK-74M同様、通用しているロシア製オプティカルサイト用の左サイドのマウントレールも工場渡しでつけられている。しかしテスト用には中国製で可変式の3〜9倍Leapersスコープも使用のため用意した(頑住吉注:この文章は2つとも逆接になっています。前者はマガジン装弾数やサイトはオリジナルと異なるものの、オリジナル通りマウントレールはある、という意味、後者はマウントレールはロシア製用に作られているが、中国製のスコープも用意した、という意味だと思います。分かりにくいですね)。

 この銃の場合、.223弾薬の命中精度のためには、59cmという並外れた長さのバレルは必ずしも必要ないし、例えばさらにバレル下に吊るされたバイポッドがバレルの振動を抑制してこれにより命中正確性を高めることも期待される。だが逆に、テスト射手が射撃姿勢時に装備されたバイポッドを立てたかどうかによって、命中点は100mターゲット上を5cm前後上下に移動した。軽い弾丸を使った場合も、1Vで勝てる植木鉢はない(頑住吉注:わけわからん言い回しですな。いくらなんでも植木鉢ほどの大きさのものに命中可能性がまったくないという意味ではないでしょうから、必中が期待できないということでしょう。しかし植木鉢ったって大きさはさまざまですよね)。グルーピングは55〜75mmに留まった(頑住吉注:75mmならたいがいの植木鉢は必中でしょう。これは適した重い弾を使えば、ということでしょうか)。唯一のそれ弾は銃自体に大きな原因があるのではなく、むしろ射手の射撃姿勢変更によって引き起こされた。本当に安定した結果を達成するためには、テスト者はPMC製プライマーと69グレインのSierraマッチキング弾を使ったリロード弾を引っ張り出し、そしてバイポッドはたたんでバレル下にロックしなくてはならなかった。この長い銃の前部を依託用の袋に載せた後では、Molot 1Vは美しい規則正しさで5発のグルーピングが28〜42mmとなった。ベストの2つのグルーピングは24mmおよび26mmと計測された。しかし16.2mmという実に細いバレルが熱すれば熱するほど、そのグルーピングは大きく拡散した。射撃フィーリングからすると、このMolotは当然典型的なロシア製アサルトライフルのような印象であり、マッチライフルのようではない。トリガーフィーリングはむしろざらざらしており、これは(頑住吉注:ロシア製銃器の場合?)帝政時代からのことだがどこでレットオフするか明確に分かりにくい。U字型のリアサイトはどちらかといえばターゲットシューティング用の繊細なリアサイトよりも粗い。

 ストックもその由来を否定できない。バットプレートとトリガーの、ギリギリ305mmという距離は体格の大きな西ヨーロッパ人よりむしろ「kalmuckische Steppenkrieger」(頑住吉注:「u」はウムラウト。長くなるのでこれについては最後に触れます。ここでは「体格の小さなアジア系の兵」と思って下さい)に適する。プローンでスコープを使用した際にはスコープまでの距離が不適当で使用上不快だった。シッティングの方が結果は良かった。

 リコイルからすれば、Molot 1Vセルフローダーでの射撃は楽しい。7.62mm弾薬M43仕様であるAK47シリーズの古いRPKまたはRPDを知っている人は、このセミオート銃の穏やかなリコイルに驚き、不思議に思う。かなり前部寄りの重心のおかげで、この長くてバイポッドで強化した銃は69グレイン弾がバレルを去るときもはやほとんどがくんと動くことがない。多くの観点から、AK銃器ファミリーに典型的である簡素な外観にもかかわらず、この長いVepr型は非常に多くの楽しみを提供する。しかし西側のデラックス品のみをいつも手に入れたいと思っている人は、AR-15の方が良いとしてこちらを取るかもしれない。しかしその代わりMolot 1Vには950ユーロしかしないという面もある。

モデル:Molot Vepr1V
価格:950ユーロ
口径:.223レミントン
装弾数:10+1発
サイト:300mまで
全長:1060mm
ストック折りたたみ時全長:846mm
銃身長:590mm(マズルブレーキを含めると618mm)
重量:4700g

型:回転ヘッド閉鎖機構を持つセミオートマチックガス圧ローダー。サイドに調節可能なリアサイト。サイドに配置されたマウント。茶色のポリマー製ツーピースストックまわり。折りたたみ可能なバイポッド。さらに供給範囲には10発ボックスマガジン(もしくは狩猟免許所持者用2発マガジン)、10発ドラムマガジン、1インチリングつきスコープマウント、クリーニングロッド、オイラーが含まれる。


 何度か触れましたが、ドイツ語では同じ語の繰り返しを嫌う傾向が強く、同じものを違う言葉で言い換えようとするので混乱します。黄緑の文字で表わしたのは全て今回のテーマになったMolot 1Vのことで、この短い文章の中でいくらなんでも極端すぎ、何とかしてくれと言いたくなります(言ってもしょうがないですけど)。

