シュワルツローゼピストル その1


シュワルツローゼピストル

 Andreas Wilhelm Schwarzloseは1867年7月31日にブランデンブルグの近くのWustで生まれ、1936年4月18日に死んだ。彼は本来オーストリア、オランダ、セルビア、ブルガリア、ルーマニア、トルコで採用された彼のマシンガンによって初めて知られるようになった( http://en.wikipedia.org/wiki/Schwarzlose_MG_M.07/12 )。このマシンガンを作った火薬専門家兼銃器技術者(頑住吉注:シュワルツローゼ)は多数のセルフローディングピストルを設計していたが、彼はこれによってさほど大きな成功を収めず、このため残念ながらこれらは無視さえされた。

 すでにシュワルツローゼは1892年12月14日、彼の「ハンマーとブロック閉鎖機構を持つHandfeuerwaffe」をパテント申請していた(頑住吉注:本格的に商業販売された初のオートピストルであるボーチャードの発売は翌年のことです。ちなみに何度か触れましたが「Handfeuerwaffe」とは手で持って撃つ銃のことで、小火器でも地面や車両等に据えて撃つ銃は含まれません)。これに関しその後の1893年8月2日、ナンバー70130の下にパテントが彼に与えられもした。

 だがこの彼の最初のピストルはまだ実に奇妙な設計がなされていた。ただこの銃は、シュワルツローゼが軍における実用のためのセルフローディングピストルを作り出すため、複雑な技術的経過を考え出していたことを示している。この銃に関しては特に、バレル下のマガジン様スペース内における(リムド)弾薬の倒立収容も目を引く。

 このパテント書類 ナンバー70130には次のような文面がある。

提出された発明はブロック閉鎖機構、オートマチックなトリガーセーフティおよびハンマーセーフティを持つ火器に関するものである。この火器の場合装填作業は後方に作用する駆動ガスの突きによって、それぞれの発射後に自動的に実行される。ただしこの発明は手動操作を伴う銃器にも用途を見出し得る。

 添付された図はリコイルショックによって自動的に装填されるピストルを分かりやすく説明している。さらに次のことを示している。

図1 銃の縦断面。閉鎖機構はロックされ、ハンマーはコックされている(頑住吉注:下の画像における「Fig.1」というのが図1です)。

図2 縦断面。この場合各部品の位置は発射直後を示している。閉鎖機構は完全に開かれ、空薬莢は投げ出されている。新しい弾薬はスプーンによってバレル開口の後に持ち上げられている。

図4から10は閉鎖機構部品および発火機構部品の個々の外観を示している。

図11および12はオートマチックなセーフティを表現している。

 閉鎖機構部品を収容している銃器ケース壁Bは、そこに固定されているバレルAとともに、マガジンケースHのリングh3内および銃床Kの両方の壁の間で移動可能なように収容されており、この結果バレルは短距離後方に移動できる。

 閉鎖部品C(図4)およびハンマーD(図5)は並んでともに両方の銃器ケース壁Bの間で共通の軸oをめぐって振れる。前者は弾薬をバレル内に押し込み、包底面を形成している上部の両サイドに2つのロッキング用突起ccを持つ。このロッキング用突起は閉鎖完了時には銃器ケース壁の2つの切り欠きbb内に入り、閉鎖部品が後方に押し動かされることを防ぐ。スリットc1はこのために必要な、軸o上での垂直のスライドを許す。ハンマーは知られた方法で弾薬の点火をもたらし、スリットdを用いて(このスリット内では閉鎖部品のボルトc2が滑る)閉鎖部品を動かす役割も果たす。

 打撃スプリングGの前の脚の端部にはバーE(図10)が固定されている(
頑住吉注:要するにシアです)。このバーはノッチフックeによってハンマーをコック状態でホールドする。そしてトリガーのノーズl1(前のバーアームを持ち上げる)によってハンマー円盤から外される(頑住吉注:「ハンマー円盤」とは、ハンマーの下部の回転軸周囲のことです)。

 打撃スプリングGは延長部B1上のピンgで左の銃器ケース壁に取り付けられている(図3参照)。その前の脚は突起b1に軽くあてがわれ、このため突起b1はバーEごと後方へコックされる能力がある。後ろの脚の端にはリンクFが取り付けられ、ハンマーを常時前方へ駆動している。

