H&K G11
http://www.sgfalli.de/waffen/g11.html

 H&K G11に関し比較的詳しく解説しているページを見つけました。ドイツ連邦国防軍に関するサイト内のページで、 http://www.sgfalli.de/navigation.html ここにいくつかの他の兵器の解説ページへのリンクもあります。


シュネールフォイアーゲベール モデルHK G11 4.7mm(頑住吉注:「速射ライフル」。モーゼルM712の通称と同じ語が使われていますが、これも正式な名称ではないはずです)

 1960年代の半ばから末、オベルンドルフに所在する西ドイツの会社ヘッケラー&コック有限会社(HK)では専門家からなる完全な参謀集団が、ある歩兵銃開発のための基礎研究に取り組んでいた。これはできる限り新たな歩兵銃世代のための試験的プロジェクトとなることを意図したものだった。スタッフは次のような要素を得ようと務めた。すなわち銃の最適化された連射、高い命中正確性、軽い重量、長い寿命である。スタッフは射手に追加的負担なしでかなりより大きな弾薬ストックを装備させ、それまで他の銃であったようなものより決定的に長い時間にわたって銃の信頼性を保証することを望んだ。

 複合的な要求カタログは、同時に完全に新方式の弾薬も使用できる状態にあったときにのみ実現できることが確認された。すでに当時そのような弾薬の要素はエキスパートたちによってとっくに議論されていた。だが研究室内の実験による生産準備作業をひとたび度外視すれば、まだエネルギッシュには押し進められてはいなかった。しかしどのような弾薬のタイプが問題になってくるかにはほとんど不明瞭さはなかった。すなわち小口径ケースレス弾薬である。

 これによりスタッフは銃内での弾薬のための供給ルートを短縮し、そしてエキストラクション、エジェクションシステムを完全に放棄することができた。そのような弾薬は残りかすなしに燃焼するからである。ケースレス弾薬はより軽量で銃の重量も著しく軽量となるはずだった。全ての種類の射撃法が可能のはずであり、セミおよびフルオートの際、もしくは運動量にあやつられたバースト射撃の際、小口径による小さなリコイルショックエネルギーとの相乗効果で要求された高い尺度での命中正確性の最適化が可能になるはずと考えられた。

 つまりスタッフはコンパクトな銃およびコンパクトな弾薬を目指し、疑いなく技術的新世界への一歩であるこのプロジェクトを引き受けた。このため設計者はシステムの可動部品の数を最小限度に減らし、銃の外形デザインは従来とは異なる他の尺度を設定したものとなった。

 この速射ライフルはただの1つも突出した部品を持たない。開口部はマズルにしかない。トリガーはフレキシブルなパッキングを持ち、バレル上に固定されるマガジンの交換のための操作エレメントも同様にパッキング構造だった。つまり水、埃などシステムを損なう物質は大幅に避けられている。

 1969年からヘッケラー&コック有限会社内でケースレス弾薬の供給と発射のための完全に新方式のメカニズムが実験された。同時にTroisdorf所在の弾薬メーカーであるダイナマイト ノーベル株式会社ではこの銃に必要な弾薬の開発に向けた努力が行われた。

 この際特別に問題をはらんでいると分かったのはケースレス弾薬の自然発火傾向だった。何発かの射撃の後にチャンバーは加熱し、この結果薬莢で保護されていない発射薬が弾薬供給の際にすでに発火した。このチャンバーのアンコントローラブルな加熱の主要な原因は、発射薬の燃焼の際に発生する熱がほとんど排出され得ないことだった。これはコンベンショナルな火器では、基本的には熱した薬莢の投げ出しによって達成される。つまり薬莢のない弾薬が使われる際には存在しない経過の際にである。しかしメーカーが断言しているように、そうこうするうちに自然発火しないケースレス弾薬の開発は成功した。

 1981年までに、ゲベールG11と名付けられた銃のおよそ10世代が開発され、プロトタイプとしてテストされた。その年の8月、メーカーでは締めくくりのテストが開始され、1983年始めにはニュータイプの速射ライフル最初の25挺が部隊テストのために引き渡された。これが成功と分かれば、まず遠隔斥候と呼ばれる西ドイツ軍の特別偵察部隊に供給されることが意図された。これまでの発表によればこの銃の実戦投入は大部分において1980年代末に計画されていた(しかし1984年11月のルクセンブルグにおける展示会でこの銃は展示されなかった)。

 メーカーは他のNATO諸国軍もこの銃器モデルを採用することを期待し、外国での広範囲の供給を望んだ。ビジネス上の成功を危険にさらさないため、これまで銃および弾薬のディテールは大幅に秘密保持されている。それにもかかわらず情報が存在する。これが狙って振り撒かれたものなのか、あるいは口の軽さによって知られたものなのかは、判断できない。

