日本の新たなミサイル防衛システム導入を評する

 中国には当然不都合なわけですが‥‥

http://military.china.com/news2/569/20151217/20954429.html


日本は何故新たな対ミサイルシステムを導入するのか パトリオットはすでに中国のミサイルを防ぎ止められない

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「資料画像:アメリカのTHAADミサイル防衛システム」)

日本の防衛大臣中谷元は11月23日にアメリカのハワイを訪問した時に記者に対し、日本はアメリカの「THAAD」ミサイル防衛システムの導入を討論しつつある、とした。2日後、日本の時事通信社の報道は、日本の防衛省は2019財務年度に開始される次の5カ年計画の中で「THAAD」システムを導入する計画である、とした。

「THAAD」システムの正式名称は「末端段階高層防御システム」(略称THAAD、すなわちTerminal High Altitude Area Defense missile)である。アメリカの対ミサイル体系の下では、このミサイルと「パトリオット-3」型ミサイルは同じく戦区ミサイル防衛システムに属し、「パトリオット-3」は20km以下の低空迎撃任務を担当し、一方「THAAD」は20kmから150kmまでの高度で来襲するミサイルの迎撃を担当する。

日本が「THAAD」を購入しようとしているとの情報が伝わったのは決して初めてではない。2008年、「THAAD」はアメリカ本土で使用に投入された。翌年、日本の「毎日新聞」はもうニュースを暴露し、防衛省はアメリカから「THAAD」を購入する件を討論中であるとしたが、後に防衛省によって否認された。今回の中谷元の態度表明は日本の政治家に一貫する曖昧なスタイルを保持しているが、時事通信社の報道を結合して見ると、日本の「THAAD」購入の一件はすでに基本的に確定しているに違いない。

ならば、日本は何故「THAAD」を導入しようとしているのか? 「THAAD」の装備後、日本や地域の情勢に対しどんな影響をもたらすことになるのか?

対ミサイル体系の空白を埋める

日本のこれまでの「THAAD」に対する論証から見て、このプロジェクトの源は長期的な策から来ており、決して臨時の思いつきではない。増してや隣国が新型ミサイルを展示したからではない。これは日本の対ミサイル方面における深層レベルの需要だと言うことができる。

弾道ミサイルの飛行過程は3つの段階に分かれる。まずは離陸後のブースト段階で、初期段階、開始段階とも呼ぶ。この段階において、ミサイルの飛行速度は遅く、目標は大きく、容易に迎撃される。続くのはミサイルが弾道飛行を開始する中間段階で、この段階は基本的に大気圏外にあり、ミサイルの戦闘部の飛行の軌跡が比較的計算しやすく、このためもし防御サイドの迎撃弾に充分な射撃高度があれば、この段階は最も迎撃の実施に適している。最後の段階は再突入段階で、末端段階ともいい、ミサイルの戦闘部が改めて大気圏に進入しかつ目標に向かって飛行する。最後の段階において、先進的なミサイルの戦闘部はデコイを搭載し、機動を行い、もって相手方の迎撃弾を妨害する可能性があり、このため防御サイドの迎撃難度は比較的高い。技術的に言うと、ブースト段階の迎撃効果が最も良く、末端段階の迎撃は止むを得ざる方法である。だが現実の政治的原因により、現有のミサイル防衛システムは通常全て末端段階から着手するしかなく、さらに力を尽くして中間段階の迎撃を発展させている。

対ミサイルの難しさは、進攻サイドの弾道ミサイルの種類が多様で、射程が遠近異なり、発射陣地や来襲方向が異なり、防御突破方式が各種各様で、それにもかかわらず防衛する目標は移動できないところにあり、いわゆる「敵は暗いところにいて、こちらは明るいところにいる」というやつである。

現在の世界を縦覧すると、真に完成され、かつ脅威の変化に対しリアルタイムで運用できる、相対的に成熟した対ミサイル体系は、アメリカ一国にしかない。ロシアには技術能力はあるが、それにもかかわらず財政の逼迫に苦しみ、このため体系の角度から見ると、その対ミサイル能力にはまとまりがなく、かろうじて首都の核心的区域の対ミサイル防御は支持できるが、多様化された脅威に柔軟に対応する戦区クラスの対ミサイル防御に対しては、ロシアは「意気込みはありあまるが力不足」である。

日本の現有の対ミサイル体系の構成は、アメリカによる統一された設計という大きな枠組みの下に、日本の地縁政治環境、戦場環境、技術的実力、経済的支持能力など「基本面」の資源を結合して専門に建設されたものである。その特徴は「空」、「天」、「地」三層の早期警戒、大気圏内外の「高」「低」二層の迎撃である。このうち迎撃段階においては、第1層は大気圏外の高層迎撃、すなわち海上における「イージス」駆逐艦搭載の「スタンダード-3」および派生型ミサイルに頼ってそれぞれ中間段階迎撃と末端段階の大気圏外迎撃を遂行する。第2層は大気圏内低層迎撃で、陸上において「パトリオット-3」ミサイルに頼って迎撃し、これは前述の末端段階迎撃に属する。