 エジェクターJ(図7)は右の銃器ケース壁外側で軸iをめぐって振れる。このエジェクターはハンマー円盤がハンマーの後退時に突起i1(発火機構ケース内に突き出している)を突くことによって作動させられる。これにより上のアームが急速に後退させられ、ツメi2によって発射済み薬莢を取り除く。

 閉鎖部品が後方に振れる際、c3のサイドに取り付けられているスプーンR(図6)がマガジンから引き出された弾薬をバレル後方に持ち上げる。スプーンは2つの「頬」rrを弾薬の誘導のために持ち、そして2つの切り取り部r1も持つ。切り取り部r1内にはツバ状部分もある。その制御された運動は、左の銃器ケース壁内側に突き出ているピンb2とともに左の耳状部品の端部r2およびr3によって確保される。

 トリガーL(図9)およびセーフティP(図8)はlおよびpにおいて銃床Kに固定され、共通のスプリングp1に影響される。トリガーは同時にフックl2によってシステム(図3)を出発位置に固定している。このフックl2はトリガーがフリーにされている(頑住吉注:引かれていない)際は突起b1の端部b4に当たっている。セーフティの目的は、ハンマーの全ての動きを手の中にある銃が発射準備状態にあるときだけ許し、そして閉鎖機構のオープンのためにハンマーを各発射後に自動的に後方に回転させることである。これはスリットp4(ここにはリンクピンd3がはまっている)およびノッチp3(トリガーの前に位置する)によって結果として引き起こされる。

 発射時の作動経過は次のようである。

 ロードされ、コックされた銃(図1参照)を握った際、右手の中指によってセーフティピンp2が銃床内に押し込まれる。これにより射手はそれまでトリガーの動きを妨げていたノッチp3を持ち上げてトリガーから外す。同時に切り抜きp4がリンクピンd3上でずらされるので、ハンマーは自由にプライマーに向けて前方に急速に進むことが出来るようになる(図11参照)。射手がこのときトリガーを引くと、まずフックl2が突起b4をフリーにし、その後トリガーはノーズl1によってバーEを外し、これにより発射が起こる。

 このときリコイルショックはシステム(図3)とマガジンケースを銃床上で急速に後方に動かす。これによりハンマーがその軸oをめぐって回転させられる。ハンマーはセーフティによってシステムと関節様に結合されているからである。この際閉鎖部品のボルトc2は初めハンマーのスリットの後部(oからの半径で曲げられた部分d)を滑る。そして閉鎖はまだなされたままである。その後スリット前部の上り坂になった部分d1がボルトc2に当たり、これにより閉鎖部品は垂直に上へと持ち上げられる。この結果閉鎖用突起cは銃器ケースの切り取り部bから出て行く。一方ボルトc2はスリットの最終面に到着し、今や閉鎖部品を後方に引く。その後切り取り部bの斜面b3は閉鎖用突起をさらにいくらか上へと押し動かし、これによりボルトc2はスリットの半径状の部分d2内で上昇し、これにより閉鎖部品とハンマーを連動させる。「尾」c4は後方への振れの際にガイドとなり、両パーツの前方への動きの連動を確実にする。oからの半径で曲げられた下面が銃器ケース後部B2を滑り、閉鎖部品の沈下を妨げることによってである。この間に下部のハンマー円盤はエジェクターを急速に後退させる。この結果発射済み薬莢は投げ出される。さらにスプーンはその端部r2を使って、固定されたピンb2を突き、そしてこれにより新しい弾薬を持ち上げ、これをバレル後部の開口の前に置く。

 これに続く閉鎖機構のロックの際、圧縮された打撃スプリングGがハンマーを、軸oをめぐって前方に回転させる。このことが他方では閉鎖部品をバレル方向に動かし、これがスプーン上に位置する新しい弾薬をチャンバー内に押し込む。一方スプーンはピンb2の後ろを滑る端部r3によって下へと圧される。閉鎖部品がバレルと密着するとすぐ、閉鎖部品のボルトc2はスリットの半径状の部分d2から滑り出し、これでハンマーは単独で前方に急速に走る。そしてスリットの切り立った部分d1によって閉鎖用突起cを再び銃器ケースの切り取り部b内へと押し動かす。その後、下のハンマー円盤はノッチフックe内に落ち込み(ノッチフックeはバースプリングe2によってすでに持ち上げられている)、これによりハンマーはコック位置にホールドされる。