 それはさておき、RPKという銃は主力アサルトライフルを強化したタイプの支援火器です。パーツの多くが共用できるので生産、管理、訓練などに都合がよく、弾薬ばかりかマガジンまで共用できるという大きなメリットがある一方、連射によって加熱しても簡単にバレル交換はできず、マガジン給弾のためもあり機関銃でありながら長時間持続射撃ができないという大きな欠点もあります。例えばアメリカの場合M16の支援火器バージョンは試作に留まっています。RPKと同タイプの銃としてはイギリスのL86A1がありますが、イラクでは失格の烙印が押されてミニミとの交代が急がれました。XM8でもこのタイプが考えられていますが、ちょっと有効性が疑わしい気もします。それでもソ連〜ロシアではベルト給弾機構を持つまともなマシンガンの後を継ぎ、長年にわたって広く使用されているわけですね。

 このMolot 1Vは輸出用の.223仕様ですが、5.45mmx39仕様の軍用RPKと同じメーカーが作った銃であり、作りは大筋共通であると考えられます。バイポッドを立てるか立てないかで着弾が5cm前後上下に移動するというのは精密射撃が要求されない(オープンボルト、フルオートオンリーのものも多い)支援火器の場合あまり問題にならないかも知れませんが、セミオートで撃っていてもバレルが加熱してグルーピングが大きく拡散してくるというのはフルオートでの使用にかなり問題がありそうだと想像させる事実です。残念ですがいつもある各弾薬のデータがなく、ロングバレルによってどれだけ初速が向上するのかは不明です。命中精度自体は確かにライフルとしては悪いといえば悪いですが、最適の条件下なら100mで30mm以内に集まるという結果は想像よりはいいという気もします。


 さて、内容と直接関係のない話ですが、途中で「kalmuckische Steppenkrieger」という語が出てきました。これは辞書に載っていないんですが、前者の単語で思い出したことがあります。イエールジ・コジンスキー著「異端の鳥」という本(角川文庫)です。これは第二次大戦中、親とはぐれた少年が東ヨーロッパの村々を放浪する中で苛酷な体験をしながら生きていくという話ですが、こんな一節がありました。


 村にはもう何か月ものあいだ、カルムイク人と呼ばれている、この騎馬隊に関しての噂が流れていた。かつて無敵を誇ったドイツ軍がソビエトの広大な地域を占領していたとき、ソビエトを亡命した、ほとんどが志願してきたカルムイク人がそれに大勢合流した。赤軍を憎んでいて、彼らなりの戦いの習慣なり、伝統に従って略奪し、暴行することを認めたドイツ軍に加わったのである。そういうことでカルムイク人が服従しない村や町を罰するために送り込まれたのだった。とくに赤軍の進行途上にある町に。


 このカルムイク人たちは村で言語に絶する残虐行為を行った後、到着した赤軍に敗れて大部分が捕虜となり、今度は報復を受ける立場になります。 

 この「kalmuckische Steppenkrieger」という語は直訳するなら「kalmuckの草原軍人」となります。ちなみにドイツ語では名詞は固有名詞でなくとも頭が大文字になり、固有名詞でも形容詞化すれば頭は小文字になります。例えば「日本」は「Japan」、「日本の」は「japanisch」となるわけです。検索によれば「カルムイク」は英語での綴りは「Kalmyk」になるそうですが、ドイツではやはり「kalmuck」となることが分かりました。 http://www.wako.ac.jp/souken/touzai98/tz9818c.htm ここによれば、「カルムイク人は、第二次世界大戦中の一九四三年に、ソ連と敵対していたドイツに協力したことにたいする懲罰として、中央アジア、シベリアに民族まるごと強制移住させられ、五〇年代に復権されてもとの居住地に戻ったという体験をしています。」という歴史があるそうです。「異端の鳥」での出来事は1944年の夏か秋の出来事とされています。「かつて無敵を誇ったドイツ軍がソビエトの広大な地域を占領していたとき」というのは1942年のスターリングラード敗戦以前のことでしょう。時系列とすれば、「スターリングラード以前、赤軍を憎んだカルムイク人の一部は優勢なドイツ軍に合流し、全体としても憎むべき現支配者の敵であるドイツに協力的だった。ドイツの敗色が濃厚となった1943年には懲罰のため強制移住させられた。だがその後もドイツ軍にすでに合流していたカルムイク人騎馬隊は赤軍と戦っていた」ということになるんでしょうか。

 唐突にこんな語が出るところを見ると、ドイツ人にとってカルムイク人はかつて手を組んだこともあるということでロシア共和国内のアジア系少数民族の中では親近感のある存在なのかも知れません。もちろんイエールジ・コジンスキーの見方は特定の時代における一面的なもので、「カルムイク人は残虐」ということができないのは言うまでもありません。

 私はこの本が非常に好きで、ぜひお勧めしたいところなんですが、残念ながら絶版のようです。










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