技術上、対ミサイルと防空の差異は比較的大きく、防空では飛行機、ミサイル、火砲によって綿密な火力体系を組成できるが、一方対ミサイルは「ミサイル迎撃ミサイル」に頼るしかない。だが対ミサイル体系の迎撃弾も射程の段階的接続を実現することができ、防空火力の体系同様、すなわち遠近の接続で、各迎撃段階の間の空隙をできる限り小さくする。

もしこの要求に照らせば、日本のミサイル防衛体系には顕著な穴が存在する。すなわち、「スタンダード-3」ミサイルから「パトリオット-3」ミサイルの射程に至るまでの間に非常に大きな空隙がある。「スタンダード-3」は万能選手に属し、上昇段階、中間段階、再突入段階(高層)迎撃が行える。だがそれは直接衝突戦闘部と直接力制御技術を採用し、このため大気圏内では逆に機能できず、迎撃低空限界は80km以上である。ひとたびこの高度で失敗したら、直ちに「パトリオット-3」に頼るしかなくなる。だが「パトリオット-3」の射撃高度には限界があり、たった15km前後で、「スタンダード-3」の射程との間に非常に大きな空白が存在する。

この技術的角度から見て、日本が「THAAD」のような末端段階高層迎撃システムを導入することは、ちょうど上では「スタンダード-3」に接し、下では「パトリオット-3」に接し、上から受けてうまく下につなげる、ということができる。それが作用を発揮する主要な空間は、まさに相手方の弾道ミサイルの再突入段階(末端段階)である大気圏内というこの区域なのである。

一体「剣はどの方向を指す」のか?

長期にわたり日本はずっと「北朝鮮のミサイルの脅威に対抗する」を対ミサイル体系発展の理由としており、今回もまた例外ではない。だがこの中の深遠な哲理はそれにもかかわらず絶対に日本の言うように単純ではない。

北朝鮮が常用する弾道ミサイル技術の水準は相対的に立ち後れ、「スカッド」ミサイルに似ている。戦闘部とミサイル本体は分離せず、目標としての特性が顕著で、デコイあるいは偽目標も使用しない。北朝鮮のこの種のミサイルを迎撃する時には、日本の現有のミサイル防御体系はすでに充分なのである。

だがアジア太平洋地域に出現する新たな弾道ミサイルの水準は北朝鮮の過去のよく見られたタイプをはるかに超え、その技術水準は新たな段階に上がっている。この種のミサイルに対し、日本の対ミサイル体系が迎撃し漏らす確率は大いに増加する。

また日本は元々「イージス」駆逐艦を日本海と東海方向に配備し、艦上の「スタンダード-3」ミサイルを用いて中間段階迎撃を行うつもりだった。だが未来の激烈かつ複雑な戦場環境の下で、「イージス」駆逐艦を前に置いて日本の西海岸に配備したのではすでに安全ではなく、このため日本の東海岸まで後退させる可能性が高い。別の方面では、もし相手が1回に多数の弾道ミサイルを一斉射撃し、かつ航空隊などその他の打撃手段を補助したら、日本にはハイエンドの対ミサイル装備を装備し、もって「スタンダード-3」の対ミサイル任務を引き受け、その防空能力を解放する必要がある。

さらに重要なのは。「THAAD」は決して単純な対ミサイル武器ではないということである。このシステムはさらに戦区クラスの対ミサイル指揮コントロール機能を配備し、「ミサイル+戦区クラス機動指揮所」に相当する。アメリカの地対空ミサイルの系譜の中で、「THAAD」の地位は「族長」と評価でき、ワンセットの「THAAD」は多セットの「パトリオット-3」を連動させることができる。言い替えれれば、もし「THAAD」の指揮コントロール部分をそのまま固定された指揮所の中に運び込めば、すぐ直接的に戦区対ミサイル指揮任務が担える。これがあってこそ、日本の現有の「防空対ミサイル指揮自動化システム」(略称JADGE)は信頼できる技術的支えおよびプラットフォームの保障があると評価できる。

