シュワルツローゼピストル その10

 3番目としてシュワルツローゼは(今回の住所は再びベルリン)1907年5月12日に「前方にスライド可能なバレルを持つセルフローダー」の出願を続けた。これに関しては1908年3月27日にパテントがナンバー196553の下に発行され、次のような文面があった。

提出された発明は前方にスライド可能なバレルを持ち、バレルが固定された包底面にあてがわれ、発射時に前方に動くセルフローダーのためのバレルホルダー(頑住吉注:バレルを保持するための部品)に関係している。この発明はバレルの誘導ケースからの取り去りを簡単にすること、そしてバレル自体の製造を単純化することを目的としている。これはバレルの閉鎖スプリングのための誘導ボルト(頑住吉注:リコイルスプリングガイド)が同時にバレルホルダーとして形成され、そしてバレルの取り去りがこのスプリングボルトの単純なティルト運動によってなされ得るようにすることによって達成される。

 図ではこの新しいバレルホルダーが前方にスライドするバレルを持つピストルに使用された状態で表現されている。図1はバレルが閉鎖状態にあるそのような銃の上部の一部断面図、図2はバレルが最前部位置にある同じ図、図3は閉鎖スプリングおよび第2の型のバレルホルダーを伴う銃床体もしくはスプリングケースを上から見た図を示している。

 このピストルの銃床体kは前部に滑りレールk1を備えており、これは下部にバレル閉鎖スプリングfのための収容スペースを持っている。一方上には2本の誘導ノッチがバレルの誘導レール用にフライス加工されている。つまりバレルは普通の方法で銃床体と結合されているので、銃床体の上で軸線方向には前後動するが、回転はできない。閉鎖スプリングf(前部は滑りレールのブリッジcに、後部はボルトのバンドb1にあてがわれている 
頑住吉注:バンドというのはリング状隆起部のことです)用のスプリングボルトbは、その前端がブリッジcの適合する穴に通されていて、後部はバレルのレスト部rにあてがわれている。そういうわけでスプリングfはバレルを常に後方、包底面sに押し付けようと努めている。バレルが前方に引かれると、バレルはスプリングレバーを連れて行く。この結果閉鎖スプリングはバンドb1とブリッジcの間で圧縮される。バレルを銃床体から分離したいときは、図2に描かれたバレルの位置においてスプリングボルトの前端を上に押す。ボルトが点線で示された位置を占めるまでである。するとバンドbはバレルの干渉外に置かれ、バレルは銃床体から前方に引き抜くことができる。スプリングボルトはバレルから外れた後、銃床体のレストr1によって受け止められ、固定される。そういうわけで銃の組み立てのためにはバレルの再度の導入後、スプリングボルトを銃床体から突き出ている部分への圧力によって再びレストr1から解き、この結果バンドが再びバレルのレストrの前に当るようにするだけでよい。

 同時にスプリングボルトは銃が組み立てられている際のバレルストロークの制限にも役立つ。図1および2から分かるように、スプリングボルトの後部は前部より太いままになっている。バレルの前進時、両部分の間に位置する段差が銃床体のブリッジcに当り、バレルのそれ以上の前進を妨げる。

 図3に表現された型の場合、バレルの運動ルートはスプリングボルトのバンドb1の突き出たショルダー部a1が銃床体の適合するストッパーc1に当ることによって制限される。

パテント請求

1.前方にスライド可能なバレルを持つセルフローダーであり、銃が組み立てられている際バレルの閉鎖スプリング(f)のための誘導ボルト(b)がバンド(b1)を使ってバレルのレスト(r)にあてがわれ、この結果このスプリングボルトが銃のオープンの際バレルに連れて行かれ、スプリングが圧縮され、一方この状態でスプリングボルトはスプリングケースから突き出た部分の助けを借りてこのレストから押し出すことができ、その後バレルが銃床体あるいは発火機構ケース内部の誘導部から取り除くことができることによって特徴付けられる。

2.請求1のようなセルフローダーであり、誘導ボルト(b)がバレルからかみ合いを外された後にスプリングケースのレスト(r1)によって受け止められ、固定されることによって特徴付けられる。

3.請求1のようなセルフローダーであり、スプリングボルト(b)が段差部(aまたはa1)を持ち、これが銃の完全なオープンの際にスプリングケースのストッパー(cまたはc1)に当たり、そしてこのためバレルの運動ルートが制限されることによって特徴付けられる。



 今回の内容は分かりやすいので補足説明の必要はないと思います。非常に単純ながら優れたアイデアであり、これまでのシュワルツローゼの考案の中でいちばん感心しました。ちなみに量産品では「その8」で紹介されたバレル保持方式ではなく今回の方式が採用されています。なお、この図ではバレル下面とスプリングガイドの間隔が非常に狭いように作図され、これではスプリングガイド先端を上下に動かす操作がやりにくそうですが、量産品ではかなり大きい間隔が取られ、問題なかったようです。

 






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