ロシア製「Saiga」および「Tigr」ライフル

 「Visier」2004年9月号に、AKシリーズに似た「Saiga」、ドラグノフに似た「Tigr」ライフルのレポートが掲載されていました。


東の拡張

Schumacher OHG社はSaigaおよびTigrモデルシリーズにより、ロシア製オートローダー2つのコンプリートなファミリーを提示している。Visierは7.62mm口径のTigrと.223仕様のSaigaをテストした。

銃器法の外観に関する第37条の廃止とともに、ナンセンスなオートライフル向けの外観規制もなくなった。そうこうするうちにあるモダンな民間マーケット用に設計されたオートライフルが「危険な」戦争用銃器のように見えるか否かによって国に妨害を受けることは比較的少なくなった。すなわち、弾薬薬莢の長さが40mmを下回らず、ブルパップライフルではなく、バレルが42cmより短くない限り、当該の銃はスポーツシューターおよびハンターが問題なく獲得し、愛玩し、そしてもちろん射撃してもよい。これには今や同様に木製部分の多い過去の「ミリタリー」システムのオートローダーも含まれる。Waffen Schumacher OHG社(http://www.waffenschumacher.com)は、とりわけロシアの銃器工場Izhmashのオートローダー「Saiga」および「Tigr」の輸入によって、この新しい銃器法に反応した。

 Schumacherは今回テストされた口径.223レミントンのSaigaバリエーションとならんで、.308ウィンチェスターおよび(主にハンターとヨーロッパ近隣諸国用に)7.62mmx39仕様のバリエーションといったいくつかのモデルも輸入している。自身の申し立てによれば、全ての銃は連邦経済省およびBKAによる当該の許可を得ている。

 原則的にSaigaは技術および装備において大幅にAKM47と一致する(頑住吉注:いちばん近いのはAK100シリーズだと思うんですが「AKM47」ってずいぶんおおざっぱですね)。当然この銃にはバヨネットラグといった独自の典型的にミリタリッシュなこまごましたものとならんで、フルオート射撃オプションは欠けている。またこの銃はフルオート銃の部品と交換することによってフルオートに装備変換することもできない。そのかわりメーカーはこのハンディな銃のトリガー後方に目立たない押しボタンをつけている。これによってボルトが後ろのポジションで止められる(頑住吉注:ボルトストップがないのはAK系の大きな欠点のひとつとされますが、この輸出バージョンには追加されているということです。あるいは今後軍用にも追加される可能性があるかもしれません)。

評価
 加工は人がロシア製の安価な銃に期待するものと一致している。すなわち全ての機能上重要な部品は必要な精度をもって加工されている。しかし外面では見る人は加工跡を探すのに長い時間を必要としない。腐食防止のためIzhmashはバレル内面をクロームメッキしている。一方外面はマットブラックのポリマーラッカーで軽いひっかき傷やサビから保護されている。

 Saigaのトリガーキャラクターはまったく申し分なく実用向きという印象を残した。多くの相当高価なオートローダーは、決定的に洗練されていないトリガーを提供している。シューティングレンジではトリガープルの重さよりむしろ軽度のはっきりしない「圧点」(頑住吉注:これはこの銃のトリガーがいったん重くなってから軽くなり、もう一度重くなってから落ちる中での最初のピークのことを指しているようです)が邪魔になった。トリガープルは2kg強で、既製品のオートローダーとしては是認できる限度内である。

 シンプルなオープンサイトにもシューティングレンジにおいて奇跡を期待するべきではない。100〜300mのマーキングがある上下調節可能なU字型リアサイトと、同様に上下調節可能な角材型フロントサイトが結びついたコンビネーションは射撃快適性において「西側の」.223口径ライバルのフルアジャスタブル距離調節サイトとまともに張り合えるものではない。

 これも絶対になければならない物ではないが、IzhmashはSaigaに工場渡しでレシーバー側面のマウントレールを装備している。ここにワンタッチでコンプリートのスコープまたはマウントリング/ウェーバーレールのマウントシステムをも固定することができる。Saigaのテストのため、Schumacherは組み込みのマウントレールおよび発光レティクルつきの高価な159ユーロのスコープPO4x12-1を供給した。PO4x12-1は輸入業者によればミリタリー生産物に由来し、ロシアのミルスペック基準によって作られているということだ。