 速射ライフル モデル HK G11はローラーとも呼ばれる円筒形の回転閉鎖機構を持つガス圧ローダーである。同時にチャンバーでもあるこの完全に新形式の閉鎖機構を使ってケースレス弾薬が供給される。このローラーはバレル軸に対して直角な水平の軸をめぐって時計方向に回転する。

 銃が装填されている際ローラー内に存在する弾薬を収めたチャンバーの軸はバレル方向を向いている。発射後このローラーは約90度回転し、つまり垂直に立つ。この位置ではマガジンから新しい弾薬が弾丸先端を下に向けて供給される。その後約90度回転し、その後になって初めて点火される。射撃の際、全メカニズムはマガジンを含め後方に動く。

 コックのためには射手は銃器外装ケース左サイド、ピストルグリップ後方にあるサークル状の操作エレメントを360度回さねばならない(頑住吉注:これは90度の誤りでしょう)。ピストルグリップ直上(左にも)には射撃選択用レバーがあり、その直下には開口が1つある。この開口はオートマチックな射撃サイクルの際には閉鎖されている。しかし発射されていない弾薬を突き出すため、別の言い方をすれば銃をアンロードするため、この開口の閉鎖を解くことができる。この銃はセミオート、3発バースト、フルオートで射撃される。理論的発射速度はバースト時2000発/分、フルオート時は600発/分である。

 サイト設備(オプティカルサイト)はキャリングハンドルに組み込まれている。サイティングの際射手は両目を開けたままとすることができ、そしてこのため戦場を見渡すこともできる。不都合な光の状況の際にはターゲット把握が困難化するため、サイト内のレティクルはバッテリーからの電力供給によって電気的に発光する。この照明は3分後に自動的に切れる。

 約140の個別パーツからなる銃の全ての構造グループは閉鎖された銃器外装ケース内に収められている。適した表面加工がなされたこのケースは、わずかな赤外線反射能力を持ち、それ自体赤外線視察装置によって位置測定できる可能性のある熱エネルギーを放射しない。クリーニング器具はバレル下ハンドガード内にある。スリングベルトは外装ケース前部左および後部両側のリングに固定される(頑住吉注:前部も両側にあるようです)。このタイプの速射ライフルが1990年以後西ドイツ軍においてストゥルムゲベールG11の名で採用されたことは決定的である。このオベルンドルフの会社は350,000挺の供給に関する注文を手にした。しかしさらなるテストの後、これはキャンセルされた。

シュネールフォイアーゲベール モデルHK G11 データ

口径 4.7mm
弾薬 4.7x33DM11
初速 930m/s
銃身長 540mm
全長 750mm
ライフリング ポリゴン 右回り
サイト上の射程 300m
実戦使用射程 300m
発射速度 2000発/分
弾薬供給 50発容量の水平なバレル上のマガジン
重量 3.80kg
装填時重量 4.20kg

 G11に関してはこれまで何度も触れています。コックオフ問題が解決されたのかどうかという問題に関しては、ここでも「解決された」とされています。発射による加熱はバレルを赤熱させるほどにもなるのに、これで発火せずプライマーのスパークを浴びると確実に発火する発射薬というのは想像しがたいですが、まあこの場合に言う「解決された」というのは通常のアサルトライフルでも連射を続ければいずれコックオフは起きるわけで、これとさほどの差はない、という程度までは改善できた、という意味なんだろうと思います。なお、この銃でコックオフが起きやすいのは薬莢がなく発射薬が加熱したチャンバーに直接触れるからだとしか考えていませんでしたが、デザインおよび原理上開口が少なく、また排莢というサイクルがないため熱の逃げ場がないという理由も大きかったわけですね。赤外線探知されないというのはメリットでもありますが、過熱と表裏一体でもあります。素人考えですが、以前エアソフトガンのガスガンによく付属していたフロンガスのミニボンベみたいなものを本体に内蔵し、セレクターをフルに合わせた状態でトリガーを引いた時だけ外部からチャンバーに液化ガスを吹き付けるような仕組みはダメでしょうか。さほど重量増、複雑化、コストアップにはつながらないと思うんですが、まあ軍用としては面倒臭すぎるでしょうね。

 ちなみに「H&K MP7A1」の項目にも、「1990年代の早い時期におけるG11プロジェクト終了と、その間に制式採用されたG11が今度はそれにもかかわらず調達されないという突然の決定とともに」という記述があって「ん?」と思ったんですが、この銃は不採用になったのではなく、いったん採用されたもののキャンセルされたということらしいです。ドイツ語版「Wikipedia」でも「この銃は採用に適するまでに完成して開発されたが、ドイツ連邦国防軍のスタンダード銃器としては調達されなかった」という「不採用」とは違うニュアンスの記述になっていました。キャンセルが冷戦の終結による必要性の低下や東ドイツの統合による経済的な問題によるのか、今回の記述「しかしさらなるテストの後、これはキャンセルされた」から想像されるように採用後に続行されたテストにおいて何らかの問題が発見されたからなのかは不明のままです。







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