味わい深いのは、対比として韓国は北朝鮮の重要な仮想敵だが、それにもかかわらず決して「THAAD」を導入していないことである。技術の上から見れば、もし韓国に「THAAD」を配備すれば、すぐ北朝鮮のミサイルの上昇段階(すなわち発射されてすぐのブースト段階)で迎撃が実施でき、これは対ミサイルの策の中で最も良い選択である。ならば、何故韓国はこの問題の上で態度が慎重なのだろうか? これは実は対ミサイル武器の政治的属性に関わる。対ミサイルは決して単純な防御武器ではない。それは相手方の進攻性武器の脅威を失わせる方式をもって作用を発揮し、このため必ずや所在する地域の戦略バランスに影響することになるだろう。「THAAD」システムの中のレーダーの探知計測能力をもってすれば、もしそれが韓国に配備されると、こっそりと「アメリカ-日本」の対ミサイル体系の早期警戒圏と火力迎撃範囲を800km近く前進させることに相当する。この挙の影響範囲は明らかに単に朝鮮半島に局限されず、さらにはより大きな範囲内の戦略バランスに影響する。これに対し、韓国はよく知っているに違いない。

(頑住吉注:これより3ページ目)

この機を借りて米日同盟を強化

対ミサイル関連の軍事技術的背景の他、日本が「THAAD」導入を欲するのにはさらに一連の外交、技術、地縁政治的な目的がある。

その1つ目は、戦略的意義のある軍事プロジェクトの協力を通じて、「投名状」を納める(頑住吉注:水滸伝由来の語で、犠牲を払うことで仲間と認められるみたいな意味らしいです)方式をもって、政治的および軍事的見返りを引き替えに受け取ることである。対ミサイルシステムは極めて強い政治および戦略性を持つ。米日が共同で対ミサイル体系を建設できるということは、両国の安全保障領域の密接な関係の体現である。そして日本がアメリカの装備する強化対ミサイル体系を導入することは、一方においてはアメリカ軍事工業に対する支持であり、一方においてはアメリカの前線で「歩哨に立つ」ためである。このことは必然的にアメリカのその他の方面における「見返り」を引き替えに受け取ることになるだろう。

その2としては技術導入によって本国の軍事工業の実力を強化することである。「THAAD」は現代ミサイル防衛システムの中で最も代表性を持つ装備の1つである。もし「THAAD」を導入したら、「完成品」の輸入があり得るだけでなく、さらに日本に維持保護施設を建立し、甚だしきに至っては「ライセンス生産」方式をもって日本に組み立てラインを建立することがあり得る。

これを機会に、日本はアメリカの日本の対ミサイル技術に対するより多くの支持を獲得することになり、これには知識的な支持と戦闘力生成メカニズムの支持が含まれる。特に日本はアメリカの多種の武器システム、センサー、指揮コントロールシステム、通信システムを整合する方式を学習し、日本の複雑な「巨大システム」整合領域における能力を向上させることができる。外部の人間が見た対ミサイル体系は、往々にして単なるいくつかの武器だが、こうした武器を支持し正常な効用を発揮させる背後にあるのは全体的な大システムである。これにはシステムトップクラス設計、データの結合と融合、情報処理と分発、目標の特性の研究、数学モデル建立と修正、シミュレーション評価と検証など多くの目に見えない「ソフト実力」があることを必要とする。もし単に自らの探索に頼ったのでは、日本には充分な経済的実力と技術的基礎が欠乏する。結局のところ、対ミサイル技術の中の非常に多くの基礎項目は、中等国家が巨資を投じてた長年の作業で足りるのである。

このため、「THAAD」から着手して、日本はそのJADGEシステムの作戦効能、アメリカの「協同交戦」能力導入など多項目のシステム整合能力を全面向上できる。ひとたび日本が大システム、多プラットフォーム整合能力などの方面で突破を獲得すれば、その軍事工業の製品体系も「単体」の局面を脱し、「全体」的解決方案を提供できるようになり、このことは日本にとって極めて大きな吸引力を持つと言える。

その3として、周辺国に対する威嚇力を強化する。歴史上から見て、冷戦時期の米ソ対抗に始まり、「対ミサイル」はいつもずっと単純な防御ではなく、進攻能力と一体に絡み合っていた。強大な対ミサイル能力は戦略的威嚇の隠された体現なのである。現在政治上の制限により、日本は暫時進攻性武器を開発することができない。このためまず資源を戦略的防御に投入して、対ミサイル体系を建設するしかない。未来において、もし政治環境が許し、日本がひとたび進攻性武器の制限を突破すれば、すぐに現有の基礎の上に勢いに乗じて「攻防兼備」の戦略威嚇力量を建立することができる。この角度から言って、日本の対ミサイル領域への持続的投資は、将来日本がいわゆる「正常な国家」に向かい、軍事大国の地位を追求する伏線と見なすことができる。


 お決まりの軍事大国云々はともかくとして日本人が読んでも必要な理由やメリット等がそれなりによく分かるいい記事じゃないすか。















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