 クリックによる調節は比較的粗いステップで行われる。微調節はドライバーによって行わなくてはならない。目との距離は68mmである。内部にはレティクルとしてロシアの軍用オプティカルサイトには典型的な「線プレート」が見られる。この使用に関しては、残念ながら(英語の)取り扱い説明書は大部分沈黙を通している。だが、広範囲にわたるレティクルの説明は(これも英語だが)インターネット上にある(http://www.kalinkaoptics.com/cgi-bin/kowstore.cgi?user_action=list&category=Rifle%20Scopes%3B%20POSP)。

射撃
 100mレーンにおいて、Saigaはいろいろな弾薬種類をなんらかの作動障害なしに消費した。全ての弾薬で少なくとも3回のテストシリーズを行い、そのつどベストのグルーピングは全ての弾薬種類で10cm以下となった。

 この銃のベストの射撃は、バラのパッケージから出した安価なSellier&Bellotのフルメタルジャケット弾薬使用時だったが(頑住吉注:「バラのパッケージ」というのはたぶんマス目状の仕切りの中に1発1発差し込んであるタイプではなくザラザラ流し込んだだけのパッケージのことだと思います。たぶん安物だとこうなっているんじゃないでしょうか)、アメリカンイーグル(フェデラル)およびレミントンの単純なフルメタルジャケット弾薬使用時もテスト品は実によい結果となった。

 Saigaユーザーはより高価なマッチ弾薬を倹約して買わずに済みそうだ(頑住吉注:高価なマッチ用でも特にいい結果は出ないということです)。そしてこれはリローダーにとっても喜ばしいことだが、この銃は安価なスタンダード弾薬で良好に作動する。つまり、排出された薬莢のうち多くは程度の差はあるがひどい「折り目」がつき、絶対に再利用のための薬莢へのロードには向かない。非常に短いストックとあまりに短すぎるテストスコープと目との距離の結びつきは最も大きな問題を引き起こした。輸入業者はオプションとして少なくとも3cm長い「ストックを長くするもの」を計画しているということだ。

Saigaに関する結論
 総合的に見て、Waffen SchumacherはSaigaによってライバルなしの非常に楽しいお買い得ライフルを供給している。使用者は当然HK SL8、.223口径SIG、AR-15と比較してのこの銃の命中精度に甘んじなくてはならない。しかし多くの古い軍用オートライフルとならばIzhmashの安価なオートローダーは完全に張り合える。多くの従来型ミリタリー構造の銃は、規則的に10cm以下のグルーピングを作る。しかし明らかに50mm以下のグルーピングを作り続けるのは、多くの名高いミリタリーオートローダーでも必ずしも簡単ではない。

メーカー:Izhmash
モデル:Saiga 04
価格:599ユーロ
口径:.223レミントン
マガジンキャパシティ:2、10、(30)発
全長:982mm
銃身長:520mm
照準長:480mm
重量:3300g/3900g(ZF4x24装着時)
型:回転ラグを装備したガス圧ローダー。レシーバーは鉄板薄板プレス技術を使用して製造。バレル内面はハードクロームメッキされている。金属部品外面はポリマーコーティング。側面にライフルマウントレールつき。プラスチック製ストック。

Saiga 04 .223レミントン

メーカー 名称/弾丸 グルーピング
Sellier&Bellot 55grsFMJ No.2903/M193 44mm
Federal American Eagle/55grsFMJ Boat Teil 66mm
Federal Gold Medal/69grs Sierra Matchking BTHP 86mm
PMC Sierra Gameking 55grs HP-BT 74mm
Remington High Velocity 55grs Metal Cace FMJ 62mm

距離100m。5発のグルーピング。プローン、銃は砂袋に委託した状態で計測。使用スコープはPO4x24-1



シベリアの虎
 民間用のカラシニコフ銃の子孫であるSaigaシリーズとならんで、Waffen Schumacherは「Tigr」も販売している。.308ウィンチェスター口径のドラグノフ銃の子孫による最初のテストはすでに2004年1月号で行っている。今回輸入業者はオリジナル口径7.62mmx54R仕様のTigrバリエーションを送ってきた。この銃は使用弾薬を除いて.308口径バージョンとほとんど変わらない。外見上は薄い鉄板製マガジン(頑住吉注:.308バージョンはプラスチック製)およびいくらか長いストレートなフラッシュハイダーによって7.62mmのモデルと分かる。このフラッシュハイダーは.308Tigrの短いラッパ型より視覚的に好印象のように見える。外観上総合的にTigrはSWDとして有名な現用のドラグノフの陸軍型ときわめて近い。しかし内的には100%民間用生産部門由来である。だからTigrの場合もドラグノフとTigrの本質的パーツの交換可能性はない。