 ハンマーが急速に前進するとともに、同じ比率でシステムがセーフティ上で前方へと引かれるが、その際バーの中のハンマーのEinfallenであるfがまだ切り取りの縦部分p4にあり、銃床内の出発位置に圧されている
(頑住吉注:意味不明ですが、どうもシステムの前進が何らかの制約によってすぐには始まらない、ということを言っているようです)。後方への急速な動きによって圧縮されたスプリングh7はこのときになって初めてシステム全体を完全に発射位置に前進させる。この結果セーフティは解放され、スプリングp1によって駆動され、出発位置(図1)に戻る(頑住吉注:作動の経過説明はここで終わっています)

 打撃スプリング弛緩下のセーフティはこれにより次のことを結果として引き起こす。射手がセーフティピンp2およびトリガーの後方への圧迫の後、ハンマーをゆっくりと前に滑らせる。セーフティの切り取り部の刻み目p5がリンクピンd3上に位置し、そしてこれによりハンマーがプライマーへの打撃ポイントから数mm手前で固定されて動けなくなるまでである。改めてのコックはセーフティピンp2の事前の後方、銃床内への圧迫の後になって初めてなされうる(図12参照)
(頑住吉注:これは安全なデコックについての説明です)

 次のことはおそらくたやすく明白となる。前述の発明は閉鎖機構の単純さと堅固さ、および簡単で危険のない取り扱いを実現し、また本質的な変更なしに全ての種類の火器を作ることができる。それに応じて弾薬供給も異なる方法で行える
(頑住吉注:当時はまだサブマシンガンやアサルトライフルはありませんから、基本的に同じメカニズムでライフル、カービン、ショットガンも作れる、そうした長い、あるいは太い弾薬を使う銃の場合はこれとは異なる適した弾薬の配置が考えられる、ということでしょう)

 添付された図にはバレルの下、そしてバレルに沿って配置されたマガジンケースHが表現されている。例として前部にはパイプhがあり、このためにはバーh1に誘導された弾薬供給スプリングh2、およびバレルリングh3がある。

 マガジンの充填のためには、水平のヒンジをめぐって移動可能な「戸」H1を「前方にスライドするもの」h4を後ろに引いた後にパタンと開く。この後弾薬は個別に、あるいは適したローダーによって一度に、スプリングh2の圧縮下で運び込むことが出来る。ケース内に入れられた、内側からスプリングのテンションがかけられたホルダーH2は2つのフランジh5で最後部の弾薬をスプーンから後方に引き離して保持している。そして各発射後にバレル下面から突き出たピンa(システム全体が前に滑る際、くさび状の突起部h6に作用する)によって一瞬オープンさせられ、この結果弾薬はスプーン内に滑ることができる。





パテント要求

1. ハンマーとブロック閉鎖機構を持つHandfeuerwaffeであり、この場合水平な軸(o)をめぐって振れるハンマー(D)が、同じ軸上をスリット(c1)によって回転およびスライド可能に配置された閉鎖ブロック(C)と、ピン(c2)およびスリット誘導(dd1d2)によってある種の連結がなされている。このためハンマーが後方に引かれた際、閉鎖ブロックは閉鎖ケース内のそのためのノッチ(b)から持ち上げられ、そしてその後に後方に振れさせられる。

2. 1.で特徴を示したHandfeuerwaffeの形態であり、この場合打撃スプリング、ハンマー、閉鎖ブロック、バレルが銃床内でバレル軸線方向に押し動かせるシステムケース(B)内に配置されている。一方ハンマーはその回転ポイント(o)下側でピン(p)を伴う連結節(P)によって銃床と結合されており、この結果システムケースの後退の際、リコイルショックによってハンマーのコッキング、そしてこれにより閉鎖機構のオープンが行われる。