 SWD(または英語方式のキリル言語の言い換えによれば「Snayperskaya Vintovka Dragnova」の略としてSVDとも言う。)は初めて直接スナイパー用に開発されたロシア製ライフルである。この銃はそれまでなお使用されていたスナイパーモデル、モシン-ナガンM91/30連発銃と交換された。このオートローダーは1991年に死去したJewgeni Fjodorowitsch Dragunowにより、1958〜1962年に開発され、1963年に公式に赤軍に受領された。大部分のワルシャワパクト諸国と中国はこれにならった。

構造
 ドラグノフライフルは「ショートストローク」ガスピストンを使用している。カラシニコフシステムとは異なり、ガスピストンロッドとボルトキャリアは分けられた構造グループとなっている。この構造は射撃時の銃の重心移動を抑えるように作用し、その際に発生する振動も減らす。これらの特徴は命中精度にポジティブな影響を与える。その上減らされた重心移動はさらなる正確に狙った射撃をも簡単にしている。

 この銃は平均的な体格の右利き射手の射撃姿勢には非常に良好に馴染む。ストックは固くならずに射撃時のホールドを行うための調節可能なチークピースを備えている。このチークピースはオープンサイト(Saigaのサイトと同じもの)使用時は簡単にたたむことができる(頑住吉注:たたむというか、スケルトンストックの上の支持棒が円柱状であり、チークピースがこれを軸に回転するようになっています。使うときは上に回し、使わないときは下に回すわけです。高さが自由に変えられる普通の調節とは違いますわな)。だが、左利き射手はプローンでもスタンディングでもフロント、リアサイトで狙うのに極度の困難を味わう。Tigrのストックは右利き射手が顔をセンターに持ってきやすいように軽く右にオフセットされている。スコープを使用しての射撃時であっても、左利き射手はきちんとした狙いを可能にするためにチークピースをたいてい完全に方向転換しなくてはならない(頑住吉注:チークピースはスコープ使用時のためのものであるはずなのに、左利き射手は下に回して不使用状態にしないとうまく狙えないということのようです)。

 テスト銃の仕上げはクオリティ的にSaigaから劇的に変わってはいない。ただしTigrでは価格が1300ユーロ弱とSaigaの2倍より高いにもかかわらず、工具跡がより強く邪魔になる。特にフォアグリップは最低限の研磨で明らかに改善する可能性がある。

射撃テスト
 だが(頑住吉注:仕上げはよくないが)、そのかわりSaigaと比べてかなりよい射撃成績が償いになっている。最小の5発グルーピングはたった22mmと計測され(Sellier&Bellot)、安価なIgman弾薬およびSakoの弱装のトレーニング弾薬でもテスト銃のグルーピングは明らかに50mm以下に留まった。

 その際、Tigeはガス圧システムのスタンダードな調節で全ての弾薬種類をどうにか「軍用の」成績データで、そしてフルメタルジャケット弾の場合はただの1回の障害もなく消化した(頑住吉注:前者は全ての弾薬において軍用スナイパーライフルとして最低限許される程度のグルーピングに収まった、ということのようです)。テスト銃の場合、短く、その上非常に控えめなロードがなされたSakoトレーニング弾薬(装填障害)、および「Mega」セミジャケット弾つきのLapuaハンティング弾薬使用時のみ問題が予想される。この場合も全弾薬が損なわれることなくマガジンからフィーディングランプを経てチャンバーに運ばれることはない。

 その上Tigrは条件つきでしかリローダーに勧められない。この銃もリローダーにとってむしろ金がかかる。シューティングレンジでポジティブに目を引いたのは、最初の15〜20発の間、バレルの温度が射撃成績に本質的な影響を与えなかったことだ。ただし引き続いて射撃する場合は、射手は銃により長い休止を与えねばならない。というのは、Tigrは単にノーマルな輪郭のバレルを使用しており、「ブルバレル」という野心を持っていない。そして遅くとも紙箱1つ分の弾薬を遅滞なく射撃した後には、(頑住吉注:熱したバレルからたちのぼるかげろうで)スコープ内のターゲット像は泳ぎ始める