3. 1.および2.で特徴を示したHandfeuerwaffeの形態であり、この場合連結節(P)がコッキングされたハンマーをノッチ(p5)によって、そして同時にトリガーをノッチ(p3)によってその位置に固定して安全を図り、セーフティ節(P)の持ち上げによってノッチ(p5p3)がハンマーおよびトリガーをフリーにするまでの間は発射を許さない。


 シュパンダウに作業場を開いていたシュワルツローゼは、彼のパテントに従った不明数のピストルを作らせ、いろいろな国の軍と商売を始めることを試みた。しかし彼の「珍品」に興味を持つ者は見つからず、彼の発明は姿を消した。ともあれこのピストルのサンプルの1挺はRiege(ベルギー)のMusee d'Armesで見学できる(頑住吉注: http://www.museedarmes.be/ )。


 最近書かれた雑誌や本の記事に比べ、歴史的文書は読みにくい傾向にあるんですが、今回の大部分を占める100年以上前のパテント書類からの引用文も現在と少し綴りが違う単語や用法が出てくるなど非常に難解でした。

 私は文章を読む前にこのパテント図面を見て、シュワルツローゼがオートピストルを作る前に試みたハンドリピーティングピストルかと思いましたが、実際にはきわめて特異な構造のオートピストルでした。閉鎖機構が前後にスライドするのではなく回転する、またハンマーノーズを持つオートピストルはきわめて珍しいはずです。閉鎖機構が回転運動し、ハンマーのコッキングによってロック解除が行われるあたりは「Faustfeuerwaffen」の「単発銃用の閉鎖機構」の項目でもイラスト入りで解説されたローリングブロックにやや似ており、あるいはこのあたりから発想が出発したのかもしれません。ただしローリングブロックの場合ハンマー自体が閉鎖機構を閉鎖状態で固定する「つっかえ棒」の役割を果たすのに対し、この銃では閉鎖機構のロッキングはバレルエクステンション部とのかみ合いによって行われ、ハンマーは閉鎖機構を持ち上げることによってそのかみ合いを外すだけである点が異なっています。

 ポイントだけ補足説明します。この銃は図3にあるバレル、ハンマー、閉鎖機構等を含む「システム」部と、グリップ、トリガー、セーフティなどを含む「銃床」部に大きく二分されており、前者は後者の上で前後動でき、後退するとh7の板バネが圧縮されて前方に押し戻そうとします。このあたりはウェブリー フォスベリーオートマチックリボルバーにやや似ています。メインスプリングは二股になった板バネで、後ろの「脚」はS&Wリボルバーなどと大差ない形でハンマーにテンションをかけています。前の「脚」には非常に珍しいことにシアEが取り付けられています。シアにはこれとは別に板バネのリターンスプリングが付属しており、図で時計方向に回転するようテンションがかけられています。ハンマーと閉鎖機構は共通の軸を持ちますが、ハンマーが単に回転するだけであるのに対し、閉鎖機構の軸穴は縦に長く、回転と同時に上下にスライドもできるようになっています。閉鎖機構に付属している突起c2が、ハンマーのスリットにはまっているので両者は連動します。閉鎖状態では閉鎖機構上部の左右への張り出しがバレルエクステンションの凹にはまっており、閉鎖機構はこのままでは後退できないようロックされています。閉鎖機構には弾薬をすくい上げる「スプーン」が付属しています。セーフティは前端に近い位置に軸穴があり、後方が大きく時計方向にスイングできます。スイングするとトリガーリターンスプリングと共通のリターンスプリングによって復帰するように押されます。セーフティはかなり多くの機能を持っていますが、まず第1にグリップセーフティとして機能します。閉鎖状態でトリガーを引いていないときには開口部にはまったハンマーの突起をひっかけて前進できないように固定しています。またトリガーもフック部でひっかけて引けないよう固定しています。トリガーはトリガーで、そのフック部で「システム」をひっかけて固定しているので、この状態では例えばマズルを強く押しても後退することはありません。