Tigrに関する結論
総合的に見て、7.62mmx54R仕様のテスト銃は正しい弾薬を使った場合、オートローダーとして非常に良好な命中精度を提供する。そして今日本質的なライバルは、通常しばしば太いバレルを使い、チューニング処置を施し、あるいはシステムベディングを行ったとしても存在しない。やすりをかけて微調整する距離調整サイトは断念でき、かわりに自分の銃をスコープを使って射撃する方が好ましいという人は、口径領域7.62mm/.308のTigrを入手すれば、かなり良好なスポーツ銃を得ることになる。

メーカー:Izhmash
モデル:Tigr 7.62
価格:1295ユーロ
口径:7.62mmx54R
マガジンキャパシティ:2、10発
全長:1185mm
銃身長:620mm
照準長:590mm
空虚重量:3800g
型:回転ラグを装備したガス圧ローダー。ガス圧ロッドはボルトキャリアから分離されている。プラスチック製ストック。側面にライフルマウントレールつき。フラッシュハイダー装備。レシーバーは削りだし。ポリマーコーティング。


Izhmash Tigr:7.62mmx54R

メーカー 名称/弾丸 初速(m/s) 初活力(ジュール) グルーピング
Sellier&Bellot 180grsFMJ No.2909 781m/s 3555J 22mm
Saco 123grsFMJ 850m/s 2879J 40mm
Igman 150grsFMJ 859m/s 3583J 40mm
Lapua Trainer/123grsFMJ 873m/s 3034J 58mm
Lapua 185grsE415セミジャケット(Mega) 754m/s 3409J 72mm
PPU Surplus,149grs(Los53-10) 852m/s 3508J 98mm

距離100m。5発のグルーピング。プローン、銃は砂袋に委託した状態で計測。



 AKのメーカーであるIzhmashは、すでにお知らせした実銃そっくりで二酸化炭素を使って4mmBB弾を発射する「ユンカー」も含め、あの手この手で国際的に製品を輸出しようとしています。今ドイツでは安価に軍用そっくりなAK、ドラグノフの民間型スポーツ銃が入手できるわけです。この記事を読む限り性能的にも決して悪くはなさそうですし、ロシア製らしい信頼性の高さは民間用でも変わらないようです。Izhmash自身の公式紹介ページはここです。

http://www.izhmash.ru/eng/product/weapon.shtml

 AKはガスピストンとボルトおよびボルトキャリアという大きな重量を持つパーツが発射時にフルストローク前後動し、これによって命中精度が低くなりがちであるが、ドラグノフはショートストロークピストンを採用しているのでガスピストン自体は短い距離しか動かず、これが命中精度上プラスになっている、ということが指摘されています。20発以上続けて射撃した場合にはバレルの加熱で命中精度が低下するようですが、この銃は原設計が軍用スナイパーライフルであり、軍用スナイパーライフルをそんなに連射することはまれでしょうから設計者は軽量化を優先したんでしょう。ちなみにドイツ製のMG4もAK同様ガスピストンがボルトキャリアと一体になっていますからフルオート時の(ってフルオートオンリーですけど)集弾性が悪くなる理屈ですが、まああれだけ大きく重い銃で5.56mmx45を発射するので問題ないんでしょう。G36系も、HKM4カービンも、そしてMP7A1もショートストロークピストンを採用しているので通常のガスオペレーションよりは命中精度上有利ということかもしれません。ただそもそもピストンがなくガスを直接利用してボルトキャリアを動かすM16系よりは理論上不利であるはずです。
 実際にも「マッチガンとしてのM16」の項目で紹介した、ドイツで販売されているM16コピー品のOA−15は2つの弾薬で17mm以下のグルーピングになっており、今回のTigrより優れています(同じ「Visier」によるテストですから条件は近いと推測されます)。基本価格1600ユーロと、想像するよりはTigrとの価格差もありません。というわけでTigrは(もちろんSaigaも)本格的なマッチ用にはならないでしょうが、マニアには魅力的な商品でしょう。そして現在使われているロシア軍用のAK74、ドラグノフの命中精度もおそらくこれと大きな差はないのではないかと推測できるはずです。







戻るボタン