 グリップセーフティを握るとトリガーとハンマーの固定は解かれ、この状態でトリガーを引くとシアが反時計方向に回転してハンマーをレットオフします。ハンマーノーズがプライマーを突いて発火させ、閉鎖機構は後方に押されますがロックされているので単独では後退できず、「システム」全体が後退することになります。セーフティの軸は「銃床」側に、ハンマーの軸は「システム」側にあるので、「システム」が後退すると軸の間の距離が大きくなります。ハンマーの突起がセーフティの開口部にはまっているためハンマー下部が前に引っ張られ、結果として上部は後方に動き、要するにコックされることになります。ハンマーが一定以上コックされると、スリットの形状によってここにはまっている閉鎖機構の突起が持ち上げられることで閉鎖機構が上昇し、ロックは解除されます。さらにコックされるとスリットの終点に到達して閉鎖機構は後ろに引かれ、オープンします。このとき突起はスリット最終部の強く曲がった部分に入り込みます。またハンマーが一定以上起きるとハンマー下部によってエジェクターの軸の下が前に蹴られ、結果として上が後ろに動いて空薬莢を排出します。閉鎖機構に関節結合された「スプーン」には次の弾薬が載っており、閉鎖機構が一定以上起きるとピンに当たって回転し、弾薬は水平状態になります。これで後退までの作動が終了です。

  図1を見てください。「システム」後端にはB2という弧状の隔壁のような部分があります。ハンマー後ろの弧状部分はこの隔壁内を通ることで誘導されます。図1では閉鎖機構の後ろの弧状部分も隔壁内を通りそうに見えますが、これはロックされて閉鎖機構が下降しているからであって、起きるときには上昇しており、図2のように後ろを通ることになります。図2でハンマーは図1のコック状態よりもはるかに大きく起こされています。オーバーな後退を終えたハンマーは復帰しようとしますが、このとき連動して閉鎖機構が復帰します。閉鎖機構の突起がハンマーのスリット最終部の強く曲がった位置に入り込んでいるからで、これがなかったら閉鎖機構は完全閉鎖しません。閉鎖機構が誤って下降してしまうと突起が最終部から逸脱してしまい、完全閉鎖しなくなるのでこれを防ぐために閉鎖機構後部の弧状部分は隔壁の後ろを通るようになっているわけです。閉鎖機構は前進時、「スプーン」に載った弾薬をチャンバーに押し込み、直後に再びピンに当たって下を向き、元の位置に戻り、次の弾薬が滑り込みます。「システム」全体も板バネのテンションで前方に復帰します。シアを持ち上げたトリガーの突起はこの時点ではまだその位置にあるのでシアは完全には復帰できず、もしシアが固定されていたら「システム」は前進少し手前で停止することになります。しかしシアはメインスプリングに取り付けられているのでやや動くことができ、「システム」は完全に前進し、トリガーを緩めるとシアがパチンと復帰することになります。

 きわめて特異なシステムですが、閉鎖機構がロックされ、バレルを含む部分の短距離の後退によってロック解除されるわけですから、分類上はショートリコイルに含めていいのではないでしょうか。ただ、通常のショートリコイルでは閉鎖機構の後退が慣性に任されているのに対し、このシステムでは強制的に動かされる点、リコイルスプリングの機能の大部分をメインスプリングが負っている点など大きく異なる部分が多いのも確かです。

 当時の銃としてはかなり安全性が高い設計になっていると思われますが、スリットや開口の微妙な形状によって非常に小さいピンを動かす点、また通常の方法よりはるかに複雑な動きをする送弾システムなどを見ると、信頼性は高くなかったのではないかと思われます。また図で見る限り銃全体がかなり大型化しそうであるのにもかかわらず装弾数はリボルバーと変わらず、再装填にも非常に時間がかかります。バレルがグリップよりかなり高く位置しているのでマズルジャンプも大きいはずです。軍への売込みが失敗したのも無理からぬ話です。たぶん本人もボーチャードピストルを見て「負けたな」と思ったのではないでしょうか。

 とまあ現在の視点からはいろいろけちをつける余地があるわけですが、この時点で独自のオートピストルを開発したチャレンジ精神は賞賛に値するはずです。また、この銃はハンドリピーティングピストルとオートピストルをつなぐ、いわば「ミッシリングリンク」と評価できるかも知れません。

 この銃の失敗を受けてシュワルツローゼは新たな構造にチャレンジすることになります。

戻るボタン